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最近テレビでもやっていたが、日本人は日本三大◯◯や五大◯◯などが大好きで、さらにそれは自分で呼んだもの勝ちらしい。しかし、例えば日本三景(松島、宮島、天の橋立)や日本三名園(偕楽園、後楽園、兼六園)などは知らない人はあまりいない。
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では日本三奇橋知っているだろうか。実は調べてわかったのだが、三奇橋なのに沢山ある。一般には猿橋、錦帯橋(山口県岩国市)、愛本橋(富山県、旧橋は現存しない)を言うが、他にもかずら橋(徳島県祖谷)や木曽の筏(長野県)、神橋(栃木県日光市)などを指すものもある。
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まあ、その中でも猿橋は刎橋としてその古さからはかなり珍しい類に入るだろう。この橋は山梨県大月市猿橋町にある桂川に掛かる橋で桂川の両岸が崖のため、橋脚が設置できない。この場合は吊り橋にするケースが多いが、江戸時代には刎橋という工法を用いた。これは岸の岩盤に穴を開けて刎ね木を斜めに差し込み、中空のまま突き出させる。その上に同様の刎ね木を突き出し、下の刎ね木に支えさせる。支えを受けた分、上の刎ね木は少し先に出す。これを足場に上部の構造を作り、板を敷いて橋にするという方式。
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伝説としては7世紀に渡来人の志羅呼が猿が支えあい、橋を作ったのを見て作られたというのがあり、そこから名前がついた。鎌倉時代には橋はあったらしいが、形式が不明で、1676年以降は建て替えの記録があり、1756年には似た形の橋があった記録がある。明治時代には1880年の行幸の際に天皇が渡った記録もあり、1932年には国の名勝になっている。
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橋は甲州街道から少し入ったところにあり、かつてはこの橋が甲州街道であった。鬱蒼とした草の中にあるが、少し下に降りた場所からはこのような急流に工夫して架橋するのは大変なことだろう。また、そばの新猿橋(こちらは鉄橋)からは全景をよく見ることができる。
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また、すぐそばには1912年に送電を開始した東京電灯(今の東京電力)の八ツ沢発電所の水路橋がある。これは長さ42.7mのコンクリート造りのアーチ橋でなかなか凝った造り。(国指定重要文化財)
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いずれの橋も時代は変われど自然との共存を考えながらも何とか実現した先人たちの苦労と工夫が偲ばれる。
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