一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

渡辺名人、名人3連覇

2022-05-31 23:14:39 | 将棋雑記
第80期名人戦第5局が28日、29日に行われ、渡辺明名人が97手で斎藤慎太郎八段を降し、4勝1敗で名人位を防衛した。
第5局は渡辺名人の先手で、角換わり相早繰り銀になった。
第1日目を終え、消費時間は渡辺名人が3時間13分、斎藤八段が4時間54分だった。前局もこの時点で、渡辺名人2時間47分、斎藤八段5時間6分と、大量差がついていた。
序盤の長考は加藤一二三九段や郷田真隆九段が有名だが、このおふたりは考えるのが楽しくて、時間を消費しているにすぎない。だが斎藤八段の長考には、迷いが感じられる。これでは余計くたびれて、中盤以降で正着を指す確率が低くなってしまう。
藤井聡太竜王にはいくつか名言があるが、先日感心したのは、「序盤は互角で十分。優位に立とうとは思っていない」である。渡辺名人にもそんなところがあるが、斎藤八段は貪欲に優位を勝ち取ろうとする。そこに無理が生じているのではなかろうか。
ともあれそんなわけで、もはやどんな展開になっても、最後は渡辺名人が勝つんだろうな、と思った。
果たして2日目、渡辺名人は優位を拡げ、勝ち切ったのだった。
終わってみれば、渡辺名人の強さをまざまざと見せつけられたシリーズとなった。これで名人3連覇で、二十世名人資格取得に向け、同じ名人3期の、佐藤天彦九段の半歩先を行くことになったわけだ。
だが、あと2期をスンナリ、とはいかないだろう。来期名人戦には藤井聡太竜王が出てくるからだ。1993年の名人就位式で、米長邦雄新名人が「来期はあの男が(名人戦に)出てくる」と羽生善治竜王を名指ししたときと似た状況だ。
谷川浩司十七世名人は、羽生九段の攻勢に遭いながらも、何とか十七世名人を獲得した。しかし渡辺名人はどうだろうか。藤井竜王がいったん名人位を手にしたら、20連覇ぐらいしそうで恐いのだ。
斎藤八段にしてもそうで、実は名人に連続挑戦した棋士は、例外なく名人を経験するのだが、だから斎藤八段も……とは言いきれない理由がここにある。
それに「十八世名人」も、羽生九段3期、森内俊之九段0期から、森内九段が逆転で取得したのだ。よって渡辺名人も、二十世名人が間近に迫ってきた、とは露ほどにも考えていないだろう。
まあともかく来年、来年の名人戦である。
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富沢キック

2022-05-30 00:44:23 | 男性棋士
富沢幹雄八段は知る人ぞ知る名棋士である。富沢八段は、戦前の1943年四段。戦後に順位戦が始まり、富沢八段はC級に参加した。
若手時代には山田道美九段、関根茂九段、宮坂幸雄九段らと研究会を行った。これが共同研究の走りとされる。
富沢八段の得意技は、振り飛車に対する▲4五桂ハネだ。桂のタダ捨てだが△4五同歩▲3三角成△同桂に、▲2四歩△同歩▲同飛で飛車先を突破する。「山田道美将棋著作集」(大修館書店)にも紹介されている攻め方で、「富沢キック」と呼ばれた。
この「富沢キック」、私は実戦譜を見たことはないのだが、先日ひょんなことから、その該当局を知ることができた。

1991年7月4日に、第40期王座戦一次予選で、富沢幹雄八段VS藤井猛四段戦が行われた。藤井四段はこの年の4月に四段になったルーキーで、振り飛車の使い手という触れ込みだった。ここで富沢八段の「富沢キック」が炸裂した。では、ご覧いただこう。

第1図以下の指し手。▲5五角△6三金▲7七銀△4三銀(第2図)

当時富沢八段は71歳。丸田祐三九段に次ぎ2番目の長老棋士で、隠居した侍のような雰囲気があった。順位戦は前期にC級1組から降級し、C級2組に在籍していた。
第1図は藤井四段が△7四歩と美濃囲いの懐を拡げたところ。これがやや危険な一手だった。
▲5五角が機敏な手で、△6三金を強要。そしてゆうゆうと▲7七銀と上がる。
そこで△5四歩▲6六角△6五歩は、▲5七角△4三銀▲2四歩△同歩▲同角△2二飛▲2三歩△同飛▲4六角で先手勝ち。
よって藤井四段は△4三銀と上がり前述の変化に備えたが、ここであの手が出た。

第2図以下の指し手。▲4五桂△同歩▲3三角成△同桂▲2四歩△同歩▲同飛

▲4五桂が「富沢キック」である。前述の通り、桂損の代償として、飛車先の突破に成功した。
なおこの進行になったとき、後手の左金は△6三にいたほうが、先手としては指し易いのだ。
そこから丁々発止の攻め合いとなり、局面は進んで第3図。

第3図以下の指し手。▲1二竜△2九竜▲7四桂△同金▲6一馬△同銀▲7四歩 以下、103手まで富沢八段の勝ち。

▲3九香に△2二香と打ち返した局面。先手玉が居玉に還元しているのが面白い。
さて△2二香に▲同竜は、△6九桂成▲同金△2二馬で後手勝ち。
よって▲1二竜に△2九竜となったが、そこで▲7四桂の王手を利かし、△同金に▲6一馬とバッサリ行ったのが好手だった。△6一同銀に▲7四歩と金を取り返し、先手優勢である。
以下も富沢八段が的確に攻め、勝ち切ったのだった。
老雄にしてやられた藤井四段だったが、翌1992年1月の第5期竜王戦6組では、再び富沢八段と対峙し、雪辱を果たした。しかし戦型は、相矢倉だった。
そして藤井四段はこの後「藤井システム」を開発し一世を風靡。1998年には第11期竜王戦で谷川浩司竜王を破り、竜王位に就いた。
いっぽう富沢八段は1992年初頭から体調を崩し、順位戦C級2組は9回戦と10回戦を不戦敗。降級点が付いてしまった。
引き続き1992年度、93年度も休場し、自動的に降級点3となり、規定により引退となった。
よって、たぶんではあるが、上記の藤井四段戦が、公式戦最後の「富沢キック」だったと思われる。
富沢八段は1998年1月10日、77歳で逝去。記録より、記憶に残る棋士だった。
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里見女流四冠の選択

2022-05-29 19:46:34 | 将棋雑記
里見香奈女流四冠が27日、第48期棋王戦・予選決勝で古森悠太五段に勝ち、女流棋士初の本戦(挑戦者決定トーナメント)進出を決めた。
似たような例では、第92期棋聖戦で西山朋佳女流三冠・奨励会三段(当時)が二次予選決勝まで進んだが、屋敷伸之九段に敗れている。そのとき、女流棋士の本戦進出も時間の問題とフンでいたが、このたび里見女流四冠が一足先に達成したというわけだ。
なお、第4期銀河戦で斎田晴子女流五段が決勝トーナメントに進出しているが、当時は非公式戦だったうえ、予選での勝利が2勝だったため、参考記録である。
今回の里見女流四冠は、1回戦から浦野真彦八段、澤田真吾七段、池永天志五段、冨田誠也四段、そして古森五段に勝ったもので、このメンツに5連勝は男性棋士でも簡単にできまい。里見女流四冠は西山女流二冠とのタイトル戦でも勝ち続けているし、このところの充実は素晴らしいものがある。
そして里見女流四冠はこの勝利で直近の勝利が「10勝4敗」となり、プロ編入試験の資格を得た。
ところがここから驚きなのだが、現在は「(受験に)あまり乗り気でない」という。
まさか試験料の50万円をケチったわけでもなかろうが、せっかくのチャンスをもったいないことである。
編入試験は5局で3勝しなければならないから厳しいが、試験官の棋士だって、里見女流四冠相手に、死に物狂いでは指すまい。つまり、受験すれば合格しそうな雰囲気はあるのだ。
だが、肝心の里見女流四冠にそのモチベーションがない。2018年に奨励会を辞めたときから、「棋士」はキッパリ諦めたのだろう。
それによく考えたら、里見女流四冠は現在の実績で、男性棋戦にはほぼ出場できている。この1年間でも、竜王戦、王位戦、王座戦、棋王戦、棋聖戦、朝日杯、銀河戦、NHK杯に参加している。棋士になっても女流棋士は兼務できるが、そもそも現在のままでも、男性棋戦には不自由していないのである(ただ、里見女流四冠が「棋士」になれば、男性棋戦の女流枠が(たぶん)1つ空き、当落ギリギリの女流棋士は、かなり助かる)。
それに、もし棋士になったら研究対象が男性棋士全般になり、女流棋士にまで回らなくなる。
まあ里見女流四冠レベルになれば、研究などしなくても、大半の女流棋士に勝てる(失礼)。
しかし、西山女流二冠ら強豪への対策が滞り、白玲(1500万円)、清麗(700万円)を獲り損ねたら、虻蜂取らずになってしまう。
ただ、受験の〆切まで、しばらくあるのだろう。将棋と同じく徹底的に先の先まで考え、悔いのない選択をしてもらいたい。
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国鉄(JR)北海道廃止路線一覧

2022-05-28 13:37:14 | プライベート
2016年11月29日に「北海道鉄道網、壊滅」の表題で、北海道の国鉄(JR)廃線一覧をアップしたが、その後もいくつか廃線になっている。ここで最新版を記しておこう。

胆振線 京極―脇方 7.5km 1970.10.30(最終運行日、以下同じ)
根北線 斜里―越川 12.8km 1970.11.30
札沼線 新十津川―石狩沼田 34.9km 1972.06.18
函館本線 美唄―南美唄 3.0km 1973.09.08
千歳線(旧)上野幌―東札幌 9.3km 1973.09.09
函館本線 東札幌―月寒 2.8km 1976.09.30
函館本線 桑園―札幌市場 1.6km 1978.10.01
函館本線 近文―旭川大町 2.9km 1978.10.01
夕張線 紅葉山―登川 7.6km 1981.06.30
白糠線 白糠―北進 33.1km 1983.10.22
万字線 志文―万字炭山 23.8km 1985.03.31
渚滑線 渚滑―北見滝ノ上 34.3km 1985.03.31
相生線 美幌―北見相生 36.8km 1985.03.31
岩内線 小沢―岩内 14.9km 1985.06.30
興浜北線 浜頓別―北見枝幸 30.4km 1985.06.30
興浜南線 興部―雄武 19.9km 1985.07.14
美幸線 美深―仁宇布 21.2km 1985.09.16
手宮線 南小樽―手宮 2.8km 1985.11.04
胆振線 倶知安―伊達紋別 83.0km 1986.10.31
富内線 鵡川―日高町 82.5km 1986.10.31
広尾線 帯広―広尾 84.0km 1987.02.01
瀬棚線 国縫―瀬棚 48.4km 1987.03.15
湧網線 中湧別―網走 89.8km 1987.03.19
士幌線 帯広―十勝三股 78.3km 1987.03.22
羽幌線 留萌―幌延 141.1km 1987.03.29
幌内線 岩見沢―幾春別 18.1km 1987.07.12
松前線 木古内―松前 50.8km 1988.01.31
歌志内線 砂川―歌志内 14.5km 1988.04.24
標津線 標茶―根室標津 69.4km 1989.04.29
標津線 厚床―中標津 47.5km 1989.04.29
名寄本線 名寄―遠軽 138.1km 1989.04.30
名寄本線 湧別―中湧別 4.9km 1989.04.30
天北線 南稚内―音威子府 148.9km 1989.04.30
池北線 池田―北見 140.0km 1989.06.03(翌日より第3セクター「ちほく高原鉄道」として営業。2006.04.21廃止)
函館本線上砂川支線 砂川―上砂川 7.3km 1994.05.15
深名線 深川―名寄 121.8km 1995.09.03
江差線 木古内―江差 42.1km 2014.05.11
江差線 五稜郭―木古内 37.8km 2016.03.25(翌日より第3セクター「道南いさりび鉄道」として営業)
留萌本線 留萌―増毛 16.7km 2016.12.04
石勝線夕張支線 夕張―新夕張 16.1km 2019.03.31
札沼線 北海道医療大学―新十津川 47.6km 2020.05.06(最終運行は04.17)
日高本線 鵡川―様似 116km 2021.03.31

前回より3線・179.7㎞が部分廃止され、総廃止距離は1944.3kmになった。ちなみに、新函館北斗から小倉まで、新幹線で1970.2kmである。よくこれだけ廃止にしたものだと思う。
個別に見ていくと、石勝線夕張支線は、北海道冬まつりに行ったついでに、廃止1ヶ月前に「思い出乗車」した。
札沼線は当初5月6日が最終運行日だったが、コロナ禍の影響で廃止が前倒しになり、4月17日、これといったイベントもなく、静かに最終運行となった。
日高本線は2015年の高波、2016年の台風で鉄路が壊滅し、復旧の目途が立たないまま、そのまま廃止となった。日高本線は海岸沿いスレスレを走る箇所が多く、風光明媚な路線だった。
なお似たケースでは、2016年に台風で被災した根室本線・富良野―新得間81.7kmがある。こちらも長期運休になり、このたび廃止が決定した。
日高本線も根室本線も気の毒だったが、JR北海道にもはや復旧の体力はなく、渡りに船の廃止措置だっただろう。
そして近い将来、函館本線・長万部―小樽間140.2kmも廃止になる。
「むかし、北海道では至る所に鉄道が通じていて、鉄路だけで北海道の輪郭が書けた」。いまの若者が聞いても、ピンと来ないかもしれない。
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第81期順位戦の名人挑戦者&各クラスの昇降級者予想

2022-05-27 23:02:33 | 勝敗予想
現在名人戦の真っ最中だが、来月には第81期順位戦が始まる。では、恒例の「名人挑戦者&各クラスの昇降級者予想」を発表しよう。

■A級
名人挑戦:藤井聡太竜王
降級:佐藤康光九段、菅井竜也八段

■B級1組
昇級:千田翔太七段、澤田真吾七段
降級:横山泰明七段、久保利明九段、中村太地七段

■B級2組
昇級:松尾歩八段、増田康宏六段、大橋貴洸六段

■C級1組
昇級:石井健太郎六段、出口若武六段、伊藤匠五段

■C級2組
昇級:服部慎一郎四段、佐々木大地六段、八代弥七段


A級の名人挑戦は、藤井竜王でキマリ。全勝で駆け抜けるか1敗するか、というところ。
降級の2名はまったく分からない。

B級1組の昇級は千田七段。前期藤井竜王に勝った実績を重視した。
澤田七段は、前期9勝の実績を重視した。
近藤七段も推したかったが、今回は見送りとした。

B級2組は、上記の3名。松尾八段は順位がいいので推した。
増田六段は前期順位を上げ、今期はチャンスだろう。
3人目は大橋六段。藤井竜王に4連勝中の大橋六段を外すわけにはいかない。
1回戦で松尾VS増田戦、6回戦で松尾VS大橋戦があるのでこの3名がそのまま昇級することはないと思うが、誰を外すかも分からなかった。

C級1組は、上記の3名。
石井六段は毎年昇級候補に挙げている気がするのだが、今期は順位もいいし、チャンスだろう。
出口六段は、叡王挑戦の実績を買った。
ふたりは8回戦で対戦があり、星のつぶし合いになるのが引っ掛かるが、そこはスルーしよう。
伊藤五段は、前期1期抜けの勢いを買った。

C級2組は上記の3名。服部四段は順位がいいし、今期上がらないとしょうがない。
佐々木六段は竜王戦で昇級を重ねているが、順位戦で上がらないとしょうがない。
八代七段は竜王戦が1組なので、早く順位戦との乖離を縮めたいところである。

以上、合計17名で、8名正解を目標とする。
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