訪問成果なしは想定内
ブッシュ大統領の東アジア訪問を日欧米のメディアがどう見ているかざっと見てみた。殆どのメディアは新たな進展や成果は得られなかったと評価している。今回東アジアの4カ国日本、韓国、中国、モンゴルを訪問したが、その中で明らかに最重要訪問国は中国だった。テーマは“米国の考える”民主主義と経済であった。
米国の要求は民主化と経済
米国は中国の民主化促進、特に人権問題の改善や宗教の自由を訴え、中国台湾関係の現状維持、貿易赤字改善の一環として人民元の評価見直し・市場自由化・知的財産の海賊行為の取り締まり強化などを主張した。
民主化要求は無視された
中国は改善すると回答したが具体的には何も約束しなかった。中国は“中国の考える”民主化を進めると答えたが、ブッシュ訪問直前に民主化勢力を逮捕し人権活動家に有罪判決で答えた。記者会見では質問を許さず、ブッシュ大統領の発言の一部をつまみ食いして放送した。胡錦涛国家主席に就任後期待された民主化の動きは停滞、後退したかの印象を与えた。
米中経済関係の深化
一方、経済的には具体的成果は無かったものの、中国独特のやり方で着実に市場の自由化や知的財産保護の強化を進めていくと予想されている。前にも述べたように、日本を含む米中経済は構造的に一体化されロックインされているので、余程のことが起こらない限り経済原則に従って進展が続くモードに入っているからである。
ブッシュは最初から何ら進展がないことを想定し期待レベルを思い切り下げ、何も期待しなかったように淡々とスケジュールをこなした。留守中国内でイラク戦争を追及する議会の動きが急で、どこへ行ってもイラク戦争が追いかけてきてうんざりしたという雰囲気があった。中国の対応には強い不快感を持ったとしても、もはや密接な経済関係を揺るがせる理由などなかった。
新たな成功モデル
しかし、一方のテーマである中国の民主化について私は悲観的である。冷戦終結により米国の資本主義は共産主義に勝利した。長期的に生き残るか疑いがあった共産主義中国は今や形を変え「共産党独裁下の資本主義」になり成功、中央アジア、アフリカおよび中南米諸国の独裁国の成功モデルになったと思われる。米国を中心とする国際社会はこれら非民主国家の支援には熱心ではなかった。
狙いはエネルギー確保だけにあらず
NYタイムスによると、中国はこれら30ヶ国と石油関連の条約を結び、単にエネルギー確保に留まらず貿易額が2000年以来3倍に急増し経済関係が深まっている。更に長年にわたるAIDS・マラリアなどの医療教育・機器・薬支援から始まり、最近では科学技術開発から農業・商業・教育の人材開発にまでわたる広範なものに発展している。
民主化の矛盾
国連加盟国の中国支持国は潜在的な国を含めかなりの数になると見られている。これらの国は米国風の民主主義の押し付けをせず支援してくれる中国を支持するのは至極当然である。中国は米国と対抗(対立ではない)する超大国になることは疑いなく、強固な支持国が国連を舞台にした外交のベースになる。とすれば支持国の政体と矛盾する米国風の民主主義を受け入れる訳にはいかないのである。
新イデオロギーの戦い
ベルリンの壁が崩壊し冷戦が終結後グローバリゼーションの進展とともに東欧やアジアから中東まで“アメリカ風”民主主義のドミノが進むと一方で、中国のアジア・アフリカから中南米の“独裁資本主義”のドミノの挑戦を受けて熾烈な競争が始まったという捉え方が現在の世界をよく説明していると私には思える。■
ブッシュ大統領の東アジア訪問を日欧米のメディアがどう見ているかざっと見てみた。殆どのメディアは新たな進展や成果は得られなかったと評価している。今回東アジアの4カ国日本、韓国、中国、モンゴルを訪問したが、その中で明らかに最重要訪問国は中国だった。テーマは“米国の考える”民主主義と経済であった。
米国の要求は民主化と経済
米国は中国の民主化促進、特に人権問題の改善や宗教の自由を訴え、中国台湾関係の現状維持、貿易赤字改善の一環として人民元の評価見直し・市場自由化・知的財産の海賊行為の取り締まり強化などを主張した。
民主化要求は無視された
中国は改善すると回答したが具体的には何も約束しなかった。中国は“中国の考える”民主化を進めると答えたが、ブッシュ訪問直前に民主化勢力を逮捕し人権活動家に有罪判決で答えた。記者会見では質問を許さず、ブッシュ大統領の発言の一部をつまみ食いして放送した。胡錦涛国家主席に就任後期待された民主化の動きは停滞、後退したかの印象を与えた。
米中経済関係の深化
一方、経済的には具体的成果は無かったものの、中国独特のやり方で着実に市場の自由化や知的財産保護の強化を進めていくと予想されている。前にも述べたように、日本を含む米中経済は構造的に一体化されロックインされているので、余程のことが起こらない限り経済原則に従って進展が続くモードに入っているからである。
ブッシュは最初から何ら進展がないことを想定し期待レベルを思い切り下げ、何も期待しなかったように淡々とスケジュールをこなした。留守中国内でイラク戦争を追及する議会の動きが急で、どこへ行ってもイラク戦争が追いかけてきてうんざりしたという雰囲気があった。中国の対応には強い不快感を持ったとしても、もはや密接な経済関係を揺るがせる理由などなかった。
新たな成功モデル
しかし、一方のテーマである中国の民主化について私は悲観的である。冷戦終結により米国の資本主義は共産主義に勝利した。長期的に生き残るか疑いがあった共産主義中国は今や形を変え「共産党独裁下の資本主義」になり成功、中央アジア、アフリカおよび中南米諸国の独裁国の成功モデルになったと思われる。米国を中心とする国際社会はこれら非民主国家の支援には熱心ではなかった。
狙いはエネルギー確保だけにあらず
NYタイムスによると、中国はこれら30ヶ国と石油関連の条約を結び、単にエネルギー確保に留まらず貿易額が2000年以来3倍に急増し経済関係が深まっている。更に長年にわたるAIDS・マラリアなどの医療教育・機器・薬支援から始まり、最近では科学技術開発から農業・商業・教育の人材開発にまでわたる広範なものに発展している。
民主化の矛盾
国連加盟国の中国支持国は潜在的な国を含めかなりの数になると見られている。これらの国は米国風の民主主義の押し付けをせず支援してくれる中国を支持するのは至極当然である。中国は米国と対抗(対立ではない)する超大国になることは疑いなく、強固な支持国が国連を舞台にした外交のベースになる。とすれば支持国の政体と矛盾する米国風の民主主義を受け入れる訳にはいかないのである。
新イデオロギーの戦い
ベルリンの壁が崩壊し冷戦が終結後グローバリゼーションの進展とともに東欧やアジアから中東まで“アメリカ風”民主主義のドミノが進むと一方で、中国のアジア・アフリカから中南米の“独裁資本主義”のドミノの挑戦を受けて熾烈な競争が始まったという捉え方が現在の世界をよく説明していると私には思える。■