都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「private, privateーわたしをひらくコレクション」 埼玉県立近代美術館
埼玉県立近代美術館
「private, privateーわたしをひらくコレクション」
4/11-5/24

埼玉県立近代美術館で開催中の「private, privateーわたしをひらくコレクション」を見てきました。
約半年間、計2度、足掛け2年にわたって改修中だった埼玉県立近代美術館。ようやく今春に工事が完了。4月11日にリニューアルオープンを迎えました。
それを記念しての展覧会です。タイトルは「private, privateーわたしをひらくコレクション」。端的にはコレクション展です。(ごく一部、他館の作品があります。)ただ私自身、リニューアル記念とあったので、いわゆる名品展的な展示だと思っていましたが、実際には全然違いました。
テーマ性の高い展覧会です。基本的には、美術館のパブリックなコレクションを、プライベートの概念で捉え直す試み。そこから3名の学芸員が、異なる3つのテーマで展覧会を組み立ています。

須田剋太「私の曼陀羅a」 1964年
最初のテーマは越境者の軌跡。瑛九と須田剋太です。ともに1910年前後の生まれ。須田は鴻巣の出身です。瑛九は戦後、浦和に移住して制作します。須田の拠点は関西だったため、活動は直接的に重なりませんが、ともに埼玉ゆかりの画家でもあります。
瑛九は元々、評論から名を挙げたそうです。16歳の時には美術雑誌「みづえ」に批評を掲載。20歳の頃に描いたのが「十三子姉」です。モデルはノースリーブの女性。黒の輪郭線を活かして対象の特徴を有り体に捉えています。
須田の「読書をする男」はどうでしょうか。公募展で特選を得たという一枚。座って本を読む男の姿は一見、写実的ですが、目を凝らすと赤い線が引っ掻き傷のようにたくさん引かれていることが分かります。独特な表現でもあります。
二人を結ぶのが評論家の長谷川三郎です。そもそも瑛九という名を付けたのは長谷川と言われています。一方で須田が具象から抽象へ転向したのも長谷川の影響だとされているそうです。

瑛九「花」 1956年
会場では二人の作品を交互に参照。壁の上下に並べてもいます。須田の「不在の現実」には驚きました。支持体はキャンバスではなく麻袋です。縫い目が走る。その上から銀色の強い色彩を塗り込めています。ゴツゴツした質感です。
瑛九では「出発」も面白いのではないでしょうか。オレンジの造形、キュビズム的とでも言えるかもしれません。また晩年の円、あるいは点描へと至った作品も目を引きます。ほかにも絵画やフォトデザインもずらり。約50点ほどです。また書簡などの資料を参照して、長谷川との影響関係も探っています。
次いで二番目のテーマは近代日本画、大熊家のコレクションです。
大熊家とは川口の旧家のこと。江戸末期には味噌の製造元でも知られ、かの大観とも親交があったとか。何でも大観は大熊家の味噌を愛用していたそうです。

横山大観「漁村曙」 1940年
日本画を蒐集したのは9代目の武右衛門です。彼のコレクションが近年、埼玉県立近代美術館へと寄贈されました。その数は50点を超えます。大観10点、橋本関雪3点をはじめ、堂本印象、観山、玉堂、池上秀畝と続く。かなりの粒揃いでした。

堂本印象「鳥言長者草」 1922年
一推しは堂本印象の「鳥言長者草」です。清の女性の風俗を描いた一枚、麗らかなる姿です。チャイナドレスでしょうか。うっすらと桃色を帯びています。伏した目で下を見やりながら立つ。目には長い睫毛が細かく描かれています。この美しさ。抒情的、あるいは幻想的と言っても良いかもしれません。
大観では「仙果」が絶品でした。中国の伝説に基づき、食すと不老不死を得ることが出来るという桃。何でも三千年に一度だけ実がなるとされているそうです。
桃の部分はたらし込みです。絵具が滲み出しています。そして葉にはぼかしがかかっていました。輪郭線も朧げです。琳派の描法を意識した作品だと言われています。
そして奥を見やれば李禹煥の「線より」が掲げられています。あまり違和感がありません。なおスペースの都合でしょうか。大熊家の近代日本画コレクションは、この企画展示室のほか、1階の常設展示室へ続いています。そちらが20点ほどです。中でも下村観山の「巌に鳥」が大変な秀作でした。6曲1双の金屏風です。右隻と左隻の対比的な空間構成が目を引きます。薄い墨で描かれた鳥が消え行くかのように舞っていました。お見逃しなきようご注意ください。
ラストの三番目のテーマは美術家の作法、つまり現代美術です。
ジャンルは絵画や写真を問いません。例えば絵画の丸山直文に写真家の志水児王、佐藤時啓ら。全9名でした。

佐藤時啓「Photo-Respirationシリーズより #369 Saitamakinbi」 1999年 *寄託作品(展示室外)
昨年の東京都写真美術館の個展の記憶も蘇るのではないでしょうか。佐藤時啓は埼玉県立美術館を舞台にした作品を制作しています。全5点です。いずれもペンライトを用いたもの。美術館のエントランスや館内にライトの軌跡が走ります。実際には佐藤自身が持って動いたものですが、長時間露光することで人の姿が消える、つまりライトの光だけが残像として写し出されているわけです。

塩崎由美子「シリーズ(恢復より)」 2011年
また大熊家コレクションと美術家の作法の間には幕合と称して、プライベートコレクションを連想させる現代美術の小品を挟んでいました。これがまた心憎いもの。アルプやデュシャン、駒井哲郎に草間彌生、熊谷守一らの作品が所狭しと並んでいます。

「private, private」展内休憩スペース *このスペースのみ撮影可
さらに冒頭と最後には、改修中の埼玉近美と中銀カプセル(北浦和公園)を捉えた中村陽介の映像を見せています。それがプロローグとエピローグに当たるわけです。中銀の映像ではカプセルの内部から外の公園を映しています。一つの壁によって隔たれた内と外との関係。プライベートな空間の意味を問いただしてもいます。

「private, private」展内休憩スペースより北浦和公園
タレルの「テレフォン・ブース」も久しぶりの展示かもしれません。激しく点滅する光のショー。知覚を大きく揺さぶります。なお所要は約7~8分ほどです。基本的には一人ずつしか入れません。(一応、先着順ですが、空いているために、好きな時間に体験出来ました。)

ジャコモ・マンズー「枢機卿」 *美術館地下1階
さて全面リニューアルした埼玉県立近代美術館、外観を一見するだけでは何を改修したのか分からないかもしれません。

埼玉県立近代美術館全景
実際にも改修は「空調や照明、収蔵庫など裏方の部分」(ソカロより)が多く、一般の観客の立ち入る部分はそう変化していないそうです。ただ照明の入れ替えの効果もあるのでしょう。特に常設展示室では作品の見え方が向上したような気がしました。

美術館内より北浦和公園
前回のリニューアルで一新したトイレやエレベーターなどはまだ真新しいもの。大きく変わったのは美術館の周囲です。つまり外の植栽です。大きく手が加えられています。結果、館内から公園への見通しが良くなりました。

北浦和公園「音楽噴水」
またその分、逆に公園側からも美術館の建物が目立つようになりました。それに名物の音楽噴水も改良。何でもかつては老朽化のため、出力が低下していたそうです。今回曲を4曲追加し、当初の出力にまで引き上げられました。

北浦和公園「彫刻広場」
現在、公園内の芝生は養生中のため、立ち入りが制限されていましたが、いずれは開放されるのではないでしょうか。音楽噴水に彫刻広場、そして植栽。北浦和公園自体も美術館の工事にあわせて趣をやや変えています。

北浦和公園より美術館 *手前は橋本省「流水の門」 1985年
コレクションを3つの意外感のある切り口で見せる「private, private展」。なかなか読ませる展示で見応えもあります。私も大好きな埼玉県立近代美術館。これからの活動にも大いに期待したいところです。

北浦和公園(駅方向入口より) *手前はエミリオ・グレコ「ゆあみ」 1968年
5月24日まで開催されています。
[お知らせ]
「わたしをひらくコレクション展」のチケットが若干枚数手元にあります。先着順にてお一人様一枚ずつ差し上げます。ご希望の方は件名に「わたしをひらくコレクション展チケット希望」、本文にフルネームでお名前とメールアドレスを明記の上、拙ブログアドレス harold1234アットマークgoo.jp までご連絡下さい。(アットマークの表記は@にお書き直し下さい。)なお迷惑メール対策のため、携帯電話のアドレスからはメールを受け付けておりません。ご了承下さい。
「リニューアルオープン記念展 private, privateーわたしをひらくコレクション」 埼玉県立近代美術館(@momas_kouhou)
会期:4月11日(土)~5月24日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。
時間:10:00~17:30 入館は閉館の30分前まで。
料金:一般800(640)円 、大高生640(520)円、中学生以下は無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*MOMASコレクションも観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
「private, privateーわたしをひらくコレクション」
4/11-5/24

埼玉県立近代美術館で開催中の「private, privateーわたしをひらくコレクション」を見てきました。
約半年間、計2度、足掛け2年にわたって改修中だった埼玉県立近代美術館。ようやく今春に工事が完了。4月11日にリニューアルオープンを迎えました。
それを記念しての展覧会です。タイトルは「private, privateーわたしをひらくコレクション」。端的にはコレクション展です。(ごく一部、他館の作品があります。)ただ私自身、リニューアル記念とあったので、いわゆる名品展的な展示だと思っていましたが、実際には全然違いました。
テーマ性の高い展覧会です。基本的には、美術館のパブリックなコレクションを、プライベートの概念で捉え直す試み。そこから3名の学芸員が、異なる3つのテーマで展覧会を組み立ています。

須田剋太「私の曼陀羅a」 1964年
最初のテーマは越境者の軌跡。瑛九と須田剋太です。ともに1910年前後の生まれ。須田は鴻巣の出身です。瑛九は戦後、浦和に移住して制作します。須田の拠点は関西だったため、活動は直接的に重なりませんが、ともに埼玉ゆかりの画家でもあります。
瑛九は元々、評論から名を挙げたそうです。16歳の時には美術雑誌「みづえ」に批評を掲載。20歳の頃に描いたのが「十三子姉」です。モデルはノースリーブの女性。黒の輪郭線を活かして対象の特徴を有り体に捉えています。
須田の「読書をする男」はどうでしょうか。公募展で特選を得たという一枚。座って本を読む男の姿は一見、写実的ですが、目を凝らすと赤い線が引っ掻き傷のようにたくさん引かれていることが分かります。独特な表現でもあります。
二人を結ぶのが評論家の長谷川三郎です。そもそも瑛九という名を付けたのは長谷川と言われています。一方で須田が具象から抽象へ転向したのも長谷川の影響だとされているそうです。

瑛九「花」 1956年
会場では二人の作品を交互に参照。壁の上下に並べてもいます。須田の「不在の現実」には驚きました。支持体はキャンバスではなく麻袋です。縫い目が走る。その上から銀色の強い色彩を塗り込めています。ゴツゴツした質感です。
瑛九では「出発」も面白いのではないでしょうか。オレンジの造形、キュビズム的とでも言えるかもしれません。また晩年の円、あるいは点描へと至った作品も目を引きます。ほかにも絵画やフォトデザインもずらり。約50点ほどです。また書簡などの資料を参照して、長谷川との影響関係も探っています。
次いで二番目のテーマは近代日本画、大熊家のコレクションです。
大熊家とは川口の旧家のこと。江戸末期には味噌の製造元でも知られ、かの大観とも親交があったとか。何でも大観は大熊家の味噌を愛用していたそうです。

横山大観「漁村曙」 1940年
日本画を蒐集したのは9代目の武右衛門です。彼のコレクションが近年、埼玉県立近代美術館へと寄贈されました。その数は50点を超えます。大観10点、橋本関雪3点をはじめ、堂本印象、観山、玉堂、池上秀畝と続く。かなりの粒揃いでした。

堂本印象「鳥言長者草」 1922年
一推しは堂本印象の「鳥言長者草」です。清の女性の風俗を描いた一枚、麗らかなる姿です。チャイナドレスでしょうか。うっすらと桃色を帯びています。伏した目で下を見やりながら立つ。目には長い睫毛が細かく描かれています。この美しさ。抒情的、あるいは幻想的と言っても良いかもしれません。
大観では「仙果」が絶品でした。中国の伝説に基づき、食すと不老不死を得ることが出来るという桃。何でも三千年に一度だけ実がなるとされているそうです。
桃の部分はたらし込みです。絵具が滲み出しています。そして葉にはぼかしがかかっていました。輪郭線も朧げです。琳派の描法を意識した作品だと言われています。
そして奥を見やれば李禹煥の「線より」が掲げられています。あまり違和感がありません。なおスペースの都合でしょうか。大熊家の近代日本画コレクションは、この企画展示室のほか、1階の常設展示室へ続いています。そちらが20点ほどです。中でも下村観山の「巌に鳥」が大変な秀作でした。6曲1双の金屏風です。右隻と左隻の対比的な空間構成が目を引きます。薄い墨で描かれた鳥が消え行くかのように舞っていました。お見逃しなきようご注意ください。
ラストの三番目のテーマは美術家の作法、つまり現代美術です。
ジャンルは絵画や写真を問いません。例えば絵画の丸山直文に写真家の志水児王、佐藤時啓ら。全9名でした。

佐藤時啓「Photo-Respirationシリーズより #369 Saitamakinbi」 1999年 *寄託作品(展示室外)
昨年の東京都写真美術館の個展の記憶も蘇るのではないでしょうか。佐藤時啓は埼玉県立美術館を舞台にした作品を制作しています。全5点です。いずれもペンライトを用いたもの。美術館のエントランスや館内にライトの軌跡が走ります。実際には佐藤自身が持って動いたものですが、長時間露光することで人の姿が消える、つまりライトの光だけが残像として写し出されているわけです。

塩崎由美子「シリーズ(恢復より)」 2011年
また大熊家コレクションと美術家の作法の間には幕合と称して、プライベートコレクションを連想させる現代美術の小品を挟んでいました。これがまた心憎いもの。アルプやデュシャン、駒井哲郎に草間彌生、熊谷守一らの作品が所狭しと並んでいます。

「private, private」展内休憩スペース *このスペースのみ撮影可
さらに冒頭と最後には、改修中の埼玉近美と中銀カプセル(北浦和公園)を捉えた中村陽介の映像を見せています。それがプロローグとエピローグに当たるわけです。中銀の映像ではカプセルの内部から外の公園を映しています。一つの壁によって隔たれた内と外との関係。プライベートな空間の意味を問いただしてもいます。

「private, private」展内休憩スペースより北浦和公園
タレルの「テレフォン・ブース」も久しぶりの展示かもしれません。激しく点滅する光のショー。知覚を大きく揺さぶります。なお所要は約7~8分ほどです。基本的には一人ずつしか入れません。(一応、先着順ですが、空いているために、好きな時間に体験出来ました。)

ジャコモ・マンズー「枢機卿」 *美術館地下1階
さて全面リニューアルした埼玉県立近代美術館、外観を一見するだけでは何を改修したのか分からないかもしれません。

埼玉県立近代美術館全景
実際にも改修は「空調や照明、収蔵庫など裏方の部分」(ソカロより)が多く、一般の観客の立ち入る部分はそう変化していないそうです。ただ照明の入れ替えの効果もあるのでしょう。特に常設展示室では作品の見え方が向上したような気がしました。

美術館内より北浦和公園
前回のリニューアルで一新したトイレやエレベーターなどはまだ真新しいもの。大きく変わったのは美術館の周囲です。つまり外の植栽です。大きく手が加えられています。結果、館内から公園への見通しが良くなりました。

北浦和公園「音楽噴水」
またその分、逆に公園側からも美術館の建物が目立つようになりました。それに名物の音楽噴水も改良。何でもかつては老朽化のため、出力が低下していたそうです。今回曲を4曲追加し、当初の出力にまで引き上げられました。

北浦和公園「彫刻広場」
現在、公園内の芝生は養生中のため、立ち入りが制限されていましたが、いずれは開放されるのではないでしょうか。音楽噴水に彫刻広場、そして植栽。北浦和公園自体も美術館の工事にあわせて趣をやや変えています。

北浦和公園より美術館 *手前は橋本省「流水の門」 1985年
コレクションを3つの意外感のある切り口で見せる「private, private展」。なかなか読ませる展示で見応えもあります。私も大好きな埼玉県立近代美術館。これからの活動にも大いに期待したいところです。

北浦和公園(駅方向入口より) *手前はエミリオ・グレコ「ゆあみ」 1968年
5月24日まで開催されています。
[お知らせ]
「わたしをひらくコレクション展」のチケットが若干枚数手元にあります。先着順にてお一人様一枚ずつ差し上げます。ご希望の方は件名に「わたしをひらくコレクション展チケット希望」、本文にフルネームでお名前とメールアドレスを明記の上、拙ブログアドレス harold1234アットマークgoo.jp までご連絡下さい。(アットマークの表記は@にお書き直し下さい。)なお迷惑メール対策のため、携帯電話のアドレスからはメールを受け付けておりません。ご了承下さい。
「リニューアルオープン記念展 private, privateーわたしをひらくコレクション」 埼玉県立近代美術館(@momas_kouhou)
会期:4月11日(土)~5月24日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。
時間:10:00~17:30 入館は閉館の30分前まで。
料金:一般800(640)円 、大高生640(520)円、中学生以下は無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*MOMASコレクションも観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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「新緑の古建築公開」 横浜三渓園
横浜三渓園
「新緑の古建築公開」
4/29-5/6

実業家の原三渓によって明治39年に開園した三渓園。2006年には国の名勝にも指定されました。既に横浜有数の観光地として多くの人に知られています。

三渓園正門入口
基本的なアクセスはバスです。JR線の根岸駅から乗ると約10分ほどでしょうか。最寄のバス停は本牧です。そこで下車し、しばらく住宅街を歩きます。さらに10分強です。すると鬱蒼とした森が現れ、三渓園の正門に到着しました。

大池から旧燈明寺三重塔の方向
実は私自身、三渓園に行ったのは初めてでした。広いとは耳にしていましたが、本当に広い。17万平方メートルです。大池を手前に彼方には三重塔がそびえ立ちます。園内はさながら古建築のテーマパークです。原三渓が全国より移築した全12棟の建築物が建っています。

臨春閣
ちょうどGW期間中、「新緑の古建築公開」ということで、重要文化財の臨春閣と蓮華院が特別に公開されていました。

臨春閣
臨春閣が建てられたのは1649年。数寄屋風の書院造りです。江戸時代には和歌山にあり、紀州徳川家の別荘として使われていました。後に大阪へ一度移されたものの、明治39年に原三渓が購入。おおよそ11年の歳月をかけて配置を練り、大正6年にこの地へ移築しました。

臨春閣内部
松の並ぶ池に面した配置はさも建築時からあったかのような姿。周囲の緑とも調和しています。建物の中にも入れましたが、手入れが行き届いているのでしょう。状態も思いの外に良好です。襖絵は狩野派の絵師が描きましたが、現在は保存の観点からレプリカがはめ込まれています。

臨春閣内部
欄間の彫刻も美しく、細部まで意匠を凝らして作られた建築物だということがよく分かります。ちなみにこの別荘では、かの8代将軍、吉宗も育ったと伝えられているそうです。

蓮華院と竹林
もう一棟、公開されていたのは蓮華院でした。大正6年建築の茶室です。原三渓もとりわけ好んで利用していました。周囲は鬱蒼とした竹林ですが、これも意図してのこと。何でも廃寺に残されて荒れた一庵というコンセプトなのだそうです。

聴秋閣
また近くには聴秋閣が建っていました。建築年は1623年。元々は家光が二条城内に造ったものです。小堀遠州と同時代、幕府の造営に関する事務方を務めた佐久間将監の作だと考えられています。

三渓園大池
あまり時間がなかったために外苑の方までは廻れませんでしたが、それでも大池から内苑、三重塔をぐるっと廻るだけでも約1時間。園内はGW中もあってか大賑わいでした。

三渓園園内
ちなみに園内の三渓記念館では原三渓の書画とともに「新緑に遊ぶ」と題して、下村観山らの作品も展示中でした。言うまでもなく観山は三渓ゆかりの画家です。生前も園内に滞在しては作品を制作。かの「弱法師」の木のモデルは三渓園内の梅だと言われています。
6月には「蛍の夕べ」と題し、平日も夜間開館が行われるそうです。
「蛍の夕べの開催について(6/6~6/14)」三渓園

四季に移ろう花もまた見どころの一つ。季節をかえて改めて出かけたいものです。
本年の古建築公開は終了しました。
「新緑の古建築公開」 横浜三渓園
会期:4月29日(水・祝)~5月6日(水・振休)
休園:会期中は無休。
時間:9:00~17:00 *入園は閉園の30分前まで。
料金:大人(中学生以上)500円、こども(小学生)200円。
*20名以上の団体は各100円引。
住所:横浜市中区本牧三之谷58-1
交通:JR線根岸駅1番乗り場より市バス58・99・101系統で本牧下車、徒歩10分。JR線桜木町駅2番乗り場より市バス8・148系統で本牧三溪園前下車、徒歩5分。
「新緑の古建築公開」
4/29-5/6

実業家の原三渓によって明治39年に開園した三渓園。2006年には国の名勝にも指定されました。既に横浜有数の観光地として多くの人に知られています。

三渓園正門入口
基本的なアクセスはバスです。JR線の根岸駅から乗ると約10分ほどでしょうか。最寄のバス停は本牧です。そこで下車し、しばらく住宅街を歩きます。さらに10分強です。すると鬱蒼とした森が現れ、三渓園の正門に到着しました。

大池から旧燈明寺三重塔の方向
実は私自身、三渓園に行ったのは初めてでした。広いとは耳にしていましたが、本当に広い。17万平方メートルです。大池を手前に彼方には三重塔がそびえ立ちます。園内はさながら古建築のテーマパークです。原三渓が全国より移築した全12棟の建築物が建っています。

臨春閣
ちょうどGW期間中、「新緑の古建築公開」ということで、重要文化財の臨春閣と蓮華院が特別に公開されていました。

臨春閣
臨春閣が建てられたのは1649年。数寄屋風の書院造りです。江戸時代には和歌山にあり、紀州徳川家の別荘として使われていました。後に大阪へ一度移されたものの、明治39年に原三渓が購入。おおよそ11年の歳月をかけて配置を練り、大正6年にこの地へ移築しました。

臨春閣内部
松の並ぶ池に面した配置はさも建築時からあったかのような姿。周囲の緑とも調和しています。建物の中にも入れましたが、手入れが行き届いているのでしょう。状態も思いの外に良好です。襖絵は狩野派の絵師が描きましたが、現在は保存の観点からレプリカがはめ込まれています。

臨春閣内部
欄間の彫刻も美しく、細部まで意匠を凝らして作られた建築物だということがよく分かります。ちなみにこの別荘では、かの8代将軍、吉宗も育ったと伝えられているそうです。

蓮華院と竹林
もう一棟、公開されていたのは蓮華院でした。大正6年建築の茶室です。原三渓もとりわけ好んで利用していました。周囲は鬱蒼とした竹林ですが、これも意図してのこと。何でも廃寺に残されて荒れた一庵というコンセプトなのだそうです。

聴秋閣
また近くには聴秋閣が建っていました。建築年は1623年。元々は家光が二条城内に造ったものです。小堀遠州と同時代、幕府の造営に関する事務方を務めた佐久間将監の作だと考えられています。

三渓園大池
あまり時間がなかったために外苑の方までは廻れませんでしたが、それでも大池から内苑、三重塔をぐるっと廻るだけでも約1時間。園内はGW中もあってか大賑わいでした。

三渓園園内
ちなみに園内の三渓記念館では原三渓の書画とともに「新緑に遊ぶ」と題して、下村観山らの作品も展示中でした。言うまでもなく観山は三渓ゆかりの画家です。生前も園内に滞在しては作品を制作。かの「弱法師」の木のモデルは三渓園内の梅だと言われています。
6月には「蛍の夕べ」と題し、平日も夜間開館が行われるそうです。
「蛍の夕べの開催について(6/6~6/14)」三渓園

四季に移ろう花もまた見どころの一つ。季節をかえて改めて出かけたいものです。
本年の古建築公開は終了しました。
「新緑の古建築公開」 横浜三渓園
会期:4月29日(水・祝)~5月6日(水・振休)
休園:会期中は無休。
時間:9:00~17:00 *入園は閉園の30分前まで。
料金:大人(中学生以上)500円、こども(小学生)200円。
*20名以上の団体は各100円引。
住所:横浜市中区本牧三之谷58-1
交通:JR線根岸駅1番乗り場より市バス58・99・101系統で本牧下車、徒歩10分。JR線桜木町駅2番乗り場より市バス8・148系統で本牧三溪園前下車、徒歩5分。
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「石田尚志 渦まく光」 横浜美術館
横浜美術館
「石田尚志 渦まく光」
3/28-5/31

横浜美術館で開催中の「石田尚志 渦まく光」を見てきました。
迸る線と、瞬き、渦を巻いては消え行く光の軌跡。少なくとも今回ほどのスケールで石田の「絵が動く」(公式サイトより)ことを体感したのは初めてでした。
1972年生まれの石田尚志。映像作家です。いわゆるドローイング・アニメーションの手法で作品を作り続けています。
私が作品を知ったのは今から5年前、国立新美術館の「アーティストファイル」でのことでした。その後、東京都現代美術館の常設でも特集展示がありました。以来、虜となり、清澄のタカ・イシイギャラリーの個展などを追ったことを覚えています。
ファン待望の大個展です。出品は主に映像30点ほど。キャリア初期、1990年代前半のパフォーマンス映像から、この個展のために制作された本年の最新作までが揃います。
今回は夜のアートクルーズ(4/18)に参加し、担当の学芸員の方の話を伺うことが出来ました。(撮影のお許しを特別にいただきました。)
冒頭は絵巻です。実際にも会場には長い長い紙の絵巻がのびています。そこに石田の手によってドローイングがなされています。そして奥には映像、線が増殖しては素早く動きます。その様子が次から次へと映し出されています。

「絵馬・絵巻」 2003年
こうした「絵馬・絵巻」(2003)や「海坂の絵巻」(2007)と呼ばれる作品は、石田の制作の原型と言うべきもの。つまりコマ撮りです。巻物状の紙の上に線を描いては、紙をほんの数センチだけ引き、カメラに収める。それを時に何千回も繰り返します。そうすることで初めて映像が出来上がるのです。

「20枚の原稿」 2013年
「20枚の原稿」(2013)も面白いのではないでしょうか。テーブルの上には様々なドローイングを描いた20枚の原稿用紙が並んでいますが、映像ではそれを全て重ね合わせています。つまり生成される絵は400パターンです。最後には全てのパターンが原稿用紙の枡目にすっぽりおさまりました。
音楽が聞こえてきました。曲はバッハ、誰もが認める名作の「フーガの技法」(2001)です。

「フーガの技法」 2001年
石田は音楽を可視化しようと試みます。モチーフとなるのは同曲のうちの3曲です。各主題の音楽を視覚イメージへと置き換えます。そもそも石田はドローイングを映像として見せることで、絵画という平面ではなく、一つの時間芸術を提示しているわけです。そして言うまでもなく音楽も時間芸術。線の軌跡という時間の流れを音楽という時間の中に落としこんでいます。

「フーガの技法」(動画素材)
これが大変なる労作、完成は6年越しです。動画素材は全1万枚。各主題を矩形に置き換え、そこへ石田自身がムニュムニュと呼ぶ線を描いていきます。制作は16ミリフィルムです。バッハの音楽の進行とともに広がるのは線の躍動。生命の誕生でしょうか。あるいはビックバンを連想しました。次第に矩形の浮遊する姿がモノリスに見えてきました。宇宙的なまでの壮大な展開。全19分。ちなみにクレジットによれば演奏はコープマンでした。寸分たりとも隙はない。傑作と呼んでも過言ではありません。
一方、近年の制作では実験的な取り組みも目立ちます。たとえば「影の部屋」(2012)です。バッハの曲にあわせて壁に絵を描き、もう一方を赤外線カメラで映しています。実写とCGをあたかもポジとネガの関係のように見せているわけです。

「音楽と空間のドローイング」 2012年
まるで指揮を振るかのように手で宙にドローイングを描く「音楽と空間のドローイング」(2012)も同様です。こちらも赤外線でした。さながらエアドローイングとも言える流れ。そこへ赤外線という新たな素材を持ち込んでいます。率直なところ試行錯誤的な感は否めませんが、これまでにはない表現を見せていました。

「渦まく光」(上部) 2015年
最新作で展覧会のタイトルでもある「渦まく光」(2015)では正方形のガラス板を用いています。ガラスの裏面から光が透き通り、増殖する線と光が激しく交錯します。何でもかつて府中市美術館で公開制作をした際、ちょうど開催中だったO-JUN展に触発されて出来た作品だそうです。

「燃える机」 2015年
同じく最新作の「燃える机」では部屋にミニチュアを取り込んでいます。実物と映像、さらに映像と映像が何層かの入れ子状になって組合わさります。ちなみに「燃える机」の展示ブースは、前回のホイッスラー展の「ピーコック・ルーム」をそのまま利用したものです。準備段階から石田自身も熱心に通い続け、展覧会前日になって空間を完成させました。
なおこうした部屋や窓も石田の重要なモチーフの一つです。その最たる作品と言えるのが「白い部屋」(2012)ではないでしょうか。実際にも目の前に白い部屋が現れました。

「白い部屋」 2012年
一部にドローイングの痕跡の残る部屋。中に入ることは叶いません。ただしかなり広い。そしてこれこそ石田のドローイングの言わば舞台。向かって左の部屋の映像と対をなす作品でもあります。

「白い部屋」 2012年
映像は4面ありますが一目瞭然です。ドローイングが広がるのは先に見た白い部屋。映写機がひっきりなしに動き、かのムニュムニュが部屋中に広がります。面白いのは単にアニメーションを見せるのではなく、時に線自体を接写して映していることです。実景が混じります。

「石田尚志 渦まく光」会場風景
ラストの暗室にも部屋シリーズの作品が並んでいました。一番手前に吊られているのは旧作の「部屋/形態」(1999)です。東大の駒場寮の空き部屋を1年間かけてドローイングしたという映像、BGMはまたもやバッハです。線が空間を浸食、あるいは部屋に取り憑くかのように広がります。いつしか線は暗い影となって全てを覆い尽くしました。
確かに線の動く様は即興的でもありますが、そこにはどことなく観念的、言い換えれば思考の中へ沈み込むような内省的な様相がある点も見逃せません。

「燃える椅子」 2013年
線に加えて自然の光が差し込みます。「燃える椅子」(2013)です。コンクリートうちっ放しの空間、半地下なのでしょう。上にはおそらく天窓。椅子が一つだけ置かれています。水と白いチョークがアニメーションが始まりました。それが光と呼応します。青みがかった光が空間全体に染み渡ります。

「REFLECTION」 2009年
雰囲気の異なる作品が一つありました。「REFLECTION」(2009)です。舞台はイングランドのポーツマス。とあるギャラリーの一室です。レンガの壁に大きな窓。見るも明るい光が差し込んでいます。そこでドローイングが展開します。ただしここでは特徴的なムニュムニュがあまり見られません。なにか建築物のような格子状のモチーフが次々と展開。色もカラフルです。端的に美しい。実に軽やかでもあります。
「ギャラリーに行ってみると、すでにその部屋は美しい光によって描かれている最中だった。僕はそれをなぞっていった。」と述べた石田。線はさも光を受けては大きくのびる植物の如く自在に広がっています。

「光の落ちる場所」 2015年
キャンバスを取り込んだ最新作「光の落ちる場所」(2015)を経由するとラストは再び絵巻のシリーズ。初めの展示室と同様のアニメーション作品に戻ります。石田は今も昔も変わらずに線へ息吹を与えているわけです。

「色の波の絵巻」 2010年
美術館の展示室外にも絵巻を投影。石田は自身の制作をキャンバスといったフレームから解き放つことを志向しているそうです。次にこのムニュムニュは一体どこへ向かうのでしょうか。線はまるで美術館という養分を吸い、あちこちに宿しては、それ自体で生きているかのようでした。
[石田尚志展 巡回予定]
沖縄県立博物館・美術館:2015年9月18日(金)~10月25日(日)
新作は3点。どちらかとすれば回顧展的な要素の強い展示と言えるのではないでしょうか。線の動きに酔いしれる瞬間。種明かしは二の次三の次でも何ら問題はありません。気がつけば私もただ時間を忘れて線を追いかけていました。

「海の壁ー生成する庭」 2007年 横浜美術館
実はアートクルーズの後、もう一度改めて出かけてきましたが、GW中にも関わらず静かな環境で楽しめました。館内には余裕があります。
「石田尚志 渦巻く光/青幻舎」
5月31日までの開催です。まずはおすすめします。
「石田尚志 渦まく光」 横浜美術館(@yokobi_tweet)
会期:3月28日(土)~5月31日(日)
休館:木曜日。
時間:10:00~18:00
*入館は17時半まで。
料金:一般1500(1400)円、大学・高校生900(800)円、中学生600(500)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。要事前予約。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
*当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
注)写真は美術館の許可を得て特別に撮影したものです。
「石田尚志 渦まく光」
3/28-5/31

横浜美術館で開催中の「石田尚志 渦まく光」を見てきました。
迸る線と、瞬き、渦を巻いては消え行く光の軌跡。少なくとも今回ほどのスケールで石田の「絵が動く」(公式サイトより)ことを体感したのは初めてでした。
1972年生まれの石田尚志。映像作家です。いわゆるドローイング・アニメーションの手法で作品を作り続けています。
私が作品を知ったのは今から5年前、国立新美術館の「アーティストファイル」でのことでした。その後、東京都現代美術館の常設でも特集展示がありました。以来、虜となり、清澄のタカ・イシイギャラリーの個展などを追ったことを覚えています。
ファン待望の大個展です。出品は主に映像30点ほど。キャリア初期、1990年代前半のパフォーマンス映像から、この個展のために制作された本年の最新作までが揃います。
今回は夜のアートクルーズ(4/18)に参加し、担当の学芸員の方の話を伺うことが出来ました。(撮影のお許しを特別にいただきました。)
冒頭は絵巻です。実際にも会場には長い長い紙の絵巻がのびています。そこに石田の手によってドローイングがなされています。そして奥には映像、線が増殖しては素早く動きます。その様子が次から次へと映し出されています。

「絵馬・絵巻」 2003年
こうした「絵馬・絵巻」(2003)や「海坂の絵巻」(2007)と呼ばれる作品は、石田の制作の原型と言うべきもの。つまりコマ撮りです。巻物状の紙の上に線を描いては、紙をほんの数センチだけ引き、カメラに収める。それを時に何千回も繰り返します。そうすることで初めて映像が出来上がるのです。

「20枚の原稿」 2013年
「20枚の原稿」(2013)も面白いのではないでしょうか。テーブルの上には様々なドローイングを描いた20枚の原稿用紙が並んでいますが、映像ではそれを全て重ね合わせています。つまり生成される絵は400パターンです。最後には全てのパターンが原稿用紙の枡目にすっぽりおさまりました。
音楽が聞こえてきました。曲はバッハ、誰もが認める名作の「フーガの技法」(2001)です。

「フーガの技法」 2001年
石田は音楽を可視化しようと試みます。モチーフとなるのは同曲のうちの3曲です。各主題の音楽を視覚イメージへと置き換えます。そもそも石田はドローイングを映像として見せることで、絵画という平面ではなく、一つの時間芸術を提示しているわけです。そして言うまでもなく音楽も時間芸術。線の軌跡という時間の流れを音楽という時間の中に落としこんでいます。

「フーガの技法」(動画素材)
これが大変なる労作、完成は6年越しです。動画素材は全1万枚。各主題を矩形に置き換え、そこへ石田自身がムニュムニュと呼ぶ線を描いていきます。制作は16ミリフィルムです。バッハの音楽の進行とともに広がるのは線の躍動。生命の誕生でしょうか。あるいはビックバンを連想しました。次第に矩形の浮遊する姿がモノリスに見えてきました。宇宙的なまでの壮大な展開。全19分。ちなみにクレジットによれば演奏はコープマンでした。寸分たりとも隙はない。傑作と呼んでも過言ではありません。
一方、近年の制作では実験的な取り組みも目立ちます。たとえば「影の部屋」(2012)です。バッハの曲にあわせて壁に絵を描き、もう一方を赤外線カメラで映しています。実写とCGをあたかもポジとネガの関係のように見せているわけです。

「音楽と空間のドローイング」 2012年
まるで指揮を振るかのように手で宙にドローイングを描く「音楽と空間のドローイング」(2012)も同様です。こちらも赤外線でした。さながらエアドローイングとも言える流れ。そこへ赤外線という新たな素材を持ち込んでいます。率直なところ試行錯誤的な感は否めませんが、これまでにはない表現を見せていました。

「渦まく光」(上部) 2015年
最新作で展覧会のタイトルでもある「渦まく光」(2015)では正方形のガラス板を用いています。ガラスの裏面から光が透き通り、増殖する線と光が激しく交錯します。何でもかつて府中市美術館で公開制作をした際、ちょうど開催中だったO-JUN展に触発されて出来た作品だそうです。

「燃える机」 2015年
同じく最新作の「燃える机」では部屋にミニチュアを取り込んでいます。実物と映像、さらに映像と映像が何層かの入れ子状になって組合わさります。ちなみに「燃える机」の展示ブースは、前回のホイッスラー展の「ピーコック・ルーム」をそのまま利用したものです。準備段階から石田自身も熱心に通い続け、展覧会前日になって空間を完成させました。
なおこうした部屋や窓も石田の重要なモチーフの一つです。その最たる作品と言えるのが「白い部屋」(2012)ではないでしょうか。実際にも目の前に白い部屋が現れました。

「白い部屋」 2012年
一部にドローイングの痕跡の残る部屋。中に入ることは叶いません。ただしかなり広い。そしてこれこそ石田のドローイングの言わば舞台。向かって左の部屋の映像と対をなす作品でもあります。

「白い部屋」 2012年
映像は4面ありますが一目瞭然です。ドローイングが広がるのは先に見た白い部屋。映写機がひっきりなしに動き、かのムニュムニュが部屋中に広がります。面白いのは単にアニメーションを見せるのではなく、時に線自体を接写して映していることです。実景が混じります。

「石田尚志 渦まく光」会場風景
ラストの暗室にも部屋シリーズの作品が並んでいました。一番手前に吊られているのは旧作の「部屋/形態」(1999)です。東大の駒場寮の空き部屋を1年間かけてドローイングしたという映像、BGMはまたもやバッハです。線が空間を浸食、あるいは部屋に取り憑くかのように広がります。いつしか線は暗い影となって全てを覆い尽くしました。
確かに線の動く様は即興的でもありますが、そこにはどことなく観念的、言い換えれば思考の中へ沈み込むような内省的な様相がある点も見逃せません。

「燃える椅子」 2013年
線に加えて自然の光が差し込みます。「燃える椅子」(2013)です。コンクリートうちっ放しの空間、半地下なのでしょう。上にはおそらく天窓。椅子が一つだけ置かれています。水と白いチョークがアニメーションが始まりました。それが光と呼応します。青みがかった光が空間全体に染み渡ります。

「REFLECTION」 2009年
雰囲気の異なる作品が一つありました。「REFLECTION」(2009)です。舞台はイングランドのポーツマス。とあるギャラリーの一室です。レンガの壁に大きな窓。見るも明るい光が差し込んでいます。そこでドローイングが展開します。ただしここでは特徴的なムニュムニュがあまり見られません。なにか建築物のような格子状のモチーフが次々と展開。色もカラフルです。端的に美しい。実に軽やかでもあります。
「ギャラリーに行ってみると、すでにその部屋は美しい光によって描かれている最中だった。僕はそれをなぞっていった。」と述べた石田。線はさも光を受けては大きくのびる植物の如く自在に広がっています。

「光の落ちる場所」 2015年
キャンバスを取り込んだ最新作「光の落ちる場所」(2015)を経由するとラストは再び絵巻のシリーズ。初めの展示室と同様のアニメーション作品に戻ります。石田は今も昔も変わらずに線へ息吹を与えているわけです。

「色の波の絵巻」 2010年
美術館の展示室外にも絵巻を投影。石田は自身の制作をキャンバスといったフレームから解き放つことを志向しているそうです。次にこのムニュムニュは一体どこへ向かうのでしょうか。線はまるで美術館という養分を吸い、あちこちに宿しては、それ自体で生きているかのようでした。
[石田尚志展 巡回予定]
沖縄県立博物館・美術館:2015年9月18日(金)~10月25日(日)
新作は3点。どちらかとすれば回顧展的な要素の強い展示と言えるのではないでしょうか。線の動きに酔いしれる瞬間。種明かしは二の次三の次でも何ら問題はありません。気がつけば私もただ時間を忘れて線を追いかけていました。

「海の壁ー生成する庭」 2007年 横浜美術館
実はアートクルーズの後、もう一度改めて出かけてきましたが、GW中にも関わらず静かな環境で楽しめました。館内には余裕があります。

5月31日までの開催です。まずはおすすめします。
「石田尚志 渦まく光」 横浜美術館(@yokobi_tweet)
会期:3月28日(土)~5月31日(日)
休館:木曜日。
時間:10:00~18:00
*入館は17時半まで。
料金:一般1500(1400)円、大学・高校生900(800)円、中学生600(500)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。要事前予約。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
*当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
注)写真は美術館の許可を得て特別に撮影したものです。
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「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク展」 グッチ新宿
グッチ新宿イベントスペース
「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク展」
4/23-5/17

グッチ新宿イベントスペースで開催中の「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク」を見てきました。
1985年生まれの現代アーティスト、スプツニ子!。国内の美術館では東京都現代美術館での「うさぎスマッシュ展」(2013)にも参加。ど迫力の映像「ルナ☆ガール」を覚えておられる方も多いかもしれません。
常に何らかのテクノロジーを参照するスプニツ子!。今回の素材は光るシルクです。開発したのは農業生物資源研究所。農業の基礎科学分野を研究する国内最大の組織です。スプニツ子!は同研究所が開発した光るシルクを用い、バイオによって変化する新しいファッションの形を提案しています。
それにしてもスプニツ子!の世界観、言葉で説明するのは難しいもの。百聞は一見にしかずです。グッチ新宿のイベントスペースに入ってみました。

すると青い発光体が空間を埋め尽くすかのように連なっています。写真では電飾に見えるかもしれませんが、これが光る繭玉。何と全部で3000個です。ブラックライトに照らされては煌煌と灯ります。眩い。思わず仰け反ってしまいます。

奥のステージでは光り輝くドレスがディスプレイされていました。ここで物語は始動。主人公はエイミです。もちろん彼女のドレスも光のシルクによって出来たもの。さらにエイミが作ろうとする「バラの香りのシルク」や「恋のシルク」といったストーリーが展開していきます。

ちなみにドレスはグッチのアイコンであるフローラをイメージしているのだそうです。まるで宇宙服でも連想させるかのように独創的ですが、実は展示にはもう一つ大きな仕掛けがあります。と言うのも入口で渡されるフィルムメガネです。それをかけるとご覧の通り、ドレスやシルクの玉の色がカラフルに変化して見えます。

また実際にドレスを着て演じたイメージフィルム、「エイミの光るシルク」も見どころの一つ。エイミが颯爽と軽快に踊り出します。さらには光るシルクの生成過程、遺伝子組み換えのプロセス、さらには光る繭に生糸を紹介する展示もありました。

蛍光シルクを京都の西陣に織り込んだ生地も面白いのではないでしょうか。最先端の科学と伝統的な技術、そこにスプニツ子!のアイデアが加わって初めて完成したインスタレーションだと言えそうです。

どこかスタイリッシュな新宿グッチならではの展覧会です。SF世界に迷い込んだかのように楽しめました。

5月17日まで開催されています。
「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク展」 グッチ新宿イベントスペース
会期:4月23日(木)~5月17日(日)
休館:会期中無休。
時間:11:00~20:00。(最終入場は19時半まで)
料金:無料。
住所:新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル3階
交通:東京メトロ丸ノ内線新宿駅A7出口すぐ。JR線新宿駅東口より徒歩2分。
「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク展」
4/23-5/17

グッチ新宿イベントスペースで開催中の「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク」を見てきました。
1985年生まれの現代アーティスト、スプツニ子!。国内の美術館では東京都現代美術館での「うさぎスマッシュ展」(2013)にも参加。ど迫力の映像「ルナ☆ガール」を覚えておられる方も多いかもしれません。
常に何らかのテクノロジーを参照するスプニツ子!。今回の素材は光るシルクです。開発したのは農業生物資源研究所。農業の基礎科学分野を研究する国内最大の組織です。スプニツ子!は同研究所が開発した光るシルクを用い、バイオによって変化する新しいファッションの形を提案しています。
それにしてもスプニツ子!の世界観、言葉で説明するのは難しいもの。百聞は一見にしかずです。グッチ新宿のイベントスペースに入ってみました。

すると青い発光体が空間を埋め尽くすかのように連なっています。写真では電飾に見えるかもしれませんが、これが光る繭玉。何と全部で3000個です。ブラックライトに照らされては煌煌と灯ります。眩い。思わず仰け反ってしまいます。

奥のステージでは光り輝くドレスがディスプレイされていました。ここで物語は始動。主人公はエイミです。もちろん彼女のドレスも光のシルクによって出来たもの。さらにエイミが作ろうとする「バラの香りのシルク」や「恋のシルク」といったストーリーが展開していきます。

ちなみにドレスはグッチのアイコンであるフローラをイメージしているのだそうです。まるで宇宙服でも連想させるかのように独創的ですが、実は展示にはもう一つ大きな仕掛けがあります。と言うのも入口で渡されるフィルムメガネです。それをかけるとご覧の通り、ドレスやシルクの玉の色がカラフルに変化して見えます。

また実際にドレスを着て演じたイメージフィルム、「エイミの光るシルク」も見どころの一つ。エイミが颯爽と軽快に踊り出します。さらには光るシルクの生成過程、遺伝子組み換えのプロセス、さらには光る繭に生糸を紹介する展示もありました。

蛍光シルクを京都の西陣に織り込んだ生地も面白いのではないでしょうか。最先端の科学と伝統的な技術、そこにスプニツ子!のアイデアが加わって初めて完成したインスタレーションだと言えそうです。

どこかスタイリッシュな新宿グッチならではの展覧会です。SF世界に迷い込んだかのように楽しめました。

5月17日まで開催されています。
「スプツニ子! Trancefloraーエイミの光るシルク展」 グッチ新宿イベントスペース
会期:4月23日(木)~5月17日(日)
休館:会期中無休。
時間:11:00~20:00。(最終入場は19時半まで)
料金:無料。
住所:新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル3階
交通:東京メトロ丸ノ内線新宿駅A7出口すぐ。JR線新宿駅東口より徒歩2分。
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「日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫
神奈川県立金沢文庫
「特別展 平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」
4/24-6/14

神奈川県立金沢文庫で開催中の「日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」を見てきました。
神奈川は伊勢原の地にある日向(ひなた)薬師宝城坊。開山は行基と伝えられていますが、実際には10世紀頃だそうです。以来、薬師如来の霊場として信仰を集め、鎌倉時代には頼朝や妻政子の帰依を受けたことでも知られています。
薬師本堂は平成28年の完成を目指して解体修理中。それゆえでしょうか。横浜金沢の地にお出ましです。普段、秘仏として見る機会の少ない本尊薬師三尊像をはじめ、十二神将立像ほか飛天像など、ゆかりの仏像や寺宝が展示されています。
さて三尊像、制作は平安時代です。中央には薬師如来坐像が鎮座し、左右を日光・月光菩薩立像が構えます。特徴的なのは表面のノミ目を残した鉈彫と呼ばれる技法です。

「薬師如来坐像」・「日光・月光菩薩立像」 平安時代 日向薬師宝城坊 *重要文化財
特に着衣の部分には横方向へ無数のノミ目が走っています。一部は腕の部分にまで及んでいました。ノミ目は思いの外に端正です。美しい波紋を描いています。それにしても堂々たる出立ち。少し笑みを浮かべているのでしょうか。どこか愛嬌があるようにも映ります。親しみやすい如来像でした。
日光・月光菩薩像は実に素朴な造形です。やや薄い体躯、若干内側に湾曲しているのかもしれません。如来坐像へ寄り沿うかのように立っています。それぞれに左右の手を挙げては見下ろしています。可愛らしい菩薩様でもあります。

「十二神将立像」(部分) 平安時代 日向薬師宝城坊 *神奈川県指定重要文化財
ずらりと立ち並ぶ十二神将立像も見応えがありました。やや小ぶりです。身体は引き締まっています。あまり大仰なポーズはありません。いずれも三尊像に付随していて、1153年頃に制作されたと考えられています。

「十二神将立像」(部分) 平安時代 日向薬師宝城坊 *神奈川県指定重要文化財
神将像のうち、やや変わった立像に目が留まりました。例えば5番目です。何とも困ったような顔をしています。そして8番目の像に注目です。両腕には何と魚の口が差し込まれているのです。
「頬当」も興味深いのではないでしょうか。口をあけ、顎を突き出した頬当。武具というよりも仮面と言った方が良いのかもしれませんが、一説では伊勢原で死んだ太田道灌の所用だとされているとか。個性的な形をしています。
「獅子頭」も迫力がありました。舞楽で用いたものです。巨大な2体の獅子、ぎょろりと突き出た目を光らせています。
版木が多く出ているのもポイントです。例えば「妙沢不動明王像」は室町時代のもの。そもそも日向薬師には版木や経典が多く、信仰の普及活動に熱心だったそうです。
いつもながらのこじんまりとしたスペースですが、薬師三尊坐像を至近距離で拝めること自体が有り難いもの。ちなみに現地、伊勢原の日向薬師は、周辺を山に囲まれた緑豊かなお寺だそうです。一度、出向く機会があればと思いました。

なお金沢文庫に隣接するのは、金沢北条氏の菩提寺である称名寺です。境内の庭園では黄菖蒲がちょうど見頃を迎えていました。

6月14日まで開催されています。
「特別展 平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫(@Kanagawa_bunko)
会期:4月24日(金)~6月14日(日)
休館:月曜日。但し5/4は開館。5月7日(木)。
時間:10:00~16:30 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般600(500)円、20歳未満・学生400(300)円、65歳以上・高校生100円。
*( )は20名以上の団体料金。
住所:横浜市金沢区金沢町142
交通:京急線金沢文庫駅東口より徒歩12分。シーサイドライン海の公園南口駅より徒歩12分。
「特別展 平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」
4/24-6/14

神奈川県立金沢文庫で開催中の「日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」を見てきました。
神奈川は伊勢原の地にある日向(ひなた)薬師宝城坊。開山は行基と伝えられていますが、実際には10世紀頃だそうです。以来、薬師如来の霊場として信仰を集め、鎌倉時代には頼朝や妻政子の帰依を受けたことでも知られています。
薬師本堂は平成28年の完成を目指して解体修理中。それゆえでしょうか。横浜金沢の地にお出ましです。普段、秘仏として見る機会の少ない本尊薬師三尊像をはじめ、十二神将立像ほか飛天像など、ゆかりの仏像や寺宝が展示されています。
さて三尊像、制作は平安時代です。中央には薬師如来坐像が鎮座し、左右を日光・月光菩薩立像が構えます。特徴的なのは表面のノミ目を残した鉈彫と呼ばれる技法です。

「薬師如来坐像」・「日光・月光菩薩立像」 平安時代 日向薬師宝城坊 *重要文化財
特に着衣の部分には横方向へ無数のノミ目が走っています。一部は腕の部分にまで及んでいました。ノミ目は思いの外に端正です。美しい波紋を描いています。それにしても堂々たる出立ち。少し笑みを浮かべているのでしょうか。どこか愛嬌があるようにも映ります。親しみやすい如来像でした。
日光・月光菩薩像は実に素朴な造形です。やや薄い体躯、若干内側に湾曲しているのかもしれません。如来坐像へ寄り沿うかのように立っています。それぞれに左右の手を挙げては見下ろしています。可愛らしい菩薩様でもあります。

「十二神将立像」(部分) 平安時代 日向薬師宝城坊 *神奈川県指定重要文化財
ずらりと立ち並ぶ十二神将立像も見応えがありました。やや小ぶりです。身体は引き締まっています。あまり大仰なポーズはありません。いずれも三尊像に付随していて、1153年頃に制作されたと考えられています。

「十二神将立像」(部分) 平安時代 日向薬師宝城坊 *神奈川県指定重要文化財
神将像のうち、やや変わった立像に目が留まりました。例えば5番目です。何とも困ったような顔をしています。そして8番目の像に注目です。両腕には何と魚の口が差し込まれているのです。
「頬当」も興味深いのではないでしょうか。口をあけ、顎を突き出した頬当。武具というよりも仮面と言った方が良いのかもしれませんが、一説では伊勢原で死んだ太田道灌の所用だとされているとか。個性的な形をしています。
「獅子頭」も迫力がありました。舞楽で用いたものです。巨大な2体の獅子、ぎょろりと突き出た目を光らせています。
版木が多く出ているのもポイントです。例えば「妙沢不動明王像」は室町時代のもの。そもそも日向薬師には版木や経典が多く、信仰の普及活動に熱心だったそうです。
いつもながらのこじんまりとしたスペースですが、薬師三尊坐像を至近距離で拝めること自体が有り難いもの。ちなみに現地、伊勢原の日向薬師は、周辺を山に囲まれた緑豊かなお寺だそうです。一度、出向く機会があればと思いました。

なお金沢文庫に隣接するのは、金沢北条氏の菩提寺である称名寺です。境内の庭園では黄菖蒲がちょうど見頃を迎えていました。

6月14日まで開催されています。
「特別展 平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫(@Kanagawa_bunko)
会期:4月24日(金)~6月14日(日)
休館:月曜日。但し5/4は開館。5月7日(木)。
時間:10:00~16:30 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般600(500)円、20歳未満・学生400(300)円、65歳以上・高校生100円。
*( )は20名以上の団体料金。
住所:横浜市金沢区金沢町142
交通:京急線金沢文庫駅東口より徒歩12分。シーサイドライン海の公園南口駅より徒歩12分。
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「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語ースュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年」
4/18-6/28

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語」を見てきました。
スュザンヌ・ヴァラドン(1865~1938)。今、国内でこの画家の名が良く知られているとは必ずしも言えません。
ユトリロの母です。フランス中部に生まれ、幼くしてパリに移ります。初めはサーカスの曲芸師として生計をたてようとしますが、ブランコから落ちて怪我をしたために断念。後に画家のモデルとして生きるようになります。

スュザンヌ・ヴァラドン「花瓶の中のリラの花束」 1930年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
18歳の時にユトリロを生みました。ただし父は不明です。(後に認知されます。)そしてヴァラドンが絵を描きはじめたのもこの頃。モデルをしつつ、画家の作品を参照しては、見よう見まねで絵を学びました。
なおヴァラドンは画家らとしばし恋愛関係になり、特にロートレックとは恋仲であったとか。また作曲家のサティとも恋愛関係にあったそうです。
展示もヴァラドンから始まります。例えば「裸のユトリロの身体を拭く祖母」です。文字通り幼きユトリロの姿。ヴァラドンは当初、身近なユトリロや飼っていた犬をモチーフにして絵を描きました。
一方ユトリロも早い段階で絵を描きます。「大聖堂、ランス」はどうでしょうか。まだ10代の頃の作品、いわゆるユトリロを特徴付ける白はなく、何やら塗りこめられた深く暗い色彩が際立っています。堂々たる大聖堂です。ユトリロと言われなければ作者は分からないかもしれません。
ちなみに若きユトリロの面倒を見ていたのは、母ヴァラドンではなく、祖母のマグドレーヌです。母の愛をあまり受けなかったとも言われるユトリロ。寂しさを酒に紛らわそうとしたのでしょうか。未成年の時からアルコールに頼る。さらには祖母も酒に目がありませんでした。結果的に依存症に陥ります。そもそも絵を描き出したのも、酒から気を紛らわせるためだったと言われているそうです。

スュザンヌ・ヴァラドン「窓辺のジェルメーヌ・ユッテル」 1926年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
ヴァラドンの遍歴も一筋縄とはいきません、31歳で資産家と結婚するも、44歳の時に今度はユトリロの友人のユッテルと恋に落ちます。そして48歳で結婚。ユトリロが母に友人をとられたと思ったのも無理はないかもしれません。アルコール依存症はさらに悪化し、入退院を繰り返します。そしてユッテルはヴァラドンとともにユトリロを監視。フランス東部の洋館を購入してはユトリロを住まわせ、彼に自身の絵葉書などをもう一度絵にすることをすすめます。
少し話が進み過ぎました。ユトリロのいわゆる白の時代の作品は主に30代の頃に描かれたものです。そしてその頃のヴァラドンは既に50歳を過ぎていました。
結論からいうと、ヴァラドンとユトリロの同時代の絵を見比べることが出来るのが、この展覧会の大きな見どころでもあります。
1918年頃にユトリロが描いたのは「コルト通り、モンマルトル」。白い寺院の塔が小径の先に見えています。寺院や建物の壁には得意の白が用いられています。とは言えニュアンスは一定ではありません。うっすらオレンジ色がかっていたり、また青みがかっていたりします。

スュザンヌ・ヴァラドン「コルト通り12番地、モンマルトル」 1919年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
そしてその1年後、1919年にヴァラドンが同じ通りを描いたのが「コルト通り12番地、モンマルトル」です。この12番地には彼女がアトリエを構えていたとか。鬱蒼と生い茂る緑の強い色彩が目に飛び込んできます。パレットから絵具をとっては、そのまま混ぜずに筆をおいたようなタッチです。ユトリロ画とは似ても似つかない。絵画としての傾向はかなり異なっています。

スュザンヌ・ヴァラドン「裸婦の立像と猫」 1919年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
風景画を数多く描いたユトリロ。一方で人物画に力作が多いのがヴァラドンです。中でも見入るのは裸婦のモチーフです。「裸婦の立像と猫」も興味深いもの。後ろ姿でやや前屈みに立つ女。白いシーツでしょうか。右手で引っ張っています。そして足元は猫。ともかく目につくのは黒い輪郭線です。これが力強い。そもそもヴァラドンは正規の美術学校で学んでいませんが、デッサンに関してはドガに賞賛されたこともあったそうです。
ユトリロは1935年、55歳の時にベルギーの銀行家の未亡人、リュシーと結婚します。彼女は既に人気の出ていたユトリロの作品を管理、夫の世話をするようになりました。
ヴァラドンによる「リュシー・ユトリロ・ヴァロールの肖像」はどうでしょうか。赤く薄いワイン色を背景にやや硬い表情で見やる女性。口元は引き締まり、眼は大きく見開いています。大柄だったのでしょうか。リュシーはユトリロの5歳年上だったそうです。
この絵を亡くなった1年後にヴァラドンは自宅で亡くなります。年は72歳。ちなみにユトリロは衝撃を受け、葬儀に参列しなかったそうです。にわかに信じ難いものがあります。
ラストには母を亡くした以降のユトリロの晩年の作品が並んでいました。いわゆる色彩の時代です。モンマルトルを離れても、またモンマルトルを描いたユトリロ。心中如何なるものだったのでしょうか。

スュザンヌ・ヴァラドン「野うさぎとキジとりんごのある静物」 1930年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
ヴァラドンを線の画家とすれば、ユトリロは絵具の画家とも言われる対照的な二人。出品数は親子で仲良く半々、40点ずつです。作品自体も個人蔵のほか、パリのポンピドゥーなどからも多数やってきています。また日本初公開の作品も少なくありません。
フランスでは評価されたというヴァラドン。作品は時にゴーギャンなどを思わせるほどに力強くもあります。ユトリロ好きの方にはもちろん、コアな美術ファンにとっても、ヴァラドンをまとめて見られる良い機会と言えるのではないでしょうか。
館内には余裕がありました。6月28日まで開催されています。
「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語ースュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
会期:4月18日(土)~6月28日(日)
休館:月曜日。但し5/4は開館。
時間:10:00~18:00 毎週金曜日は20時まで。 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大学・高校生800(650)円、中学生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*65歳以上1000円。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語ースュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年」
4/18-6/28

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語」を見てきました。
スュザンヌ・ヴァラドン(1865~1938)。今、国内でこの画家の名が良く知られているとは必ずしも言えません。
ユトリロの母です。フランス中部に生まれ、幼くしてパリに移ります。初めはサーカスの曲芸師として生計をたてようとしますが、ブランコから落ちて怪我をしたために断念。後に画家のモデルとして生きるようになります。

スュザンヌ・ヴァラドン「花瓶の中のリラの花束」 1930年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
18歳の時にユトリロを生みました。ただし父は不明です。(後に認知されます。)そしてヴァラドンが絵を描きはじめたのもこの頃。モデルをしつつ、画家の作品を参照しては、見よう見まねで絵を学びました。
なおヴァラドンは画家らとしばし恋愛関係になり、特にロートレックとは恋仲であったとか。また作曲家のサティとも恋愛関係にあったそうです。
展示もヴァラドンから始まります。例えば「裸のユトリロの身体を拭く祖母」です。文字通り幼きユトリロの姿。ヴァラドンは当初、身近なユトリロや飼っていた犬をモチーフにして絵を描きました。
一方ユトリロも早い段階で絵を描きます。「大聖堂、ランス」はどうでしょうか。まだ10代の頃の作品、いわゆるユトリロを特徴付ける白はなく、何やら塗りこめられた深く暗い色彩が際立っています。堂々たる大聖堂です。ユトリロと言われなければ作者は分からないかもしれません。
ちなみに若きユトリロの面倒を見ていたのは、母ヴァラドンではなく、祖母のマグドレーヌです。母の愛をあまり受けなかったとも言われるユトリロ。寂しさを酒に紛らわそうとしたのでしょうか。未成年の時からアルコールに頼る。さらには祖母も酒に目がありませんでした。結果的に依存症に陥ります。そもそも絵を描き出したのも、酒から気を紛らわせるためだったと言われているそうです。

スュザンヌ・ヴァラドン「窓辺のジェルメーヌ・ユッテル」 1926年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
ヴァラドンの遍歴も一筋縄とはいきません、31歳で資産家と結婚するも、44歳の時に今度はユトリロの友人のユッテルと恋に落ちます。そして48歳で結婚。ユトリロが母に友人をとられたと思ったのも無理はないかもしれません。アルコール依存症はさらに悪化し、入退院を繰り返します。そしてユッテルはヴァラドンとともにユトリロを監視。フランス東部の洋館を購入してはユトリロを住まわせ、彼に自身の絵葉書などをもう一度絵にすることをすすめます。
少し話が進み過ぎました。ユトリロのいわゆる白の時代の作品は主に30代の頃に描かれたものです。そしてその頃のヴァラドンは既に50歳を過ぎていました。
結論からいうと、ヴァラドンとユトリロの同時代の絵を見比べることが出来るのが、この展覧会の大きな見どころでもあります。
1918年頃にユトリロが描いたのは「コルト通り、モンマルトル」。白い寺院の塔が小径の先に見えています。寺院や建物の壁には得意の白が用いられています。とは言えニュアンスは一定ではありません。うっすらオレンジ色がかっていたり、また青みがかっていたりします。

スュザンヌ・ヴァラドン「コルト通り12番地、モンマルトル」 1919年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
そしてその1年後、1919年にヴァラドンが同じ通りを描いたのが「コルト通り12番地、モンマルトル」です。この12番地には彼女がアトリエを構えていたとか。鬱蒼と生い茂る緑の強い色彩が目に飛び込んできます。パレットから絵具をとっては、そのまま混ぜずに筆をおいたようなタッチです。ユトリロ画とは似ても似つかない。絵画としての傾向はかなり異なっています。

スュザンヌ・ヴァラドン「裸婦の立像と猫」 1919年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
風景画を数多く描いたユトリロ。一方で人物画に力作が多いのがヴァラドンです。中でも見入るのは裸婦のモチーフです。「裸婦の立像と猫」も興味深いもの。後ろ姿でやや前屈みに立つ女。白いシーツでしょうか。右手で引っ張っています。そして足元は猫。ともかく目につくのは黒い輪郭線です。これが力強い。そもそもヴァラドンは正規の美術学校で学んでいませんが、デッサンに関してはドガに賞賛されたこともあったそうです。
ユトリロは1935年、55歳の時にベルギーの銀行家の未亡人、リュシーと結婚します。彼女は既に人気の出ていたユトリロの作品を管理、夫の世話をするようになりました。
ヴァラドンによる「リュシー・ユトリロ・ヴァロールの肖像」はどうでしょうか。赤く薄いワイン色を背景にやや硬い表情で見やる女性。口元は引き締まり、眼は大きく見開いています。大柄だったのでしょうか。リュシーはユトリロの5歳年上だったそうです。
この絵を亡くなった1年後にヴァラドンは自宅で亡くなります。年は72歳。ちなみにユトリロは衝撃を受け、葬儀に参列しなかったそうです。にわかに信じ難いものがあります。
ラストには母を亡くした以降のユトリロの晩年の作品が並んでいました。いわゆる色彩の時代です。モンマルトルを離れても、またモンマルトルを描いたユトリロ。心中如何なるものだったのでしょうか。

スュザンヌ・ヴァラドン「野うさぎとキジとりんごのある静物」 1930年 油彩、キャンヴァス 個人蔵
ヴァラドンを線の画家とすれば、ユトリロは絵具の画家とも言われる対照的な二人。出品数は親子で仲良く半々、40点ずつです。作品自体も個人蔵のほか、パリのポンピドゥーなどからも多数やってきています。また日本初公開の作品も少なくありません。
フランスでは評価されたというヴァラドン。作品は時にゴーギャンなどを思わせるほどに力強くもあります。ユトリロ好きの方にはもちろん、コアな美術ファンにとっても、ヴァラドンをまとめて見られる良い機会と言えるのではないでしょうか。
館内には余裕がありました。6月28日まで開催されています。
「ユトリロとヴァラドン 母と子の物語ースュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
会期:4月18日(土)~6月28日(日)
休館:月曜日。但し5/4は開館。
時間:10:00~18:00 毎週金曜日は20時まで。 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大学・高校生800(650)円、中学生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*65歳以上1000円。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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5月の展覧会・ギャラリーetc
GWはいかがお過ごしでしょうか。今月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。
展覧会
・「リニューアルオープン記念展:private, privateーわたしをひらくコレクション」 埼玉県立近代美術館(~5/24)
・「鳥獣戯画 京都高山寺の至宝」 東京国立博物館(~6/7)
・「京都市美術館名品展 美人画の100年」 平塚市美術館(~6/7)
・「平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫(~6/14)
・「鎌倉からはじまった。1951-2016 PART1:1985-2016」 神奈川県立近代美術館鎌倉(~6/21)
・「ルオーとフォーヴの陶磁器」 パナソニック汐留ミュージアム(~6/21)
・「松園と華麗なる女性画家たち」 山種美術館(~6/21)
・「幕末明治の浮世絵展 探訪・歴史絵から開化絵まで」 うらわ美術館(~6/21)
・「日本の妖美 橘小夢展~幻の作品を初公開」 弥生美術館(~6/28)
・「他人の時間/山口小夜子 未来を着る人」 東京都現代美術館(~6/28)
・「高橋コレクション展」 東京オペラシティ アートギャラリー(~6/28)
・「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画」 千葉市美術館(5/19~6/28)
・「フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展」 東京都庭園美術館(~6/30)
・「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」 森美術館(~7/5)
・「速水御舟とその周辺ー大正期日本画の俊英たち」 世田谷美術館(5/2~7/5)
・「着想のマエストロ 乾山見参!」 サントリー美術館(5/27~7/20)
・「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 原美術館(5/23~8/30)
・「あの歌麿が帰ってきた!ー『深川の雪』再公開」 岡田美術館(~8/31)
・「セザンヌー近代絵画の父になるまで」 ポーラ美術館(~9/27)
ギャラリー
・「TWS-Emerging 2015 第1期 長田堅二郎・大山紗智子・村上賀子」 トーキョーワンダーサイト渋谷(~5/10)
・「和田真由子 ハムレット」 児玉画廊東京(~5/23)
・「村田朋泰 edge」 ギャラリーモモ両国(~5/30)
・「藤本壮介展 未来の未来」 TOTOギャラリー・間(~6/13)
・「トーマス・デマンド展」 タカ・イシイギャラリー東京(5/22~6/27)
・「線を聴く」 メゾンエルメス(~7/5)
4月にスタートする展覧会が多かったせいか、5月始まりのそれはさほど多くありません。
うち注目したいのは世田谷美術館です。「速水御舟とその周辺」展がはじまります。

「速水御舟とその周辺ー大正期日本画の俊英たち」@世田谷美術館(5/2~7/5)
タイトルに「その周辺」とあるように、御舟と師の松本楓湖、また同輩の小茂田青樹、さらには同門の画家らの作品までを俯瞰する展覧会。振り返ってみれば今年は速水御舟、没後80年でもあります。
前後期(前期:~5/31、後期:6/2~)で大規模な展示替えがあるそうです。まずはGW中にでも早めに出かけたいと思います。
千葉市美術館で「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画」展がはじまります。

「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画ー『マネジメントの父』が愛した日本の美」@千葉市美術館(5/19~6/28)
いわゆる現代経営学の発明者としても知られるピーター・ドラッカー。日本の美術品を収集するコレクターでもあるそうです。
うち特に水墨画のコレクションを紹介する展覧会です。室町水墨画のほか、海北友松や池大雅などの文人画、さらには若冲に琳派の作品も含まれます。
東京国立博物館の「鳥獣戯画展」が大変な混雑となっています。

「鳥獣戯画ー京都 高山寺の至宝」@東京国立博物館(4/28~6/7)
会期一週目から平日でもゆうに1時間待ち。開門前から行列が続き、通常狙い目とも言われる金曜の夜間も80分超の待ち時間が発生しています。
ちょうど去年もこの時期、同じく東博のキトラ展も大行列となりましたが、それを上回る状況ではないでしょうか。混雑状況については公式の専用アカウント(@chojugiga_ueno)がこまめに発信しています。率直なところ私も既に機を逸した感がありますが、ともかくこれから観覧される方は時間、ないしは体力に余裕がある時に出かけることをおすすめします。
GW中は近場の展覧会を見て歩くつもりです。それでは今月も宜しくお願いします。
展覧会
・「リニューアルオープン記念展:private, privateーわたしをひらくコレクション」 埼玉県立近代美術館(~5/24)
・「鳥獣戯画 京都高山寺の至宝」 東京国立博物館(~6/7)
・「京都市美術館名品展 美人画の100年」 平塚市美術館(~6/7)
・「平成大修理記念 日向薬師ー秘仏鉈彫本尊開帳」 神奈川県立金沢文庫(~6/14)
・「鎌倉からはじまった。1951-2016 PART1:1985-2016」 神奈川県立近代美術館鎌倉(~6/21)
・「ルオーとフォーヴの陶磁器」 パナソニック汐留ミュージアム(~6/21)
・「松園と華麗なる女性画家たち」 山種美術館(~6/21)
・「幕末明治の浮世絵展 探訪・歴史絵から開化絵まで」 うらわ美術館(~6/21)
・「日本の妖美 橘小夢展~幻の作品を初公開」 弥生美術館(~6/28)
・「他人の時間/山口小夜子 未来を着る人」 東京都現代美術館(~6/28)
・「高橋コレクション展」 東京オペラシティ アートギャラリー(~6/28)
・「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画」 千葉市美術館(5/19~6/28)
・「フランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵 マスク展」 東京都庭園美術館(~6/30)
・「シンプルなかたち展:美はどこからくるのか」 森美術館(~7/5)
・「速水御舟とその周辺ー大正期日本画の俊英たち」 世田谷美術館(5/2~7/5)
・「着想のマエストロ 乾山見参!」 サントリー美術館(5/27~7/20)
・「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 原美術館(5/23~8/30)
・「あの歌麿が帰ってきた!ー『深川の雪』再公開」 岡田美術館(~8/31)
・「セザンヌー近代絵画の父になるまで」 ポーラ美術館(~9/27)
ギャラリー
・「TWS-Emerging 2015 第1期 長田堅二郎・大山紗智子・村上賀子」 トーキョーワンダーサイト渋谷(~5/10)
・「和田真由子 ハムレット」 児玉画廊東京(~5/23)
・「村田朋泰 edge」 ギャラリーモモ両国(~5/30)
・「藤本壮介展 未来の未来」 TOTOギャラリー・間(~6/13)
・「トーマス・デマンド展」 タカ・イシイギャラリー東京(5/22~6/27)
・「線を聴く」 メゾンエルメス(~7/5)
4月にスタートする展覧会が多かったせいか、5月始まりのそれはさほど多くありません。
うち注目したいのは世田谷美術館です。「速水御舟とその周辺」展がはじまります。

「速水御舟とその周辺ー大正期日本画の俊英たち」@世田谷美術館(5/2~7/5)
タイトルに「その周辺」とあるように、御舟と師の松本楓湖、また同輩の小茂田青樹、さらには同門の画家らの作品までを俯瞰する展覧会。振り返ってみれば今年は速水御舟、没後80年でもあります。
前後期(前期:~5/31、後期:6/2~)で大規模な展示替えがあるそうです。まずはGW中にでも早めに出かけたいと思います。
千葉市美術館で「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画」展がはじまります。

「ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画ー『マネジメントの父』が愛した日本の美」@千葉市美術館(5/19~6/28)
いわゆる現代経営学の発明者としても知られるピーター・ドラッカー。日本の美術品を収集するコレクターでもあるそうです。
うち特に水墨画のコレクションを紹介する展覧会です。室町水墨画のほか、海北友松や池大雅などの文人画、さらには若冲に琳派の作品も含まれます。
東京国立博物館の「鳥獣戯画展」が大変な混雑となっています。

「鳥獣戯画ー京都 高山寺の至宝」@東京国立博物館(4/28~6/7)
会期一週目から平日でもゆうに1時間待ち。開門前から行列が続き、通常狙い目とも言われる金曜の夜間も80分超の待ち時間が発生しています。
ちょうど去年もこの時期、同じく東博のキトラ展も大行列となりましたが、それを上回る状況ではないでしょうか。混雑状況については公式の専用アカウント(@chojugiga_ueno)がこまめに発信しています。率直なところ私も既に機を逸した感がありますが、ともかくこれから観覧される方は時間、ないしは体力に余裕がある時に出かけることをおすすめします。
GW中は近場の展覧会を見て歩くつもりです。それでは今月も宜しくお願いします。
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