かぶれの世界(新)

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民意反映システムの罠

2005-11-03 23:41:08 | 国際・政治
CBSは2日ブッシュ大統領の支持率が35%まで低下したと報じている。ニクソン大統領以来の低支持率である。予想されたこととはいえショックである。調査によれば米国民はCIA漏洩事件の重要性は過去の大統領が絡んだスキャンダルの中でウォーターゲート事件と同じくらい深刻だと思っているようである。しかし最近のどの報道を見てもニクソンの時のように大統領を弾劾しろという主張は無い。大統領が事件に直接関わったとは見られていないためである。大事にならないがこのままでは議会の支持を失いレームダック化することは避けられない。

大統領支持派はこれが「底」と見ているが、支持率低下が最近のハリケーン対応から最高裁判事指名の手違いだけによると見るのは楽観的に過ぎる。側近であり稀代の戦略家カール・ローブ氏自身が事件に関わっており身動きできない状態にいる。既にチェイニー副大統領とそのスタッフは影響力を失い大統領との距離が大きくなったと報じられている。リベラルなメディアは外部から新しいスタッフを取り入れ新規巻き直しを進めているが、今のところその動きは無い。

米国大統領は何故2期目に例外なく危機を迎えるのであろうか。私はニクソン時代から始まったように感じる。私の記憶が正しければニクソン政権のインナー・グループの人脈は主にカリフォルニアの広告業界で、史上初めて世論の推移を見ながら政権運営するスタイルを持ち込んだ。最近では、クリントン政権は政策毎にリアルタイムで世論の動きをウォッチし巧妙に政策を修正、優先度を決定し高い支持を得て政権の運営をした。ブッシュ政権の運営もターゲットを中道から右に移したものの、参謀ローブ氏の下で基本的には同じやり方で選挙を戦い、政策を打ち出してきた。

この政権運営スタイルは時間の経過とともに純化して行き、戦術的(支持率を維持するための)な部分の優先度が徐々に高まり、結果的に透明性を失い手段が目的になる。つまり大局観の感度が鈍くなる傾向がある。民意の反映には非常に効率的なスタイルだが、一方で本来のあるべき姿が忘れられ細部にこだわる隠蔽体質が高じて大統領がスキャンダルに巻き込まれる。私は今回のブッシュ政権のスキャンダルもこの「民意反映システム」の罠に陥ったように思う。

レームダック化を避けるためには、9.11のような危機がもう一度起こることだがそうも行かない。CIA漏洩事件の全容が明確になる前に腐った部分の摘出を思い切ってやり、さっさと新しいスタッフで出直すことである。しかし良くも悪くもブッシュはそういうリーダーではない、忠誠を尽くす人間を簡単には切ることはしない人だ。しかし、既にチェイニー副大統領などに対する信頼感を失ったと伝えられている。カード首席補佐官が財務省に転出したいという希望を持っているので、来年1月が入れ替えのタイミングだとメディアは報じている(煽っている感じもする)。

実は小泉政権は日本の歴史上初めて支持率を権力の基盤に政権運営しており、前回の衆院選に初めて民意反映の仕組みを持ち込み見事に成功した。民主党も十分認識しており、既に後戻りできないところに足を踏み入れたと思われる。当面この傾向がどんどん進んでいくことが望ましいが、いずれこの「民意反映システムの罠」に陥らないようウォッチしていく必要があると私は思う。■


コメント
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