「水彩画家・大下藤次郎」 千葉市美術館

千葉市美術館
「島根県立石見美術館所蔵 水彩画家・大下藤次郎」
5/20-6/29



千葉市美術館で開催中の「島根県立石見美術館所蔵 水彩画家・大下藤次郎」を見て来ました。

明治時代の水彩画家、大下藤次郎(1870~1911)。生まれは東京、旅人宿の家業を手伝いながら画家を志す。その後、日本各地の風景を描きながら、水彩の教育普及活動にも取り組み、「水彩画のパイオニア」(美術館サイトより)としての地位を確立した。

しかしながら今、この画家の名はどれほど知られているのでしょうか。

首都圏では久々となる回顧展です。出品は資料を含めて約140点。1点を除き、いずれも画家のコレクションで知られる島根の石見美術館の所蔵品です。

さて藤次郎、最初期は外国人向けの横浜写真を参照しながら水彩を始めます。そして20代にして原田直次郎に師事。戸外への写生に繰り出しては絵を描きました。


「門と人物・小石川」 1893(明治26)年

「門と人物・小石川」(1893)はどうでしょうか。本郷で生まれた藤次郎にしてはまさに地元である小石川の風景。正面から門を捉え、その下に二人の人物を描く。親子でしょうか。さもスナップショットを切り取ったかのような作品です。


「越ヶ谷の春色」 1897(明治30)年

「越ヶ谷の春色」(1897)も早い段階の作品です。小川には小舟が浮かび、草の生い茂る土手の向こうには藁葺きの家々が連なる。人の姿も垣間見えます。それにしても「春色」とは趣きある言葉です。薄い黄緑色の土手に水色の空。淡くまた透明感のある色遣いも目を引きます。


「青梅」 1904(明治37)年

少し時代が下りますが「青梅」(1904)を見てみましょう。街道筋でしょうか。家屋の前には白い傘が干してある。立派な林です。家の何倍もの高さのある木が道に沿って生えている。そこを一人の和装の女性が奥へと歩いて進んでいます。

それにしても藤次郎の水彩画、制作年代にもよるのか、作品によっては画風がかなり異なっています。基本的に時代を追う毎に明るくなるとされていますが、そう一括りには捉えきれない。時には絵具を何度も塗り重ねて強い質感を生み出した作品も見られます。表現は意外と多様です。

千葉との関わりも若い頃です。上総の地を旅行しては千葉の海や野山を描いた。あまり数は多くありませんが、「館山」や「興津」など、千葉での風景画も展示されています。


「館山」 1896(明治29)年

興味深いのは「菱花湾日記」です。1898年に上総を訪ねた際の旅行記。ここでは現地の様子を人々の生活に焦点を当てて描いています。中には家の軒先で楽しそうに餅つきする人たちの姿も。これらはいずれも展示資料ということで、パネルでの紹介ですが、なかなか魅せるものがありました。

またこの同じ年に海軍の遠洋航海の実習に参加し、軍艦「金剛」に乗船。約半年間オーストラリア方面への海の旅に出かけてます。シドニーやブリスベンの景色です。また先の旅行記同様、軍艦での人々、ようは水兵の実習の姿を描いたスケッチも残しました。


「赤道直下にて」 1898(明治31)年

「赤道直下にて」(1898)も軍艦の上で描いた一枚です。横一線の水平線の広がる海景画。島の姿一つとして見えない大海原です。夕景でしょうか。空はうっすらと朱色を帯びている。陽の沈む微妙な光の移ろいをモザイク状に表現しているのも面白いところです。

水辺の景色を得意としていたのでしょうか。チラシ表紙を飾るのもずばり「水辺風景」(制作年不詳)。薄く延ばした絵具の瑞々しい質感。余白も利用している。藤次郎の画ではどちらかというと抽象度の高い作品と言えるかもしれません。


「雲の観察(明治33年12月5日夕 西南方)」 1900(明治33)年

また空も見つめていた藤次郎、その名も「雲の観察」(1899-1900)と題し、雲をひたすらにスケッチした作品もあります。常に風に吹かれては形を変える雲の姿。湿り気を帯びた雲の様態。ターナーの絵画を連想しました。

水彩の教育普及活動についても触れなくてはなりません。まずは雑誌での展開。水彩画の指南書として記したのが「水彩画の栞」(1901)です。また教習所も立ち上げて生徒を指導。水彩の愛好者を増やす活動にも取り組みます。また同じく水彩画の雑誌「みずゑ」も手がけましたが、この出版元である春鳥会(藤次郎が興しました。)は、現在「美術手帳」などを刊行する美術出版社の前身だそうです。知りませんでした。


「穂高山の残雪」 1907(明治40)年頃

山の景色も描いています。白眉は「穂高山の残雪」(1907)ではないでしょうか。立ち枯れの林の向こうには穂高の山々が連なる。藤次郎自身も登山を趣味にしていたそうです。それにしても繊細な筆致です。空を覆う白い雲も美しい。思わず絵の前で深呼吸したくなります。

藤次郎は僅か41歳の若さで亡くなります。突然の病とのことでしたが、亡くなる前月にも水彩の講習会を開くなどして活動していただけに、早過ぎる死は何とも惜しまれてなりません。

さて本展に続く二つの特集展示も水彩です。その名も「近代日本の水彩画」。明治から昭和初期までの水彩画を辿る。作品はいずれも千葉市ではなく、千葉県立美術館の所蔵品です。浅井忠や藤次郎の弟子の作品なども展示されています。

またともに千葉出身の水彩画家、石井光楓(1892-1975)と無縁寺心澄(1905-45)の画業も紹介。後者の無縁寺心澄は千葉に住み千葉の景色を描き続けた画家。荒々しいまでの筆致が強い印象を与える。藤次郎の水彩画世界とは似ても似つかぬ作品群です。単に水彩と言ってもこうも多様であるのかと改めて感じました。

大下藤次郎、ともすると強烈な個性はないかもしれません。しかしながら画家の見た明治日本の野山を美しき水彩で辿る。視点は実直です。豊かな質感を見せる作品も少なくありません。素直に楽しめました。

「大下藤次郎の水彩画ー島根県立石見美術館所蔵 大下藤次郎作品集/美術出版社」

展示替えはありません。6月29日まで開催されています。

「島根県立石見美術館所蔵 水彩画家・大下藤次郎」 千葉市美術館
会期:5月20日(火)~6月29日(日)
休館:6/2。
時間:10:00~18:00。金・土曜日は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。

*作品図版はいずれも大下藤次郎。島根県立石見美術館所蔵。
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「バルテュス展」 東京都美術館

東京都美術館
「バルテュス展」 
4/19-6/22



東京都美術館で開催中の「バルテュス展」のプレスプレビューに参加してきました。

1908年にパリで生まれ、初期ルネサンスからフランス古典・写実主義などのヨーロッパ絵画をほぼ独学で参照しながら、いわゆる『少女』のように、時にはスキャンダラスな絵画も描いたバルテュスことバルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ(1908~2001)。

日本では20年ぶりとなる回顧展です。出品は初期から晩年までの油画50点。さらに素描や資料をあわせると100点に及びます。他アトリエの再現などを加えてバルテュスの全体像を提示していました。

ご紹介が遅れに遅れてしまいました。作品の印象を交えながら展示の様子を追ってみましょう。


左:「聖木の礼拝(ピエロ・デッラ・フランチェスカの壁画連作〈聖十字架伝〉にもとづく」1926年 スイス、ルガーノ、ライオンズクラブ財団

まずは初期作です。バルテュス、ともすると「孤高」などとも言われがちですが、当然ながら何もが独学というわけでもありません。若い頃は過去の「巨匠」の作を模写している。例えば「聖木の礼拝」です。1926年にイタリアを初めて訪れたバルテュスは、ピエロ・デッラ・フランチェスカの壁画連作「聖十字架伝」を熱心に写しています。本作もそのうちの一枚であるわけです。

またボナールらのモンマルトルの画家との交流もあったとのこと。プッサン、ダヴィット、クールベにもシンパシーを感じていたそうです。後の展開にそうした画家のスタイルが必ずしも明確でない点に、むしろバルティスの面白さがあるのかもしれませんが、あくまでもヨーロッパ絵画の伝統を踏まえていることは、画業を追う上でのポイントだと言えそうです。


右:「鏡の中のアリス」1933年 パリ、ポンピドゥー・センター、国立美術館
左:「キャシーの化粧」1933年 パリ、ポンピドゥー・センター、国立美術館


早々に少女が登場します。「鏡の中のアリス」に「キャシーの化粧」です。ともに1934年のパリで行われた最初の個展への出品作。裸の少女が描かれている。アリスにおける露になった乳房に性器。左足を振り上げて椅子に置いています。何とも奔放な姿ではないでしょうか。

それでいて興味深いのは、いずれの女性もどこか硬直した、さも生気のない、まるで人形か置物のように描かれていることです。アリスの目は白目でもはや殆ど見えていない。そしてキャシーにおける三者の奇妙な距離感。上目遣いで彼方を見据え、バルテュス自身とされる男も全く関係ない方向を見ている。同じく空間でありながらも親密感はありません。


「夢見るテレーズ」1938年 ニューヨーク、メトロポリタン美術館

やはり目を引くのは「夢見るテレーズ」です。股間を見せんとばかりに足を立てて座る少女。目を瞑っているのでしょうか。見る者の存在を拒否するかのように横を向いている。また床にはバルテュスがこよなく愛し、自己を投影していたとも言われる猫がミルクを舐めています。

それにしても絵具の質感が際立ちます。スペインのバロック絵画としたら言い過ぎでしょうか。膝から足先へかけてのハイライト、緑のクッションに赤いスカートと靴、白のシャツと下着。色彩はいずれも深い。配色は計算高くまた理知的です。ともするとモデルの様態は性的と捉えうるかもしれませんが、絵画そのもののはまるで古い静物画のような雰囲気をたたえています。


中央:「美しい日々」1944-46年 ワシントン、ハーシュホーン博物館と彫刻の庭

私自身、好きかと言われると言葉に詰まりますが、率直なところバルテュスで興味深く思えたのは、こうした「夢見るテレーズ」に少し後の「美しい日々」など、おおむね1945年までの主に少女をモチーフとした作品でした。性と神秘。バルテュスの見たイコンのような少女。純然たる美の象徴でもあったのでしょうか。謎めいた魅力は確かに存在していました。


左:「樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)」1960年 パリ、ポンピドゥー・センター、国立美術館

後半です。1953年にパリを離れ、ブルゴーニュ地方の城館へ移る。彼の地の風景を描きます。かの『少女』で見せたような挑戦的な作風は鳴りを潜め、どこか温和な暮らしを捉えたような風景なり人物画が目立つ。「シャシーの農家の中庭」はどうでしょうか。明るい野山の景色。前景には葉を落とした大きな木が描かれている。野山の色面の構成が幾何学的です。さも抽象画のような展開を見せています。

この時期のバルテュス、フレスコ画や漆喰のような画肌を追求していたそうです。写真ではまるで伝わりませんが、確かに初期作とは変化している。ざらりとした感触。少女に猫云々といったモチーフだけでなく、豊かな画肌の質感もバルテュス画の魅力かもしれません。

バルテュスの日本への関心は10代の頃に遡ります。彼はベルリンで日本の人形展を見たり、リルケを通して天心の茶に関する本を読んでいた。そして言うまでもなく決定的なのは節子夫人の登場でしょう。1961年、仏政府の命により日本に派遣されてきたバルテュスは、案内役の出田節子と結婚。後にスイスのロシニエールへ移り、晩年を過ごすようになります。


左:「朱色の机と日本の女」1967-76年 ブレント・R・ハリス・コレクション

「朱色の机と日本の女」のモデルは節子夫人です。見るからに日本を思わせる空間。屈曲した身体のフォルムは「彦根屏風」に登場する女性に似ているとの指摘もあるそうです。ただ実際の絵画制作においてどれほど日本美術を参照していたのか。その辺はまだ議論あるやもしれません。


「バルテュスの愛用品」展示室風景

なお展覧会は節子夫人の全面的なサポートによって実現しています。よって最後はバルテュスと節子さんの世界です。バルテュスの愛用品がお二人の写真とともに展示されていました。


「バルテュスのアトリエ」再現展示

さて6月7日(土)より三菱一号館美術館内の歴史資料室にて「バルテュス最後の写真ー密室の対話」展が始まります。

「バルテュス最後の写真ー密室の対話」@三菱一号館美術館歴史資料室 6月7日(土)~9月7日(日)

これはバルテュスが撮ったポラロイド写真を紹介するもの。最晩年に手を不自由にしたバルテュスは絵筆をカメラに持ち替え、デッサンの代わりにモデルを撮影したそうです。

日本でこれらの写真が展示されるのは初めてです。入場料は500円。都美館のバルテュス展の半券を提示すると100円引きになります。あわせて見ても良さそうです。


左:「窓、クール・ド・ロアン」1951年 フランス、トロワ近代美術館

バルテュス展の会期は既に残すこと一ヶ月弱。私もつい先だっての日曜日に改めて出かけてきました。さすがに盛況です。ただし特に行列などが出来るほどではありません。またゆっくり観覧されたい方は毎週金曜日の夜間開館(20時まで)も有用ではないでしょうか。

「ユリイカ2014年4月号/特集=バルテュス 20世紀最後の画家/青土社」

6月22日まで開催されています。

「バルテュス展」 東京都美術館@tobikan_jp
会期:4月19日(土)~6月22日(日)
時間:9:30~17:30(毎週金曜日は20時まで開館)*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。5月7日(水)。*但し4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開館。
料金:一般1600(1300)円、大学生1300(1100)円、高校生800(600)円。65歳以上1000(800)円。中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
 *毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「描かれたチャイナドレス」展にてブロガーナイトが開催されます

ブリヂストン美術館で開催中の「描かれたチャイナドレス」展。



主に明治末から大正期にかけて国内で興った中国趣味をチャイナドレスのモチーフから辿っていく。日本人画家がこうも多様にチャイナドレスを描いていたのか。そうした驚きと発見のある展覧会でもあります。

その「描かれたチャイナドレス」展にてSNSユーザー向けのブロガー内覧会が開催されます。

[ブリヂストン美術館「描かれたチャイナドレス展」ブロガー内覧会 概要]
・日時:2014年6月12日(木) 18:30~20:00
・会場:ブリヂストン美術館(中央区京橋1-10-1)
・スケジュール
 18:10~ 受付開始
 18:30~ ブロガー内覧会開始
 18:40~ ギャラリートーク(またはスライドトーク)
  *貝塚健氏(ブリヂストン美術館学芸部長)19:20まで
 20:00  内覧会終了
定員:100名(先着順)
・参加資格:ブログ、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方。ブログの内容は問いません。
・参加費:500円(税込)
・申込方法:氏名(本名)、ブログ、Twitter、Facebookのアカウントを明記の上、右記アドレス(bmanight2014@bridgestone-museum.gr.jp)宛にお申し込みください。
・申込締切:6月10日(火)


児島虎次郎「西湖の画舫」1921年  高梁市成羽美術館

日時は6月12日(木)の18時半から。閉館後の貸し切りでの観覧です。参加資格はブログの他、Faceboook、Twitterアカウントをお持ちの方。展覧会の魅力を発信してくださる方です。

[参加の特典]
1.企画担当者(ブリヂストン美術館学芸部長:貝塚健氏)によるギャラリートーク
2.参加者のみ貸切りの夜間特別鑑賞会。
3.「描かれたチャイナドレス」展のみ写真撮影可。(一部作品を除く。注意事項あり。)
4.ティールーム「ジョルジェット」にて本展とのコラボメニュー“シノワズリティー”をウェルカムドリンクとしてサービス。(18:10~19:00)
5.中国服(小物でも可)を着用の方には粗品をプレゼント!


安井曾太郎「金蓉」1934年 東京国立近代美術館 *展示期間:6/10~7/21

当日は本展企画で同館学芸部長の貝塚健氏によるギャラリー(またはスライド)トークの他、会場の写真撮影(注意事項あり。)も出来ます。また受付開始時間より19時までは併設のティールームにてコラボメニューのシノワズリティーをウェルカムドリンクとしていただけるそうです。

「描かれたチャイナドレス展 往年の中国趣味を再考」日本経済新聞
「なぜ日本人はチャイナドレスが好きか?」東洋経済オンライン

ブリヂストン美術館では久々となるSNSユーザー向けのイベント。参加費用は500円です。なおチャイナドレス展、ともすると一度見たという方もおられるかもしれませんが、実は会期途中に展示替えがあり、6月10日からは安井曾太郎の「金蓉」と恩地孝四郎の「蘇州所見」が新たに出品します。そちらを目当てに行かれても良いのではないでしょうか。

「描かれたチャイナドレス」 ブリヂストン美術館(はろるど)

なお中国服、もしくは小物を身につけて参加すると粗品もプレゼントされるそうです。会場内には実際の中国服の展示もあります。ここは一つ記念撮影に着飾って参加されても楽しいかもしれません。(撮影に関しては当日の注意事項をお守り下さい。)



「描かれたチャイナドレス展」ブロガー内覧会の詳細については同館のWEBサイトをご参照下さい。

「6月12日(木)18:30~20:00 ブロガーナイト開催決定!!」(ブリヂストン美術館)

申込アドレス→bmanight2014@bridgestone-museum.gr.jp *締切は6月10日(火)

「描かれたチャイナドレスー藤島武二から梅原龍三郎まで」 ブリヂストン美術館
会期:4月26日(土)~7月21日(月)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日。
料金:一般800(600)円、65歳以上600(500)円、大・高生500(400)円、中学生以下無料
 *( )内は15名以上団体料金。
 *100円割引券
 *チャイナドレス割引あり。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。
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「日本絵画の魅惑」(後期展示) 出光美術館

出光美術館
「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」
4/5~6/8 *前期:4/5~5/6、後期:5/9~6/8



出光美術館で開催中の「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」の後期展示を見て来ました。

室町から江戸に至る館蔵の日本絵画を紹介する「日本絵画の誘惑」展。前後期の2期制です。既にGW中で殆どの作品が入れ替わりました。

「日本絵画の魅惑」出品リスト(PDF)
前期:4月5日(土)~5月6日(火・休)
後期:5月9日(金)~6月8日(日)


前期は早々に見たものの、後期はいつの間にやら会期末。残りあと一週間弱となっています。

「日本絵画の魅惑」(前期展示) 出光美術館(はろるど)

絵巻は前後期で4点。前期と後期で2点ずつの入れ替えです。うち面白いのは「福富草紙絵巻」。放屁芸で金持ちになった秀武という人物と、彼を真似て失敗した男の話ですが、展示では前者、秀武の邸宅の様子を描いた部分が公開されている。大きな米俵が置かれ、また立派な着物のかかる室内、夫婦が二人寄り添っている姿を見て取れますが、何故か男は楽しそうであるのに、妻はどこか不機嫌な顔をしている。どういうことなのでしょうか。

中世のやまと絵屏風では「日月四季花鳥図屏風」に替わり「四季花木図屏風」が出品。かの探幽が極書きに「土佐光信」と記した屏風絵。四季の草花が順に描かれています。紅梅に末に百合。そして青々とした竹から秋草に紅葉。今でこそ黒ずんでいるものの、銀箔も散らされている。キャプションを見て初めて気がつきました。紅葉の向こうには雪をかぶった松林が小さく描かれている。左隻の上方です。冬への憧憬などという言葉もありましたが、ともかく見落としてしまうほどに小さい。何とも心憎い演出です。

状態の良い江戸時代の屏風絵が出ていました。「桜下弾弦図屏風」です。金地の二曲一隻の作、目に染みるほど発色が鮮やか。満開の桜の下で三味線を弾いたり文を認めたりする女の様子。艶やかな衣装。筆致は繊細です。髪の生際、またほつれ具合までを丁寧に示す。また桜の花は胡粉を盛っているのでしょうか。工芸的でもあります。

また気になったのは桜の幹です。力強く反り返る姿自体からして個性的ですが、所々に例えば若冲が描くかのような穴があいている。そして点々と連なる緑色の苔。幹の穴と苔のドットの関係。それらがとても際立っているのです。

普段何気なく見ている浮世絵。立ち姿にもちょっとした秘密があります。寛文浮世絵です。右手で着物の立てつまを取り、左手で袖を広げる構図。よく見られる浮世絵の立ち姿ですが、これはそもそも伊勢物語の河内越えの話に由来するとのこと。また演じた役者がこのポーズをとったこともあってか人気を呼び、浮世絵に良く描かれるようになったそうです。

前期でも感心した渡辺華山にまた優品が出ていました。「ろじ捉魚図」です。鵜が魚を捉えようとする姿を描いた一枚。ともかく鵜の躍動感が素晴らしい。魚を飲み込み、これ見よがしに首を振り上げている。また水面の草も墨だけでなく青い絵具を用いるなどして変化しています。時に滲みと掠れを駆使しての筆さばき。改めて高い画力に驚かされるものがありました。

ハイライトは等伯の「波濤図屏風」ではないでしょうか。荒れ狂う波に切り立つ岩山。六曲一双の大画面に広がる海の景色。金地にさらに金をまいているのでしょうか。さも光のハレーションを引き起こしたような効果も生まれている。劇的です。そして波の頭はまるで何らかの触手のようでもある。思わず絵に掴まれそうになります。


酒井抱一「八ツ橋屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館

つい先だって「美の巨人」でも特集放送のあった抱一の「八ツ橋図屏風」も出ていました。光琳のいわゆるメトロポリタン本を基準にした作品。光琳作よりも横志向が強いと言えるかもしれません。橋は左右に長くなり、なだらかな段差によって右上から左下へと進み行く。それこそ風にゆらゆらと靡くような花々。どちらかというと余白に広がりもある。絹本の画肌、肉眼でも確認出来るでしょうか。金箔の輝き。橋には群青も用いられている。美しい。眺めていると時間を忘れてしまいます。

前期の時にいただいた「後期鑑賞割引券」を利用して観覧してきました。半券の提示で後期は半額の500円。会期中に作品が大幅に入れ替わる展覧会も少なくありませんが、こうした配慮があるのは率直に嬉しいところ。展示替え後もまた来ようという気になります。

館内賑わっていました。出光の誇るお宝揃いの日本絵画、今回のスケールで楽しめる機会もそう滅多になさそうです。

「もっと知りたい長谷川等伯/黒田泰三/東京美術」

6月8日まで開催されています。

「日本の美・発見9 日本絵画の魅惑」 出光美術館
会期:4月5日(土)~6月8日(日)
 *前期:4月5日(土)~5月6日(火・休)、後期:5月9日(金)~6月8日(日)
休館:月曜日。但し5/5は開館。5/7、8は展示替えのため休館。
時間:10:00~17:00 毎週金曜日は19時まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *前期を観覧すると「後期鑑賞割引券」により後期半額。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ有楽町線有楽町駅、都営三田線日比谷駅B3出口より徒歩3分。東京メトロ日比谷線・千代田線日比谷駅から地下連絡通路を経由しB3出口より徒歩3分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
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「第3回 図録放出会」 東京藝術学舎

先日、拙ブログでもご案内した「第3回 図録放出会」。非常に暑い日の午後の開催でしたが、多くの方にご来場いただくことが出来ました。ありがとうございました。



[アート好きによるアート好きのための図録放出会 vol.3]
日時:6月1日(日) 13:30~18:30 (図録提供の受付 12:30~15:30)
会場:京都造形芸術大学・東北芸術工科大学外苑キャンパス(東京藝術学舎)
住所:港区北青山1-7-15
交通:JR線信濃町駅より徒歩5分。東京メトロ半蔵門線・銀座線・都営大江戸線青山一丁目駅より徒歩10分。

6月1日(日)「第3回 図録放出会」が開催されます(はろるど)



私は当日、会場の設営などのお手伝いをさせていただきました。まずは午前中の搬入です。事前に宅配便などで図録を送って下さった方も多く、その数は全部で600冊超。それをシールをつけて価格別(500円と1000円)に分類します。その後、大まかに日本美術と西洋美術に分けました。どちらかと言うと日本美術の方が多かったかもしれません。



セッティングです。雲一つない晴天。予定通り青空市にしたは良いものの、この日は都心で30度以上を記録した真夏日です。思わぬ暑さに難儀しながらも、机を置き、図録を並べます。大型展から小さなテーマ展の図録までと多様。中には古いものもあり、昭和40年代の東博の特別展の図録なども。また美しい写真展の図録も目につきます。つい中をめくってしまいました。



「BOOK TRUCK」(@mybooktruck)もやって来てくれました。全国津々浦々、イベント会場などを巡っては本を販売する移動本屋。それにしても年季の入ったトラックです。80年代のシボレーの「CHVY VAN」という車だそうです。



「BOOK TRUCK」の中にも図録を並べました。セレクトは店主の三田さんご本人です。単に机などに並べるのとは違った雰囲気があるではないでしょうか。



そして13時半。放出会の開始時間です。まさに即席の古本市。出足は好調。早々にたくさんの方がやってきて下さいます。また当日に図録を持ってきて下さった方もちらほら。重いのにも関わらず本当に有り難いことです。また枚数限定でしたが、持ち帰り用のエコバックをあべまつ行脚@abematuさんが作って下さいました。さり気なく毎回人気のバックでもあります。



14時半からは本会を企画されたフクヘン。さんこと鈴木芳雄さんと森岡書店の森岡さんのトークショーもスタート。フクヘンさんが仰るのに稀少図録の自慢大会。古今東西、ご自慢の図録についてたっぷり一時間ほど語っていただきました。

ともかく暑い日でしたが、午後からは建物の形状もあり、日陰になったのも幸いでした。皆さん図録を熱心にご覧いただき、また思い思いに買って下さいます。



また図録を切っ掛けに過去に見た展覧会などについて話される方も多い。それぞれの方の展覧会の記憶を繋ぐこと。思わぬ方との出会いもあります。放出会の言わば醍醐味の一つです。

図録放出会報告|6月1日、東京藝術学舎にて開催した「アート好きによるアート好きのための図録放出会」は売上金の359,000円を公益財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団 http://www.bunkazai.or.jp へ寄付いたしました。@fukuhenさんツイート

放出会は18時半に終了。フクヘンさんのツイートにもあるように当日の売上は359000円。そのまま全額を「公益財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団」に寄付しました。



今回も@fukuhenさんをはじめ、「青い日記帳」@taktwiさん、そして発起人の@sorciere4さんを中心に会を運営。他有志数名のボランティアでうまく乗り切ることが出来ました。

まずは上記お三方を始め、森岡書店の森岡さん、「BOOK TRUCK」の三田修平(@MitaShuhei)さん、また会場を貸して下さった京都造形芸術大学・東北芸術工科大学に感謝申し上げます。



そして何よりは当日、会場に来て下さった方、また日時を問わず、図録を送ってきて下さった全ての方々のおかげです。中には遠方から段ボールで4箱も5箱も送って下さった方や、お手紙を寄せて下さった方もおられました。本当にありがとうございます。

これで3回目となった図録放出会。第1回は赤坂のスタンドバー、2回目は新宿の家具店と場所を替えての企画、第3回は大学構内での開催でした。ただ今回はあまり人出のない日曜の信濃町という立地もあったからか、出足が早く、夕方以降は少し寂しくなってしまったかもしれません。より多くの方に来ていただくにはどうしたら良いのか。その辺は反省点になりそうです。

何はともあれ放出会。これまでは約1年半毎に行われてきました。おそらくはまた企画されると思います。今回、残念ながら都合の付かなかった方、次の機会にご期待下さい。



第3回図録放出会は6月1日に終了しました。

[アート好きによるアート好きのための図録放出会 vol.3]
日時:6月1日(日) 13:30~18:30
会場:京都造形芸術大学・東北芸術工科大学外苑キャンパス(東京藝術学舎)
入場:無料
住所:港区北青山1-7-15
交通:JR線信濃町駅より徒歩5分。東京メトロ半蔵門線・銀座線・都営大江戸線青山一丁目駅より徒歩10分。
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