一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2023年九州旅行・5

2024-01-31 00:10:12 | 旅行記・九州編
(25日のつづき)
私がいただいた整理番号は「24」。これがどこで引かれるかがカギである。
ときに13時35分。これから4時間近く、マスターのめくるめくマジックショーが展開されるのである。
マスターは挨拶もそこそこに、客から指輪を所望する。すると、客席から4つが出された。それをマスターは小さな木箱に入れる。振ると、最初はカタカタ鳴っていたが、下からライターの火であぶると、やがて音がしなくなって……。
いつもながらに手際のよいマジックである。そしていつもながら、マスターは若い。私が初めてマスターにお会いしたのはいまから24年前だが、現在は老眼鏡を掛けたくらいで、全然風貌が変わっていない。
対して私はブクブク太り、しかもここ数年は禿げ散らかして、往年の面影はない。マスターに言わせれば、「毎年訓話を述べているのに、あなたはなんて怠惰な生活をしているんですか」というところだろう。
マスターがお札と小銭を所望する。私は積極的に出せば出せるのだが、マスターに望まれていない気がするので、傍観するのみである。
マスターは千円札を取ると小さく折り畳み、それを中空に浮かせた。途端にどよめきというか、歓声が上がる。きょうの男女比は4:21で、圧倒的に女性が多く、驚きの声にもハリがある。私にはこれこそが夢空間である。
マスターがESPカードを取り出した。まずはカウンターの4人対マスターの勝負で、カウンターの女性が出したマークを、マスターが当てるのである。そしてそれはもちろん当たった。
その別バージョンをやったとき、3番の女性が、4枚目のカードと5枚目のカードを、土壇場になって入れ替えた。
その2枚を開けると、マスターの予言したカードとは逆だった。
これは3番の女性がやり過ぎたというべきだろう。ここでのマジックは、マスターと私たちでいっしょに作り上げていくものである。私が1999年に続いて2000年にお邪魔したとき、マスターに好きなマークと数字を言ってくださいと言われ、私は「スペードの7」と答えた。そのときマスターに理由を聞かれた私は、「昨年もそう答えたから」と言った。これなど場を白けさせる最たる言葉で、配慮がなかったと反省している。
今回の女性もカードを取り換えるべきではなかった。
壁には新たなチェキがどんどん貼られている。今年は藤岡弘、が娘さん3人を伴って来たそうだ。藤岡弘、はあんでるせんの常連で、私たち常連にはお馴染みである。
あんでるせんのことだから芸能人もVIP扱いせずほかのお客といっしょに観戦するのだろうが、私は一度も芸能人とご一緒したことがない。観月ありさとは、1日違いだったことはある。
ちなみに、将棋界からも1人ここに来ているのを私は知っている。だって……。
マジックはどんどん進み、カードマジックとなる。お客さんから「ストップ」を4回聞き、そのたびにカウンターにカードを出す。そしてポータブルプレイヤーからウルトラセブンのイントロが流れ、カードを開くと、歌に合わせて7が4種類出る、アレである。
だが今年は、最初の3枚は7が出たが、4枚目を開くとき、マスターが「あれ?」とつぶやいた。
果たして開いたカードは「6」。このマジックでの失敗を初めて見た。いや、昨年は「A」「K」「B」「4」「8」で、4と8が逆だったか。
まあ、このくらいの失敗はなんでもない。
マスターがルービックキューブを2個取り出した。そのふたつを客に渡し、色を合わせてもらう。
しかし短時間では色が揃うはずもなく、うちひとつをマスターが引き取った。残り1つは客が持っている。
マスターは「19手か」とつぶやき、「皆さんちょっとだけ静かにしてください」と続ける。
マスターが頭上でルービックキューブを慎重に捜査する。
しばらくして、マスターがコトリ、とルービックキューブをカウンターに置いた。
「あなた、そのキューブをこちらに寄越してください」
さっきの客からキューブが手渡される。その2つは6面とも、そっくり同じ配色だった――。
お次は「恋人当て」である。最後方のお母さんが当たった。お母さんは、マスターの「好きな人の名前をキッチリ聞きたいですか? それとも何となくがいいですか?」の問いに、「キッチリでお願いします」ときっぱりと言った。
マスターがお母さんにメモを渡し、ご主人の名前を書かせる。するとマスターがすぐに、ご主人の名前を言う。
彼女が紙片を拡げると、まさにその名前が書かれていた。
「でも愛情が半分になってますよ。字が小さいです」
「そうかも……」
お次は、マスターが円周率の本を出す。そして、電卓を客に渡し、数人に任意の数字を打たせた。最後は4ケタになり、その数字を客が読み上げると、マスターは「○ページの上から○行目、左から○番目」と言う。もちろんその数字は、電卓が示す数字と同じだった。
マスターは円周率の数字をすべて記憶しているのだ。これなど、マジックを通り越してすごい。
……などなど、これらを文字に書くことがバカバカしくなってきた。マジックなぞ百聞は一見に如かずで、実際に見なければ意味がない。
「ここまでいろいろマジックをやってきましたけど、いままで一度も笑ってない方が2人いますよ」
と、マスターが真顔で言う。
マスターは客に対して厳しいところがあり、始終ぼーっとしていた客にキレたこともある。自身も真剣にやっているのだから、あなた方も真剣に聞いてください、ということなのだろう。
今度はコインマジックである。100円玉を3つに割る。100円玉をペロンとなでて、曲げてしまう。100円玉にボールペンを刺して貫通させてしまう。などなど、マジックと呼ぶにはあまりにもレベル違いのマジックが披露される。
マスターがコーヒーの缶を取り出し、カウンターの女性に渡す。そして100円玉を渡し、缶の底から通過させようとする。
素人にこんなことができるわけがないが、ちょっと彼女にはできそうな雰囲気があった。
彼女は左の掌に100円玉を置き、その上にコーヒー缶を乗せた。そして軽く振ると、100円玉は缶の中に「入った」のだった。
楽しかったマジックも、最終盤である。マスターが全員にルービックキューブを渡す。3番の客は見守り役で、今回はプレイしない。4枚のカードから、何とかいう犬が選ばれた。
カウンターには大きい木枠が立てられた。縦6×横4で、その空間にはキューブが入りそうだ。私たちは適当にキューブを回し、戻す。
それをマスターらが適当に木枠に嵌めていく。全部埋まったところでそのキューブをこちら側に向けると、それは犬の絵になっていた。最後に全員で大仕事をしたわけだ。
そろそろお開きである。マスターは最後に、
「かくも己は不幸だと首を垂れて歩いていると、前を歩いている人の埃をかぶってばかりになります」
と言った。
「過去なんて生ゴミだ」
はマスターの名言だが、こうした講話を毎年聞きながら、私はちっとも進歩しない。だからいい歳をして結婚すらできなかった。
17時15分、お開きとなった。そして今回、私は一度もカードが引かれなかった。これは25回目にして、初めてである。これはマスターが意図的に私を外したのか。それとも、たまたまか。
このあとは恒例のスプーン購入である。私が1本買うと、マスターが私の頭頂部に、気を入れてくれた。
いつもはこれで終わりなのだが、今回はマスターが両手を拡げ「がんばって」と言った。
「?」
よく聞き取れず怪訝な顔をしていると、再びマスターが「がんばって」と言い。私を包むような仕草をした。
私がよほどシケた顔をしていたのだろう。もうちょっと頑張らないとな、と思った。
(つづく)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第82期A級順位戦予想クイズ

2024-01-30 00:09:48 | 勝敗予想
今年も「将棋世界」でA級順位戦予想クイズが実施されている。8、9回戦の勝敗予想をし、正解者には抽選で豪華賞品が当たるというものだ。
今年はいくつか変更点がある。ひとつは誌面のQRコードを読み込めば、ネットから申し込めるようになった。
これなら切手代63円が浮く。それは大きいが、それだと本を購入しなくても申し込めることになる。そこを律義にハガキで投函した読者がバカみたいだが、その差別化はあるのだろうか。
ふたつめは7回戦の勝敗を考慮しなくなったこと。いままでは7回戦の結果を待って(記して)投函していたが、それがなくなったので、忘れないうちに早めに投函できる。
3つめは、特賞が完全的中者から選んでいたものを、成績上位者に変更となった。これなら、誰かに特賞が当たる。
それはともかく、当てねばしょうがない。というか、投函しなければしょうがない。事実私は昨年、うっかりして投函し忘れたのだ。
さて肝心の勝敗予想だが、その前に各自の勝敗を書いておこう。

③豊島将之九段 6勝1敗
⑥菅井竜也八段 5勝2敗
①渡辺明九段 4勝3敗
④永瀬拓矢九段 4勝3敗
⑦稲葉陽八段 3勝4敗
⑧佐藤天彦九段 3勝4敗
⑨佐々木勇気八段 3勝4敗
⑩中村太地八段 3勝4敗
②広瀬章人九段 2勝5敗
④斎藤慎太郎八段 2勝5敗

この7回戦の5局、成績の悪いほう、もしくは順位が下位のほうがすべて勝った。これだから勝敗予想は分からないのである。8回戦9回戦で10局だが、完全的中をしたためしがない。
とりあえず、勝敗予想を記しておこう。

【8回戦】
○渡辺明九段VS●中村太地八段
○広瀬章人九段VS●稲葉陽八段
○豊島将之九段VS●斎藤慎太郎八段
○永瀬拓矢九段VS●佐々木勇気八段
●菅井竜也八段VS○佐藤天彦九段

【9回戦】
●渡辺明九段VS○広瀬章人九段
○豊島将之九段VS●菅井竜也八段
○永瀬拓矢九段VS●中村太地八段
○斎藤慎太郎八段VS●佐々木勇気八段
●稲葉陽八段VS○佐藤天彦九段

挑戦……豊島九段(8勝1敗)
(参考までに)降級……佐々木八段、中村八段

こんな勝敗にした。名人挑戦は、希望も含めて豊島九段とした。藤井聡太竜王・名人と強豪との対戦はひと通り終わったが、一周回って期待できるのは、豊島九段である。やはり、初対戦からの6連勝が大きい。また第6期叡王戦では、タイトルは取られたが、フルセットまで行った実績がある。豊島九段なら、藤井竜王・名人にそこまでコンプレックスはないのではないか。
もう本当に、誰か藤井八冠からタイトルをもぎ取らないと、つまらない将棋界になってしまう。現役棋士は奮起してくれ。
なお、私は懸賞ハガキを使い、29日深夜に投函した。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第73期王将戦第3局2日目

2024-01-29 17:31:52 | 男性棋戦
第73期ALSOK杯王将戦第3局(主催:スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社、日本将棋連盟)2日目である。菅井竜也八段の封じ手は、飛車先を押さえる手だった。
以下数手進み、藤井聡太王将は5筋に歩を垂らす。このシリーズ、藤井王将はと金作りがテーマかのようだ。
ここで菅井八段は好点に角を打つ手もあったようだが、5筋の歩を成り捨て、受けに回った。強気の菅井八段が急所でひるむ。これが実戦の難しさだろう。
藤井王将は6筋に飛車を打ち、以下菅井八段の攻めを余しにかかる。以下藤井王将の竜の威力が絶大で、らしからぬ?手厚さだ。居飛車穴熊での指し回しもそうだったが、藤井王将の棋風にはいろいろなバリエーションがあり、「そんな指し方もするの?」と、毎回驚かされる。
菅井八段はなおも攻めを継続するが、いかにも単調だ。藤井王将は手厚く銀を打ち、敵の角を召し取った。この間自分の飛車も取られたが、菅井八段は金を投資しているので、腹も立たない。
藤井王将は6筋にと金を作り、ここで5筋に歩を垂らす手もあったが、桂を跳ねた。なるほど、こうやって駒を活用するのか。
この桂馬はさらに成桂に昇格し、金取りに入ったところで、菅井八段がたまらず投げた。
こうして出来上がった投了図はある種異様である。駒の損得でいえば菅井八段の金得なのだが、菅井八段の金桂の遊びがひどく、5~6筋を一方的に侵食され、片美濃の姿焼き状態になっている。
対して藤井王将は相変わらず遊び駒がない。すべての駒が目いっぱい働き、圧勝の図である。ことに6八の成桂は8一にいた桂だが、あの桂が先手陣の死命を制すことになろうとは、驚異の展開である。
改めて投了図、菅井八段だって難関の王将リーグを勝ち抜いてきたのに、まるで手合い違いのごとくである。
藤井王将は「次も連覇や記録を意識せずにこれまで通り臨みたい」と冷静。いっぽうの菅井八段は、向かい飛車にしたときは相当な研究があったと思いきや、感想を聞くと気分転換みたいなところもあったようで、ちょっと拍子抜けした。
対振り飛車に穴熊と左美濃で快勝。私は振り飛車もまだまだ戦えると見ているが、今回のシリーズを見ていると、やっぱり振り飛車はダメなんじゃないかと悲観してしまう。
菅井八段には悪いが、第4局の結果も見えた。もう、藤井王将に勝てる棋士は誰もいない。まったく、恐るべき強さだ。
第4局は2月7日・8日、東京都立川市で行われる。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第73期王将戦第3局1日目

2024-01-28 00:06:45 | 男性棋戦
藤井聡太王将の前局の圧勝劇の余韻冷めやらぬまま、第73期ALSOK杯王将戦第3局(主催:スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社、日本将棋連盟)が、島根県大田市の国民宿舎で始まった。
私事になるが、私の長い旅行歴の中で、国民宿舎に泊まったのは一度だけ。それが島根県日御碕の近くにあるそれだった。
この話をすると長くなるので割愛。さて、挑戦者の菅井竜也八段は2敗なので、もう後がない。本局は先手番ということもあり作戦が注目されたが、菅井八段が初手に角道を開け、2手目に藤井王将が飛車先の歩を突き、そこで菅井八段がひとつ角を上がった。早速に研究を披露した感じで、本局の菅井八段は一味違うと思った。
さらに菅井八段は向かい飛車に振った。向かい飛車は通常、相手が飛車先の歩を2つ突いてきたとき、反撃含みに据えるもの。それを無視してまで向かい飛車に振ったからには、相当に作戦を練ってきたと考えるべきだろう。
藤井王将の囲いが注目されたが、右銀を早めに3段目に上がって、穴熊の含みもある。
それを牽制してか、菅井八段のほうから角を換わった。思いっきり暴れるためには角を手持ちにしたほうがいい、の判断だろうが、菅井八段は3手目に角を上がっているから、実質的に2手損。私は手損に頓着しないほうだが、プロ的にはどうなのだろう。やはり、先手の利を放棄したのは痛かったのではないだろうか。
藤井王将は成角を玉で取り、戦場から遠ざかる。そして穴熊を諦め、ガッチリ左美濃に組んだ。この囲いも固い。今シリーズは、藤井王将が振り飛車の堅陣に囲い負けしていない。
菅井八段は飛車をひとつ寄り捌きに出るが、藤井王将も最強の応手で迎え撃つ。藤井王将の将棋を見て思うのは、単に受けるだけの手は指さないということだ。攻めることで守りにしてしまうことがよくあり、この数手もそうだった。
そして本局は菅井八段が封じた。改めて局面を見ると、藤井王将は敵陣に角を据え、と金を作り、金銀4枚の堅陣で十分。
対して菅井八段は囲いがやや中途半端で、飛車も息苦しい。居飛車が指したい手がいっぱいあるのに対し、振り飛車は手を作るのに苦労しそうだ。
総合すると居飛車が優勢に近い有利、と見る。これだけ菅井八段が立ち回っても、藤井王将は自然な応接で、やっぱり有利になるのだ。これが実力差、ということなのだろうか。
封じ手は、私なら▲6一角なのだが、誰の候補にも挙がっていなかった。私はヘッポコな手しか浮かばないのである。
さて、2日目の展開やいかに。
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

青野九段、800勝なるか(3)

2024-01-27 00:03:31 | 目を考える
公式戦800勝を目指す青野照市九段は、25日に第50期棋王戦予選で塚田泰明九段と対戦したが、敗れた。そう簡単に、偉業は達成できないのである。
ところで塚田九段といえば、先日の将棋フォーカスでも特集されていたが、私たちの世代では、大いなる天才のひとりである。
中学2年でアマ名人戦準優勝。奨励会は2年4ヶ月で抜けるスピード四段。高校時代には専門誌に楽しそうな学園生活が掲載され、当時「男クラ」で底辺をさまよっていた私は、塚田四段がまぶしく見えたものである。
デビュー6年目には公式戦22連勝を記録。22歳で王座を獲得した。翌年、A級八段。「花の55年組」の出世頭で、永久に塚田王座の時代が続くと思ったものである。
ところが塚田九段の栄華も適当なところで終わった。順位戦A級7期、竜王戦1組9期は誇れる成績だが、実は青野九段はA級11期、1組6期で、合計すると塚田九段より1期多い。
しかも塚田九段は現在フリークラスで、2030年、65歳での引退が決まっている。なんと、青野九段よりリタイヤの年齢が低いのである。
青野九段は「細く、長く、頑張った」と述べたが、長く頑張ることこそ難しい、と教えてくれる。
さて、青野九段の残るチャンスは5回。

第74期王将戦一次予選1回戦 渡辺和史六段
第82期C級2組順位戦10回戦 横山友紀四段
第82期C級2組順位戦11回戦 安用寺孝功七段
第37期竜王戦6組昇級者決定戦
第74回NHK杯予選

渡辺六段と横山四段は若手で、簡単には勝たせてくれないだろう。よって、順位戦C級2組で現在0勝8敗の安用寺七段が狙い目だが、どうなるか。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする