一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

エリコよりマイコ

2009-07-31 10:46:40 | 将棋雑記
今日31日は、午後2時から東京・将棋会館で、LADIES HOLLY CUPの井道千尋女流初段-山口恵梨子女流1級戦が行われる。
このブログの読者は、私が将棋会館に出没するとフンでいるだろうが、今回は駒込・LPSA金曜サロンに赴き、藤田麻衣子女流1級に教えを乞うつもりだ。
だから山口恵梨子女流1級は安心して、将棋に没頭してください。そして自分らしい、悔いのない将棋を指してください。駒込の地から、応援しております。
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角館の美女(第1回)

2009-07-31 00:14:48 | 小説
今日7月31日は、郁子さんの誕生日。おめでとうございます。

しかし…「郁子」という名前の女流棋士はいない。したがって今日の記事は、将棋とはまったく関係がない。
これはかつて私が、ある女性宅へストーカーまがいの行為をした、いわば変質者の記録である。だから嫌悪感を催す方は、素通りされることをお勧めする。
数回の連載を予定しているが、全部読んだあとで文句を言われても、当方は一切関知しない。だから、とくにLPSA女流棋士の方は、読まれないほうがよい。
このすぐ下から本文に入る。繰り返すが、LPSA女流棋士の方は、ここで引き返したほうがよい。


いまでは新幹線も通る秋田県・JR田沢湖線角館(かくのだて)駅へ初めて降り立ったのは、昭和63年9月2日だった。当時私は「東北ワイド周遊券」を使って東北を旅行中。角館で降りたのは、ガイドブックに「角館は美女の本場」との記述があったからだ。
秋田県の小京都といわれる町内をぶらぶら散策し、地元の美女を写真に収められれば嬉しい、という下心を持ち、私は武家屋敷通りへ向かった。
ある武家屋敷に入って敷地内を回っていると、品のいい女性が、母屋で書きものをしていた。屋敷の関係者であろう。私がお辞儀をすると、「コーヒーでもいかがですか?」と言う。
ただの旅行者がそんな歓待を受けるわけにはいかないから、最初は断ったが、何度も勧めるので、「じゃあいただきます」と私は言った。
ところがその女性は私の言葉が聞こえなかったのか、いったんは立ち上がりかけたが、そのまま書きものを続けてしまった。しかしその女性がコーヒーを出さなかったことが、この後の私の人生に微妙な影を落とすことになろうとは、このときは予想もしなかった。
釈然としない気持ちで武家屋敷を出ると、左から自転車に乗って走ってくる女性がいた。私は一瞬躊躇したのち、その女性に声をかけた。
「あのー、すみません!!」
「はい?」
彼女は自転車を止める。ハッとするような、とても綺麗なひとだった。
「あの、地元の、角館の方ですよね」
「はい…」
「あ、あの、ボク東北を旅行してまして、角館が美女の本場だって書いてあったもんでここに来て…それで…あ、あの、あなたの写真を撮らせていただけませんか?」
私はしどろもどろになって、唐突なお願いをした。
「あ…ハイ」
「え? いいんですか? あの、あなたがボクを撮るんじゃなくて、ボクがあなたを撮るんですよ!?」
「ハイ、いいですよ」
彼女は微笑いながら、こともなげに応える。
私は震える手で旅行カバンからカメラを取り出し、武家屋敷の門前で彼女を撮った。白いワンピースが良く似合う、とても美しい女性だった。角館駅を降りて小1時間、早くもこれで、当初の目的を達成したのだ。ところが彼女は、さらに意外なことを言った。
「角館は初めてですか?」
「はい」
「じゃあ、すこしご一緒しましょうか?」
「ええ!? あ、はい、お願いします」
思わぬ展開に、私は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。それから私たちは武家屋敷通りをぶらぶら歩いた。彼女は自転車を押し、私は汚いTシャツとジーパン姿で、旅行カバンを肩から提げている。このふたり、傍目にはどう見えただろうか。
私が東京の四流大学に通っていると言うと、彼女はその大学がある地名を知っていた。怪訝に思って質してみると、彼女は東京のM治大学の卒業生だった。
やっぱり、と思った。角館が田舎とは言わないが、地方に住んでいるにしては、彼女は妙に垢ぬけていた。訛りも感じなかったし、この洗練された振る舞いは、東京で培われたものだったのだ。しかもこの学歴にも、天と地の差がある。劣等感が頭をもたげた私は、ちょっとした賭けに出た。
「文学部じゃありませんでしたか?」
「は、はい…」
「ふーん、映画研究会に入ってませんでしたか?」
「はい! えーっ、なんで分かったんですか!?」
「まあ…へへ」
別に私は超能力者でもなんでもない。女子学生で経済学部や経営学部は珍しいから、まあ文学部は適当なところであろう。彼女がスポーツをするふうには見えなかったから、文科系の代表的サークルを言ったという、ただそれだけのことだった。
彼女の私を見る目が変わったかもしれない。しかし、私の劣等感は少しも払拭されなかった。
途中、また彼女の写真を撮る。もっと写真を撮ってもいい、という雰囲気が、自然とふたりの間にできていたからだ。彼女をファインダーからのぞいてポーズらしき指示を出すと、なんだか自分がカメラマンになった気分だった。
私のカメラで、今度は彼女が私を撮る。シャッターを切る寸前、「あ、しゃがんだほうがいいのね」と、彼女が腰を落とす。キレイな膝小僧が見えた。
「なんかすみません、オレに付き合わせちゃって」
「いいのー。さっきね、美容院へ行って、そこのママとお昼を食べたの」
彼女はボブヘアーだった。黒のパンプスが「大人」を感じさせる。
「そうですか。その髪形、よく似合ってます」
「そうですか? さっきまで髪、長かったんだけど。ありがとう、フフ」
「もちろん、お顔も美しいです。あ、すみません、いや、あ、あの、角館の女性の美しさの秘訣はなんですか?」
私が大胆なのか小心者なのか分からない言葉を発すると、彼女は少し考えて、
「水…だと思います」
と言った。
さらに歩くと、真新しいモスグリーンの建物が目に入った。この数ヶ月前に開館した、平福百穂記念美術館だという。
「ここ、私まだ入ったことないの」
「あ、じゃあ、入りますか? でも時間は大丈夫ですか?」
「私は大丈夫」
「じゃあ入りましょう」
良かった! これでもう少し、彼女との時間を共有できる。しかし「地元の美女の写真を撮る」ことが表向きの理由だったから、いつまでも彼女と一緒には居られない。ここを出たら、束の間のデートも終わりとなる。
入館料を払うと、受付の女性が、「あれ? 久しぶりー」とか言っている。ふたりは知り合いだったらしい。
常設展示館に入ると、何点もの絵画や書が掲げられていた。私は美人を横に連れていることで気分が高揚し、作品を見るたびに歓声を上げていた。
と、そのとき彼女が
「うるさい…」
と言った。ちょっと私もムッとする。この一言が、のちに微妙な影響をおよぼすことになった。
ロビーに出ると、彼女が「疲れた…」とソファーに座った。またもかわいらしい膝小僧が見える。
「タバコのせいかな」
「タバコ…喫うんですか?」
「ええ。でもやめなきゃね。お肌の曲がり角だし」
「お肌の曲がり角? 25歳なんですか?」
私がそう言うと、彼女は鼻にしわを寄せて、かすかに笑みをもらした。
「タバコ…タバコは体に良くないです。もしボクと結婚するつもりなら、タバコはやめてください」
私は冗談とも本気ともつかぬことを言うと、彼女は微笑って、そうですね、と言った。
それにしても25歳とは…私より歳上だ。いまの自分から見れば、25歳はとても若い。しかし当時は、25という年齢は、とてつもなく上に思えた。
平福美術館を出れば、これでお別れである。でも別れたくない。そう、私は彼女に一目惚れをしていた。
美術館を出ると、また彼女を写真に撮った。これが最後の写真になるのは、お互い分かっている。タイムリミットが迫ってきた。
私が「じゃあ写真を郵送します」と言うと、彼女はシステム手帳に住所と氏名を書き、そのページを破って、私に寄越した。そして彼女は「いい旅をしてください」と言うと、自転車に乗り、その場を去っていった。
私は渡されたメモを見る。彼女は「郁子」という名前だった。
(つづく。次回掲載は未定)
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松尾香織先生、お誕生日おめでとうございます。

2009-07-30 00:18:11 | 女流棋士
松尾香織先生、お誕生日おめでとうございます。

今年の3月20日、東京・府中「けやきカップ」の会場にて、前日の女流名人位戦予選に勝った松尾香織先生に、私が
「松尾先生、B級昇級、おめでとうございます!!」
と言ったら、松尾先生はキョトン、とされていました。
実は同じ19日に、旦那さまの歩先生もB級2組最終戦で勝たれ、B級1組昇級を決めていたのです。
たぶん松尾香織先生は、「主人の昇級で、私がお祝いの言葉をもらっていいのかしら…」とでも思ったのでしょう。でももちろん私は、香織先生リーグ入りのお祝いを述べたのです。
ご自分のB級リーグ入りより、ご主人の昇級を真っ先に思い浮かべる。まさに妻の鑑といえましょう。
これからもご夫婦仲良く、対局と普及にがんばってください。陰ながら応援しています。
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第3期マイナビ女子オープン・一斉予選対局を見に行く(後編)

2009-07-29 00:59:25 | 将棋イベント
15日の「第3期マイナビ女子オープン予選・組み合わせ抽選会」から旬日を経て、「一斉予選対局」が行われた日の夜、マイナビのホームページにて、本戦進出者の集合写真を見た私は唖然とした。私の予想とは、大きくかけ離れたものだったからだ。
島井咲緒里女流初段が、写真中央でニッコリ笑っている! 関根紀代子女流五段が映っている! 上田初美女流二段も映っている! じゃあ、上田女流二段は、中倉宏美女流二段との一戦に勝ったということか!? とすると、枠抜けの成田弥穂アマにも勝ったことになる。あれっ? そういえばアマの姿がない。では女流棋士会3棋士が、アマ3人を破ったということか!
昨年に続いて長沢千和子女流四段の姿もある。久津知子女流初段の姿もある。
もう、なにがなんだか分からなかった。
試みに、1回戦の勝敗をすべて知ったと仮定して、自分なりの勝敗予想をしてみた。
7勝5敗だった。ちなみに昨年は13局の勝敗予想で、9勝4敗だった。今回、女流棋士の過去の成績や現在の調子などを鑑みて、私の予想は、まあ常識的なものだったろう。それで7勝5敗とは、相当な番狂わせがあったと思われる。
ちなみに今年も、現地での全問正解者はいなかった。それはそうだろう。データがすべてではない。これが一番勝負の恐ろしさといえようか。
それにしても、自分で懸賞金スポンサーになりながら言うのもナンだが、島井女流初段の勝負強さには恐れ入った。まさか島井女流初段が早水女流二段を破るとは思わなかった。将棋を鑑賞してみると、自玉と敵玉との距離感をキッチリ見切った、島井女流初段の持ち味がよく出た、いい将棋だった。
関根女流五段の将棋も素晴らしい。相矢倉の格調高い戦形から、筋よく攻めて快勝。まさに「女流五段」の肩書にふさわしい、堂々とした指し回しだった。
長沢女流四段の2年連続本戦進出も、特筆に値する。久津女流初段も、地方在住のハンデをものともせず、久しぶりに存在感を示した。
石橋幸緒女流王位の本戦入りは、予想どおりとはいえ、さすがである。
笠井友貴アマ、成田アマ、小野ゆかりアマを破った熊倉紫野女流初段、上田女流二段、甲斐智美女流二段は、プロの貫禄を見せた。
このところLPSA棋士が、アマ強豪に軒並み痛い目に遭っている中で、女流棋士会の若手実力者がしっかり結果を出したことは、プロとはいえ、見事である。女流棋士会は若手の層が厚いと、あらためて思う。
さて、本戦進出者の写真をあらためて見ると、やはり島井女流初段がピカピカ光っている。ほかの女流棋士とは輝きが違う。ここ数ヶ月、島井女流初段はLPSA金曜サロンでも休場状態で、私は彼女の存在を忘れたことすらあった。が、
「ヨーコだヒロミだエリコだってうるさいけど、私を忘れてないかしら?」
という声が聞こえた気がした。まったく私としたことが、うっかりしていたと思う。おみそれしました、というところだ。島井女流初段には、本戦でも台風の目になってもらいたい。
また今期は、懸賞金スポンサーが述べ50本以上も集まったようである。この制度が浸透した証でもあるが、いくつか希望もある。
「懸賞対局」の札は今回、記録机の向かって右側に立てられていたが、「応援している棋士のほうへ置く」とか、何か配慮ができなかったものか。むろん中立ならば、立札を机の真ん中に置けばよい。ただこれをやると、懸賞金が一方に偏った場合、気分を害する女流棋士も出るかもしれない。だから賛否両論はあろうが、とにかく「私はあなたを応援しています」という意思を、なんらかの形で伝えたいのだ。代替案として、立札にスポンサーの名前を書けるようにするのもよいと思う。
まあ手っ取り早いのは、今回のように特別観戦席にすわればいいのだろうが、あれもオリの中の動物のようで、ちょっと恥ずかしいものがある。来年はさらにスポンサーが増えるだろうから、改善できるところは実行してほしい。
ついでに苦言をいくつか書いておこう。
今回の一斉予選で、投了の代わりに、いきなり感想戦に入った女流棋士がいた。これはよくない。加藤一二三流に「負けましたですね」と言うなり、升田幸三流に「それまで」と言うなり、駒台に手をかけるなり、なんらかの意思表示をしてから、感想戦に移るべきであろう。
またこれは戦形の問題だから素人が口を出すものではないが、穴熊の将棋が多かった気がする。調べてみたら、千日手を含めた全37局中、相穴熊が3局、それ以外、振り飛車対居飛車の対抗形13局のうち、振り飛車穴熊が1局、居飛車穴熊が8局あった。また相振り飛車は11局あったが、ここでも2局、穴熊が出現した。
これだけの数字を見るとそう多くも感じないが、1回戦の注目局を見た限りでは、私の色メガネもあったのだろうが、どこもかしこも穴熊、という印象があった。
まあ数少ない公式戦、絶対に負けられない一戦、と条件が重なれば、まず玉を安全にしたくなる気持ちはよく分かる。もちろん棋風的に穴熊が合う女流棋士はいるから全員の穴熊を否定はしない。しかし「この人は対振り飛車に急戦でバリバリいくのが棋風に合っている」と考える女流棋士まで、(居飛車)穴熊を採用しているのは、個性を殺してしまい、もったいないと思う。
▲5七銀左から攻め倒すような、爽快な将棋は、確実にファンを魅了する。そんな指し方をする女流棋士が現れないものか。
最後に書かずもがな、を書くと、これは観客のマナーの問題だが、マイナビルーム内はケータイの使用禁止と謳っていたのに、平気でいじっている人がいた。あれはよくない。たとえば将棋会館でプロの対局を拝見するとき、ケータイをいじる人はいない。マイナビルームでも、同じことである。
ああ、なんで私はこんなに怒っているのだろう。やっぱり山口恵梨子ちゃんが負けたからだろうか。
とにかく勝ち残った12選手と、シードの4選手は、引き続き本戦でも、素晴らしい将棋を見せてほしい。
皆さま、今期も熱い戦いを、ありがとうございました。
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第3期マイナビ女子オープン・一斉予選対局を見に行く(中編)

2009-07-28 00:10:49 | 観戦記
豪華な昼食を摂って、午後1時すぎにパレスサイドビルへ戻る。
マイナビルームへ入る前に、本日3本目のスポンサーの手続きをする。担当の方は、「毎度ありがとうございます」という顔でニコニコしている。
私は少し震える手で、新品の壱万円札を三たびピッ、と出す。
「明日から断食します」。
入口右手前の野田澤彩乃女流1級-成田弥穂アマ戦を見る。野田澤女流1級の気合は十分と見た。成田アマは端然と座り、プロと対峙するプレッシャーは微塵も感じない。
そのまま奥に進んで、中倉宏美女流二段-上田初美女流二段戦を見る。中倉女流二段の表情は、指導対局と比べて、あまり変化がない。上田女流二段は、額に手をやり、うつむいている。早くも自分のスタイルで読みに没頭しているようだ。
そのまま進んで左折、室内左奥の対局は船戸陽子女流二段-古河彩子女流二段。船戸女流二段のファッションはいつも楽しみだ。マイナビ予選では、LPSAはいつも専用のブレザーを着用しているが、その下に着ているワンピースなど、ブレザー以外の部分をどう表現するかが見どころである。
昨年の同棋戦では「女子高生?」がテーマだった船戸女流二段は、今年は下のワンピース?とスカーフを流水のデザインで統一させた斬新なファッション。キャビンアテンダント風、とでもいおうか。
ただ残念だったのは、この位置からでは船戸女流二段のお顔が拝めないこと。6月の「とちのきカップ」決勝戦に続いて、またも斜めうしろからの観賞となった。いや、これでは観賞とはいえない。
まあそれはともかく、船戸女流二段のこのいでたちを拝見できただけで、今日はここに来ただけの価値はあったと、私は大いに満足した。戦型も夏らしく、相居飛車の急戦となっていた。
そのまま左折して、入口左側手前まで戻ってくる。千葉涼子女流三段-島井咲緒里女流初段戦をやっている。
15日に東京・将棋会館で行われた予選抽選会のとき、帰り際に、千葉幸生五段・涼子女流三段ご夫妻にお会いした。そのとき、LPSA金曜サロンの棋友が、「千葉先生、山下先生に当たりましたよ!」と、うっかり誤った情報を教えてしまったのだ。
もちろん千葉夫妻はそのまま会館に行き、正しい組み合わせを聞いたに違いないが、対戦相手が島井女流初段と知ったときの困惑は、どの程度だったのだろう。これが勝敗のカギになるような気がした。
島井女流初段は予選抽選会のときに、長い髪をバッサリと切って、サッパリした髪型になっていた。美人はどんな髪型でも良く似合う。まだ体調は万全でないはずだが、この日の表情には凄味があった。笑顔の島井女流初段も魅力的だが、対局時の表情は、その数倍素晴らしい。
ひととおりの女流棋士チェックが終わって、興味をそそられる対局を巡回する。
本田小百合女流二段-早水千紗女流二段戦も相居飛車系の将棋。本田女流二段はかわいらしい。対して早水二段は、足を組み、口元に手をやって熟考している。綺麗に引かれたマユがキリッとしていて、絵になる。いやまさに、油絵のモデルのようだ。素晴らしい。早水女流二段には甚だ失礼ながら、彼女がこんなに魅力的だとは思わなかった。
気合十分だった藤田麻衣子女流1級は、室田伊緒女流初段との一戦。室田女流初段の振り飛車に、居飛車穴熊で対抗している。私見だが、藤田女流1級は、玉を固める将棋より、急戦の将棋が合っていると思う。
もう一度島井女流初段の対局に戻り、観賞する。と、午後1時37分45秒、島井女流初段がブレザーのボタンをゆっくり外し始めた。なんだかドキドキする。腰の名札を下の服に付け替えブレザーを脱ぐと、38分06秒、隣りの椅子の背もたれに、パサッ、と置いた。
ブレザーの下から、涼しげな白のワンピースが現れた。なんて艶やかなんだろう! マイナビルームに、一気に夏が訪れた気がした。
私は以前中井広恵LPSA代表理事に、マイナビ一斉対局でのブレザー着用はやめたほうがいいのではないか、と提言したことがある。
対局で着用する服は戦闘服である。たとえば島井女流初段にはブルー系の服を愛用している。それを紺色のブレザーで隠してしまうことで、出せる力が減殺するように思えたからだ。
いま、室内は快適な温度だ。しかし島井女流初段は「暑い」と感じ、ブレザーを脱いだ。島井女流初段の白い肌が、ピンク色に染まっている。からだが火照っているのは、気合が入っている証拠だ。この将棋は期待できると思った。
今回島井女流初段は白のワンピースだったが、アイシャドーとヒールは、しっかり「ブルー」だった。
ちなみに千葉女流三段は紺色のブレザー。傍目には、どちらがLPSA所属か分からなくなった。そういえば昨年も、岩根忍現女流二段が、ピンクのワンピースの上に紺色のブレザーを羽織っていて、彼女がLPSA所属の棋士だったらなあ、と嘆息したことを思い出す。
船戸-古河のFF対決を見に行く。2時03分05秒、船戸女流二段が「ウーン」と発する。駒得ではあるが、少し攻めあぐねているようだ。
中倉-上田戦は、上田女流二段の振り飛車で、予想どおり相穴熊となっていた。中倉女流二段は居飛車対振り飛車の対抗形の場合、たいてい穴熊に潜る。中倉女流二段も藤田女流1級同様、穴熊は棋風に合わない気がするが、どうだろうか。
だめだ、どうしても島井女流初段の容姿が頭から離れない。またまた観賞に戻る。
2時27分28秒、島井女流二段が、両手で髪の毛をクシャクシャッ、とする。ワイルドだ。
島井女流初段は女優の米倉涼子に似ていると思う。いまのクシャクシャッ、も米倉涼子がやりそうな仕種だ。私の島井女流初段に対する評価が、グングン上がっていく。
船戸女流二段を観賞に行く。2時35分28秒、「ううーん…」とうめく。今度の声はちょっとマズい。古河女流二段の辛抱が実り、形勢は逆転模様だ。古河女流二段はタレントの小野真弓に似ている、と思った。
中倉-上田戦に行く。局面は中倉女流二段が6六の馬を抜いて依然有利。しかし相手はガチガチの穴熊なので、決めるのは難しい。中倉女流二段が右の頬をグニュッと抑えているので、唇がとんがっている。そんな表情もかわいらしい。
上田女流二段は7一に駒を打ちつけ、長期戦の構え。これは私の観戦中に終わらないな、と確信した。
船戸-古河戦を見に戻る。どうも対局が終了したようだ。古河女流二段がにこやかな笑顔をしているので、たぶん彼女が勝ったのだろう。
船戸女流二段はLPSAファンの期待を一身に背負ったが、力が空回りしたか。しかしこれからも対局は続く。とことんまで落ち込んだら、また這い上がって、力強い将棋を見せてほしい。
解説場では、千葉-島井戦が取り上げられていた。聞くと、島井女流初段の攻めが切れ模様、とのことだった。
再びマイナビルームに戻る。野田澤-成田戦は、成田アマ勝勢。野田澤女流1級は、投了の時期を逸したか。
千葉-島井戦を見に行くと、なんと島井女流初段が勝っていた。解説場の検討の局面から、どうやって勝ちにもっていったのだろう。これは久々の「シマイ攻め」が出たか。
告白すれば、今回のLPSA出場棋士12名の中で、島井女流初段は、勝利が期待できない棋士の筆頭に挙げていた。まったく、とんだ見当違いをしたものである。私は心の中で島井女流初段に、申し訳ありませんでした、と謝るしかなかった。
そろそろ時間である。私は後ろ髪を引かれる思いで、マイナビルームを退室した。
帰り際、例によって懸賞金受付のコーナーへ行く。スタッフも、「お待ちしておりました」という顔で迎えてくれる。
「島井-早水戦を1枚」。
私はブルブルと震える手で、新品の壱万円札を四たび、ピッと出した。
「私は明日からどうやって生きていけばいいんでしょう」。

夜帰宅すると、さっそくパソコンを起動し、マイナビ予選通過者を確認する。
と、予想もしない女流棋士が何人も顔をならべており、私は唖然とした。
[つづく]
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