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持率低下に歯止めがきかない福田内閣は、遂に世論調査を実施した報道各社の中には20%を切ったものまで出て危険水域に入ったと報じられている。ここにきて支持率が急落した原因は暫定税率の復活と後期高齢者医療制度が原因だという。問題は首相の支持率ではなく我国の政治の混迷の中で世界から取り残されているという内外の指摘が増えていることだ。
福田首相の肩を持つ積りはないが、最初私も考え方は悪くないと思っていた。道路特定財源の一般財源化や日銀総裁候補など主要新聞の社説は好意的な見方をするものが多かったが、ネジレ国会で議論が空転し事態が悪化するほどに支持率は低下した。
何故か?支持率は社説ではなくTV番組の人気司会者の発言によって左右された。山口県補選で敗北後の首相と公明党との党首会談で、太田代表は「新聞の論説委員だけに理解してもらっても仕方がない。みのもんたさんに理解してもらわないといけない」と述べたと報じられている。
福田内閣誕生後から、延々と議論した挙句に野党の政策や主張を丸呑みするか更に前進させた政策を打ち出すものの、その頃には争点に関る実行の部分で官僚の出鱈目が明らかになって野党に付込まれ、抜本政策も最早国民にも評価されないサイクルが続いている。
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民党は元々何でもありの政党、言い換えると政権を維持する為には何でもするといわれてきた。今、民主党も政権を奪取する為には何でもありになったように見える。自党の主張をほぼ丸呑みされても妥協点を見つける気は全く無い、次なる争点を突きつけて対決をエスカレートしていく。
それでも民主党が何とか国民の支持を取り付けているのは、議論の推移とともに官僚の不手際がタイムリーに暴露され、TV報道が国民の怒りに火を注ぎ、その怒りが現政権に向うからだ。かつてと異なるのは官僚が余りに堕落してしまい、どんな争点になってもちょっと探せばテレビネタになる不祥事が何処にでも転がっていることだ。
福田首相・町村官房長官の官僚(的)体質がこれを助長しているように私は思うが、どうも本人は気付かれてないようだ。こうなった事態に対する首相の「恨み節」を聞くと、今流行の「KYお笑いコンビ」と皮肉りたくなる。国民の感情を逆撫でする。それが次々とポピュリズム政治の悪循環を続けさせる。
民主党は一方でまさに自民党の十八番(おはこ)を取って政権をとるためには何でもする、それより最優先の政策はないかのごとき印象を受ける。それは真に国民の為か。今回の世論調査では支持率が増加したが、国民は民主党の政権担当能力にまだ疑いを持っていると思う。
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野党の対立軸が「ムービングターゲット」になっているのがその原因である。両党のゴールは政権奪取であり、我国をどういう国にするかという明確なポリシーが見えてこないためだ。冷泉彰彦氏がこれを明快に説明した記事を見たので紹介する。それによると現状の我国の政治状況を「権力対反権力」の対立軸とよび、日本の政治を貧しくしていると説いている。
米国に住む氏は「大きな政府(民主党)か、小さな政府(共和党)か」という軸に沿って、それぞれに具体的な選択肢が提示できる政治システムがあるという。この対立軸は、全政策に渡るもので、個別政策を決定して歳出を決める為だけではなく、歳入(税制)をどうするかという議論が表裏一体でなされる。
日本でも小選挙区比例代表制が導入された時、二大政党による対立軸が想定されていた。しかし、先の参院選で与野党逆転した時から「貧富の格差」と「地方と中央の格差」を救済するのは、行政の責任だという「空気」が蔓延し、日本流の「小さな政府論」は消えてしまった。
冷泉氏によると日本の政治風土に根ざした「権力対反権力」という図式の対立エネルギーが残っていて、冷静な政策合意形成を阻害していると指摘している。その中で格差問題の各論で全てを語るかのような議論をテレビが助長し、官僚の堕落が火を注いでいると私は感じる。
一方でネジレ国会による政治の停滞は従来表面化しなかった争点を深堀する時間を与え、メディアは積極的に具体的問題を国民に明らかにした貢献は評価すべきである。ポピュリズムを脱して「対立軸の耐えられない貧しい政治」を変えるのも、又、民意の表れと言いたい。■