(29日のつづき)
O氏も検討に加わってくれる。しかし「△3四銀でダメだね」とO氏。以下▲4一銀△5一飛▲3二銀成△同玉▲4三桂成△同玉は先手指し切りだ。
本局は序盤の作戦負けがすべてだった。
7局目は四段氏と。
「いつもブログを読んでますヨ」。
ありがたいことである。私の先手で、四段氏の四間飛車。私は玉頭位取りの作戦を採る。四段氏は向かい飛車に振り直し△2四歩▲同歩△同角だが、次の△5七角成は王手にならないので、その瞬間▲2二飛成で先手勝ち。よって私は▲3六歩。
対して四段氏は△3三桂だが、▲1五歩△同歩▲2五歩△1三角に逆モーションの▲4六歩が好手で、次に▲1五香を見て、私が指し易くなった。
そこで四段氏は△2五飛とぶつけてきたが、▲同飛△同桂▲2三飛△5二銀▲2五飛成となり、無条件の桂得で先手が優勢になった。
先手・一公:1九香、2五竜、2九桂、3六歩、4六歩、5六歩、5七銀、6五歩、6七金、6八金、7五歩、7六銀、7八玉、8六歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:桂、歩
後手・四段氏:1一香、1三角、1五歩、3四歩、4四歩、5二銀、5四歩、6二金、6三歩、7二金、7三歩、8一桂、8二玉、8三銀、8四歩、9一香、9四歩 持駒:飛、歩2
(▲2五飛成まで)
時間は午後3時を過ぎ、「皆さまが指している将棋を、最後の一局にしてください」の声が入る。懇親会は4時すぎからを予定している。
ここから△2四飛▲同竜△同角▲4四角△2八飛▲3七桂△2九飛成▲2一飛と進んだ。
その後も私がリードを保っていたと思うのだが、四段氏が△3八角と打った手に、私が▲1一竜と香を取ったのが悪手だった。△5六角成(王手)▲6七銀に△5五馬と竜香両取りに引かれ、これで形勢が逆転した。
以下もむずかしいところはあったのだが、最後はうまく決められた。
「ちょっと焦っていたみたいですネ。もっと玉頭から押してこられたらこちらが苦しかった」
と四段氏。こちらはグウの音も出ない。最後を勝つと負けるとでは大違い。7局指して4勝3敗は可もなく不可もない成績である。
時刻は3時40分。これで将棋大会は終了。ここからはお待ちかね、懇親会である。
みんなで机を出し、セッティングする。何でも手作りなのだ。三遊亭とん楽さんが目に入ったが、挨拶するのを忘れてしまった。
私は大広間後方のあたりに座る。右に「やっぱり知っている人の隣に来てしまう」とO氏が座った。私たちの前は女性がふたり座った。左のテーブルにも、将棋女子が3、4人固まっていた。数年前には考えられなかったことである。その中に、長沢千和子女流四段そっくりの女性がいた。しかし長沢女流四段がここにいるわけがない。
まずは大会の表彰式である。基本的には成績優秀者順に呼ばれるが、その前に最多対局賞や最多勝利賞、最下位賞などが表彰された。将棋大会は勝ち星にこだわっていないので、成績の悪い人にももれなく賞品がいくようになっている。
最多勝利賞は、8戦全勝の五段氏。「8勝」は当将棋会の新記録だ。だがその記録達成に一枚貢献してしまった私は、反省モノだ。
最下位賞は、先ほどの栃木在住の男性。「最下位賞じゃなくて努力賞にしてもらいたい」とジョークが出るが、佐藤康光九段の色紙を得て、うれしそうだった。
あとは勝ち星の多い順に賞品を選び、一言自己紹介。
8勝の次が何勝だったか記憶にないが、5勝はO氏を含め3人だった。私は4勝だから、その次に呼ばれた。しかしどの賞品を選ぶか、むずかしいところ。思わず長考してしまい、自己紹介が先になった。
「東京の大沢です。ときどき会報に投稿しているので、名前を聞いてピンとくる方もいると思います…」
そのあとさんざん迷って、所司和晴七段「清心」の色紙をいただいた。「清心」といえば山口恵梨子女流初段だが、ないものをねだっても仕方ない。
この間に、缶ビールやおつまみがテーブルの上に並べられる。これらすべて、幹事が調達したものだ。私たちは、幹事に頭が上がらないのである。
全員の自己紹介が終わり、いつの間にか入室した木村晋介将棋ペンクラブ会長の音頭で、乾杯となった。
私は人見知りが激しいので、こうした席でも黙っていられるならそれでいい。しかし向かいに女性がいれば、少しは話を振って場を盛り上げなければと思う。
正面のひとは品のいいご婦人。意を決して話しかけると、
「駒音掲示板に書かれていますよね…」
と衝撃の一言。胸の名札が目に入ったらしい。本名で書き込みをしている余得でもあるが、それはともかく、「駒音」の女性読者は珍しいのではないか。「あの方は○○さん? あと、あの方は○○さんですよね」
ご婦人の指差す方向を見ると、確かに駒音の論客が談笑している。
このひと、将棋界の話題に詳しそうだ…。
左に湯川博士幹事が来る。
「この前は原稿(を書いてくれて)ありがとう。また書いてよ」
これが湯川幹事の挨拶代わりで、いつも簡単に言ってくれるが、原稿を書くのは至難の業だ。とくに会報への執筆は、毎回のたうち回りながら書いている。未熟な自分の文章を、いったい何度読み返しているか分からない。
「君の文章は直すところがないよ」
「はあ、どーも」
私はそっけないが、内心はうれしい。
「だけどね」
湯川幹事は続ける。「それはアマチュアとしてだよ。やっぱり(作家の)A君とかの文章と較べると、君の文章にも言いたいことはある。だけどいまは言わない」
ううう…ちょっと聞いてみたい気もするが、聞きたくないので、食い下がらない。
懇親会の参加棋士は、現在櫛田陽一六段のみ。将棋ペンクラブのイベントといえば、窪田義行六段を忘れてはいけないが、今年はまだ姿が見えない。どうしたのだろう。
(つづく)
O氏も検討に加わってくれる。しかし「△3四銀でダメだね」とO氏。以下▲4一銀△5一飛▲3二銀成△同玉▲4三桂成△同玉は先手指し切りだ。
本局は序盤の作戦負けがすべてだった。
7局目は四段氏と。
「いつもブログを読んでますヨ」。
ありがたいことである。私の先手で、四段氏の四間飛車。私は玉頭位取りの作戦を採る。四段氏は向かい飛車に振り直し△2四歩▲同歩△同角だが、次の△5七角成は王手にならないので、その瞬間▲2二飛成で先手勝ち。よって私は▲3六歩。
対して四段氏は△3三桂だが、▲1五歩△同歩▲2五歩△1三角に逆モーションの▲4六歩が好手で、次に▲1五香を見て、私が指し易くなった。
そこで四段氏は△2五飛とぶつけてきたが、▲同飛△同桂▲2三飛△5二銀▲2五飛成となり、無条件の桂得で先手が優勢になった。
先手・一公:1九香、2五竜、2九桂、3六歩、4六歩、5六歩、5七銀、6五歩、6七金、6八金、7五歩、7六銀、7八玉、8六歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:桂、歩
後手・四段氏:1一香、1三角、1五歩、3四歩、4四歩、5二銀、5四歩、6二金、6三歩、7二金、7三歩、8一桂、8二玉、8三銀、8四歩、9一香、9四歩 持駒:飛、歩2
(▲2五飛成まで)
時間は午後3時を過ぎ、「皆さまが指している将棋を、最後の一局にしてください」の声が入る。懇親会は4時すぎからを予定している。
ここから△2四飛▲同竜△同角▲4四角△2八飛▲3七桂△2九飛成▲2一飛と進んだ。
その後も私がリードを保っていたと思うのだが、四段氏が△3八角と打った手に、私が▲1一竜と香を取ったのが悪手だった。△5六角成(王手)▲6七銀に△5五馬と竜香両取りに引かれ、これで形勢が逆転した。
以下もむずかしいところはあったのだが、最後はうまく決められた。
「ちょっと焦っていたみたいですネ。もっと玉頭から押してこられたらこちらが苦しかった」
と四段氏。こちらはグウの音も出ない。最後を勝つと負けるとでは大違い。7局指して4勝3敗は可もなく不可もない成績である。
時刻は3時40分。これで将棋大会は終了。ここからはお待ちかね、懇親会である。
みんなで机を出し、セッティングする。何でも手作りなのだ。三遊亭とん楽さんが目に入ったが、挨拶するのを忘れてしまった。
私は大広間後方のあたりに座る。右に「やっぱり知っている人の隣に来てしまう」とO氏が座った。私たちの前は女性がふたり座った。左のテーブルにも、将棋女子が3、4人固まっていた。数年前には考えられなかったことである。その中に、長沢千和子女流四段そっくりの女性がいた。しかし長沢女流四段がここにいるわけがない。
まずは大会の表彰式である。基本的には成績優秀者順に呼ばれるが、その前に最多対局賞や最多勝利賞、最下位賞などが表彰された。将棋大会は勝ち星にこだわっていないので、成績の悪い人にももれなく賞品がいくようになっている。
最多勝利賞は、8戦全勝の五段氏。「8勝」は当将棋会の新記録だ。だがその記録達成に一枚貢献してしまった私は、反省モノだ。
最下位賞は、先ほどの栃木在住の男性。「最下位賞じゃなくて努力賞にしてもらいたい」とジョークが出るが、佐藤康光九段の色紙を得て、うれしそうだった。
あとは勝ち星の多い順に賞品を選び、一言自己紹介。
8勝の次が何勝だったか記憶にないが、5勝はO氏を含め3人だった。私は4勝だから、その次に呼ばれた。しかしどの賞品を選ぶか、むずかしいところ。思わず長考してしまい、自己紹介が先になった。
「東京の大沢です。ときどき会報に投稿しているので、名前を聞いてピンとくる方もいると思います…」
そのあとさんざん迷って、所司和晴七段「清心」の色紙をいただいた。「清心」といえば山口恵梨子女流初段だが、ないものをねだっても仕方ない。
この間に、缶ビールやおつまみがテーブルの上に並べられる。これらすべて、幹事が調達したものだ。私たちは、幹事に頭が上がらないのである。
全員の自己紹介が終わり、いつの間にか入室した木村晋介将棋ペンクラブ会長の音頭で、乾杯となった。
私は人見知りが激しいので、こうした席でも黙っていられるならそれでいい。しかし向かいに女性がいれば、少しは話を振って場を盛り上げなければと思う。
正面のひとは品のいいご婦人。意を決して話しかけると、
「駒音掲示板に書かれていますよね…」
と衝撃の一言。胸の名札が目に入ったらしい。本名で書き込みをしている余得でもあるが、それはともかく、「駒音」の女性読者は珍しいのではないか。「あの方は○○さん? あと、あの方は○○さんですよね」
ご婦人の指差す方向を見ると、確かに駒音の論客が談笑している。
このひと、将棋界の話題に詳しそうだ…。
左に湯川博士幹事が来る。
「この前は原稿(を書いてくれて)ありがとう。また書いてよ」
これが湯川幹事の挨拶代わりで、いつも簡単に言ってくれるが、原稿を書くのは至難の業だ。とくに会報への執筆は、毎回のたうち回りながら書いている。未熟な自分の文章を、いったい何度読み返しているか分からない。
「君の文章は直すところがないよ」
「はあ、どーも」
私はそっけないが、内心はうれしい。
「だけどね」
湯川幹事は続ける。「それはアマチュアとしてだよ。やっぱり(作家の)A君とかの文章と較べると、君の文章にも言いたいことはある。だけどいまは言わない」
ううう…ちょっと聞いてみたい気もするが、聞きたくないので、食い下がらない。
懇親会の参加棋士は、現在櫛田陽一六段のみ。将棋ペンクラブのイベントといえば、窪田義行六段を忘れてはいけないが、今年はまだ姿が見えない。どうしたのだろう。
(つづく)