パロマ対応と業界標準
昨年暮れ松下電器が温風暖房機の事故に際して、全ての新聞テレビの年末商戦広告を中止して問題商品の告知を流し、素早く徹底した対処をし松下ブランドの信頼を繋ぎとめた時、今後これが業界標準になり事ある毎に比較されることになるだろうと述べた。
本日の日本経済新聞はパロマ工業と松下電器の事故発生からの経緯比較を掲載した。事故対象機器、事故内容、事故原因、死亡事故発生時期、事故把握時期、公表時期、出荷台数、対策について両社の対応を比較してある。どうも初動に誤りがあったようだ。
初動を誤るとツケは100倍に
記事によると危機管理の今後の焦点として情報把握、再発防止、製品回収の3つの課題を挙げている。危機管理の肝は初動に始まり初動に終る。パロマの場合最初の死亡事故発生した85年に問題認識されていたにもかかわらず根本的な処理を打たなかった為結局20年分不具合を蓄積し、まとめて巨額のツケを払うことになった。
初動のゴマカシが以降の対応を狂わせ結果的に巨額の損失になる例である。まさに嘘に嘘を塗り固めて行くところまで行った。当時の通産省の業界保護の姿勢が危機感度を鈍らせた模様だ。その時は繕えても何時かは暴かれ、それも逃れた時は大袈裟だけど歴史が裁く。
今も停滞する危機情報
今月14日の最初の説明時には大問題と認識したのは91年と説明したが、18日の会社説明では最初の事故が発生した85年にはもう認識していたと訂正された。この手の食い違いは今もって社内のどこかで情報が留まる隠蔽体質があるという証左である。
社内の品質管理、危機管理とそれに魂を入れる人事考課システム等から生まれる社員の認識も足りなかった可能性が高い。20年前の危機管理のツケを2005年の今の業界標準に基づいて払うのはこの規模の会社にとって大変な負担で、それが分かっていれば当時の対応も変わったかもしれない。
トヨタは業界標準を作れ
しかし、規模の大小にかかわらず経営幹部にはそれだけの先見性と洞察力、しかし一般常識、が求められるのである。私は今回同時進行中のリコール隠し事件でトヨタが企業防衛の域を出てない対応と言い訳をしたのに失望を感じえない。松下電器と同じように過去は過去としてトヨタに業界標準を作ろうという気概を求めたい。
トヨタは自動車の世界トップメーカーとして最高益を出し、社業ばかりでなく日本経済の構造改革へ多大な貢献をしてきた。過去10年間トヨタ式管理手法が経済以外の他の分野でも機能する普遍的なものであることが世界的な認識となった。
しかし、たとえば自動車が地球温暖化の原因になっていることをもっと真剣に受け取るべきである。ましてやリコール隠しで後ろ指を差されるようでは情けないではないか。金儲けの上手い会社だけ言われトヨタの誇りが許すのか。トヨタはリコールの業界標準を作るつもりで取り組むことを期待したい。■