ルパン三世の足首より、峰不二子の足首のほうが太い。
6月25日のLPSA金曜サロンは、1部が大庭美夏女流1級、2部が島井咲緒里女流初段の担当…の予定だった。
この日も私は午後も仕事をしていたのだが、5時20分ごろ、会員のW氏から電話がかかってきた。聞くと、
「島井さんが急遽休みになっちゃって、代わりに船戸さんが来たんだけど、大沢さんがなかなか来ないもんだから船戸さんが怒っちゃってさあ…」
というものだった。
島井女流初段は昨年休場状態で、今年は3月に指導対局を受けたのが最後だった。今回は久しぶりの指導対局で、楽しみにしていただけに残念だった。しかしその代打が船戸女流二段なら、最善の処置といえよう。しかもその彼女から「直々の指名」があったと聞いて、私は仕事をすぐに切り上げ、駒込に向かったのだった。
サロンに入室すると、船戸女流二段は目も眩むようなブルーのワンピースで、6月20日に行われた「Tefu×NIS CUP」の、島井女流初段のいでたちに対抗するかのようなあでやかさだった。
こんな状況のなか、指導対局開始。船戸女流二段は例によって中飛車である。囲いは片美濃。船戸女流二段は居飛車でも振り飛車でも穴熊を多用するが、美濃に囲っての軽い捌きが、棋風に合っているように思う。
序盤から飛車角を交換する大捌きになったが、こちらもと金を作り、まずまずと思っていた。しかしどこかで☗5二とと金を取れば良かったものを、グズグズしていたため、☖4三金☗同竜☖5二銀と手順に固められて後手を引いては、おかしくした。
船戸女流二段は6面指しだが、こちらだって左目で船戸女流二段を観賞し、右目で盤を見ているのだから、条件は似たようなものだ。しかしこんなに煩悩まる出しでは、勝てる将棋も勝てない。
ここで終盤の一場面を掲げる。
上手・船戸女流二段:1九竜、3一歩、4五歩、4六角、5二銀、5三銀、5四歩、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、8四香、9一香、9四歩 持駒:香、歩2
下手・一公:1一馬、1三竜、1七歩、2五歩、4八歩、5六歩、5九金、6七歩、6八銀、6九金、7六歩、7八玉、7九桂、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:金、桂、歩
☖4六角と1三の竜取りに当てられた局面。以下、☗1六竜☖3七角成☗2四歩☖4六歩☗7七馬☖4七歩成☗同歩☖4八歩☗6六馬☖4九歩成☗5八金上☖1八竜 まで、船戸女流二段の勝ち。
竜の適当な居場所がないので☗1六竜と引き揚げたが、☖3七角成が次に☖1五歩の竜詰めろを見た素朴な好手で、☗2四歩と一手パスをするようではクサッた。さらに☖4七歩成~☖4八歩が当然とはいえ、痛かった。船戸女流二段を観賞してばかりいて、このと金攻めに全然気づかなかった。
私はいったん引いた馬をまたひとつ上がった(これも屈辱の一手だ)が、☖4九歩成~☖1八竜の追撃が厳しく、たまらず投了した。
「エエーッ!?」と船戸女流二段。まだ投了は早いでしょう、の意だが、上手は4筋にお代わりのと金ができるうえ、自陣は金銀4枚の堅陣。下手は攻防ともに見込みがなく、このへんが投了の時期である。
思いがけず船戸女流二段に指導対局を受ける幸運に恵まれたのに、私は相変わらずヘンテコな指し手の連発で、情けなかった。
ところでここまでの文章を読んだ読者は、どこか違和感を覚えなかっただろうか。
そう、船戸女流二段が、私がサロンに来ていないからといって、「大沢さんはどうしたの?」と言うだろうか。W氏の口調では、「早く大沢さんを呼びなさいっ!」という雰囲気だったが、どうも怪しい。
そこで後日W氏に質したら、「船戸女流二段が私を呼んでいる」旨の内容は、W氏の作り話だったことが判明した。
なんだ…。そんなことだろうと思った。冷静に考えてみたら、船戸女流二段がわざわざ私を呼ぶわけがない。「フナトヨーコ」の名前を出せば大沢が飛んでくる、と読んだW氏の遊び心だったのだ。チッ…まんまと騙された。
とはいえ、駒込サロンの棋友から催促の電話がかかってきたことは、ウチに微妙な変化をもたらした。すなわち、駒込サロンは将棋を指す場所というだけではなく、友人のいない私にとって唯一の社交の場であるということを、オヤジが錯覚してくれたことだ。そしてその翌週から私は、明るいうちから仕事を早びけできるようになったのである。
さて船戸女流二段は、きょう30日、山田久美女流三段と女流王位戦の対局である。美女対決を制して、リーグへの復帰に王手をかけてもらいたい。
6月25日のLPSA金曜サロンは、1部が大庭美夏女流1級、2部が島井咲緒里女流初段の担当…の予定だった。
この日も私は午後も仕事をしていたのだが、5時20分ごろ、会員のW氏から電話がかかってきた。聞くと、
「島井さんが急遽休みになっちゃって、代わりに船戸さんが来たんだけど、大沢さんがなかなか来ないもんだから船戸さんが怒っちゃってさあ…」
というものだった。
島井女流初段は昨年休場状態で、今年は3月に指導対局を受けたのが最後だった。今回は久しぶりの指導対局で、楽しみにしていただけに残念だった。しかしその代打が船戸女流二段なら、最善の処置といえよう。しかもその彼女から「直々の指名」があったと聞いて、私は仕事をすぐに切り上げ、駒込に向かったのだった。
サロンに入室すると、船戸女流二段は目も眩むようなブルーのワンピースで、6月20日に行われた「Tefu×NIS CUP」の、島井女流初段のいでたちに対抗するかのようなあでやかさだった。
こんな状況のなか、指導対局開始。船戸女流二段は例によって中飛車である。囲いは片美濃。船戸女流二段は居飛車でも振り飛車でも穴熊を多用するが、美濃に囲っての軽い捌きが、棋風に合っているように思う。
序盤から飛車角を交換する大捌きになったが、こちらもと金を作り、まずまずと思っていた。しかしどこかで☗5二とと金を取れば良かったものを、グズグズしていたため、☖4三金☗同竜☖5二銀と手順に固められて後手を引いては、おかしくした。
船戸女流二段は6面指しだが、こちらだって左目で船戸女流二段を観賞し、右目で盤を見ているのだから、条件は似たようなものだ。しかしこんなに煩悩まる出しでは、勝てる将棋も勝てない。
ここで終盤の一場面を掲げる。
上手・船戸女流二段:1九竜、3一歩、4五歩、4六角、5二銀、5三銀、5四歩、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、8四香、9一香、9四歩 持駒:香、歩2
下手・一公:1一馬、1三竜、1七歩、2五歩、4八歩、5六歩、5九金、6七歩、6八銀、6九金、7六歩、7八玉、7九桂、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:金、桂、歩
☖4六角と1三の竜取りに当てられた局面。以下、☗1六竜☖3七角成☗2四歩☖4六歩☗7七馬☖4七歩成☗同歩☖4八歩☗6六馬☖4九歩成☗5八金上☖1八竜 まで、船戸女流二段の勝ち。
竜の適当な居場所がないので☗1六竜と引き揚げたが、☖3七角成が次に☖1五歩の竜詰めろを見た素朴な好手で、☗2四歩と一手パスをするようではクサッた。さらに☖4七歩成~☖4八歩が当然とはいえ、痛かった。船戸女流二段を観賞してばかりいて、このと金攻めに全然気づかなかった。
私はいったん引いた馬をまたひとつ上がった(これも屈辱の一手だ)が、☖4九歩成~☖1八竜の追撃が厳しく、たまらず投了した。
「エエーッ!?」と船戸女流二段。まだ投了は早いでしょう、の意だが、上手は4筋にお代わりのと金ができるうえ、自陣は金銀4枚の堅陣。下手は攻防ともに見込みがなく、このへんが投了の時期である。
思いがけず船戸女流二段に指導対局を受ける幸運に恵まれたのに、私は相変わらずヘンテコな指し手の連発で、情けなかった。
ところでここまでの文章を読んだ読者は、どこか違和感を覚えなかっただろうか。
そう、船戸女流二段が、私がサロンに来ていないからといって、「大沢さんはどうしたの?」と言うだろうか。W氏の口調では、「早く大沢さんを呼びなさいっ!」という雰囲気だったが、どうも怪しい。
そこで後日W氏に質したら、「船戸女流二段が私を呼んでいる」旨の内容は、W氏の作り話だったことが判明した。
なんだ…。そんなことだろうと思った。冷静に考えてみたら、船戸女流二段がわざわざ私を呼ぶわけがない。「フナトヨーコ」の名前を出せば大沢が飛んでくる、と読んだW氏の遊び心だったのだ。チッ…まんまと騙された。
とはいえ、駒込サロンの棋友から催促の電話がかかってきたことは、ウチに微妙な変化をもたらした。すなわち、駒込サロンは将棋を指す場所というだけではなく、友人のいない私にとって唯一の社交の場であるということを、オヤジが錯覚してくれたことだ。そしてその翌週から私は、明るいうちから仕事を早びけできるようになったのである。
さて船戸女流二段は、きょう30日、山田久美女流三段と女流王位戦の対局である。美女対決を制して、リーグへの復帰に王手をかけてもらいたい。