「大英博物館展」 東京都美術館

東京都美術館
「大英博物館展ー100のモノが語る世界の歴史」
4/18-6/28



東京都美術館で開催中の「大英博物館展ー100のモノが語る世界の歴史」のプレスプレビューに参加してきました。

博物館の殿堂、ロンドンは大英博物館。設立は1753年です。世界最古の国立博物館としても知られ、古今東西、古代から現代にまで至る約700万点にも及ぶコレクションを有しています。

うち選ばれた100点を紹介する展覧会です。時代は約200万年前の石器や紀元前700年の粘土板、はたまた中世の石像や頭像に皿、さらには18世紀頃の胄に近年の盾や工業製品までと大変に幅広い。タイトルにも「モノ」とあるように、美術品とは限りません。


「アウグストゥスの胸像」 1~40年 イタリア *奥:年表パネル

また地域も当然ながら英国に限らず、ヨーロッパ、中近東、南北アメリカ、アフリカ、アジア、そして日本と、世界のありとあらゆる地域が網羅されています。

基本的には年代順での展示です。ただし横軸として各セクション毎にテーマが設定されていました。

プロローグ モノは語る
第1章 創造の芽生え
第2章 都市の誕生
第3章 古代帝国の出現
第4章 儀式と信仰
第5章 広がる世界
第6章 技術と芸術の革新
第7章 大航海時代と新たな出会い
第8章 工業化と大量生産が変えた世界

そして今回、鑑賞の一つのポイントになるのは、こうした各テーマと、作品のキャプションです。なかなか効果的に作られています。


大英博物館展「鑑賞のためのガイド」

まずはキャプションの☆マークです。これは各章の注目作品の意味です。さらに解説には簡単なものと、制作背景などを記した詳細なものの2種類あります。そして年表パネルです。作品の「いつ」と「どこで」を年表形式で地図ともに確認することも出来ます。


年表パネル「古代帝国の出現」

こうしたキャプションやパネルにも気をとめて見ると、より理解が深まるやもしれません。

さて全100点を追うだけでも見応えがあるもの。ブログ上で細かに見てもきりがありません。

よってここでは公式サイトの「私が選ぶこの1点」に倣い、「この5点」をピックアップ。その魅力を簡単にお伝えしたいと思います。


「鳥をかたどった乳棒」 紀元前6000~前2000年 パプアニューギニア、オロ州

「鳥をかたどった乳棒」です。作られたのは紀元前6000年から紀元前2000年の頃。場所はパプアニューギニアです。農耕をはじめた人類最古の料理道具とされ、同地のタロ芋をつぶすために使われたもの。首の長い鳥がすくっとのびるようなデザイン。実に個性的です。棒の球の部分がすり減っていることから、頻繁に利用されたと考えられてもいます。


「ウルのスタンダード」 紀元前2500年頃 イラク

「ウルのスタンダード」、紀元前2500年頃のメソポタミアの出土品です。発見当初は軍旗、つまりスタンダードとして使われたのではないかと考えられ、このような名前が付いたそうですが、実際には何の用途か分かっていないそうです。

それにしても深い青が美しい。素材は石、ラピスラズリも使われています。また表裏の彫刻のモチーフは「戦争」と「平和」です。どちらにも王が登場します。戦争では王の前に縛られた敵兵が描かれています。一方、平和では、動物や魚を前に華やかな宴を催す王の姿が示されていました。


「ルイス島のチェス駒」 1150~1200年 イギリス、ルイス島

大英博物館の中世コレクションで最も有名な作品だそうです。その名は「ルイス島のチェス駒」。おおよそ13世紀前の頃の作、スコットランドのルイス島で発見されましたが、作られたのはノルウェーだと考えられています。元々チェスは6世紀頃にインドで発明され、中東やヨーロッパへと広まりました。駒の形状は各地域で異なり、インドには象、イスラムには王の顧問を務める男性像があるそうです。そしてヨーロッパのキリスト教国ではクイーンとビショップ、つまり司教が追加されました。


「聖エウスタキウスの聖遺物容器」 1210年頃 スイス、バーゼル

一際金色に輝いています。13世紀はスイスの「聖遺物容器」。銀器に金を塗って作ったものです。ローマの将軍でトラヤヌス帝に仕えた聖エウスタキウスの遺骨をおさめるための容器だと言われています。

髪の毛の部分にはバンドがまかれ、そこにはエメジストや水晶といったローマ時代の宝石もはめられています。そして下の台には十二使徒が象られていました。また1956年の修復の際、内部に遺骨片が入っていることが分かったそうです。


「銃器で作られた母像」 2011年 モザンビーク

出展中で最も新しいものです。モザンビークの「母像」。作成は2011年です。遠目ないし写真では何で出来ているか分かりにくいかもしれませんが、実のところ素材は武器です。頭部は銃身、そして手に持つバックは銃倉から作られています。

モザンビークでは1976年から内戦が勃発。92年まで続きました。そして終戦後、残されたのは大量の武器です。殆どが外国製でした。その武器を素材にしたのが「母像」というわけです。地元のアーティストらが凶器に再生、新たな命を与えるという意味で母を象りました。また現地では武器と農具を交換しようとする運動も行われたそうです。


「バカラの水差し」 1878年 フランス、ロレーヌ

大英博物館のコレクションで巡る世界一周、時空を超えた美術、そしてモノの旅。ジャンルも時代も様々ですが、展覧会として一つの物語を紡ぐような流れもあり、思いのほかに身近に引き付けて楽しむことが出来ました。

[大英博物館展 巡回予定]
福岡:九州国立博物館 2015年7月14日(火)~9月6日(日)
神戸:神戸市立博物館 2015年9月20日(日)~2016年1月11日(月・祝)

さて既に会期も半ば、残すところあと一ヶ月強。土日を中心に多くの方が来場されています。


「ミトラス神像」 100~200年 イタリア、ローマ

公式ツイッターアカウント(@history100tweet)が混雑情報を発信しています。いつもながら毎週金曜日の夜間開館(20時まで)も狙い目となりそうです。

ご紹介が遅くなりました。6月28日まで開催されています。

「大英博物館展ー100のモノが語る世界の歴史」 東京都美術館@tobikan_jp
会期:4月18日(土) ~6月28日(日)
時間:9:30~17:30
 *入館は閉館の30分前まで。
 *毎週金曜日は20時まで開館。
休館:月曜日。
 *毎週月曜日、及び5/7(木)。但し5/4(月・祝)は開館。
料金:一般1600(1300)円、大学生1300(1100)円、高校生800(600)円。65歳以上1000(800)円。中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
 *毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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