かぶれの世界(新)

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パリ・テロ事件が突き付けた現実

2015-11-26 17:54:20 | ニュース
パリがイスラム原理主義(IS)のテロで市民生活が麻痺し異例の3か月戒厳令が発令され、仏米アラブ諸国に加えロシアが軍事面で連携しIS空爆作戦を開始した。だが地上軍の投入無くしてIS殲滅は困難とみられ、ロシア爆撃機撃墜でトルコと対立するなどIS掃討の先行きは容易ではないようだ。一方、米国では5000万人近くの人が移動するといわれるサンクスギビング(お盆のように家族が集まる祝祭日)に先立ち、オバマ大統領は「米国に対する脅威があるとの情報は得ていない」と述べ、米国を覆う不安の払拭に努めたと報じられた。

ところが、好対照なのがマーケットの反応だった。世界が右往左往している間も市場はびくともしなかった。有事のドル買いと言われるが、若干ユーロ安が進んだがドル高も円高の進行もなかった。テロ発生後も世界の株式市場は概ね堅調に推移し、今日の東証は日経平均は2万円に迫る勢いで引けた。8月の中国の為替介入以降世界のマーケットは大揺れに揺れ、FRBの金利上げを巡り新興国からの資金引上げが始まり為替相場が動き新興国経済に大きな影響を与えたのと比べると大違いだ。

中国・米国のちょっとした変化でも一喜一憂して大きく上げ下げした市場が、欧州の動揺に対して少しも動じる様子が無かった。私はこれを見て言い古された言葉「西洋の没落」(シュペングラー)が頭に浮かんだ。米国がもたもたすると好んで「米国の影響力低下」と指摘する人達が今度は「欧州の没落」とは言わない。何故言わないのか、最早新たに取り上げて言うこともない当たり前の事実なのか分からない。私はテロの惨事以上に市場の無視の方が衝撃的だった。

今日の日本経済新聞は時価総額が100億ドル(約1.2兆円)を超える企業1221社のうち、米国425社、アジア377社、欧州287社と報じた。アジアの100億ドル超企業が10年で4倍に増え、いまや米国とアジア合わせて世界大企業の2/3を占めているのだ。オバマ大統領がアジアにシフトするという政策は至極当然なのである。米国の反対を見越しても中国との取引を強化した英国は、彼等なりのやり方でアジアにシフトしたと考えられる。独仏もさりなん。現実的に経済の中心は大西洋から太平洋に移ったのだから。

一方で、多くの人を殺傷し恐怖を与える点ではテロは成功したが、パリの都市の基本機能は維持され経済的なインパクトはなかった(ファイナンシャルタイムズ11/20)という分析もある。9.11を除いて大きな経済的インパクトをもたらしたテロはないという。そもそもテロで経済に長期的な影響を与えることは出来ない、従ってパリ事件に対して市場の無反応をして欧州の「相対的」没落の象徴とは言えないということになる。

私はそれでも「欧州の没落」を感じる。米中で同レベルのテロ事件が生じたらそうはいかないと。■
コメント
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