24日(金)夜、私のスマホに電話が入った。求職先からではなく、湯川恵子さんからだった。27日(月)に和光市の「CIハイツ」で行われる、新春寄席への招待である。恵子さんと博士氏が出演するやつだ。今年で3回目になる。
「ああ、ああどうも、(案内をいただいたこと)半分忘れてました」
「来てくれるとうれしいんだけど」
求職中の身では平日に遊ぶのも気が引けるが、ニートの私に声を掛けてくれるだけでもありがたい。
「よろこんでお伺いします」
「ありがとう! 寄席のあとはまた新年会をしましょう」
その向こうで、博士氏の声がする。結局、博士氏に電話が代わった。
「ああ博士です。今度の寄席、レポートを『将棋ペン倶楽部』にも書いてよ。アンタ、ブログに書いてるのは知ってるけど、私は読まないからさ。やっぱり印刷物に書くのがいいよ。将棋とは関係ないけど、会員が参加してるんだから、書いても大丈夫だよ」
「はあ、そうですか」
レポートを書くのは吝かでないが、ブログも書きたいところである。ペンクラブの会員は約450名、当ブログのアクセスは日/約750名だが、読者のダブリは1割もないだろう。だがそれでも両方書くとなれば、内容の重複は避けねばなるまい。すなわち「将棋ペン倶楽部」は真面目にコンパクトに。ブログは視点を変えて、落語前後のやりとりをマニアックに、となろうか。
「ところでアンタ、会社辞めたんだって?」
「はあ、仕事は面白かったんですが、社長とソリが合わなくて……。いまでは失敗したと思ってます」
「私にも経験あるけど、自営をやってると、ヒトの指示が聞けなくなるんだよな」
「……」
27日(月)午前11時、私は家を出た。あのあと恵子さんから再度電話があり、和光市駅前に12時集合で、みんなでCIハイツへ向かうことになったのだ。
だが私は財布を忘れたことに気付き、取りに帰った。11時52分和光市着の電車に乗るつもりで家を出たから、遅刻確定である。
出直して山手線に乗り、池袋で東武東上線に乗り換えである。ちょうど、11時45分の急行があった。この和光市着が11時59分。ギリギリ遅刻は免れたようだ。
ところが駅に着いても、改札口に誰もいない。南口に出ると、音楽担当の永田氏と画家の小川敦子さんがいた。思ったのだが、2人は醸しだす雰囲気が似ている。
しかし肝心の湯川夫妻がいない。私はスマホから恵子さんに連絡すると、一旦切れて、博士氏から折り返し電話がきた。そしてすぐに博士氏が現われた。
「おお大沢君! ……もうひとり、行く人がいるんだ」
私たちは改札前で待つ。「ところで今日は月曜日だけど、アンタ仕事はいいの?」
「……」
先週の会話は、何だったのだろう。
しばらくすると、白髪の実年男性が改札口を出てきた。男性氏も今日の演者で、博士氏によると、元中学校の校長先生で、現在は活弁士だという。「カツベン」は周防正行監督の映画で脚光を浴びたが、その職業が現在も残っているとは知らなかった。
参遊亭遊鈴の学友であるTanさんとも合流し、荷物が多い永田氏、小川さんを残して、4人でCIハイツに向かう。
集会棟の前には、恵子さんがいた。そうか、恵子さんは最初からこちらにいたのだ。
だが2階に入ると、まだ客席の準備中である。私は客なので片隅に腰を下ろすが、どうも入室が早すぎたようだ。というか、私が演者の入りに合わせる必要はなかったのだ。
客がポツポツ入ってきた。その中に、カメラマン・岡松三三さん、Hiw氏の姿があった。
近くの客は「1時半から……」とか言っている。つまり開場午後1時、開演1時半からということだ。これなら、昼食を摂る時間もあったはず。和光市駅前の立ち食いそば屋で、もりをたぐりたかったところである。
瞑目していると、係の人がパンフレットをくれた。今日は仏家シャベル(湯川博士氏)以下5人の出演。永田氏が仏家ジャズルとして出演するのに注目だ。
しばらくすると、今度はほうじ茶をくれた。ありがたいことで、スタッフはこまめに動いている。
会場では高座が作られ、仏家小丸(湯川恵子さん)が座り、高さを確認している。
「ついでですからこのまま落語を始めます」
とジョークを飛ばしている。
通路を隔てた向こう側に、幹事のKan氏が座った。その向こうはライターの美馬和夫氏ではないか? こういう時、若年の私が真っ先に挨拶に行かなければいけないのだが、礼儀知らずの私はそうしない。こんなことだから私は出世できなかった。
客席は全部で72。7割方が埋まり、ほかに立ち見のスタッフもいるから、まずまずの入りである。
定刻になり、開演である。まずは司会者の挨拶。
「この催しは、さわやか会と自治会共済委員会の共催です。私は会長の井上と申します。
健康長寿の秘訣は、笑いのある生活だそうです。ない生活は、脳卒中の恐れもあるらしいですね。今日は皆さん、落語で大いに笑いましょう」
開口一番は仏家小丸。演し物は「まんじゅうこわい」。井上氏が小丸のプロフィールを読み上げ、永田氏演奏「桃太郎」のお囃子に乗って、小丸が登壇した。
(つづく)
「ああ、ああどうも、(案内をいただいたこと)半分忘れてました」
「来てくれるとうれしいんだけど」
求職中の身では平日に遊ぶのも気が引けるが、ニートの私に声を掛けてくれるだけでもありがたい。
「よろこんでお伺いします」
「ありがとう! 寄席のあとはまた新年会をしましょう」
その向こうで、博士氏の声がする。結局、博士氏に電話が代わった。
「ああ博士です。今度の寄席、レポートを『将棋ペン倶楽部』にも書いてよ。アンタ、ブログに書いてるのは知ってるけど、私は読まないからさ。やっぱり印刷物に書くのがいいよ。将棋とは関係ないけど、会員が参加してるんだから、書いても大丈夫だよ」
「はあ、そうですか」
レポートを書くのは吝かでないが、ブログも書きたいところである。ペンクラブの会員は約450名、当ブログのアクセスは日/約750名だが、読者のダブリは1割もないだろう。だがそれでも両方書くとなれば、内容の重複は避けねばなるまい。すなわち「将棋ペン倶楽部」は真面目にコンパクトに。ブログは視点を変えて、落語前後のやりとりをマニアックに、となろうか。
「ところでアンタ、会社辞めたんだって?」
「はあ、仕事は面白かったんですが、社長とソリが合わなくて……。いまでは失敗したと思ってます」
「私にも経験あるけど、自営をやってると、ヒトの指示が聞けなくなるんだよな」
「……」
27日(月)午前11時、私は家を出た。あのあと恵子さんから再度電話があり、和光市駅前に12時集合で、みんなでCIハイツへ向かうことになったのだ。
だが私は財布を忘れたことに気付き、取りに帰った。11時52分和光市着の電車に乗るつもりで家を出たから、遅刻確定である。
出直して山手線に乗り、池袋で東武東上線に乗り換えである。ちょうど、11時45分の急行があった。この和光市着が11時59分。ギリギリ遅刻は免れたようだ。
ところが駅に着いても、改札口に誰もいない。南口に出ると、音楽担当の永田氏と画家の小川敦子さんがいた。思ったのだが、2人は醸しだす雰囲気が似ている。
しかし肝心の湯川夫妻がいない。私はスマホから恵子さんに連絡すると、一旦切れて、博士氏から折り返し電話がきた。そしてすぐに博士氏が現われた。
「おお大沢君! ……もうひとり、行く人がいるんだ」
私たちは改札前で待つ。「ところで今日は月曜日だけど、アンタ仕事はいいの?」
「……」
先週の会話は、何だったのだろう。
しばらくすると、白髪の実年男性が改札口を出てきた。男性氏も今日の演者で、博士氏によると、元中学校の校長先生で、現在は活弁士だという。「カツベン」は周防正行監督の映画で脚光を浴びたが、その職業が現在も残っているとは知らなかった。
参遊亭遊鈴の学友であるTanさんとも合流し、荷物が多い永田氏、小川さんを残して、4人でCIハイツに向かう。
集会棟の前には、恵子さんがいた。そうか、恵子さんは最初からこちらにいたのだ。
だが2階に入ると、まだ客席の準備中である。私は客なので片隅に腰を下ろすが、どうも入室が早すぎたようだ。というか、私が演者の入りに合わせる必要はなかったのだ。
客がポツポツ入ってきた。その中に、カメラマン・岡松三三さん、Hiw氏の姿があった。
近くの客は「1時半から……」とか言っている。つまり開場午後1時、開演1時半からということだ。これなら、昼食を摂る時間もあったはず。和光市駅前の立ち食いそば屋で、もりをたぐりたかったところである。
瞑目していると、係の人がパンフレットをくれた。今日は仏家シャベル(湯川博士氏)以下5人の出演。永田氏が仏家ジャズルとして出演するのに注目だ。
しばらくすると、今度はほうじ茶をくれた。ありがたいことで、スタッフはこまめに動いている。
会場では高座が作られ、仏家小丸(湯川恵子さん)が座り、高さを確認している。
「ついでですからこのまま落語を始めます」
とジョークを飛ばしている。
通路を隔てた向こう側に、幹事のKan氏が座った。その向こうはライターの美馬和夫氏ではないか? こういう時、若年の私が真っ先に挨拶に行かなければいけないのだが、礼儀知らずの私はそうしない。こんなことだから私は出世できなかった。
客席は全部で72。7割方が埋まり、ほかに立ち見のスタッフもいるから、まずまずの入りである。
定刻になり、開演である。まずは司会者の挨拶。
「この催しは、さわやか会と自治会共済委員会の共催です。私は会長の井上と申します。
健康長寿の秘訣は、笑いのある生活だそうです。ない生活は、脳卒中の恐れもあるらしいですね。今日は皆さん、落語で大いに笑いましょう」
開口一番は仏家小丸。演し物は「まんじゅうこわい」。井上氏が小丸のプロフィールを読み上げ、永田氏演奏「桃太郎」のお囃子に乗って、小丸が登壇した。
(つづく)