一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第74期王将戦第1局

2025-01-13 20:07:50 | 男性棋戦
12日から、第74期王将戦七番勝負が開幕である。その王将戦だが先日、主催の日本将棋連盟から発表があり、今期をもって、毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社が主催から外れることになった。
物事には始まりと終わりがある。両社とも役目を終えたということで、いままで多くの記譜を提供いただいたことに、深く感謝の意を表したい。
さて、王将3期の藤井聡太七冠に挑戦するのは、永瀬拓矢九段。永瀬九段は打倒藤井聡太の旗頭ではあるが、ここまで対藤井のタイトル戦は、第93期棋聖戦、第71期・第72期王座戦のすべてに敗れている。ことに第71期王座戦は、負けて「名誉王座」を獲り損ねた。永瀬九段にとっては藤井王将こそ目の上のタンコブ、それでいて最も敬愛する相手である。今回は初の2日制・持ち時間8時間で 「これまで2日制で藤井王将に勝った人はいない。誰かが突破口を開かねば」と意気込む。
第1局の対局場は、おなじみの静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」。最近は各地でタイトル戦の誘致が盛んなはずだが、毎期同じ対局場があるのは、どういうわけだろう。対局終了時に、その場で来年の開催も予約しているわけではあるまいが……。
先の竜王戦七番勝負で、佐々木勇気八段が大健闘した。星こそ2勝4敗だったが、勝った2局は完勝で、負けた4局も競った将棋が多かった。永瀬九段も大いに刺激を受けたはずだが、それにはこの第1局を制することが絶対条件である。
第1局は永瀬九段が先手。まずは飛車先の歩を突き、相掛かりになった。こういう動きは素人にはさっぱり分からないのだが、まだ序盤と思える段階で、永瀬九段が端攻めに出たのに驚いた。
しかも1三に垂らした歩を、藤井王将が自ら角を換わり、3二の金で取りに行ったから驚いた。
これじゃあ歩を取り切ったところで、金が働かないだろう。
……いやいや、藤井王将は先の竜王戦第6局で、まったくの遊び金を活用し、最後はピッタリ玉の頭につけた。そんな藤井王将のこと、本局も巧妙に働かせるのだろう。私はもうダマされないのである。
封じ手は永瀬九段。左の桂を跳ねた。やがて左右の桂を五段目に跳ね、好調。対して藤井王将は、端の金をじっと寄る。この忙しいときに遊び駒の活用とは、藤井王将以外指せない。
とはいえ考慮時間はいつも通り藤井王将が多く使い、どう考えても永瀬九段のほうがよい。このあたり、永瀬九段は考えていて楽しかっただろう。
永瀬九段、角を打って攻めを続ける。アマ同士だったら先手が圧勝するが、ここから藤井王将がうまく指すのだろう。その先で永瀬九段が勝ち切れるかどうかだ。
永瀬九段、5筋で金を取り、その金で飛車を取る。しかし藤井王将も例の金で香を取り、まだまだ。というか、あの金がここまで来たのか!
寸隙を縫って、藤井王将が反撃する。桂香を盤上に据え、相手の金を取ると、香を守ってあの金をじっと寄った。
まったく、あのバカ金にここまで活用されてはクサル。これはもう、藤井王将の勝ちの流れだと思った。
以下は藤井王将のホレボレする攻めを見るばかり。永瀬九段も粘るが、たぶんAIは藤井王将優勢と断じているはずで、ここまで来たら、もう逃さない。112手目、藤井王将が桂を取りつつ例の金を寄ると、もはやこれまでと、永瀬九段が投了した。あの端金が、最後は中央で大威張り。私の予想以上の金の大活躍で、藤井王将の構想に、心底舌を巻いた。
藤井王将は幸先いい1勝。対して永瀬九段は、先手番でこの将棋を落としたのは痛い。永瀬九段は、膨大な研究量に加え、何かが必要だと思うのだが、それが分からない。
第2局は25日(土)、26日(日)。
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王将戦に激震走る

2025-01-09 23:45:39 | 男性棋戦
先日の将棋連盟のお知らせは、けっこうビックリした。
12日から第74期王将戦の挑戦手合いが始まるが、第75期から、主催者の毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社が撤退するとの発表があったからだ。
もともと毎日新聞は名人戦・順位戦を主催していたが、1949年前後のこと、契約金の関係で、同棋戦が朝日新聞社に移った。その名人戦に対抗して創設した棋戦が王将戦だった。
王将戦は当初こそ一般棋戦だったが、1951年にタイトル戦に昇格した。以降の概略は以前も書いたから割愛するが、大きな変化があったのは、1977年だ。名人戦・順位戦の契約金が朝日新聞社との間でこじれ、また毎日新聞社に戻ってきた。
これで毎日新聞は名人戦と王将戦の2棋戦を持つことになったが、1社ではキツイ。そこでスポニチが王将戦主催に加わり、運営していくことになった。
だが、ネット全盛のいま、新聞社の旗色は悪い。毎日新聞、スポニチも発行部数を落としているはずで、あれから半世紀近くたったいま、2棋戦の運営は再びキツくなった。そこで連盟との協議のすえ、王将戦だけ手放したものだろう。
これ、一般棋戦だったら、そのまま終了となるところ。実際、週刊文春主催の名将戦、日刊ゲンダイ主催のオールスター勝ち抜き戦は、終了となっている。
だが「王将戦」は多くの名勝負とエピソードを紡いできた大棋戦で、おいそれと終了させることはできない。
そこで連盟が単独主催として一時預かりとし、大スポンサーを模索するものと思われる。
個人的には、王将戦はタイトル戦の無料中継がなく、観戦記もタイトル戦のみ。しかも1局あたり4譜と少なく、貧乏人見る将からすると、馴染みのある棋戦とはいえなかった。
そこで新たなスポンサーが現れ、無料中継をしてくれるようになればうれしいのだが、現れるだろうか。
藤井聡太王将が登場する七番勝負のみ特別協賛はできても、棋戦全部となると、相当なおカネがかかる。金持ちの企業でも、二の足を踏んでしまうのだろう。上はA級棋士から下はフリークラスまで、予選・リーグ戦の記譜を提供してもらっても、公開する場がなければ、宝の持ち腐れである。
個人的には大嫌いだが、ソフトバンクあたりが手を挙げてくれれば、さまざまな角度から王将戦を売り出してくれそうなのだが、まあ、やらないだろうなあ。
どうなる王将戦。
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第37期竜王戦第6局(後編)

2024-12-13 00:45:29 | 男性棋戦
第37期竜王戦第6局である(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)。
局面を見ると、藤井聡太竜王が銀を逃げ、佐々木勇気八段が端に角を打ち(王手)、藤井竜王が歩で受けていた。先手は1手しか指していないから、この角がいかに悪手だったかということだ。
この角、私レベルのアマは、つい打ちたくなる。この瞬間は気持ちがいいが、ふつうに受けられて窮してしまうのだ。よくあるパターンである。
それを佐々木八段がやっちまったことが信じ難いが、藤井竜王の歩は数手後の妙手ではない。王手の応手である。佐々木八段が熟慮した1時間6分の間に、当然この手も入っていただろう。だが、自ら飛車先を止めるだけに、軽視していたか。しかし藤井竜王は理外の理の手も平気で指す。持ち時間はたっぷり残っていたのだ。佐々木八段はここが勝負所と、もっと注意深く読まねばならなかった。
現実に戻り、佐々木八段はすでにこの罪に気付き、頭を抱えていた。将棋盤は目の前にあるのに、あらぬところを見ている。対して藤井竜王は盤上没我だ。これはもう、流れは藤井竜王である。
ここで封じ手。佐々木八段は封じたくなかっただろうが、巡りあわせだから仕方ない。
明けて2日目、12日。私だったら何はともあれ馬を出るが、開封されると、佐々木八段のそれは、香を打つ手だった。だが悪手は悪手を呼ぶがごとく、この手も問題だったようだ。ついに形勢バーは「佐々木35:65藤井」になった。
あんな混乱した状態で封じ手を指せ、というのが無理な話で、ここは冷静さを取り戻すべく、2~3時間を割くべきだった。だが関係者の手前、それもできなかったか。
消費時間は佐々木八段のほうが2時間32分多く残しているが、もう藤井竜王に、そんなに時間はいらない。ここから消費時間が詰まっていくだろう。
そこからしばらく経って局面を見ると、佐々木八段が角2枚を犠牲に、強引に飛車を取っていた。藤井玉は左辺に逃げているが、1四にいた遊び金がない。よく見ると藤井玉の上に乗っていた。あ、あのポンコツ金がしっかり働いている!
大山康晴十五世名人は、遊び駒をいつの間にか玉の守りにつけていたが、藤井竜王のそれもえげつない。この展開は佐々木八段にとってあんまりである。
佐々木八段には悪いが、あとは投了までの儀式を見るのみとなった。藤井竜王の急所の角打ちに、もはやこれまでと15時22分、佐々木八段が投了した。藤井竜王、4連覇なる!!
いやはや何とも、ドラマチックな展開だった。本局、明らかに藤井竜王が悪かった。佐々木八段も、最終局を意識した場面があっただろう。
しかし71手目の角打ちの王手が大悪手で、以降の佐々木八段は心ここにあらず、夢遊病者のようだった。
全6局大健闘で、竜王戦史に残る名勝負だったと思うが、タイトル戦はトータルで勝たねば意味がない。佐々木八段もモヤモヤしたものが残っただろう。再度の登場を期待する。
そして藤井竜王は、これでタイトル26期目である。とにかく強すぎて、何も形容できない。
打倒藤井の強力な刺客が現れないいま、藤井竜王の快進撃は、まだまだ続きそうである。
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第37期竜王戦第6局(前編)

2024-12-12 02:16:02 | 男性棋戦
11日、12日は第37期竜王戦第6局である(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)。ここまで藤井聡太竜王3勝、佐々木勇気八段2勝。七番勝負終盤の大一番だ。
対局場は鹿児島県「指宿白水館」。2017年、羽生善治九段が永世七冠を達成した宿で、いまや「陣屋」に並ぶ、タイトル戦温泉宿の聖地といってよい。
ちなみに佐々木八段は指宿市の観光大使に任命されたそうだが、私も指宿市は何度も旅行記に書き、好きな観光地のひとつである。ただ、私の認知度がまったくないので、指宿市からは何のアクションもない。
さて11日はバイトがあったので、休み時間の合間にABEMAを見た。こうして中継をしてくれるABEMAには、改めて御礼を申し上げたい。
将棋は佐々木八段の先手。第2局、第4局の先手番はいずれも完勝だったので、カド番とはいえ、佐々木八段は自信を持って本局に臨んだと思う。
私が初めて本局を見たのは、10時50分ごろだったか。なんと、盤上で馬と飛が取りになっていた。開始3時間足らずで、なんでこんな局面になっているのか。
そこで、読売オンラインで記譜を確認してみると、相掛かりで始まった本局、藤井竜王が18手目に右金を玉の上に上げたのが、私的には奇異だった。
現在の将棋界では、「△6二金―△8一飛」の形が大流行で、相居飛車戦においては、すべての戦型で通用する。藤井竜王も好きな形のはずだが、それを序盤で放棄したことにビックリしたのだ。
しかも先に仕掛けたのは藤井竜王のほうだった。どうも定跡っぽいらしいのだが、こんな手が定跡になっているのか。
そこからバタバタと手が進み、現在の局面になった。そこで藤井竜王は金で飛車を取った。佐々木八段も当然馬を取る。そしてこの形勢がほぼ互角だったことに驚いた。
いやいやいやいや、これは飛車を取った後手の金の形がひどすぎて、後手には肩入れできない。いまは互角でも、手が進むにつれて、この金のポンコツぶりが必ず露呈される。さすがのAIもそこまでは読めないのだ。この将棋は佐々木八段が勝つと思った。
次に見た局面は、佐々木八段が中央に馬を作り、藤井竜王が長考に沈んでいるところだった。
やっと未知の局面に入ったか、という気もするが、イメージ的にはもう終盤戦である。だが後手が攻め合いで勝てそうな局面ではないから、受けに回るのだろうか。しかしここで守ったら、形勢に差が開くのではないだろうか。
結局2時間14分の大長考で指された手は、玉の懐を拡げる手だった。
指されてみれば当然の手だが、それをこれだけ考えるということは、その先の変化に成算が持てなかったということだ。考えれば考えるほど自身が悪くなるので、指すに指せなかったのではあるまいか。
佐々木八段、熟考で桂を打つ。ABEMAの形勢バーはこの時点で、「佐々木65:35藤井」だった。やはりそうであろう。1筋にあんな遊び金があって、後手がいい道理がない。
藤井竜王は「ガクッ」と首を垂れる。藤井竜王は、形勢がいいときも難しい顔をしているが、悪いときはそれがさらに顕著になり、明らかに態度に出る。今回の「ガクッ」は、非勢を認めたものである。これは佐々木八段、タイに持ち込んだか。
ところがここからしばらく経ち、スマホで確認すると、形勢バーが「佐々木44:56藤井」になっていたから驚いた。だってさっきの局面から何手も進んでないだろう。いったい、何があったのだ!?
(つづく)
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第38期竜王戦ランキング戦

2024-12-03 12:48:04 | 男性棋戦
現在第37期竜王戦の挑戦手合いが進行中だが、各クラスの昇降級者はすべて決定し、第38期のランキング戦トーナメント表が発表された。では、ちょっと感想を書いてみよう(トーナメント表は省略)。

1組は名人・順位戦A級在籍者が、藤井聡太竜王or佐々木勇気八段を加えても、3人しかいない。
そんな中、森内俊之九段、佐藤康光九段、郷田真隆九段、丸山忠久九段、木村一基九段、三浦弘行九段の50代が元気だ。羽生善治九段の名前がないのが残念だが、彼ら50代には、若いころは脳髄を振り絞って定跡を創ってきた自負がある。AIが正解を示した局面からその先を考える、安易なことはしていない。その「苦労の貯金」が、50代になって活きてきているのだ。

2組は、羽生九段と藤井猛九段の「元竜王」が1回戦でぶつかる。屈指の好カードだ。
竜王経験者が4名もいるいっぽうで、七段以下が7名と、フレッシュな顔ぶれになっている。

3組も2~30代の気鋭が集まっているという印象。A級は2名で、千田翔太八段と増田康宏八段。八段もこの2名のみだ。
佐々木大地七段はC級2組から唯一の参戦だが、ちっとも場違いな感じはしない。

4組は谷川浩司十七世名人が名を連ねて久しい。しかし今期はイケるのではないか。
前期降級した大橋貴洸七段は有力な昇級候補だが、あとは誰が昇級してもおかしくない。

5組は竜王戦のみ参加している川上猛七段がいる。どうも今期昇級できないと現役引退になりそうだが、頑張るしかない。勝てば2回戦で中村太地八段と当たる可能性があるが、これもドラマチックでよい。
竹内雄悟五段は、出口若武六段と。こちらも川上七段以上に勝ち星が欲しいところだ。
ほかは山下数毅奨励会三段が堂々の参戦。こちらも、昇級以外は参戦かこの期限りという噂もある。1回戦に勝つと2回戦は藤本渚五段と当たる可能性がある。逆にいえば、ここを抜ければ昇級の可能性は十分にある。

6組は総勢72名。第1期の19名から、約4倍に膨れ上がった。「昇級4名」は、C級2組の「54名・昇級3名」と同じ比率だ。もはや「くもの糸」といってよい。
順位戦参加が決まった小山怜央四段は瀬川晶司六段と。棋士編入組の組み合わせで、感慨深い。
増田裕司七段は島本亮六段と。その先のメンバーを見るに、そのまま勝ち進んでもおかしくない。持てる力をすべて出して頑張るしかない。

竜王戦はランキング戦の優勝賞金が高く、本戦トーナメントの対局料も合わせると、棋戦優勝のそれに匹敵する。
では皆さま、いい将棋を。
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