一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

四十五たび大野教室に行く(後編)・Xデーにどうする

2013-04-30 00:27:07 | 大野教室
だいぶ遅くなったが、Minamiちゃんが来た。きょうの女性は彼女が初めて。やはり、場が明るくなってよい。
私は、ふわっと▲4四角と出た。▲5三角成と切らず、取ってくれと4四に出るのがよいのである。上手は△4四同銀と取るしかないが、▲同歩と進んで下手悪くない。
以下△1七歩成▲2四歩△3三玉!▲4五銀△3二銀に、私は▲4三金。王手・飛車、金、銀取りだ。
△同金▲同歩成△同銀▲4四歩△3二銀▲4三金。どんどん駒を剥がして下手好調に見えるが、△2四玉を上がられてみると、▲5二金と飛車を取っても、金が遊び駒になって、よくなかった。
以下上手は入玉模様に出る。私は二枚飛車が自陣でグズグズしており、ほとんど役に立たない。指せば指すほど上手の得点になり、いまはこれまでと投了した。
感想戦には、His氏が加わってくれた。こっちが通り過ぎようとする変化にも「ちょっと待って」と疑問を呈すなど、いつものHis氏と変わらない。
そのHis氏、△4三同銀のときに▲2三金と打つ変化を示した。何はともあれ玉を押し戻すのがよく、以下△4二玉に▲4四歩と銀取りに打てば、たしかに下手よし。そうか…。こう指すのだった。
ここでHis氏としばし雑談。聞くと、His氏は今年に入って大病を患い、先日まで入院していたという。
現在も通院しているらしいが、最悪の危機は脱したらしい。現在は煙草も喫えないらしいが、命あっての物種である。十分ご自愛ください。
もう夕方だが、大野教室は「延長戦」がつねである。私はHon氏に声を掛け、自由対局。
Hon氏はいつもの▲5七銀から、きょうは▲6八飛とした。これはめずらしい。
その変質的指し手に動揺したか、私は妙な駒組をしてしまい、大変な作戦負けに陥った。
▲4五歩、4六銀、4八飛 持駒:歩2 △2二角、3二玉、3三銀、4二金、4三金、5三銀の局面で、Hon氏は的外れの手を指したが、ここは▲5四歩と一発叩く手があった。△5四同銀、同金とも▲5五歩で銀が死ぬので△6二銀と引くしかないが、▲5五銀と出て先手大優勢だった。
以下はHon氏が乱れまくって私の勝ち。拾わせていただいた。
隣ではOk氏とWa氏が対局を行っているが、居飛車穴熊対ツノ銀中飛車という、堂々とした戦い。とても級位者同士の対戦とは思えない。大野教室のレベルは高いのだ。
そのOk氏から、当ブログのトップページのデザインを替えてくれるよう、所望される。Ok氏が会社の昼休みにコッソリ読んでいるとき、現在の花柄のデザインは目立ち過ぎてよろしくないのだという。しかしそこまで責任は持てず、私も苦笑するしかなかった。
まだ時間があるので、再びHon氏を将棋に誘うも、今度は断られた。Fuj氏を誘ったら、彼もMinamiちゃんに勉強を教えるという。
すると、W氏が私との将棋を申し出てくれた。これもめずらしい。
将棋はW氏の石田流三間飛車に、私は薄い玉形で立ち向かう。
W氏、▲8五飛、9五角。私、△4二飛、5三銀、8二歩…の局面で、W氏に▲8六角と銀取りに引かれたら、△5二飛には▲5三角成△同飛▲8二飛成があり、芳しくなかった。
実戦はこの危機をすりぬけ、以下私の勝ち。
感想戦に入るが、W氏は感想戦が好きで、けっこう前の局面から振り返る。しかしどう指しても、私(後手)がよくなってしまう。
どうもおかしいと植山悦行七段に教えを乞うが、序盤に▲7四歩と突いた手が疑問と即断され、「そんな前の手まで遡らねばならいのか」と、私たちは顔を見合わせて大笑いしたのだった。
と、Fuj氏が「最近調子が悪くて」と私の前に座った。自分の指した不甲斐ない将棋を見てほしいらしい。私はヒトの将棋に興味はないのだが、付き合うと、Fuj氏、ボヤいているわりにはいい将棋を指していると思う。
一局で終わりかと思いきや、「次は…」「次は…」と矢継ぎ早に並べたてる。都合4局になったが、本人がいうほどヒドイ将棋はなく、本人が会心譜を自慢したいだけなんじゃないいか? と訝ったものだった。

きょうの教室はここまで。植山七段とMinamiちゃんは、きょうは帰宅。食事会の参加は、大野八一雄七段、W氏、Fuj氏、Wa氏、私の5人となった。
まずは近所のトンカツ屋に行って食事。そのあとはガストに行って、おしゃべりである。
W氏とFuj氏は現在、大野教室のスタッフを兼務している。しかし生徒に堂々と指導するには、資格を持っていたほうがいい。そこでふたりとも、「普及指導員」の免許を取得する運びになった(と思う)。ふたりの将棋の情熱を考えれば、遅すぎたくらいである。ふたりの健闘を祈る。
植山七段の話題。植山七段は今年の3月で、フリークラス期間を満了した。あとはロスタイムである。残す棋戦は、竜王戦昇級者決定戦のみ。
その対局が付いたら、私たちは当日、千駄ヶ谷に集まろうかと考えている。
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四十五たび大野教室に行く(前編)・ヘタをやった

2013-04-29 01:55:54 | 大野教室
20日(土)の「将棋ペンクラブ将棋会」に続いて、翌21日(日)は埼玉県川口市にある「大野教室」に行った。2日続けて将棋とは、私も将棋好きになったものである。
「大野教室」は日本将棋連盟の大野八一雄七段が講師を務める、実戦を主体とした将棋教室である。特別講師に植山悦行七段、中井広恵女流六段らが名を連ねる。
第1・3土・日曜日の午後1時から5時までの開講。料金は月4回で、12,000円。1回のみは3,500円で、3回目からは2,500円になる。これで最終的には12,000円になる仕組みだ。
午後1時25分ごろ教室に入ると、洋間で大野七段が5面指しを行っていた。教室ではこのところ、日曜日の参加率がよくなかったが、きょうは盛り返した感じだ。
奥を覗くと、植山七段が4面指しを行っていた。…あれっ? その中にHis氏の姿があった。
His氏は自他共に認める愛すべき将棋バカで、当ブログにもよくコメントをくださる。
しかし1月下旬からコメントが来なくなり、まあそれはどうでもいいのだが、大野教室やジョナ研にも顔を見せなくなり、His氏の身に何か起こったのかと、みなで心配していたのだ。が、まずは元気そうで何よりだった。
さっそく大野七段に教えていただく。もちろん角落ちである。
昨夜は午前3時すぎまで起きていたうえ、今朝は8時過ぎにオフクロへの電話があり、そのベルで叩き起こされてしまった。睡眠時間5時間足らずで頭が朦朧としており、きょうはいい将棋が指せない気がした。
居飛車の出だしから2筋の歩を切るが、きょうはその後、中飛車に振ってみた。
5筋の歩を切り、▲5六銀と出てはまずまず。△3五歩の桂頭攻めが気になるが、▲4七金と上がってもいいし、場合によっては▲3五同歩△3六歩▲4七金△3七歩成▲同金と位を取ってもおもしろいと見ていた。
このまま5筋を攻めてもむずかしいから、次の狙いは4筋だ。▲4九飛~▲5八金~▲4五歩△同歩▲同桂△同桂▲同銀△4四歩▲同銀△同銀▲同角△同金▲同飛の大捌きがネライだが、どうも手数がかかり過ぎる。
そこで私は、▲4五歩△同歩▲同銀とやった。飛車落ちの部分定跡にある形だ。
大野七段は「おっ」とつぶやき△同桂。しかし▲同桂に△4四銀と上がられ、早くも下手の攻めが頓挫した。
ここで考えるようではダメである。まったく、初心者みたいなヘタをやった。
以下数手進み、上手△2二玉、2三歩、3四銀、4二金、5四金、5五歩。下手▲2九飛、3二銀、3三歩、4八金、6九玉…の局面。ここで▲5五角(と一歩を補充する)△同金▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲3四飛とする手は、△2五角の王手飛車があり、負け。
よって私は、桂の両取りと王手飛車を避けて▲5八金だが、大野七段に△3二金と取られ、指し切ってしまった。
以下、いくばくもなく投了。感想戦では、やはり▲4五歩~▲4五同銀の構想が最悪で、ここは前述の、じっくりした構想で指すのがよかったらしい。
問題は▲5八金と寄った瞬間の△3五歩だが、やはり▲4七金と上がって問題ない。ちょっと金が上ずるが、これが盛り上がりの好手とのことだった。
指導対局では、一局の中で、ひとつ勉強になることがあればいいと思っている。本局は力強い▲4七金だ。せっかくの指導対局を短手数で投了し惜しいことをしたが、きょうはこれで納得しよう。
His氏の将棋を見にいってみる。植山七段には角落ちで教わっているが、His氏、勝勢である。▲6五桂△6四玉▲5四金まで、植山七段の投了。His氏、腕に歳は取らせない、というところを見せた。
もう3時が近いが、Hon氏が来た。大野教室は午後1時に来てみっちり指すのが最善だが、寸暇を割いて教室に顔を出すHon氏の姿勢も尊い。
3時休憩という名の、詰将棋タイム(4題)になった。これは各自のレベルに合わせて配られる。私は解く気力がないので、眺めるだけである。
「どうしても詰められない問題がある」と、His氏が私にそれを見せる。たまたま詰み筋が分かり7秒で解くと、His氏に感心された。
3時休みが終わり、私は植山七段との指導対局に入る。前局の経験を活かし、私は中飛車に構える。植山七段も中飛車に回って対抗した。
上手△2一桂、3一銀、3二玉、3三歩、4二金、5二飛、5三銀。
下手▲2五歩、3六歩、3七桂、4五歩、7九角…の局面で、私は▲3五角と出る。△3四歩▲2六角△2四歩▲同歩△2五歩▲1七角(▲2五同桂は△2三歩▲同歩成△同金で、次に△2四歩を見て上手よし)△1五歩▲同歩△1六歩(△1五同香は▲5三角成△同飛▲1五香の二枚換えで下手指せる)。これに▲2八角は△2六歩と突きだされ、▲3八金と守るようでは冴えない。
しかし私の次の手は、植山七段に感心された。
(つづく)
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4月の将棋ペンクラブ将棋会(後編)・盛りだくさんの一日

2013-04-28 00:31:42 | 将棋ペンクラブ
その局面がこれ。

先手・彼女:1六歩、1九香、2六飛、3五歩、3七桂、4七歩、5七歩、6七歩、6八金、7五歩、7七金、7九玉、8五歩、9七歩、9九香 持駒:角、桂2
後手・Kun:1一香、1四歩、2三銀、2四歩、3二金、4一飛、4五歩、5四歩、5五角、6二金、6三銀、6五歩、7二玉、7四歩、8六歩、8七銀、9一香、9五歩 持駒:桂、歩3
(▲7五歩まで)

▲7五歩に、Kun氏は△3七角成の予定だったというが、そこで彼女は▲8六飛と回る、といった。▲8六飛! この大転換が彼女の狙いだったのか!
ヤケクソに突いたと思った▲7五歩に、こんな遠大な構想があったとは知らず、私たちはまたまた感嘆の声を上げた。
実際は△3七角成で△7六桂とし、▲同金△8八角成▲6九玉△7六銀成▲同飛△8七馬で後手優勢だと思うが、実戦ではどう転んだか分からない。これは彼女の面目躍如だった。
彼女もすぐには帰らず、しばし話をする。やはり…というか、彼女は加藤一二三九段のファンだった。著書「棒銀の闘い」は、穴が開くほど読んだという。
詰将棋は5手詰を繰り返し解き、ヒマなときは加藤九段の実戦譜をネットで調べ、その手つきを真似て、盤に並べるという。
「こんなので勉強になってるか分からないけど…」
と彼女は謙遜するが、とんでもない。理想的な勉強法ではないか。
対四間飛車のときは、相手が△5四歩と突いてくるのを期待し、▲9七角からの山田定跡を指したいのだという。
彼女の口から「山田定跡」という単語が出て来たものだから、私とKun氏は顔を見合わせて笑う。
「それは△3二銀型の場合ですよね?」
私が問うと、彼女は
「もちろん!」
と笑みを見せた。
ウオーッ…。こんな妙齢の女性と「山田定跡」で盛り上がるとは、夢じゃないだろうか。
昨今の対振り飛車は、スキあらば穴熊という風潮があるが、彼女はそれに目もくれず、棒銀を中心とした急戦策に活路を見出している。私はホトホト感心した。これは将棋ペンクラブ、彼女をスカウトして、夏の社団戦に出てもらうしかない。
彼女はノートを取り出し、私たちが管理しているブログ名を書くよう求めてきた。
それは光栄なことだが、当ブログは若い女性向けではないので、どこまで期待に沿えるか、不安なところではある。
彼女は名刺まで配ってくれ、彼女がこの会に好感を持ってくれたのはうれしかった。
…というところで、彼女は退席。Na氏は彼女とネット上で知り合ったというが、今回はNa氏の殊勲甲だった。心から御礼を申し上げたい。
彼女が去ったあと、残ったメンバーでしばし雑談。会計を終え表へ出ると、雨が降っていた。

私たちは河岸を変え、近くの「酔の助」に向かう。前回もお邪魔したところだ。
ここ「酔の助」は先日放送された「タモリ倶楽部」でロケ地に使われたらしい。しかし満席になっていないだろうか。
Na氏はここで帰宅し、参加は5人。店に入ると、テーブル席は空きもあったが、奥に案内された。そこは座敷席で、かなり広かった。ここなら大人数の宴会もラクにできる。
突きだしは小皿で6種類。前回と同じで、人数に関わらず、この数で出てくるらしい。
とりあえず飲み物と、人数分のつまみを頼む。H氏とOh氏は当然将棋。私たちも指すことにした。Oh氏がさっきとは別の駒を出してくれ、Kun氏とA氏がペアを組み、私と対戦することになった。
これなら何かのハンデを付けてもいいが、A氏の出した条件は、「私たちの振り飛車に対して、大沢さんは急戦で向かうこと」だった。
それならほっといたって▲5七銀左とやるつもりだったからハンデにもならないが、まあ、それで進める。
ペア組の後手番で、△3二銀~△4二飛に△5四歩だったので、私は▲9七角と進める。先ほど話に上った山田定跡だ。
△4一飛に▲7九角△4五歩▲6六銀。山田定跡はここからむずかしいのだが、ペア組に一失あり、私が指し易くなった。
私は勝ちを急がず、着々と陣形をまとめる。頃はよしと、と金攻めに出たところで、これ以上指すのはバカバカしい!とばかり、Kun氏が投了した。
ペア将棋はふたりの呼吸が合わないと、将棋がヘンになる。この結果はやむを得なかった。
隣の将棋は相穴熊。観戦するのがウンザリする戦型だ。
ちょっと一休み。A氏が、
「大沢さんはボクの文章の目標だから…」
と、また訳の分からないことをいう。著書が読売新聞でも紹介された作家センセイにいわれると、イヤ味にしか聞こえないが、A氏はその類の冗談はいわない人である。この言葉をどう解釈したらいいか、いまだに分からない。
今度は組み合わせを変えて、Kun氏・一公-A氏の角落ち戦。Kun氏と私は棋風が違うので、角のハンデは上手に厳しい。しかし「手厚く指す」という方針は同じなので、それに沿って指した。
途中、読みの齟齬がいくつかあったが、これは想定内。しかしA氏の反撃が鋭く、最後は負けにしたと思った。
しかしそこからA氏が緩み、最後は上手△3七歩、4七と、下手▲2七銀、2八玉…の局面から、△3九角▲同玉△3八金までで終了。△3九角で△3九銀は、▲1七玉と上がられて詰まない。△3九角が簡明である。
というところで、Kun氏が味よく帰宅。残った4人でしばし雑談をしたが、今度は練馬あたりで飲み直そう、ということになった。しかし私はさすがにパスである。4人で店を出たが、私はここで帰宅となった。
夕方までの将棋会、飲み会での彼女の快進撃、居酒屋でのペア将棋と、きょうも盛りだくさんの内容だった。またお邪魔できれば、うれしい。
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4月の将棋ペンクラブ将棋会(中編)・謎の美人の快進撃

2013-04-27 02:44:15 | 将棋ペンクラブ
彼女はNa氏と知り合いらしい。どこまで親しいのか分からぬが、もし私がNa氏と逆の立場だったら、こんな将棋バカのたまり場に、彼女を呼んだだろうか。そうはしなかった気がする。
それはともかく、彼女をテーブルの中心に据え、改めて乾杯となった。どこの世界でもそうだが、女性がひとり入ると、場がパッと明るくなる。高校生活の3分の2が「男子校」だった私は、とくにその感を強くするのだ。
「魚百」はアカシヤ書店・H氏や湯川博士幹事が常連なので、飲み会時でも将棋は可である。彼女はこのあと橋本崇載八段の将棋バーに行くなど、予定が立て込んでおり、1時間ほどでここを去るという。それは残念だが、時間もないので、さっそく彼女に将棋を指してもらうことにした。
相手はOh氏。彼女の先手で、相居飛車になった。彼女は棒銀に出て、▲1五歩△同歩▲同銀△同香▲同香と捌く。いかにも指し慣れている感じだ。
その間にも、彼女にいろいろ話を聞く。いま話題のキンタロー。を目一杯かわいらしくした感じの彼女は、ジャズを生業にしているらしい。将棋はむかし家族から手ほどきを受けて駒の動かし方は知っていたが、外国に在住していたとき日本のモノが恋しくなり、ネットで将棋を勉強し始めたという。
これは以前にも「将棋ペン倶楽部」に書いたことがあるが、世間にいろいろモノが溢れている中で、若い女性がオジサン趣味の将棋に食指を動かしてくれるとは、一将棋ファンから見ればこの上ない喜びで、彼女に感謝の念を禁じ得ないのである。
そんな彼女とOh氏との平手戦、しかしいくら何でも、Oh氏が圧勝すると思った。
しかし形勢は意外に離れていない。彼女の玉形も手厚く、とてもいい形をしている。これは棋力に関係なく、彼女の将棋感覚が優れているのだ。
いくつか料理が運ばれてくるが、相変わらず上品な味で、うまい。刺し身も新鮮で、「魚百」の看板にふさわしい。
A氏は「ボクも大沢さんが毎日ブログを更新しているのを見習って、将棋ペンクラブのブログを毎日更新していますヨ」などといい、ふたりで文章談議をしてはいるのだが、どうも隣の将棋が気になってしまう。
将棋は形勢不明のまま、終盤になだれ込む。隣の席で飲んでいたオジサンが、その様子を見に来る。居酒屋で、ファミレスで、フェリーの上で。将棋を指していれば、つい覗きたくなるのが人情なのだ。女性が男性と互角に指している姿を見て、オジサンは何を感じ取ったか。
局面。現在は▲3七桂がアタリになっているが、彼女はその桂を2五に跳ねた!! それが下の局面である。

先手・彼女:1六成香、2五桂、3六歩、4四銀、4五歩、5九飛、6六歩、6七金、7八玉、7九角、8六銀、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:金、歩2
後手・Oh:1一香、1四歩、2二銀、2三玉、2四歩、3四歩、5二飛、5四歩、6三歩、6四角、7三桂、7六歩、9一香、9三歩 持駒:金、銀2、桂、歩4

▲2五桂のところ、厳密には▲2五歩が本手だと思う。しかし、取られそうな桂を最後のご奉公とばかり2五に跳ねる手は、ふつうの女子には気が付かない。その発想力が素晴らしいのである。
対してOh氏は△2五同歩。これも△2一桂が本手だと思うが、ここは妙手▲2五桂の顔を立てて、△同歩と取ったわけだ。
以下▲2五同成香△4六歩▲2九飛△5五桂に、彼女はノータイムで▲3四成香! 取れば▲3五金までの詰みで、これもその辺の女子には指せない手である。
やむない△3二玉に▲4三成香△3一玉。ここで彼女は自玉の不詰みを読み切り、▲5二成香。以下Oh氏の王手ラッシュに玉を3五まで逃げ越し、Oh氏が投了。彼女のうれしい勝利となった。
いやはや、この勝利は私たち全員がド肝を抜かれた。Oh氏は結構な実力者である。そのOh氏に一歩も引かず、打ち勝ってみせたからだ。一体彼女は、どこから出て来たのか!?
ちょっとこれは大将が出たほうがいいよ、ということで、Kun氏が対戦することになった。
彼女の先手で、今度は角換わりに進む。彼女、またも棒銀に出たが、Kun氏が玉を動かさないのを見て、「これじゃ効果がない」と▲3七銀と引き戻した。
うーむ、出来る!
ここで私たち一同は、またも感心したのである。
Kun氏は右玉に組む。彼女は▲4六銀と出直して、▲3五歩。△○○○に、▲2四歩△同歩▲3四歩△同銀となったが、ここで初めて彼女の悪手を見た。
▲3五歩。これは△2三銀となって、歩損だけが残ってしまった。ここは誰がどう見ても▲2四飛の一手。以下△2三金(銀)▲2八飛△2四歩でさあこれから、という将棋である。
対局中に指し手のことで話しかけるのはタブーだけれど、「▲3五歩はマズかった」と苦言を呈してしまった。
ここからはKun氏がペースを掴む。自然な指し手で優位を拡げ、圧勝形も見えて来た。
席を外していたOh氏が戻ってきた。すぐ近くの「アカシヤ書店」で、升田幸三実力世第四代名人の著書を買ってきたらしい。かなりの年代モノだが、せいぜい1,000円ぐらいとフンだら、3,500円だった。古本屋の世界は奥が深い。
そろそろ彼女の退席の時間が近付いている。ここで引き分けに持ち込めば、彼女に瑕は付かない。それが味がいいだろうと私は提案するが、彼女はまだ指したそうである。
すると彼女は、じゃあ帰る前にもう一手とばかり、えいっと▲7五歩と突き出した。
また投げやりな手を…と、私は内心苦笑する。さ、本当にこのあたりでそろそろ…。
というところで、彼女が▲7五歩の狙いをつぶやく。それを聞いて私たちは、またも唸ったのだった。
(つづく)
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4月の将棋ペンクラブ将棋会(前編)・7人目の人物

2013-04-26 14:41:49 | 将棋ペンクラブ
20日(土)は「将棋ペンクラブ将棋会」があった。
同会は将棋ペンクラブ幹事有志で構成され、社団戦のない時期に月に1度集まり、将棋と酒を楽しむものである。私は幹事ではないが、A幹事に気に入られ、2月から誘われるようになった。私は将棋はともかく酒はダメなので、参加資格はないのだが、だましだましお邪魔している。今回もそうだった。
場所はいつもの「魚百」。神保町某所にある居酒屋である。現在準備中だが、ここで開店まで将棋を指し、そのあとは同所で酒を愉しむのだ。
午後1時27分、「魚百」に入るが、誰もいない。2月に参加したときとは様子が違う。席に着くが、開店は5時ながら、いくつかのテーブルにはすでに、「予約席」の札が置かれていた。
しばらくすると、将棋古書店「アカシヤ書店」店主のH氏が盤駒を携えて来た。とりあえずほっとする。
きょうの参加は5~6人とのこと。仕込みの都合があるので人数は確定しなければいけないが、そこがハッキリしないのが将棋ペンクラブである。
H氏とは将棋を指す間柄ではないのだが、「せっかくなので指しましょうか」ということで、指し始めた。
H氏の先手で、四間飛車穴熊。H氏はこれしか指さない。私は急戦策を採る。H氏は向かい飛車に振り直し、▲8六歩△同歩▲同飛の決戦だが、これには強く△同飛と取る手があった。
以下▲同角△8七飛▲8二飛△7三桂で後手指し易い。後手は△5三歩-△6四銀型なので、先手からの▲4二角成~▲8七飛成の素抜きのスジがないのだ。
H氏が長考していると、Na氏が来た。Na氏も将棋ペンクラブの会員で、関東交流会はもとより、年末の将棋寄席でも見かけている。将棋+文学の香りが漂う紳士である。
局面は、H氏が無理攻めに走り、私はそれを丁寧に受けて制勝した。
感想戦をやっていると、Oh氏が来た。対戦カードを組み換え、H-Na戦、Oh-一公戦で再び開始。
Oh氏は将棋駒に造詣が深く、まずは掘り駒の逸品を出してくれた。Oh氏の先手で、四間飛車。私はダサイ囲いで、どうもはっきりしない。▲5五角の局面で▲5六歩と突いたのがOh氏の失着で、△5四銀▲4六角△4五銀となれば歩得が確定し、私が指し易かった。それを逃して、仕切り直し。
ここでKun氏が来た。来るべく人が来ている感じだが、私を誘ったA氏の姿がまだない。
Oh氏は▲8九飛と引いて▲7五歩と突いたが、毛を吹いて傷を求めた結果となった。
ここでA氏が現われた。これで6人だが、のちにもうひとり来るらしい。
A氏はKun氏と対局。Kun氏の角落ちだ。Oh-一公戦は私の勝ち。Oh氏は力を出し切れなかった。
「穴熊を指したかったんだけど、大沢さんが(穴熊相手は)嫌いだしなあ」
とOh氏がいう。何だか意味深な発言だが、対穴熊好きという人もあまりいないだろう。
私が
「Ohさんの好きなように指してよかったのに」
というと、
「もう一局お願いできますか」
の声で、Oh氏と再戦となった。
今度はOh氏の四間飛車穴熊。私は銀冠に組む。Oh氏は袖飛車に振り直し、▲3五歩△同歩▲同飛。ここをチャンスと見て、私は△8六歩▲同角△8八歩としたが、よくなかった。この手の攻めでうまくいった試しがないのだが、つい手が動いてしまう。
Oh氏は▲5三角成(と銀を取る)△同金▲3三飛成(と角を取る)△同桂▲7一角(飛車金取り)とし、十分手になっている。私は自陣に飛車を打ち粘るが、これでは苦しいと思っていた。
しかしそこからOh氏が攻めあぐね、形勢は私に好転した。
Oh氏:▲1七歩、1八香、1九玉、2七歩、2八銀、2九桂、3六桂、3七飛、3九金、4七金、5七歩… 持駒:銀、桂
私:△1一香、1五歩、2二玉、2五歩、3二金、3三歩、3四香、3五香、4二飛、5二金、5六歩、6九角… 持駒:銀
で、Oh氏は▲2四桂ハネ。以下△3七香成▲3二桂成△同玉▲3七金△同香成▲同銀と進んだが、これは▲2四桂と打つ傷が残り、後手おもしろくなかった。
▲2四桂ハネには△2三銀と受けるのだった。いきおい▲3二桂成△同玉となろうが、このあと先手は指しようがない。飛車が動けば△4七角成があり、先手は収拾がつかないのである。
実戦はこの後▲2四桂の王手からが左右挟撃となり、私の投了となった。
こちらが2局終わったとき、H-Na氏の一局がようやく終わった。どちらも熟考型のようだ。
もう、どんどん指す。今度はNa-一公戦である。私の先手で、私の横歩取り。Na氏は深く△8二飛と引いた。こうなると手探りの戦いで、よく分からない。先にも書いたとおりNa氏は熟考型だが、指し手は本筋で正確だ。
飛車角交換になり、私は▲7二角と打つ。Na氏は△8二飛(打)の自陣飛車。以下▲6三角引成(王手)△同銀▲同角成と進んだが、これは馬ができても駒損で、先手芳しくない。
しかしここからNa氏が乱れる。秒読みでもないのにスットコドッコイの手を連発し、Na氏自滅の形となった。
隣のKun-A戦はKun氏が勝ち、2局目に突入。今度はA氏が勝勢だ。Kun氏の激しい追い込みをA氏がかわし、うれしい勝ち名乗りとなった。
というところで時刻は4時半だが、早くも予約の客が来た。私たちは予約席で指していたので、移動を余儀なくされる。店内の端に移動して、少し早いが飲み会の時間となった。
とりあえず飲み物を頼んで一息ついていると、7人目の棋客が現われた。…女性? 黒いハットを被った、妙齢の女性だった。
この彼女が、当将棋会に旋風を巻き起こす存在になろうとは、このときは夢にも思わなかった。
(つづく)
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