かぶれの世界(新)

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ポピュリズム不況

2007-12-16 23:47:01 | 社会・経済

気後退がいよいよ現実に迫ってきたようだ。11月の街角景気指数は4年半ぶりの低水準になり、12月日銀短観の大企業製造業DI(業況判断指数)も3四半期ぶりに悪化した。米国経済減速懸念と原油高が日本経済原則の主要原因と報じられている。

業種別に見ると低調な新車販売を初めとして建設・金融・小売などの内需系の不調が目立ち、今年度の業績下方修正が予想されている。唯一の頼みの輸出が減少に向かえば景気後退は最早避けられない状況だ。しかし、国内のほうがより深刻だと認識すべきである。

上記の三業種を更に覗くとその深刻さが明らかになる。新法により建築確認が取れず住宅建築着工数が前年比37%に落ち込んだと報告されている。マンションの着工数だけを見ると前年同月比8月63%減、9月75%減、10月71%減となり、このまま推移すると建設や建材業界に壊滅的な影響が出ると予想されている。

一方、金融業界においては金融商品取引法の改正により10月投資信託への投資額が半減し、貸金業法の改正により貸金業者数は今年度上期だけで9%減少しているという(NikkeiBP)。 賞味期限や消費期限の改ざんに代表される食品偽装は年末商戦に大きな影響を与えている。

新聞等の報道は住宅着工数の壊滅的な減少を「官製不況」と呼び、官僚が責任が降りかからないよう厳しい規制をかけたためとの見方が多い。しかし私はその先にもっと共通するものを感じる。それは、日本がメディア主導のポピュリズム政治に向かいその悪影響が出たのではないかということだ。

り返れば上記の三業種は、一昨年からテレビが連日のように不祥事をお茶の間に伝え、国民が規制の強化を求めた業界である。耐震強度偽装、投資家保護と金利のグレイゾーン、そして食品偽装である。テレビは弱い立場の消費者を守るため国の責任を問い、法制の立法化を求めた。だが、メディアの大騒ぎは当事者のバランス感覚を喪失させた。

市場経済は基本的に競争であり経済全体のパイを大きくするが、一方で敗者を生むのは否定できない。市場経済下では消費者は賢くなければならない、自己の判断で商品を買い結果に責任を持つことが基本だ。返せるあてもないのに金を借りたらその責任を取らねばならない社会だ。しかし昨今の消費者はバブル以前の消費者より賢くなったとは思えない。

多くの報道は弱者保護にばかり目が向き、何も考えなくてよい消費者を作り出す法制化、即ち「規制経済」の実現を求めている。官僚と政治家たちは、このテレビと評論家達の持つ影響力、換言すると選挙に与える圧倒的な影響力に目が眩み判断を誤った。官僚は巧妙に利用しているのかもしれないが。

世界が規制緩和と自由化で成長に向かい驀進する中、日本だけ国内に閉じこもり規制強化しているように私には思える。それが結果的に経済活力を削ぎ景気後退が目の前に迫って来た。消費者個々が賢く成長する機会を奪っている。バブル時代に生まれた賞味期限とか消費期限は元々おかしかった。だが耐震偽装と同じようにJAS法の見直しが規制強化に向かうとしたら誤りだ。

ポピュリズム政治がすべて悪いとは私も思わないが、現状は良い方向に向かっていない。官僚が責任逃れのため規制を強化した結果の「官製不況」という側面は確かにあるが、メディア、特に圧倒的に影響力のあるテレビが消費者を子供扱いし間接的に規制強化を後押しした。それは長い目で見て決して消費者の為にならない。

何故こんなことになるのか、一つには国内のテレビ・メディアが世界から切り離され、井戸の中の蛙的な状態で守られていることに起因していると私は考える。ライブドアや楽天が参入しようとした時生まれた緊張感は最早なくなった。メディアは責任の大きさを認識して大局観を持って影響力を行使していく責任がある。■

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