4月29日(水・祝)は、世田谷区の「玉川高島屋S・C」にて、恒例の「世田谷花みず木女流オープン戦」および「花みず木子供竜王戦・決勝戦」があった。
「女流オープン戦」は2007年に東京都世田谷区で「将棋の日」が行われるにあたり創設された。以後、東日本大震災のあった2011年を除き、二子玉川花みず木フェスティバルのあるこの時期に毎年開催され、今年で8回目となる。
今年の参戦女流棋士は、中村真梨花女流二段、室谷由紀女流初段、飯野愛女流1級、北村桂香女流1級の4名。中村女流二段以下3名は本棋戦でおなじみだが、関西在住・北村女流1級の参戦は新鮮だ。
解説者は、プロデューサーの島朗九段と、中村修九段、森下卓九段。聞き手は鈴木環那女流二段と藤田綾女流初段で、これもいつものメンバーだ。今年はさらに中井広恵女流六段が名を連ねる。これはどう考えても、観戦に行く一手である。
29日は、8時45分ごろ起きた。手早く朝食を摂って、渋谷に向かう。渋谷は、昨年6月に「女流棋士発足40周年記念パーティー」にお邪魔して以来だ。すなわち渋谷は、私の生活には無縁だ。
東急田園都市線に乗り換えて、二子玉川で下車。「玉川高島屋S・C」6階に着いたのは、10時20分ちょうどだった。
開会は10時30分からだが、席はあらかた埋まっていて、私は後方にあるベンチ席に座った。定員は50人とあったが、椅子席は34前後しかなかった。
前の席にはミスター中飛車氏がいるが、ジョナ研メンバーはいない。ジョナ研メンバーは、それほど将棋が好きでないのかもしれない。
という私はこの棋戦の観戦は3回目だが、今年は一眼レフカメラを持参した。もちろん室谷女流初段を撮るためで、それゆえ今年は少しでも彼女に近づきたい。しかし出遅れた。
本当に室谷女流初段を撮影したいなら、開店時間前に建物の前で並ぶくらいでないとダメなのだろう。つまり私には、そこまでの執念がなかった。
まずは準決勝の2局である。司会進行はおなじみ、中村アナウンサー。早速対局者の4名が登場した。向かって右から、室谷女流初段、飯野女流1級、中村女流二段、北村女流1級。4名とも、春らしく明るい装いである。
中でも室谷女流初段は、相変わらず綺麗だ。朝だからか、顔がはれぼったくも見えるが、それでもほかの女流棋士とは大駒1枚違う。
昨年、彼女は聞き手で起用されていたが、体調不良で欠席となった。あのときの絶望から1年、同じ地でついに願いが叶い、私は感慨深いものがあった。
4人が順番に紹介され、ここで待望の撮影タイムとなった。い、いよいよである。持ち時間は1分、ターゲットは室谷女流初段のみ。
カシャカシャッ!! 横位置で撮影したが、うまくいかない。撮れてはいるが、写っているだけではダメなのだ。
それで縦位置に直して1枚撮ったら、もう撮影タイムが終わってしまった…。ま、まあよい、私は室谷女流初段のきもの姿が撮りたいのだ。もっともそれには、最初の1局に勝ってもらわねばならないが…。
解説者等も紹介されたが、島九段と鈴木女流二段はいなかった。現在近くの小学校で子供竜王戦の予選が行われており、そちらに行っているのかもしれない。
さて準決勝第1局は、室谷女流初段と飯野女流1級の対戦である。対局前のインタビュー。
室谷女流初段「ここでは久々の対局なので、緊張しています」
飯野女流1級「本棋戦ではいい思い出があまりありません。室谷女流初段は強敵なので、相手の顔を見ないように頑張りたい」
解説は森下九段、聞き手は藤田女流初段。今年は大盤が向かって右に設置されていた。
と金が3枚出て、飯野女流1級の先手。定刻を5分遅れの10時45分、ついに対局が開始された。
▲女流1級 飯野 愛
△女流初段 室谷由紀
▲7六歩△3二飛▲7八飛△5二金左▲6八銀△3四歩▲4八玉△6二玉▲5八金左△3五歩▲2八銀△7二玉▲7五歩△8二銀▲6六歩△3六歩▲3八金△3七歩成▲同銀△4二銀
▲6七銀△3六歩▲4六銀△4四歩▲5六銀△4三銀▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲7五飛△3三角▲3七歩△同歩成▲同銀△6二金直▲3九玉△5四歩▲4六歩△3六歩
▲2八銀△4二角▲7六飛△3四銀▲6五歩△3五銀▲1六歩(第1図)
飯野女流1級の▲7六歩に、室谷女流初段はいきなり△3二飛と振る。
「今泉流ですね。最初にこれを見た時は、ナメてんのかと思いました」
森下九段の実直解説が始まった。「相振り飛車は、昔はベテランの戦法だったんですね。戦法を研究しない人が、それをカバーするために指したこともありました」
いきなり森下節の炸裂である。ただ現在の相振り飛車はシステム化が行き届き、そんなことはない。
出だしを見るとどうなることかと思ったが、よくある相振り飛車に落ち着いた。
まだ戦いが始まってないので、解説は雑談が交じる。藤田女流初段は前週に天童で行われた「人間将棋」に出場した。
「武将になった気分でした」
私も生で見たかったが、天童までは遠い。
森下九段の解説が続くが、惜しむらくは、黒山が邪魔をして、大盤の下半分が見えない。対局者もそうで、私の座っている位置からでは、ふたりが見えない。当棋戦も8回目になれば、観客や関係者からの要望も集まっているはずだが、ソフト部分が一向に改善されないのは解せないところである。
▲6七銀に△3六歩。後に取られるかもしれなから、決断の一手(森下九段)だ。「室谷さんは、読みが深いです」。
本局の棋譜読み上げは一般人だが、「先手」と「後手」を言い間違える。棋譜読み上げにも、技術がいるのだ。
飯野女流1級は▲3七歩とし、目障りな△3六歩を取り除きにいく。人頭の隙間から対局者を覗くと、ふたりとも盤に覆いかぶさるようにして考えていた。
室谷女流初段は再び△3六歩と打つ。これを▲同銀なら、△4二角と引いた手が飛車銀両取りとなる。
飯野女流1級は▲2八銀と引くが、これは辛い辛抱だ。
室谷女流初段は△3四銀~△3五銀と繰り出し、好調。飯野女流1級は▲1六歩とし、銀の可動領域を拡げる。
ここから室谷女流初段は秒読み。△3四飛ぐらいと見ていたのだが、女・室谷由紀の指し手は違った。
(つづく)
「女流オープン戦」は2007年に東京都世田谷区で「将棋の日」が行われるにあたり創設された。以後、東日本大震災のあった2011年を除き、二子玉川花みず木フェスティバルのあるこの時期に毎年開催され、今年で8回目となる。
今年の参戦女流棋士は、中村真梨花女流二段、室谷由紀女流初段、飯野愛女流1級、北村桂香女流1級の4名。中村女流二段以下3名は本棋戦でおなじみだが、関西在住・北村女流1級の参戦は新鮮だ。
解説者は、プロデューサーの島朗九段と、中村修九段、森下卓九段。聞き手は鈴木環那女流二段と藤田綾女流初段で、これもいつものメンバーだ。今年はさらに中井広恵女流六段が名を連ねる。これはどう考えても、観戦に行く一手である。
29日は、8時45分ごろ起きた。手早く朝食を摂って、渋谷に向かう。渋谷は、昨年6月に「女流棋士発足40周年記念パーティー」にお邪魔して以来だ。すなわち渋谷は、私の生活には無縁だ。
東急田園都市線に乗り換えて、二子玉川で下車。「玉川高島屋S・C」6階に着いたのは、10時20分ちょうどだった。
開会は10時30分からだが、席はあらかた埋まっていて、私は後方にあるベンチ席に座った。定員は50人とあったが、椅子席は34前後しかなかった。
前の席にはミスター中飛車氏がいるが、ジョナ研メンバーはいない。ジョナ研メンバーは、それほど将棋が好きでないのかもしれない。
という私はこの棋戦の観戦は3回目だが、今年は一眼レフカメラを持参した。もちろん室谷女流初段を撮るためで、それゆえ今年は少しでも彼女に近づきたい。しかし出遅れた。
本当に室谷女流初段を撮影したいなら、開店時間前に建物の前で並ぶくらいでないとダメなのだろう。つまり私には、そこまでの執念がなかった。
まずは準決勝の2局である。司会進行はおなじみ、中村アナウンサー。早速対局者の4名が登場した。向かって右から、室谷女流初段、飯野女流1級、中村女流二段、北村女流1級。4名とも、春らしく明るい装いである。
中でも室谷女流初段は、相変わらず綺麗だ。朝だからか、顔がはれぼったくも見えるが、それでもほかの女流棋士とは大駒1枚違う。
昨年、彼女は聞き手で起用されていたが、体調不良で欠席となった。あのときの絶望から1年、同じ地でついに願いが叶い、私は感慨深いものがあった。
4人が順番に紹介され、ここで待望の撮影タイムとなった。い、いよいよである。持ち時間は1分、ターゲットは室谷女流初段のみ。
カシャカシャッ!! 横位置で撮影したが、うまくいかない。撮れてはいるが、写っているだけではダメなのだ。
それで縦位置に直して1枚撮ったら、もう撮影タイムが終わってしまった…。ま、まあよい、私は室谷女流初段のきもの姿が撮りたいのだ。もっともそれには、最初の1局に勝ってもらわねばならないが…。
解説者等も紹介されたが、島九段と鈴木女流二段はいなかった。現在近くの小学校で子供竜王戦の予選が行われており、そちらに行っているのかもしれない。
さて準決勝第1局は、室谷女流初段と飯野女流1級の対戦である。対局前のインタビュー。
室谷女流初段「ここでは久々の対局なので、緊張しています」
飯野女流1級「本棋戦ではいい思い出があまりありません。室谷女流初段は強敵なので、相手の顔を見ないように頑張りたい」
解説は森下九段、聞き手は藤田女流初段。今年は大盤が向かって右に設置されていた。
と金が3枚出て、飯野女流1級の先手。定刻を5分遅れの10時45分、ついに対局が開始された。
▲女流1級 飯野 愛
△女流初段 室谷由紀
▲7六歩△3二飛▲7八飛△5二金左▲6八銀△3四歩▲4八玉△6二玉▲5八金左△3五歩▲2八銀△7二玉▲7五歩△8二銀▲6六歩△3六歩▲3八金△3七歩成▲同銀△4二銀
▲6七銀△3六歩▲4六銀△4四歩▲5六銀△4三銀▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲7五飛△3三角▲3七歩△同歩成▲同銀△6二金直▲3九玉△5四歩▲4六歩△3六歩
▲2八銀△4二角▲7六飛△3四銀▲6五歩△3五銀▲1六歩(第1図)
飯野女流1級の▲7六歩に、室谷女流初段はいきなり△3二飛と振る。
「今泉流ですね。最初にこれを見た時は、ナメてんのかと思いました」
森下九段の実直解説が始まった。「相振り飛車は、昔はベテランの戦法だったんですね。戦法を研究しない人が、それをカバーするために指したこともありました」
いきなり森下節の炸裂である。ただ現在の相振り飛車はシステム化が行き届き、そんなことはない。
出だしを見るとどうなることかと思ったが、よくある相振り飛車に落ち着いた。
まだ戦いが始まってないので、解説は雑談が交じる。藤田女流初段は前週に天童で行われた「人間将棋」に出場した。
「武将になった気分でした」
私も生で見たかったが、天童までは遠い。
森下九段の解説が続くが、惜しむらくは、黒山が邪魔をして、大盤の下半分が見えない。対局者もそうで、私の座っている位置からでは、ふたりが見えない。当棋戦も8回目になれば、観客や関係者からの要望も集まっているはずだが、ソフト部分が一向に改善されないのは解せないところである。
▲6七銀に△3六歩。後に取られるかもしれなから、決断の一手(森下九段)だ。「室谷さんは、読みが深いです」。
本局の棋譜読み上げは一般人だが、「先手」と「後手」を言い間違える。棋譜読み上げにも、技術がいるのだ。
飯野女流1級は▲3七歩とし、目障りな△3六歩を取り除きにいく。人頭の隙間から対局者を覗くと、ふたりとも盤に覆いかぶさるようにして考えていた。
室谷女流初段は再び△3六歩と打つ。これを▲同銀なら、△4二角と引いた手が飛車銀両取りとなる。
飯野女流1級は▲2八銀と引くが、これは辛い辛抱だ。
室谷女流初段は△3四銀~△3五銀と繰り出し、好調。飯野女流1級は▲1六歩とし、銀の可動領域を拡げる。
ここから室谷女流初段は秒読み。△3四飛ぐらいと見ていたのだが、女・室谷由紀の指し手は違った。
(つづく)