不 二家の消費期限切れ食品表示問題発生後1ヶ月になろうとしているのに未だに営業再開のめどが立ってないと報じられている。最近では当初の同族経営など会社運営の問題から、売り物が無いフランチャイズ店の苦境にメディアのフォーカスが移っている。 会社が直ちに営業再開に向えないのは余程の理由があるに違いない。既に自力再建を諦め山崎製パンの支援が決まったと報じられているが、拙速な営業再開より徹底した経営刷新などの意図があるのかもしれない。しかし、これだけ営業が止まれば下手をすると野垂れ死にする。 実は私にも事業を潰してしまうほどの危機に直面したことがある。それは米国に駐在し世界市場で販売する商品の開発生産部門を預かった時のことだった。新製品の販売が好調で最先端システムを導入し生産キャパシティを拡張、販売チャネルの信頼が高まり始めた頃、突然商品の品質問題が起こった。 客先から故障で修理の為の商品戻入と新品交換が急増した。品質管理部門が調査すると修理した商品が再度故障し顧客の信頼を失う最悪のパターンに入っていた。迅速な顧客対応の為修理は保守部門で行っていたが、修理済みの商品が顧客との間を往復する悪循環に入っていた。 事態が大問題であると表面化して初めて商品を工場に戻し、生産技術者が詳細をチェックして設計に起因する根本問題があることが分かった。最初にその商品を出荷し問題が出始めてから何ヶ月も経過しており大量の商品が全米の顧客の手に渡っていた。 この事故は私の担当するオペレーション下で起こったことであり、責任追及される立場になった。サービス担当副社長が、事前に私に警告の連絡をしたのに適切なアクションをとらなかったと指摘したからだ。彼は半年くらい前にある大メーカーからヘッドハントされて着任し東海岸のオフィスにいたので、彼とは2-3度話したことがあるだけだった。 彼から電話はある商品の故障が多く対応を要請するものだった。私は工場の品質管理部門にすぐ調査を命じたが、その当時フィールドから上がってきた品質情報に異常の兆候は無く、工場内の生産も安定しており何の問題も感じ取れなかった。副社長に詳細情報をよこすよう頼んだがナシのツブテだった。 私 の失敗は情報が無いことを理由に放置したことだった。多分それから2-3ヶ月位経過した頃だったと思う、怒った顧客が追加オーダーをキャンセルし、返品を求める声が吹き出て大騒ぎとなった。新品に取り替えるので、故障した商品が全米のデポに積み上がり不良棚卸が急増した。 その間、保守部門は自前で修理し工場や技術部門へのフィードバックが殆ど無いという構造に気が付かなかった。何度も修理を繰り返す保守部門の問題という意識が現場にあったかもしれない。担当するしないに係わらず顧客の立場に立って私自身が全プロセスを睨み異常を見つける姿勢に欠けていた。 全米の関係部門トップが参加した電話会議で、社長に問われ初期の段階で問題の潜在的深刻さを見誤ったことを私は認めざるを得なかった。米国各地に分散していた開発・生産・販売・保守部門と日本の技術部門も含めこの後全員が問題を共有化して徐々にいい方向に進み始めた。 開発に遡って原因究明し、顧客への告知、リコールのプロセス、修理のロジスティックス、出荷と修理の資材調整など時間はかかったものも、意識が統一されるとほぼ全社が係わるプロセスは気が遠くなるほど大変だったがやることははっきりしており問題解決は着実に進んだ。 私の例は不二家とは違うし、パロマとかリンナイとも同じではないが共通するものがある。私は最初に情報を受けた時の感度が悪く、その後の執拗さも不足していた。電話を受けた後現場の情報と一致しなかった時、この副社長は普段からその場限りのスタンドプレーが多いという私の先入観が働いた。日本人同士なら違ったかもしれないし、保守部門の品質情報共有の問題もあった。それも承知した上で適切な運営ができなかった私には結果責任がある。■
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