◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「○○さんが春を連れてきてもらいました」って?

2012-04-11 20:13:11 | 気になる言葉、具体例
                                  私も入れて~

 「~ていただく」症候群が流行し、芸能人はもちろんのこと、一般の人までが大勢感染して発症、もうどうにもならないというのは皆さんの共通認識だと思います。そもそもスーパースプレッダーが存在するから流行するのですが、スプレッダーになるような人は、謙虚に見せたいだけ、単に言葉の終わりを「~ていただく」にしているだけですから、日本語として見るとおかしいのです。
 ところで、以前書いたときは「~せていただく症候群」と表記したのですが、今の症状をよくよく考えると、少し範囲を広げて「~ていただく」症候群とするのが適当だろうと思います。よって、以後は「~ていただく」症候群と表記することにします。私はそうすると決めただけですよ、念のため(^_^)。
 「貴重なものを送っていただいて」はおかしくありませんが、「○○さんが貴重なものを送っていただいて」は変です。分かりますか? 分かりますよね。でも、「~ていただく」症候群の人は分かっていないのです。ここでまた一つ、今度は「~ていただく」症候群の症状を整理しておきましょう。私なりに、ですよ、念のため(~_~;)。
 【1】 顕著な症例として「出させて(ださせて)いただく」があります。本来「出させて(でさせて)いただく」「出演させていただく」「出して(だして)いただく」という形になるところを「ださせていただく」と言う、つまり、日本語文法としてありえない言い方をしているわけで、芸能人に多く見られます。
 「出す」があれば「入れる」も・・・もちろんありますよ。「○○のメンバーに入れ(いれ)さしてもらってますけども」と言った政治家がいます。「はいらせてもらって」もしくは「いれてもらって」のはずが、「ださしていただいて」と同じように「いれさしてもらって」になっています。普通は「メンバーに入れてもらう」と言いますよね、でも、「~ていただく」症候群の人は、なぜか、「入れる」をそのまま「~せていただく」の形にして「入れさせてもらう」と言ってしまうのですね。
 【2】 「映画を見る」を「映画を見させていただく」、「本を読む」を「本を読ませていただく」、「感動する」を「感動させていただく」と言う。「~ていただく」の中でも、「~せていただく」は「~することを許してもらう」という意味になるのですが、他人が許容するかしないかなんて関係ないことまで何でもかんでも「~せていただく」にします。
 「出馬をさせていただかない」と言った元政治家(落選したからただの人)もいます。「出馬をさせていただかない」は「出馬することを許してもらわない」という意味になりますが、この人は、続投を望まれていたのに出馬しない、要は辞めたかったのですよ、別のもっと大きなポストをねらっていたから。そうなると、出馬しないことを許してもらわないといけないわけで、「不出馬とさせていただく」が正しい言い方です。
 【3】 「お伺いさせていただきます」のようにやたらくどい言い方をする。「お伺いします」に、さらに「訪問することを許してもらう」という気持ちを込めたいというのは分からなくもないですが、くどい! もうちょっとスマートに、せめて「伺わせていただきます」かな。重症化すると「共感させていただきながら拝見させていただきました」なんて言いますからねぇ( ̄д ̄)!
 【4】 「~ていただく」なのに、その前に「○○さんが」と言う。「~ていただく」の主体は自分ですから「○○さんに」が正しいわけで、「○○さんに書いていただく」「○○さんに出ていただく」です。「○○さんが書いていただく」「○○さんが出ていただく」を誤りだと認識できない人は重症患者であり、まずいことに、あまり目立たないのでスプレッダーになります。
 アナウンサーでさえ「たくさんのかたが来ていただきまして」なんて言うのですから、今のは間違いだと認識して自分に言い聞かせないと、ぼーっとそのまま聞いていたらちゃんと話せなくなるのは当然です。若い人がちゃんと話せないのは、テレビから流れる変な日本語を聞いていることが原因であるのはもちろんですが、それほど若くない人も含め、一般人の日常会話がおかしくなっているからでしょう。
 【5】 ある番組で、Aさんが「春ですねぇ」と言い、それを受けて一般の人が「Aさんが春を連れてきてもらいました」と言いました。「~ていただく」ウイルスに感染している人は、「~てもらう」と気軽に言う場面でも、「○○さんに」を「○○さんが」と言ってしまうようです。このごろはけっこう見掛けるのですよ、こういう、いわば「~ていただく・~てもらう」症候群の人を。
 変な日本語を平気で電波に乗せる、表面だけ謙虚な芸能人、日常会話レベルの日本語さえちゃんと話せないアナウンサー、その影響をもろに受け、「Aさんが春を連れてきてくれました」と言えなくなってしまった日本人、本当に困りますねぇ。「大勢のかたに来ていただきまして」「大勢のかたが来てくださいまして」と言えてこそのアナウンサーではありませんか? 「○○さんが」と言った後は、「いただく」ではなく「くださる」と言ってこその日本人ではありませんか?
コメント
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