「日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫

神奈川県立金沢文庫
「特別展 平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」
4/24-6/14



神奈川県立金沢文庫で開催中の「日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」を見てきました。

神奈川は伊勢原の地にある日向(ひなた)薬師宝城坊。開山は行基と伝えられていますが、実際には10世紀頃だそうです。以来、薬師如来の霊場として信仰を集め、鎌倉時代には頼朝や妻政子の帰依を受けたことでも知られています。

薬師本堂は平成28年の完成を目指して解体修理中。それゆえでしょうか。横浜金沢の地にお出ましです。普段、秘仏として見る機会の少ない本尊薬師三尊像をはじめ、十二神将立像ほか飛天像など、ゆかりの仏像や寺宝が展示されています。

さて三尊像、制作は平安時代です。中央には薬師如来坐像が鎮座し、左右を日光・月光菩薩立像が構えます。特徴的なのは表面のノミ目を残した鉈彫と呼ばれる技法です。


「薬師如来坐像」・「日光・月光菩薩立像」 平安時代 日向薬師宝城坊 *重要文化財

特に着衣の部分には横方向へ無数のノミ目が走っています。一部は腕の部分にまで及んでいました。ノミ目は思いの外に端正です。美しい波紋を描いています。それにしても堂々たる出立ち。少し笑みを浮かべているのでしょうか。どこか愛嬌があるようにも映ります。親しみやすい如来像でした。

日光・月光菩薩像は実に素朴な造形です。やや薄い体躯、若干内側に湾曲しているのかもしれません。如来坐像へ寄り沿うかのように立っています。それぞれに左右の手を挙げては見下ろしています。可愛らしい菩薩様でもあります。


「十二神将立像」(部分) 平安時代 日向薬師宝城坊 *神奈川県指定重要文化財
 
ずらりと立ち並ぶ十二神将立像も見応えがありました。やや小ぶりです。身体は引き締まっています。あまり大仰なポーズはありません。いずれも三尊像に付随していて、1153年頃に制作されたと考えられています。


「十二神将立像」(部分) 平安時代 日向薬師宝城坊 *神奈川県指定重要文化財

神将像のうち、やや変わった立像に目が留まりました。例えば5番目です。何とも困ったような顔をしています。そして8番目の像に注目です。両腕には何と魚の口が差し込まれているのです。

「頬当」も興味深いのではないでしょうか。口をあけ、顎を突き出した頬当。武具というよりも仮面と言った方が良いのかもしれませんが、一説では伊勢原で死んだ太田道灌の所用だとされているとか。個性的な形をしています。

「獅子頭」も迫力がありました。舞楽で用いたものです。巨大な2体の獅子、ぎょろりと突き出た目を光らせています。

版木が多く出ているのもポイントです。例えば「妙沢不動明王像」は室町時代のもの。そもそも日向薬師には版木や経典が多く、信仰の普及活動に熱心だったそうです。

いつもながらのこじんまりとしたスペースですが、薬師三尊坐像を至近距離で拝めること自体が有り難いもの。ちなみに現地、伊勢原の日向薬師は、周辺を山に囲まれた緑豊かなお寺だそうです。一度、出向く機会があればと思いました。



なお金沢文庫に隣接するのは、金沢北条氏の菩提寺である称名寺です。境内の庭園では黄菖蒲がちょうど見頃を迎えていました。



6月14日まで開催されています。

「特別展 平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫@Kanagawa_bunko
会期:4月24日(金)~6月14日(日)
休館:月曜日。但し5/4は開館。5月7日(木)。
時間:10:00~16:30 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般600(500)円、20歳未満・学生400(300)円、65歳以上・高校生100円。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:横浜市金沢区金沢町142
交通:京急線金沢文庫駅東口より徒歩12分。シーサイドライン海の公園南口駅より徒歩12分。
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