続いて植山悦行七段に教えていただく。当人はイヤがったが、もちろん角落ちでお願いする。
植山七段との角落ち戦は、最初の5局こそ私の3勝2敗だったが、そこから植山七段に本気を出され、私の1勝7敗。植山七段はしきりに平手戦を誘うが、この体たらくでは夢のまた夢である。
本局は、これも私の矢倉。いままで私の玉の囲いは、薄いものが多かった。それが先月ぐらいから、意識的に矢倉を指すようになった。やはり玉が固いのは大きいからである。
植山七段、△8五桂。シャクに障るが、▲8八銀と引く。植山七段△6五歩。△8五桂と指した以上、攻め続けるよりない。▲6五同歩△同金▲6六歩△同金▲同金△同飛▲6七歩△5六飛。
最後の▲6七歩が疑問で、△5六飛と横歩を取られビックリした。最初はここで、▲6六金と打てば飛車を殺せると思っていた。しかしそれは△5一飛と引かれて何でもない。この錯覚は痛かった。
私は忍の▲5八歩。△7五歩~△7六歩にも▲6六金~▲7六金と辛抱した。と、植山七段が私を見て、
「遊んでるでしょ」
と苦笑した。遊ぶも何も、私は必死である。
△9五歩にも平然と▲同歩と取ったら、取るのかよ、と、これも意外そうだった。植山七段と私は読み筋が似ているらしいが、この数手は、植山七段の読みにはなかったようだ。ということは、私の手が疑問だったのだ。
最終盤、上手王に詰みはなく、下手玉も必至、というところで私は投了。しかし植山七段は、エエッ? と驚く。まだむずかしいでしょう、というわけだ。
▲9六玉・△5八竜△7八と△8七と…の局面で投了したのだが、私は▲8七玉と取れないと錯覚していた。しかし当然▲8七玉と取れる。以下、上手の追撃に、上部に逃げてどうか。ただこれも検討の結果、下手に勝ちはなかった。
少し戻って、△6六同飛には▲6七金と手厚く打つのが正着だったらしい。以下△6一飛▲6六歩となるが、自分だけ金を手放した上に▲6六歩の後手まで引くので、とても指す気になれなかった。
しかし上手から見ると、こう収めて下手からやってこい、と催促されると、指す手がないという。上手は△8五桂と跳ねているから攻めを継続せねばならないが、駒を渡すことになるので、後の反撃がキツイのだ。
下手は桂と歩が入れば、▲3四歩~▲3五歩から▲3四桂があり、攻め手には困らない。
言われてみればなるほどそうで、13日の大野八一雄七段の教えもそうだったが、プロ棋士の指摘は毎回毎回、本当にためになる。
また本譜の▲5八歩以下でも、下手に面白い変化が潜んでいた。こうしてみると、やはり角のハンデは大きいのかと思う。
この時点で午後5時はとっくに過ぎ、6時も回っていたのだが、子供さんを迎えに来る親御さんを待つことになり、食事会は少し遅れることになった。
表はすごい雨である。大野七段が、
「きょうはこんな雨なのに、皆さんが来てくれてありがたい」
ともらす。確かに雨の日は外出も大変だが、教室に入ってしまえば、天候は関係ない。ついでに書けば、私たちが大野教室に集うのは、大野七段を慕っているからである。天気に左右されることは全くない。
手持無沙汰の私(たち)は、また将棋を指すことにした。Fuj氏と再戦である。
Fuj氏の先手で▲7六歩△3四歩▲6六歩。またかよ…と思う。この3手を見れば、ふつうは先手の振り飛車を予想する。しかし矢倉党のFuj氏はここから矢倉に変化するのだ。
それがイヤだから、私は△3五歩と突き、三間飛車に振った。
ところがFuj氏も向かい飛車に振ってきた。もう何が何だか、訳が分からない。Fuj氏とは、まったく読みが合わない。
混乱した私は、中盤で作戦負けに陥る。▲2六桂で△3四飛が殺され、ピンチに見える。しかし私は、△3六飛の只捨てを用意していた。やむない▲同金に△3五歩で金が死んでいる。以下、△3六歩~△4六角と飛び出して逆転、これは勝ったと思った。
しかしFuj氏も最善手で粘る。これに私が業を煮やし、角、銀を渡して△3三銀と薄い詰めろを掛けたのだが、Fuj氏の次の一手に飛び上がった。
▲9三角成!! 全く見えていなかった。一段目に飛車が利いているので△同玉とは取れないが、△同香でも▲9一角△9二玉▲8一銀△9一玉▲7二銀成で詰んでしまう。この見落としは痛かった。
私は力なく△7三玉だが、▲5一角と王手銀取りを掛けられて投了。何だか知らないが、またFuj氏に負けた。これはもう、実力が違うのだろうか。
生徒の親御さんもようやく来て子供さんと帰り、いよいよ食事タイムである。参加メンバーは大野七段、W氏、Fuj氏、M君、私。植山七段は、翌日に職団戦の審判があるとかで、きょうは自宅へ戻った。
外はまだ雨が降っていたが、クルマで少し走り、「華屋与兵衛」に入った。
私は蕎麦と寿司の定食をオーダーしたが、残りの4人はトンカツ定食。ここのキャベツがおかわり自由なのだが、みんなが何度もおかわりするので、私はちょっと恥ずかしくなった。
中学生のM君を駅前まで送り届け、私たちはとって返して、ガストへ入る。先日のキャンペーンは終了し、現在は「39円キャンペーン」なるものをやっていた。しかしこれは小学生までの注文に限るもので、私たちは対象外。2色アイスクリームとドリンクバーを注文する。
いいオトナが4人固まって、アイスクリームを口に運ぶ。ハタから見たら少し気色悪い。この仲間には入りたくないなと思う。
「大沢さんとも、これからは平手でやりましょうよ」
大野七段が再び勧めてくださる。
「いえ、私は…」
とてもありがたいが、私にそんな実力はない。プロ相手に平手は畏れ多い。
「平手の指し方も勉強したほうがいいですよ。私はFujさんとも平角交じりで指し始めたし」
「お断りします」
私は苦笑しながら言う。いかにも愚直だが、それも私らしくてよい。
スマホを見ると11時20分である。このまま話しこんで、また終電を逃したら一大事だ。きょうはこれでお開きとなった。
植山七段との角落ち戦は、最初の5局こそ私の3勝2敗だったが、そこから植山七段に本気を出され、私の1勝7敗。植山七段はしきりに平手戦を誘うが、この体たらくでは夢のまた夢である。
本局は、これも私の矢倉。いままで私の玉の囲いは、薄いものが多かった。それが先月ぐらいから、意識的に矢倉を指すようになった。やはり玉が固いのは大きいからである。
植山七段、△8五桂。シャクに障るが、▲8八銀と引く。植山七段△6五歩。△8五桂と指した以上、攻め続けるよりない。▲6五同歩△同金▲6六歩△同金▲同金△同飛▲6七歩△5六飛。
最後の▲6七歩が疑問で、△5六飛と横歩を取られビックリした。最初はここで、▲6六金と打てば飛車を殺せると思っていた。しかしそれは△5一飛と引かれて何でもない。この錯覚は痛かった。
私は忍の▲5八歩。△7五歩~△7六歩にも▲6六金~▲7六金と辛抱した。と、植山七段が私を見て、
「遊んでるでしょ」
と苦笑した。遊ぶも何も、私は必死である。
△9五歩にも平然と▲同歩と取ったら、取るのかよ、と、これも意外そうだった。植山七段と私は読み筋が似ているらしいが、この数手は、植山七段の読みにはなかったようだ。ということは、私の手が疑問だったのだ。
最終盤、上手王に詰みはなく、下手玉も必至、というところで私は投了。しかし植山七段は、エエッ? と驚く。まだむずかしいでしょう、というわけだ。
▲9六玉・△5八竜△7八と△8七と…の局面で投了したのだが、私は▲8七玉と取れないと錯覚していた。しかし当然▲8七玉と取れる。以下、上手の追撃に、上部に逃げてどうか。ただこれも検討の結果、下手に勝ちはなかった。
少し戻って、△6六同飛には▲6七金と手厚く打つのが正着だったらしい。以下△6一飛▲6六歩となるが、自分だけ金を手放した上に▲6六歩の後手まで引くので、とても指す気になれなかった。
しかし上手から見ると、こう収めて下手からやってこい、と催促されると、指す手がないという。上手は△8五桂と跳ねているから攻めを継続せねばならないが、駒を渡すことになるので、後の反撃がキツイのだ。
下手は桂と歩が入れば、▲3四歩~▲3五歩から▲3四桂があり、攻め手には困らない。
言われてみればなるほどそうで、13日の大野八一雄七段の教えもそうだったが、プロ棋士の指摘は毎回毎回、本当にためになる。
また本譜の▲5八歩以下でも、下手に面白い変化が潜んでいた。こうしてみると、やはり角のハンデは大きいのかと思う。
この時点で午後5時はとっくに過ぎ、6時も回っていたのだが、子供さんを迎えに来る親御さんを待つことになり、食事会は少し遅れることになった。
表はすごい雨である。大野七段が、
「きょうはこんな雨なのに、皆さんが来てくれてありがたい」
ともらす。確かに雨の日は外出も大変だが、教室に入ってしまえば、天候は関係ない。ついでに書けば、私たちが大野教室に集うのは、大野七段を慕っているからである。天気に左右されることは全くない。
手持無沙汰の私(たち)は、また将棋を指すことにした。Fuj氏と再戦である。
Fuj氏の先手で▲7六歩△3四歩▲6六歩。またかよ…と思う。この3手を見れば、ふつうは先手の振り飛車を予想する。しかし矢倉党のFuj氏はここから矢倉に変化するのだ。
それがイヤだから、私は△3五歩と突き、三間飛車に振った。
ところがFuj氏も向かい飛車に振ってきた。もう何が何だか、訳が分からない。Fuj氏とは、まったく読みが合わない。
混乱した私は、中盤で作戦負けに陥る。▲2六桂で△3四飛が殺され、ピンチに見える。しかし私は、△3六飛の只捨てを用意していた。やむない▲同金に△3五歩で金が死んでいる。以下、△3六歩~△4六角と飛び出して逆転、これは勝ったと思った。
しかしFuj氏も最善手で粘る。これに私が業を煮やし、角、銀を渡して△3三銀と薄い詰めろを掛けたのだが、Fuj氏の次の一手に飛び上がった。
▲9三角成!! 全く見えていなかった。一段目に飛車が利いているので△同玉とは取れないが、△同香でも▲9一角△9二玉▲8一銀△9一玉▲7二銀成で詰んでしまう。この見落としは痛かった。
私は力なく△7三玉だが、▲5一角と王手銀取りを掛けられて投了。何だか知らないが、またFuj氏に負けた。これはもう、実力が違うのだろうか。
生徒の親御さんもようやく来て子供さんと帰り、いよいよ食事タイムである。参加メンバーは大野七段、W氏、Fuj氏、M君、私。植山七段は、翌日に職団戦の審判があるとかで、きょうは自宅へ戻った。
外はまだ雨が降っていたが、クルマで少し走り、「華屋与兵衛」に入った。
私は蕎麦と寿司の定食をオーダーしたが、残りの4人はトンカツ定食。ここのキャベツがおかわり自由なのだが、みんなが何度もおかわりするので、私はちょっと恥ずかしくなった。
中学生のM君を駅前まで送り届け、私たちはとって返して、ガストへ入る。先日のキャンペーンは終了し、現在は「39円キャンペーン」なるものをやっていた。しかしこれは小学生までの注文に限るもので、私たちは対象外。2色アイスクリームとドリンクバーを注文する。
いいオトナが4人固まって、アイスクリームを口に運ぶ。ハタから見たら少し気色悪い。この仲間には入りたくないなと思う。
「大沢さんとも、これからは平手でやりましょうよ」
大野七段が再び勧めてくださる。
「いえ、私は…」
とてもありがたいが、私にそんな実力はない。プロ相手に平手は畏れ多い。
「平手の指し方も勉強したほうがいいですよ。私はFujさんとも平角交じりで指し始めたし」
「お断りします」
私は苦笑しながら言う。いかにも愚直だが、それも私らしくてよい。
スマホを見ると11時20分である。このまま話しこんで、また終電を逃したら一大事だ。きょうはこれでお開きとなった。