東京に戻ってから家内と息子に新聞を変えるように勧めた。吉田証言や吉田調書が誤りだったとの朝日新聞社長の謝罪会見があったばかりなので、二人とも新聞を変えることに抵抗はなかった。新聞購読の契約は3か月ごとにやっているので変更に問題ないと言う。
二人共どの新聞に変えるかノーアイデアだった。私も何を勧めていいか分からない。私は普段日本経済新聞しか読まず、特別な時以外は朝日新聞を読むことはないので、正直何でもいいのだ。だが、朝日を止めろと言うからには他の何がいいのか聞かれて困った。
詳しく読み比べた訳ではないが、新聞各社をイデオロギー的に位置づけると以下のような印象がある。子供の頃実家は毎日、社会人になって朝日、退職後は日経を読み、ネットで朝日の記事の矛盾を攻撃する産経の記事を目にする。読売は巨人のえこひいき報道とこわもて社主に強引な販売店の売り込みの印象がある。
(左) 赤旗 - 東京-朝日-毎日・・・日経・・・読売-産経 (右)
今、多くの人が問題にしているのは朝日の思想(イデオロギー)ではなく、彼等の思想に都合のいいようにニュースを偽装してしまう体質だ。右か左ではなく事実を捻じ曲げて報じる新聞は許せない。だが、どのメディアも自社の主張に都合のいい事実のみつまみ食いして報じる姿勢に違和感がある。事実捻じ曲げとつまみ食いにどれだけ差があるか、私は大きな差があるとは思わない。
何時も言うように、「全てのデータをテーブルに広げ分析し、これこれだから我社はこう考える」的な報道姿勢のメディアが望ましい。新聞だけではない、テレビや週刊誌にも同じ姿勢を望みたい。英米のメディアと比べると我が国のメディアは時に後進国かと思わずにいられない。クォリティ・ペーパーならぬクォリティ・週刊誌があれば最高だ。
欧米のメディアにもチョンボが無い訳ではないが、仕組みに明らかな差がある。それは日本のあらゆる組織に共通する慣行である労働者の「流動性」が無いことだ。記者が自分の名前で記事を書き評価され、新しいメディアに転職してキャリアを高めていく仕組みだ。そういう環境の中で事実とか本質に迫る、朝日が変わるのならこうなってほしい。
個人の名前で勝負するシステムでは、偽装記事に関わった記者や編集者はブラックリストにのり、メディアの世界では仕事できなくなるだろう。永久追放されてしまう。朝日の様に組織的に記事を捻じ曲げる体質(朝日の場合は左よりの労働組合及び出身者が強い影響力があるという)があったとしても、個人のキャリアがかかると思えば偽装記事の歯止めがかかると私は思う。組織的にやったのなら廃刊と言う声は極端ではない。
かといって他の新聞だったら、記者がどの程度の自由度を持って記事を書き、事実に基づいた内容かチェックされる仕組みがあるのか等々、私は全く知らない。具体的な提案をすれば藪蛇になるメディアが続出するのではないかと私は疑う。余り信用していない。
私なりの家内への提案としては、朝日新聞の取次店に不祥事の再発防止の為に何をするのか、それを見て次の新聞購読の契約延長をすると、圧力をかけてみることを勧めた。多分新聞社に伝わるだろうと。誤報や偽装記事を避ける仕組み(組織と記者の在り方)と定期的な外部監査、労働組合及び出身者と編集の「隔離」等、具体的な改革案を読者に説明してほしいと。■