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ーナンキ連銀議長が3月末にベア・スターンズ救済を決断して以来、潮の目が変わったと先取りして書いたが、予感が外れてなかったことが徐々に明らかになってきた。昨日のダウ平均13,000ドルを回復、連休明けの東証も日経平均14,000円台を回復して終えた。
次々と発表される経済指標は必ずしも必ずしも良くないのに何故か、と思われる方も多いはずだ。直近の雇用指数は減少し製造及び非製造指数は悪化したが予測していた最悪値を上回っていた。この数字を見て、米国の景気は停滞しているが深刻な景気後退にはならない、と市場は判断した。今の市場は余程酷くない限り何でも良いニュースにしたいのかもしれないが。
株式市場はもっと楽観的に反応しているとStreet.comのCurzio氏は書いている。足元の経済は雇用の悪化と住宅価格下落が続いているが、市場のセンチメントは楽観的になりつつある。楽天証券のアナリスト氏も先月28日、米大手金融機関が1-3月決算を乗り切り過度の懸念が後退したと解説している。
それでは誰が回復の原動力になっているのだろうか。連銀及び政府の素早い金融・財政政策が功を奏したといえるが、ビジネスの現場で誰が具体的に何をしてどう変化しているのか。それは意外にもウォール街でも好意的に見られてないハゲタカファンドが貢献していると日経ビジネスはビジネスウィークの興味ある記事(5/5)を紹介している。
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ゲタカファンドといえば経営難に陥った会社をただ同然の安値で買い取り、バラバラにして売り飛ばし巨万の利益を上げる、強欲で倫理観のかけらも無いと見られている。特に日本では忌み嫌われている。その冷酷無比なビジネススタイルは、ジャングルの中で死体や死に掛けた獣の肉を食い漁るハゲタカに喩えられ忌み嫌われる。
今、米国の経済のジャングルにはハゲタカの餌が溢れている。上記記事によれば、米国でデフォールトに陥った会社価値は2007年の42億ドルから、今年はたった3ヶ月で89億ドル相当に達したという。そして新種のハゲタカが現れサブプライム関連の不良を買い漁っているという。
従来のハゲタカと異なり、潤沢な資金を使い多様な投資テクニックを駆使して市場への影響力を増しているという。その強力な資金力で、大恐慌以来最悪とも言える金融危機から米経済が息を吹き返す原動力となる可能性もあると伝えている。
強欲で嫌われ者のハゲタカファンドは慈善事業ではない口に苦い劇薬だが、経済の端々に血を通わせ再生させている。「引き取り手のない住宅ローンや買収資金用ローン債権を大量に買い、硬直状態の市場に貴重な資金を送り込んでいる。又、巨額の債務で首が回らない会社の株を買い、資金繰りに窮する企業に信用枠を供与している」という。
ハゲタカファンドは4000億ドル規模の資金を保有し、無視できないまでに儲けの可能性が膨らみ、リーマン・ブラザーズ、ブラックロック、カーライル・グループなどの業界エリート企業も引き付けられ、「ウォール街の主役」になるかもしれないと一部で見られている。
この記事を読んで私はシリコンバレーにハイテック・ベンチャーが現れた時のことを思い出した。ジーンズにTシャツの若者がガレージで創業し、彼らが開発したハイテック商品が瞬く間に世界を席巻した。新種のハゲタカもウォール街の高層ビルではなく、まだマジソン街沿い小さな事務所で仕事をしているという。
だが、甘く見てはいけない。従来のハゲタカは死掛けている獲物を狙ったが、新種のハゲタカは潤沢な資金でまだ元気な獲物にも襲い掛かって餌にするという。彼らは2006年初めには既に住宅市場が軟調だと気がつき、2007年初めには住宅市場が崩壊寸前だと判断し賭けに出たという。自分を信じ、成功すべくして成功した。この身勝手で溢れ出る若いエネルギーの凄さは羨ましくもある。■