◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「雇用保険に入れずに失業保険をもらえない」って?

2013-01-27 10:02:23 | 気になる言葉、具体例
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 「モレずに安心」という商品があります。小倉智昭のせいで広まった変な「~ずに」ですが、今や、ナレーションやテロップはもちろん、アナウンサーも、影響を受けやすい一般の人も、「~ず」なのに「~ずに」と、その違いを考えることもなく言っています。「雇用保険に入れずに失業保険をもらえない」なんて訳が分からない( ̄д ̄)!
 「手紙を読まずに捨てた」「寝ずに頑張った」は、日常会話で言うように言い換えれば「手紙を読まないで捨てた」「寝ないで頑張った」です。それでいくと、「漏れずに安心」「雇用保険に入れずに失業保険をもらえない」は「漏れないで安心」「雇用保険に入れないで失業保険をもらえない」となりますが、それで意味が分かりますか? 「失業保険」も変ですね、もらうのは「失業等給付」です。
 「漏れないで」なら「まだ漏れないでいる」「漏れないで保っている」、「入れないで」なら「いまだに雇用保険に入れないでいる」「雇用保険に入れないで終わってしまった」という言い方をするもので、「漏れないで」に「安心」と続けることはできませんし、「雇用保険に入れないで」に「失業保険をもらえない」と続けることはできません。
 もちろん、「漏れずに」「雇用保険に入れずに」も、「まだ漏れずにいる」「漏れずに保っている」「いまだに雇用保険に入れずにいる」「雇用保険に入れずに終わってしまった」で、要するに、「漏れない」「雇用保険に入れない」ということしか言えないのです。「漏れない」は「漏れない」、「入れない」は「入れない」、本人が選ぶことではないのです。
 手紙を読むか読まないか、それは手紙をもらった人の自由。寝てしまうか寝ないで頑張るか、それはその人の気持ちの問題。でも、漏れないのは、製品がそういう性能を有しているからで、「漏らさない」とは違います。雇用保険に入れないのは、主に雇用主側の過失や意図といった何らかの原因があるわけで、「入らない」とは違います。
 ちなみに、「雇用保険に入らずに」だったらどのように続けますか? 「雇用保険に入らずに失業等給付をもらうということはできない」です。これなら「手紙を読まずに捨てた」「寝ずに頑張った」と同じ構造になりますから、「雇用保険に入らないで失業等給付をもらうということはできない」とすんなり言い換えることができます。
 漏れないから安心、それは「漏れなくて安心」です。雇用保険に入れない、だから、失業等給付をもらえない、それは「雇用保険に入れなくて失業等給付をもらえない」です。ということは、言い換えれば「漏れず、安心」「雇用保険に入れず、失業等給付をもらえない」であり、「~ずに」ではありません。このように、「~ず」と「~ずに」とでは意味が全く違うのです。
 明らかな誤りでも、これほど広まってしまった今、「雇用保険に入れずに・・・失業等給付をもらえない」と言ったのなら欠けている部分を補完して「雇用保険に入れずに終わってしまったから、結局、失業等給付をもらえない」と言っているのだと解釈せざるを得ないのかなぁ(ーー;)。泣き寝入りしない人なら「雇用保険に入れず、その後しかるべき機関に訴え、ようやく入ることができた」と言うかもね。
 「~ず」としか言えないところでも「~ずに」と言うアナウンサーがすでに複数(フジに限らず)いて、放送に携わる人たちが意味の全く違う「~ず」と「~ずに」を区別できない、違いを理解していないということが私にはどうにも理解できません。小倉智昭というスーパースプレッダーがいるとしても、そもそも、最初に聞いたときに変だと感じるセンスすらない人がなぜアナウンサー( ̄ ̄)?
コメント
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