福田内閣支持50%を越す
自民党総裁選が終わり福田内閣が発足すると、新内閣の支持率は予想通り50%以上に回復した。支持率なんてこんなもんだといえば簡単だが、日本の民度がこの程度かと思われるのはちょっと悔しい。しかし、先の選挙結果が自民党にお灸をすえる意味だとすれば理解できなくも無い。
私は参院選のメッセージを1)基本的に自民支持だが年金問題などに対するお灸をすえる、2)小泉政権の構造改革により配分が減ったこと、格差拡大への反発、3)改革支持者の安倍政権の改革姿勢に対する失望、4)民主党の年金問題追及と政治と金に対する姿勢への期待と解釈した。(「参院選結果のメッセージ」7月30日)
現状のところ私の解釈はそれほど外れてはいなかった。テレビを代表とするメディアが煽った年金問題や政治と金、テロ特措法などの実態をより冷静に見ることが出来るようになり、加えて民主党の政策が裏づけ不十分で、自民党と同質の問題があることに改めて気が付いた結果とも言える。
とはいっても、民主党は従来の自滅パターンと比べればまだうまくやっている。福田政権にはその成立過程から避けることの出来ない問題を内包している。いずれこの問題が形を変えて表れ危機が生じると私は予想する。その時までに民主党に政権担当能力があること国民に示せば、次の衆院選で勝てるチャンスが出て来ると予測する。
福田政権の性格と課題
それでは福田政権の課題は何か。メルマガ第1号で福田首相は政治の信頼を取り戻すため「情報を隠す」、「従来の立場に固執する」、そして、「上からの目線」を問題として捉え対応していくと決意を語っている。調整型といわれる所以で、何一つ具体的な政策を語っていない。
しかし、本人は語らずとも彼の側近や新自民党執行部が代わりに語ってくれる。安倍前首相の場合、タカ派と見られていたが中韓との関係改善し現実路線をとり成功した。しかし彼のお友達(インナーサークル)は右翼の性格を隠さず、教育改革等で時代錯誤の政策を追求し国民とのズレを拡大させ足を引っ張った。
自民党の新執行部は派閥の領袖を揃え、中でもかつて既得権益を代表する道路族のドンで注目された古賀選挙対策委員長は、早速平沼議員との親しい関係を隠そうともしない姿勢が先日報じられた。逆に内閣は殆ど再任されたが、行政改革担当の渡辺大臣に代表される改革派の存在感が全く無くなった。
先の参院選の争点だった年金問題・格差問題は少子化で日本の成長が殆ど止まった中での配分を巡る争い、ゼロサムゲームであると私は解釈した。しかし、コップの中の争いよりも、有体に言うと成長する世界の富のうち、どうやって日本の取り分を増やすかが我国の最大の課題である。
言い換えると日本産業の国際競争力の強化であり、宮田秀明氏は「日本にとっては、エネルギー、資源、環境、安全を確保しながら、国際競争力を回復することがすべてに優先する課題である」と的確に指摘している。(日経BP 10/5)
分岐点に立つ福田政権
このまま推移すると、福田内閣の目指すところは結局のところ老齢者と農村や地方などに資金の配分を増やして終りそうな気配だ。これらの資金は国際競争力には繋がらず、従って税収が伸びなければ公明党が言うように国債を増やし次世代にツケを回す結果になりうる。しかし、それで皆満足して支持率を上げるが国は衰える「問題先送り内閣」になる可能性も十分ある。
この辺の事情を最新号のニューズウィーク誌(10・17)は「世界が尊敬する日本人100」のアレックス・カー氏の囲み記事で的確に表現している。それによると日本は9割の「安全体制」派と1割の「不安・野心」派に分断されているという。この分断の過程で日本の想像力は「幹」から「枝」に流れ始め、「枝」即ちニッチの世界で一流になる人が出てきたのが特徴であると。
国としては衰えるが個人としては幸せに生きる(例えばイタリア)ことも必ずしも悪くはないといっているように私には聞こえる。しかし現実には過去に世界一だった日本人一人当たりの個人所得は失われた10年とその後の低成長の間についに英国にも抜かれたという。
私の今までの主張は一貫して「幹」を強くすること、そのためには行政改革をして我国を粗骨症にした官僚システムを建直すしかないというものだった。その為には、信頼できる野党が存在する限り政権交代が最も近道であるというものである。
福田政権は果たしてどちらの道を選ぶか、分岐点に立っているというのが私の直感だ。まだ彼が日本をどういう国にしたいのか国会答弁でも、メルマガでも具体的な政策が見えてこない。しかし、報道によると秋の新車は、国内市場のために開発した車両が減り、海外各国で販売する車種を日本に投入しているらしい。自動車産業は既に「枝」と判断した様だ。
【参考】 世界が尊敬する日本人100-抜粋― (ニューズウィーク10.17アレックス・カー)
近年日本は二つに分断されている気がする。第一は「安全体制」派で国民の9割がそこに属している。多少停滞気味ではあるが、別に気にしなければ安心して落ち着いて暮らせる。もう一つは残り一割の「不安・野心」派である。年齢・地方・職業に関係なく社会はこの二つに分かれている。 ・・・ 分断の過程で日本の想像力は「幹」から「枝」に流れ始めた。 ・・・ これからどちらのはが勝つかによって日本の道が決まるだろう。今のところ安心を求める主流派に勝ち目がある。 ・・・ だがニッチを押さえている日本はまだ比較的元気だ。世界的に「メジャー」の時代が終りつつあるのかもしれない。 ・・・ ニッチの中で「秘芸」を駆使して世界一のものを築き上げた職人は最終的に強い。 ・・・ 幹は多少朽ちても枝がこれほど面白く栄えればいいのかもしれない。■