地上に出てさっぽろテレビ塔を見ると、時刻は10時49分だった。けっこう時間が経ってしまった。今日も天気はよく、ふつうに過ごせそうだ。
今年は雪不足が報道されたが、雪像はしっかり造られてある。4丁目の中雪像は「スーモわくわく雪像」。不動産・住宅情報サービスのキャラクター「SUUMO」の雪像である。
大雪像は「ALL IS ONE~世界のはじまり、アイヌ物語~」。アイヌの神話の一場面を雪像化している。
5丁目は道新・雪の広場で、大雪像は「世界を目指して駆けるサラブレッド」。手前ではジョッキーとサラブレッドが駆け、その後ろに凱旋門が聳えている。これは凱旋門賞の一場面のようだ。
6丁目は市民の広場で、「北海道食の広場」。ここまでの人出は時間的なこともあるのか少ない感じだが、さすがにここは人が増えた。各地のラーメンに海鮮の数々、そのほか美味いものが揃っているのだが、私はここで食べたことがほとんどない。北海道に来たからには、店内で落ち着いて食事をしたいのだ。
中雪像は「うももも」という奇妙なものだった。
私は運営本部に入り、さっぽろ雪まつりのパンフレットをもらった。
また、この反対側では北方領土返還署名コーナーがあり、今回も署名する。
「32年連続で、東京から来ております」
いらぬことを言ってしまった。
7丁目はHBCポーランド広場。大雪像は「ワジェンキ公園の水上宮殿とショパン像」である。毎年各国の伝統的建造物が披露されるが、今年も細かい造作が素晴らしい。雪まつりの「顔」となるべき出来である。夜のライトアップが楽しみだ。
傍らでは永谷園が出店している。お茶づけ各種が食べられるが、一杯300円は微妙な値段だ。
その右手は永谷園撮影コーナーになっており、「お湯あっつ!」「永谷園サイコー」「お茶づけにオレはなる!!」など、面白吹き出し看板が用意されていた。撮影者はこれを持って撮影するのだ。
中雪像は太田胃散・公式PR大使「太田胃にゃん」。太田胃散といえばショパンの「プレリュード第7番である。
そのほかにも、雪ミクの中雪像など。オフィシャルグッズ売り場では、雪ミクの商品が多数展示されている。姪に何か買っていきたい気もするが、荷物になるので躊躇する。
8丁目は雪のHTB広場。大雪像は「ウポポイ(民族共生象徴空間)2020.4.24OPEN」である。4月24日に白老町ポロト湖畔に大規模なフィールドミュージアムが開園するらしい。
ステージ上ではアイドルタレントの画像をバックに、親子が記念撮影の列を作っている。やはりステージでは有人のイベントが必須である。
白老は観光的に地味なのだが、私は学生時代にほっこりする経験をし、応援したいエリアである。ウポポイの成功を祈る。
9丁目は市民の広場。中雪像は「うなぎのぼり滝登り!」。市民は制作に時間を取れないので、造作よりアイデア勝負となる。
中雪像は「ヒカキン&セイキン」。彼らはYouTuberだが、その職業の人が雪像になるとは、時代も変わったものだと思う。
小雪像は、市民の雪像である。「きたきつね」グループは毎年、旬の有名人を雪像にしており、楽しみである。ちなみに昨年は「大坂なおみ」で、人気投票の1位に輝いた。
今年はラグビーのリーチ・マイケル選手だった。今年も噴き出すくらいよく似ていた。
10丁目はUHBファミリーランドで、大雪像は「サザエさん一家とウィンタースポーツin SAPPORO」である。「サザエさん」放送50年を記念し、満を持して登場である。雪像は、サザエさん一家がウィンタースポーツに興じているものである。
中雪像は「巨大カップヌードル&八村塁の雪像トンネルwithミニSL」。巨大カップヌードルの精巧さはいつものことだが、八村塁がよく似ている。最初は誰を模していると思ったのだが、「解答」を見なくても、八村塁に思いあたった。
11丁目は国際広場。ここの目玉は「国際雪像コンクール」で、世界の英知が結集された雪像が鑑賞できる。
小雪像はおなじみ「雪ミク(初音ミク)Snow Parade Ver.」。雪ミクはあっちこっちに雪像があり、大人気だ。11丁目の雪ミクは昼より夜のほうがいい。雪像も色が入って映えるし、ミクオタが集まり、音楽に乗って踊りまくるのも、雪まつりの風物詩だ。
背後の雪ミクオフィシャルショップでは、客が列をなしている。私は赤十字が発売しているクリアファイルを購入するのが定跡になっているが、それはどこにあっただろう。
もうひとつの小雪像は、「北海道だいすき発見隊アローラロコン」。ポケモンのキャラのようだ。
12丁目も市民の広場。こちらのほうが9丁目より市民色が強く、ほのぼのとした作品が見られる。
ここで雪まつり会場は終わりだが、私はその先の北海道資料館に行く。昨年は改修工事の話があったが、どういう予定になっているのだろう。ただ、今年も通常通り開館しているようだ。
入口で催しモノの案内を見る。「ゆきみどりの部屋」があった。ここも含めすべてが今日9日までの開催で、私は11日の来場も考えていたから、あぶないところだった。
しかし2階に上がると、ゆきみどりさんはいなかった。しかも室内の展示が妙にさっぱりしている。
奥の部屋は、おなじみ「札幌市子ども造形展」だ。これが子供とは思えぬ力作ばかりで唸ってしまう。感性というか発想が素晴らしく、とても大人には太刀打ちできない。
ゆきみどりさんの部屋に戻ると、彼女がいた。相変わらずの八嶋智人顔で、元気そうでなによりだ。
「どうも。ずいぶん室内がさっぱりしてますが」
「コロナウイルスの関係で、装飾を最小限のものにしたんです」
コロナとの因果関係が分からぬが、メンタル的にやる気にならなかったのだろうか。「今年は窓からの眺めも楽しんでいただきたいと思います」
なるほど、窓からは大通公園がまっすぐ見え、一幅の絵だ。それはいいとして、私は昨年の、自身の反乱を述べねばならない。ゆきみどりさんも残念がってくれたが、私は愚行を吐露したことで、多少気分が軽くなった。
ゆきみどりさんとは話が弾んだが適当なところで部屋を辞し、「創作わら細工のふじやま」に行く。ここの職人氏ともこの何年かお話をさせていただいている。職人氏は私を憶えているふうだったが、どうだったのだろう。
「ぽんち展16」は、アマチュアカメラマンの写真展だ。日常の風景を自然に切り取っている。
「村井紘一水墨画展」の部屋にも入る。昨年まではここに乞望さんの店があったのだが、昨年をもって出店を辞めてしまった。
村井氏は見学の客を相手に、おしゃべりしながら制作している。いまは城郭の絵だ。
「昔は頼まれて制作したこともあったんですが、いまは作品を売っていません」
客の女性の問いへの答えである。これが本業じゃないなら、どうやってメシを食っているのだろう。
気が付くと、客の中に乞望さんがいたのでびっくりした。
「山水画といえば海、森、河ですが……」
村井氏はそう言って、薄墨を紙の上で伸ばす。私もしゃべらなければいけない雰囲気になったので、
「黒一色なのに、風景の色が想像できるのが素晴らしい」
と言った。我ながらいまいことを言ったもので、村井氏の表情もほころぶ。
私は乞望さんにも挨拶をし、その部屋を後にした。
(つづく)
今年は雪不足が報道されたが、雪像はしっかり造られてある。4丁目の中雪像は「スーモわくわく雪像」。不動産・住宅情報サービスのキャラクター「SUUMO」の雪像である。
大雪像は「ALL IS ONE~世界のはじまり、アイヌ物語~」。アイヌの神話の一場面を雪像化している。
5丁目は道新・雪の広場で、大雪像は「世界を目指して駆けるサラブレッド」。手前ではジョッキーとサラブレッドが駆け、その後ろに凱旋門が聳えている。これは凱旋門賞の一場面のようだ。
6丁目は市民の広場で、「北海道食の広場」。ここまでの人出は時間的なこともあるのか少ない感じだが、さすがにここは人が増えた。各地のラーメンに海鮮の数々、そのほか美味いものが揃っているのだが、私はここで食べたことがほとんどない。北海道に来たからには、店内で落ち着いて食事をしたいのだ。
中雪像は「うももも」という奇妙なものだった。
私は運営本部に入り、さっぽろ雪まつりのパンフレットをもらった。
また、この反対側では北方領土返還署名コーナーがあり、今回も署名する。
「32年連続で、東京から来ております」
いらぬことを言ってしまった。
7丁目はHBCポーランド広場。大雪像は「ワジェンキ公園の水上宮殿とショパン像」である。毎年各国の伝統的建造物が披露されるが、今年も細かい造作が素晴らしい。雪まつりの「顔」となるべき出来である。夜のライトアップが楽しみだ。
傍らでは永谷園が出店している。お茶づけ各種が食べられるが、一杯300円は微妙な値段だ。
その右手は永谷園撮影コーナーになっており、「お湯あっつ!」「永谷園サイコー」「お茶づけにオレはなる!!」など、面白吹き出し看板が用意されていた。撮影者はこれを持って撮影するのだ。
中雪像は太田胃散・公式PR大使「太田胃にゃん」。太田胃散といえばショパンの「プレリュード第7番である。
そのほかにも、雪ミクの中雪像など。オフィシャルグッズ売り場では、雪ミクの商品が多数展示されている。姪に何か買っていきたい気もするが、荷物になるので躊躇する。
8丁目は雪のHTB広場。大雪像は「ウポポイ(民族共生象徴空間)2020.4.24OPEN」である。4月24日に白老町ポロト湖畔に大規模なフィールドミュージアムが開園するらしい。
ステージ上ではアイドルタレントの画像をバックに、親子が記念撮影の列を作っている。やはりステージでは有人のイベントが必須である。
白老は観光的に地味なのだが、私は学生時代にほっこりする経験をし、応援したいエリアである。ウポポイの成功を祈る。
9丁目は市民の広場。中雪像は「うなぎのぼり滝登り!」。市民は制作に時間を取れないので、造作よりアイデア勝負となる。
中雪像は「ヒカキン&セイキン」。彼らはYouTuberだが、その職業の人が雪像になるとは、時代も変わったものだと思う。
小雪像は、市民の雪像である。「きたきつね」グループは毎年、旬の有名人を雪像にしており、楽しみである。ちなみに昨年は「大坂なおみ」で、人気投票の1位に輝いた。
今年はラグビーのリーチ・マイケル選手だった。今年も噴き出すくらいよく似ていた。
10丁目はUHBファミリーランドで、大雪像は「サザエさん一家とウィンタースポーツin SAPPORO」である。「サザエさん」放送50年を記念し、満を持して登場である。雪像は、サザエさん一家がウィンタースポーツに興じているものである。
中雪像は「巨大カップヌードル&八村塁の雪像トンネルwithミニSL」。巨大カップヌードルの精巧さはいつものことだが、八村塁がよく似ている。最初は誰を模していると思ったのだが、「解答」を見なくても、八村塁に思いあたった。
11丁目は国際広場。ここの目玉は「国際雪像コンクール」で、世界の英知が結集された雪像が鑑賞できる。
小雪像はおなじみ「雪ミク(初音ミク)Snow Parade Ver.」。雪ミクはあっちこっちに雪像があり、大人気だ。11丁目の雪ミクは昼より夜のほうがいい。雪像も色が入って映えるし、ミクオタが集まり、音楽に乗って踊りまくるのも、雪まつりの風物詩だ。
背後の雪ミクオフィシャルショップでは、客が列をなしている。私は赤十字が発売しているクリアファイルを購入するのが定跡になっているが、それはどこにあっただろう。
もうひとつの小雪像は、「北海道だいすき発見隊アローラロコン」。ポケモンのキャラのようだ。
12丁目も市民の広場。こちらのほうが9丁目より市民色が強く、ほのぼのとした作品が見られる。
ここで雪まつり会場は終わりだが、私はその先の北海道資料館に行く。昨年は改修工事の話があったが、どういう予定になっているのだろう。ただ、今年も通常通り開館しているようだ。
入口で催しモノの案内を見る。「ゆきみどりの部屋」があった。ここも含めすべてが今日9日までの開催で、私は11日の来場も考えていたから、あぶないところだった。
しかし2階に上がると、ゆきみどりさんはいなかった。しかも室内の展示が妙にさっぱりしている。
奥の部屋は、おなじみ「札幌市子ども造形展」だ。これが子供とは思えぬ力作ばかりで唸ってしまう。感性というか発想が素晴らしく、とても大人には太刀打ちできない。
ゆきみどりさんの部屋に戻ると、彼女がいた。相変わらずの八嶋智人顔で、元気そうでなによりだ。
「どうも。ずいぶん室内がさっぱりしてますが」
「コロナウイルスの関係で、装飾を最小限のものにしたんです」
コロナとの因果関係が分からぬが、メンタル的にやる気にならなかったのだろうか。「今年は窓からの眺めも楽しんでいただきたいと思います」
なるほど、窓からは大通公園がまっすぐ見え、一幅の絵だ。それはいいとして、私は昨年の、自身の反乱を述べねばならない。ゆきみどりさんも残念がってくれたが、私は愚行を吐露したことで、多少気分が軽くなった。
ゆきみどりさんとは話が弾んだが適当なところで部屋を辞し、「創作わら細工のふじやま」に行く。ここの職人氏ともこの何年かお話をさせていただいている。職人氏は私を憶えているふうだったが、どうだったのだろう。
「ぽんち展16」は、アマチュアカメラマンの写真展だ。日常の風景を自然に切り取っている。
「村井紘一水墨画展」の部屋にも入る。昨年まではここに乞望さんの店があったのだが、昨年をもって出店を辞めてしまった。
村井氏は見学の客を相手に、おしゃべりしながら制作している。いまは城郭の絵だ。
「昔は頼まれて制作したこともあったんですが、いまは作品を売っていません」
客の女性の問いへの答えである。これが本業じゃないなら、どうやってメシを食っているのだろう。
気が付くと、客の中に乞望さんがいたのでびっくりした。
「山水画といえば海、森、河ですが……」
村井氏はそう言って、薄墨を紙の上で伸ばす。私もしゃべらなければいけない雰囲気になったので、
「黒一色なのに、風景の色が想像できるのが素晴らしい」
と言った。我ながらいまいことを言ったもので、村井氏の表情もほころぶ。
私は乞望さんにも挨拶をし、その部屋を後にした。
(つづく)