4月27日、桐山清澄九段の現役最後の対局が行われ、現役生活にピリオドが打たれた。
最終局は惜しくも敗れ、通算996勝でフィニッシュ(歴代10位)。1000勝に届かなかったのは我がことのように残念だが、4勝足りないところが桐山九段らしい、ともいえる。
その桐山九段の代表局はどれだろう。私は、桐山九段の初タイトルとなった第10期棋王戦第4局(1985年3月22日)を挙げたい。
田中寅彦八段に勝って棋王戦五番勝負初登場となった桐山九段。当時の棋王は米長邦雄永世棋聖で、4連覇中だった。このころ、米長棋王と大山康晴会長との間でちょっとしたやり取りがあった。通算5期の棋王を手にした米長棋王は、ウソかホントか分からぬが、大山会長に「永世棋王」を直訴したらしい。
しかし大山会長が首をタテに振るはずもない。だが代替案として「連続5期で永世棋王」を提示した。これなら米長棋王ももう1期棋王を獲ればよい。いい落としどころだったと思う。
桐山九段にとって米長棋王は最強の敵だった。それまで28局戦って7勝21敗。カモにされていたうえ、当時米長棋王は、十段、棋聖、王将を併せ持つ四冠王。下馬評でも米長棋王の防衛の声が高かった。
第1局は米長棋王が勝ち、やっぱり、となった。
ところが第2局、第3局と桐山九段が勝ち、将棋ファンは「あれっ?」となった。
そして運命の第4局を迎えた。桐山九段の先手で、ひねり飛車。ひねり飛車というのは不思議な戦法で、居飛車に分類されるが部分的に石田流の形で、玉形も片美濃囲いに似ているから、振り飛車の味がある。しかし純粋居飛車党の加藤一二三九段が愛用し、高い勝率を挙げていた。結局、棋士はどんな将棋も指せるのだ。
将棋は桐山九段がひねり飛車らしい捌きを見せたが、米長棋王も反撃し、第1図の△7七歩が痛打。
これに▲8八金は△8五飛なので先手が困ったようだが、じっと▲9一とが好手。桐山九段は、忙しいときに緩そうな手を指し、それが後で利いてくるところがある。いぶし銀といわれるゆえんである。
実戦は▲9一と以下、△5五角▲3七桂△7八歩成▲3五香△3三桂▲5四歩△同金▲3四桂(第2図)と進み、桐山九段の面白い形勢になった。
この後も形勢不明の局面が続いたが、最後は179手目▲7五馬(投了図)まで、桐山九段の勝ち。うれしい初タイトルとなった。同時に、この年の将棋大賞では、殊勲賞を受賞した。
この奪取がフロックでなかったことは、桐山九段がこの翌年、米長棋聖から棋聖を奪取したことからも分かる。
通算996勝、順位戦A級14期、名人戦などタイトル戦登場10回、棋聖3期、棋王1期。弟子に豊島将之九段。素晴らしい現役生活だったのではなかろうか。桐山先生、お疲れさまでした。
最終局は惜しくも敗れ、通算996勝でフィニッシュ(歴代10位)。1000勝に届かなかったのは我がことのように残念だが、4勝足りないところが桐山九段らしい、ともいえる。
その桐山九段の代表局はどれだろう。私は、桐山九段の初タイトルとなった第10期棋王戦第4局(1985年3月22日)を挙げたい。
田中寅彦八段に勝って棋王戦五番勝負初登場となった桐山九段。当時の棋王は米長邦雄永世棋聖で、4連覇中だった。このころ、米長棋王と大山康晴会長との間でちょっとしたやり取りがあった。通算5期の棋王を手にした米長棋王は、ウソかホントか分からぬが、大山会長に「永世棋王」を直訴したらしい。
しかし大山会長が首をタテに振るはずもない。だが代替案として「連続5期で永世棋王」を提示した。これなら米長棋王ももう1期棋王を獲ればよい。いい落としどころだったと思う。
桐山九段にとって米長棋王は最強の敵だった。それまで28局戦って7勝21敗。カモにされていたうえ、当時米長棋王は、十段、棋聖、王将を併せ持つ四冠王。下馬評でも米長棋王の防衛の声が高かった。
第1局は米長棋王が勝ち、やっぱり、となった。
ところが第2局、第3局と桐山九段が勝ち、将棋ファンは「あれっ?」となった。
そして運命の第4局を迎えた。桐山九段の先手で、ひねり飛車。ひねり飛車というのは不思議な戦法で、居飛車に分類されるが部分的に石田流の形で、玉形も片美濃囲いに似ているから、振り飛車の味がある。しかし純粋居飛車党の加藤一二三九段が愛用し、高い勝率を挙げていた。結局、棋士はどんな将棋も指せるのだ。
将棋は桐山九段がひねり飛車らしい捌きを見せたが、米長棋王も反撃し、第1図の△7七歩が痛打。
これに▲8八金は△8五飛なので先手が困ったようだが、じっと▲9一とが好手。桐山九段は、忙しいときに緩そうな手を指し、それが後で利いてくるところがある。いぶし銀といわれるゆえんである。
実戦は▲9一と以下、△5五角▲3七桂△7八歩成▲3五香△3三桂▲5四歩△同金▲3四桂(第2図)と進み、桐山九段の面白い形勢になった。
この後も形勢不明の局面が続いたが、最後は179手目▲7五馬(投了図)まで、桐山九段の勝ち。うれしい初タイトルとなった。同時に、この年の将棋大賞では、殊勲賞を受賞した。
この奪取がフロックでなかったことは、桐山九段がこの翌年、米長棋聖から棋聖を奪取したことからも分かる。
通算996勝、順位戦A級14期、名人戦などタイトル戦登場10回、棋聖3期、棋王1期。弟子に豊島将之九段。素晴らしい現役生活だったのではなかろうか。桐山先生、お疲れさまでした。