昨日、母を退院させ介護付の老人ホームに入居させた。先々週、老人ホーム行きを母に伝えた時かなり強い拒否反応を示したので、その後は感情を刺激させないように黙っていた。病院の方でも伝えていなかったようだ。だが、前の日の夜にはいつも面倒を見てくれる看護婦や介護士から最後の夜だねと声をかけられ、母は「聞いていない」と答えたという。
私の作戦は説得を諦め、退院当日に老人ホームの専用車で迎えに来てもらい、日常のリハビリの延長で車椅子に乗り散歩に外出するルートを辿り、そのまま専用車に乗せて老人ホームの部屋にドア・ツ・ドアでスムーズに引越しさせるというものだった。
迎えが来る予定の1時間前に病院に行った。退院の事務的手続きは直ぐに終わり、各階にあるナースステーションに行き医者・看護士・介護士の引継ぎ文書と薬を受け取り、リハビリ成果の詳細を改めて聞いた。食堂の定席に座る母と一言二言話掛けて、近くのテーブルでアンケートに記入していると妹夫婦が顔を出してくれた。一瞬、母の顔色が緩んだのが見えた。
その後母の部屋に行き衣類やオムツからお茶器、ラジオなどの荷物をバッグに詰めた。暫くすると老人ホームの専用車が到着した。持参の車椅子への乗換えを促され、母は私の策略に気が付いたようで嫌がった。私が今度は病院じゃなくて、美味しい食事を頂き自由に外出できる、もっと住み易い所に移るんだよと言い、車椅子を母の傍に寄せると以外にあっさり諦めて乗り移った。
エレベーターの前に看護婦・介護士や病院のスタッフが集まりサヨナラを言ってくれた。それまで母の拒絶表現としてそっぽを向いていたが、最後に顔が崩れて泣き顔を見せた。可愛そうと思うと同時に、母がお世話になった人に対して感情を出してくれたことにホッとするものがあった。
小一時間かけて搬送車を追いかけ老人ホームに着き、直ちに車椅子の母は部屋に案内され荷物を収納した。その間母は車酔いせず落ち着いていたらしい。手際よく進んでいく。一通り荷物を整理したところで、3時のおやつタイムが来て母は食堂に案内されて行った。食べることが数少ない楽しみの母には実にタイムリーだった。顔色を見ると、不機嫌な時に見せる顔ではなかった。
その間に事務所に下りて先日交わした契約書に日付を入れて最終確認、控えを受け取った。担当医が決まったと伝えられ、母の車椅子の購入の手はずを確認した。ケアプランは今日受け取った引継ぎ書と担当医の診断を加味して見直すので、次回説明ということになった。
部屋に戻ると、母は車椅子で施設内を動き回り探検していた。以前に比べ前向きな感じがして、ホッとした。どうも新しい環境が気に入ったらしい。母が部屋に戻ると、ここは病院でないので許可を得て外出して買い物も出来る、家に行き気に入った服を持ち帰ることも出来ると、勇気付ける積りで言った。
「そんなに長くいるわけじゃないからいい」との母の返事に、私はむにゃむにゃと言葉を濁した。「終の棲家」と言えるはずが無かった。1日たち夕方に老人ホームに電話して母の様子を聞くと、食事は全部食べたし、ボランティアの音楽会にも参加して落ち着いた様子だったと言う。相変わらずの早食いだったらしい。一先ず安心。■
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