一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第50期棋王戦第2局

2025-02-22 23:44:11 | 男性棋戦
22日は、第50期棋王戦コナミグループ杯第2局である(主催:日本将棋連盟、河北新報、下野新聞、千葉日報、山梨日日新聞、新潟日報、信濃毎日新聞、静岡新聞、北日本新聞、北國新聞、京都新聞、山陽新聞、中国新聞、日本海新聞、山陰中央新報、愛媛新聞、高知新聞、長崎新聞、佐賀新聞、熊本日日新聞、南日本新聞、沖縄タイムス)。
第1局は藤井聡太棋王の勝ち。挑戦者の増田康宏八段は、早くもあとがなくなった。
そして第2局は石川県金沢市での開催である。金沢といえば、名駅の誉れ高い金沢駅をはじめとして、兼六園、金沢城石川門、ひがし茶屋街、金沢21世紀美術館、尾山神社、長町武家屋敷跡、中央市場通り商店街など、見所がいっぱい。これらすべてがひとつの町にコンパクトに収まっているのが奇跡的である。また郊外にはローカル線もふんだんに走っており、藤井棋王が大好きな街と推察する。
さて将棋は増田八段の先手で、角換わりっぽい出だしになった。
ところが藤井棋王が角道を止めたので、名前を付けようがない相居飛車の戦いとなった。藤井棋王もさすがに、角換わりの将棋に飽きたのかもしれない。
増田八段はカニ囲い、藤井棋王は雁木に組み、まさに昭和の局面だ。池田書店の大山康晴名人の棋書に出てきそうである。
歩の交換のみの細かいやりとりが続く。しかし71手目、増田八段の歩打ちを藤井棋王が角で取ったことで、本格的な戦いに突入した。
藤井棋王、馬を作りつつ駒得になって優位に立った。だがよく見ると、増田八段の銀が立ったら飛車馬両取りとなるではないか。果たして指し手もそう進み、これも藤井棋王の読み筋なのかと思った。
しかも藤井棋王が、歩を取りつつじっと馬を逃げたので、ひっくり返った。これでは飛車がタダ取られではないか!
藤井棋王に限らないが、プロ棋士の将棋を鑑賞していると、我が読みでは絶対に浮かばない手が出てくる。ここから先の数手後ではない。たかだか1手後である。今回の藤井棋王の馬引きもそうで、こんな手は一生考えても浮かばない。もう、我が凡庸の脳ミソとは、構造が根本的に違うのである。
とはいえ現実的には、藤井棋王の駒損である。だがここが藤井棋王への信頼で、それでも藤井棋王がいいのだと考えてしまう。藤井棋王も苦しんで指しているのは推察できるが、最後は藤井棋王が勝つだろうという絶大な信頼感が、そこにはあった。
藤井棋王、銀で俗手の王手。これを増田八段が取り、それを藤井棋王が取り返したところで、増田八段の投了となった。ちょっと中途半端な局面に見えるが、確かに先手は指しようがない。
やはり藤井棋王が勝った……! この将棋も増田八段、ダメだったか。
増田八段は今年度、棋王戦の挑戦を決めたところまでは、19勝6敗と快調だった。しかし叡王戦で藤井竜王・名人に負けてから調子を崩し、以後本局まで2勝6敗である。
なんだかもう第3局も勝てる雰囲気がなく、藤井棋王防衛の儀式を粛々と見せつけられるだけのような気もするのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第74期王将戦第4局

2025-02-17 13:25:40 | 男性棋戦
第74期王将戦第4局である(主催:日本将棋連盟、毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社)。ここまで藤井聡太王将の3勝で、永瀬拓矢九段は文字通り後がない。永瀬九段はとにもかくにも、指し込みを回避するのが絶対だ。
対局場は大阪府高槻市。大阪の新たな将棋の聖地で、町を挙げての将棋の取り組みは頭が下がる。
将棋は藤井王将の先手で、角換わりとなった。両者右金をまっすぐ上がって飛車を引く例の形で、指定局面まで、ノータイムですっ飛ばす。むかしは指しなれた形でも少考がまじったものだが、今の棋士は合理的だ。ただ、それがいいかどうかは分からない。
藤井王将、43手目に仕掛ける。これには△同歩が前例で5局あるが、これに永瀬九段が玉を寄ったのが新手だった。
永瀬九段の深い研究には定評があるが、ここで手を変えるという発想がすごい。前例がすべて「△同歩」なら、ここは素通りしそうなものだ。
果たして藤井王将は長考に沈んだが、ここでの変化球なら「先手が指せないとおかしい」という見解ではなかったか。
藤井王将は4筋で歩を手にし7筋を攻めるが、そこで永瀬九段の放った角が、たぶん最も指したかった手。
このマス目の角は天野宗歩のころから名角と相場が決まっていて、負けたのを見たことがない。
実際本局も「斜め屋敷の犯罪」(島田荘司)のように、角の利きがスーッと敵陣まで通り、後手有望に見える。
ただ、形勢は互角なのだろう。だがそれだと終盤力に定評がある藤井王将が有利なはずで、やっぱりこの将棋も藤井王将が勝つのかなと思った。
封じ手を挟み、藤井王将は飛銀交換の荒業に出る。アマ同士なら先手の無理攻めとなるが、何しろ攻め手が藤井王将だから、なんやかやと手を作っていくのだろう。
永瀬九段、待望の角出。受けては自陣に利かし、攻めては角切りや端の覗きを見ている。藤井王将はそれぞれの駒に120%の働きを課す。だからそのぶん勝率がいいのだが、永瀬九段のこの角はまさに120%の働きで、これは永瀬九段がイクかもしれないと思った。
永瀬九段、さらに飛車を下ろす。こうやって先手玉に嫌味を作っておくのがいいのだ。
藤井王将、4筋に歩を垂らす。これに永瀬九段が金を寄ったのがいい辛抱だった。この局面、私もいろいろ考えたのだが、私の棋力では後手玉が寄らない。
だけどそこは藤井王将のこと、私が思いもよらない攻めを紡ぐのだろう……と指し手を注目していたが、その回答は意外な銀打ちだった。
永瀬九段は丁寧に受ける。永瀬九段の本領は受けつぶしにあり、これは永瀬ペースになったと思った。
藤井王将の攻めが一息つき、永瀬九段にターンが回った。永瀬九段は鋭く迫る。
藤井王将、銀打ちの受けに、永瀬九段はお返しの銀打ちから寄せに入る。最後はあの角が王手に出て、終幕。永瀬九段の名局が誕生した。
藤井王将、2日制のタイトル戦で先手番の連勝が32連勝でストップしたらしいが、私としては、年度勝率8割がついえた事実のほうが大きい。
もっとも藤井王将は、そういった記録にはほとんど興味がないだろう。ここはつねに記録を意識していた大山康晴十五世名人とは違うところだ。
第5局は3月8日、9日、埼玉県深谷市で。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第74期王将戦第3局

2025-02-07 23:42:13 | 男性棋戦
今晩、北海道から無事帰京した。しかし愛用していた手袋を紛失してしまい、消沈している。
私はモノに愛着を持つ方で、ややもすると、ゴミさえ持ち帰ってきてしまう。今回の件でも、毎日いっしょにいた我が子を北海道に棄ててきてしまった、くらいの気持ちになっている。冬の旅行のお友だったのに……。
つらい……。

   ◇

第74期王将戦第3局(主催:日本将棋連盟、毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社)が5日、6日と、東京都立川市で行われた。ここまで藤井聡太王将の2勝。永瀬拓矢九段は実質的に後がない。
立川市は「達人戦立川立飛杯」の主催者であり、最近将棋の町として注目されている。タイトル戦詣でが好きな東京在住者は移動の交通費があまりかからず、立川市は貴重な存在だと思う。
将棋は永瀬九段の先手で、角換わりになった。いささか食傷気味だが、居飛車党の両者が戦えば戦型も限られるし、やむを得ない。
藤井王将は右玉に構える。永瀬九段の研究量は凄まじく、ふつうに追随していたら作戦負けになる。同じ作戦負けなら右玉でのらりくらりと指したほうがベター……と藤井王将が考えるわけもないが、近いところはあるのではないか。
藤井王将は馬を作り、好調に見える。銀交換のあと、じっと飛車を引く。私だったら△3五銀で飛車を殺しニンマリしているところだが、それだと▲1七角の切り返しがあるのか。
結局永瀬九段はその馬を角と交換し、AI52%の形勢となった。しかし藤井王将に勝つにはまだ一山も二山もある。藤井王将に勝つのは本当に大変だ。
藤井王将は飛車角交換を果たし、桂取りに飛車を下ろす。実は本局、私がいちばん感心したのはこの手である。ここ、ふつうは△2八飛と金桂両取りに打ちそうなものではないか。そこをじっと桂取りのみに打つとは、私は一生考えても浮かばない。
永瀬九段は攻めに転じるが、なんとなく強引っぽい。攻めているのに「疲れ」を感じるのである。
藤井王将は桂打ちから反撃に出て、「底香」を崩しにいく。これは永瀬九段の攻めに比べて分かりやすく、労力も少ないように思える。むろんこの攻めできっちり一手勝ちとの裏付けは済んでいる。
最後は永瀬九段の突撃にじっと歩を受け、永瀬九段が息切れで投了した。けっこう珍しい投了図で、この勝ち方もまた凄まじい。
これで藤井王将は七番勝負を3勝0敗とするとともに、通算成績も21勝7敗とした、ことに直近の11局は10勝1敗と、完全に圧倒している。
永瀬九段からすると、どんなに優勢でも最後はひっくり返されるような、疑心暗鬼に陥っているのではないか。
だから第4局も永瀬九段が居飛車でいったら、負けると思う。思い切って振り飛車はいかが。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第50期棋王戦第1局

2025-02-03 23:53:19 | 男性棋戦
2日に第50期棋王戦五番勝負が開幕した。挑戦者は増田康宏八段。竜王戦の佐々木勇気八段に続いて、A級八段の登場である。藤井聡太棋王にタイトル戦でまみえる14人目となるが、増田八段が残っていたか、という感じである。ただ、相手が並みのタイトル保持者なら初タイトルも有望だが、藤井棋王の壁は高い。まずは開幕局を取ることが絶対である。
第1局は高知県高知市で。高知といえばJRローカル線に第三セクター、路面電車もあり、鉄道マニアには堪らない環境だ。また高知城の天守閣もあり、「まんが甲子園」も長く続けている。私のための観光地といえる。
といいつつ私は、高知はおろか、四国は長くご無沙汰している。またお邪魔したいと思う。
第1局は振駒で藤井棋王の先手。棋王戦の振駒は、不思議とタイトルホルダーが強い。
将棋は藤井棋王が飛車先の歩を突いてスタートしたが、増田八段が注文をつけ、角換わりとなった。
お互い右金を上がり、あとは両者とも飛車を引くのかと思いきや、増田八段が初めて消費時間を使い、6筋の歩を伸ばした。
これが増田八段の用意した手で、これに藤井棋王が反応する。30分あまりの熟考で、3筋から仕掛けた。歩で取る一手に桂を跳ね、もう、元には戻れない。
これで先手がよくなれば新定跡の誕生となる。ABEMAの解説は、どの変化も先手よしとしている。だが実戦は増田八段がよく辛抱し、崩れない。
だけどこれなら、攻めている藤井棋王がそのまま攻め倒すのだろうと思った。
だが藤井棋王は攻めきれず、いったん休止。気が付けば、増田八段のほうが指しやすくなっていた。まさに増田八段の充実を示すもので、たぶんほかの棋士だったら、そのまま攻め倒されていただろう。
だが藤井戦はここからが大変である。いまは藤井棋王のほうが持ち時間を多く使っているが、藤井棋王は勝ちの終盤でほとんど時間を使わない。私たちヘボは終盤こそ時間が欲しいが、藤井棋王は逆である。将棋の終盤は変化が多岐に渡るが、序中盤と違ってある程度の解がある。そこを藤井棋王はスーパーコンピューター並みの読みで、すべてを読み切ってしまう。だから時間がいらないのだ。
よって増田八段は、どう指しても自分が勝ち、という局面まで作らねばならない。これがどうにも難儀である。昔の大山康晴名人戦がそうだったが、その局面を作るまでで疲労困憊となり、容易に勝ち切れない。増田八段はここからが正念場だ。
増田八段、8筋に歩を垂らす。実にいやらしい歩だが、どうもこれがまずかったらしい。将来の飛車の王手に受ける歩がなくなってしまったからだ。
増田八段の攻めに、藤井棋王は6筋の歩を成り捨てる。ABAMA候補手になかった手だが、藤井棋王の指した手だから悪くはない。そのココロは、自陣に歩を打ち、後手の攻めを頓挫させる意味だった。実戦的な手で、逆をもってこの類の手を指されると、戦意を喪失してしまう。
以下は藤井棋王が間隙を縫って反撃し、寄せ切った。投了図、後手玉に即詰みはないようだが、指し手を進める途中で後手の馬を消去することができ、先手の頓死筋がなくなるのだ。
投了図で、藤井棋王の残り時間は3分、増田八段は残り1分。やはり最後は残り時間が逆転していた。
藤井棋王は、苦しみながらも勝利し、まずまずであろう。
いっぽうの増田八段は私の予想以上によく戦ったが、どうであろう。やはり勝ちがほしかった。残り4局を3勝1敗は相当キツイ。ただまあしかし、次の先手番を取れば、ふりだしに戻れる。次局に期待である。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第74期王将戦第2局

2025-01-26 23:30:55 | 男性棋戦
世間ではいろいろニュースがあるが、将棋界は平穏。粛々と行事が進行する。25日、26日は第74期王将戦第2局である(主催:日本将棋連盟、毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社)。
対局場は京都府「伏見稲荷大社」。千本鳥居が有名で、観光地ランキングでは、いつも上位に位置する。だが私は、まだお邪魔したことがない。
第1局は藤井聡太王将が勝った。挑戦者の永瀬拓矢九段は、早くも後がない。第2局は後手の永瀬九段が注文をつけ、先手の横歩取りとなった。
藤井竜王は青野流を採用する。横歩取りはこの青野流が強力で、先手よし、が通説になっていると思うのだが、永瀬九段にどんな対策があるのか。
永瀬九段は早くも2筋を謝ったあと、角を換える。これに藤井王将が金で取ったのが意外で、私はのけぞった。最近もどなたかの実戦で、似た局面で金で取っていたが、いまはこれが定跡なのか。銀冠ならぬ金冠も市民権を得たし、むかしの定跡はことごとく塗り替えられている。
永瀬九段は飛車を引き、次に歩の垂らしがある。だが藤井王将は受けず、歩を垂らされてしまった。藤井王将はこういうとき、本当に謝らない。
永瀬九段の端歩攻めにも悠々と桂を跳ね、端を取り込ませる。名人に定跡なしというがあんまりで、手の予想がまったくつかない。藤井王将は素知らぬ顔で飛車を四段目に浮き、後手の歩突きを牽制する。まるでインベーダーゲームのようだ。
消費時間は藤井王将のほうがはるかに多く使っているが、これも終局時にはイーブンになっているのだろう。
と思いきや、永瀬九段が突然大長考に沈み、じっと端歩を突いた。
そこで藤井王将の封じ手となったが、これが大方の予想手を裏切る手だった。だけど藤井王将が指したのだから、これが正着なのだろう。
数手後藤井王将の金は端に追いやられたが、どうせこの金は最後に働くのだろう。
藤井王将は薄い2筋に目をつけ、角の成りこみに成功した。以下駒の交換がいろいろあったが、永瀬九段には二枚飛車の攻めが約束されており、これは藤井王将も容易でないと思われた。
藤井王将はと金を捨てる。そして継続の角捨て! 玉で取る一手に、今度は背後から角打ち!! そうかそうか、この寄せ形があったか!!
どうも藤井王将には、私のようなヘボには見えない、囲いの急所が見えているのだ。そしてそれにはどの駒が必要か見極め、寄せ形を構築していくのだ。
以下、93手まで藤井王将の勝ち。1枚の遊び駒のない、見事な最終図だった。本当に藤井王将の将棋は、おカネを出しても鑑賞する価値があると思った。
さて、2局を終わって藤井王将の2勝は、ここまでの勝敗予想を行ったら、最も票が集まる数字だったと思う。もはや藤井王将の防衛は決まったも同然だが、王将戦は少なくとも今期まで、四番手直りのルールがある。永瀬九段は是が非でも、1つは勝たねばならない。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする