27日(木)は、終業後、東京・神田へ向かった。この何日か前、将棋ペンクラブ幹事のA氏(夫妻)に、飲みに誘われたのだ。私もヒトに酒を誘われる身分になったんだなあ、と思う。
待ち合わせの午後6時30分を1分すぎて、待ち合わせ場所の神田駅前に到着。別に飛行機や特急電車に乗るわけではないから、私は平気で遅刻する。A氏の奥さんの姿はなく、ほかに同クラブ幹事のH氏がいた。
神田駅へ降りるのは久しぶりである。サラリーマン時代は、毎週神田駅で降りていたから、地理的には詳しい。現在も得意先の本社が神田にあるのだが、ここ数ヶ月はすっかりご無沙汰していた。ちょっと見ないうちに東口もずいぶん変わっている。いつだったか新宿にぶらぶら出かけたときも、微妙に建物が変わっていてとまどったものだが、かように東京は変貌が激しい。
A氏に案内され、お好み焼きの店に入る。奥さまが先乗りでカウンターに座っていた。A氏は店主と顔なじみらしい。このメンバーで、昨年7月31日に立川で飲んだが、そこで入った店も、A氏とマスターが昵懇の仲だった。立川はA氏の縄張りだろうが、神田まで知己がいるとは…。A氏は顔が広い。
奥さんが、
「サンバ…」
と言う。「そこに新装開店の店があって、さっきサンバの人が踊ってたのよ」
サンバといえば対句になるのがチアリーダーである。サンバ派かチア派か。これはナカクラアキコとナカクラヒロミのどちらがタイプか、と同義の設問といってよい。
もちろん私はサンバ派である。スルド(大太鼓)のドン、ドン、ドン、という音を聞くだけで、もう、血が騒いでしまう。なぜ血が騒ぐのか。それは心臓の鼓動に似ているからだという説が有力である。
羽をつけているダンサー(「パシスタ」という)が身に付けている、お尻の露出度が高い水着のようなものを、「タンガ」という。下着のTバックは、その形状よりも、タンガのTからきている、という説がある。
…というようなことを話すと、私がサンバオタクに思われるので、このことは話さなかった。私にはただでさえ、「将棋オタク」「鉄道マニア」「アイドルオタク」「カメラ小僧」「AV女優好き」の怪しいレッテルがいくつも貼られているのだ。さらに昔は、エロ雑誌にしこしこエロイラストを投稿していた過去もあり、これ以上私のイメージが崩れるのはマズイと思った。
とりあえず、生ビールで乾杯。私はイケル口ではないが、このビールは泡がクリーミーで、美味だった。
さてこのメンバーなら、当然将棋の話である。植山悦行手合い係が金曜サロンを辞めることになって残念という話、加藤一二三九段のキャラクターの話、日本将棋連盟は何を考えてんだ、という話…。そんなことを、私たちは屈託なく話した。
私たちはとくにメニューを見るわけでもなく、カウンターすぐ向こうで調理しているマスターから、思い出したようにおつまみが出てくる。
10時近くになって、この店の関係者らしき人が2人、客として入ってくる。この人らとも、A氏は顔なじみだ。本当にA氏は顔が広い。
このお客さん、私の隣の区に住んでいたようで、私が出身中学を言ったら、ご存じだった。私の中学はガラが悪く、不良も数えきれないくらいいたが、不思議と私は「最悪クラス」には入らなかった。いま思うに、小学校の担任の先生が、中学校の学年主任に「大沢はイジメられっ子だから、クラス替えの際には気をつけて」と一筆書いてくれたのかもしれない。
もっとも、その「最悪クラス」には私が好きだった女子がいつもいて、結局3年間、そのコとはいっしょのクラスにはなれなかった。一度だけ、そのコが所用で私に話に来たことがあった。私はアガッてしまって、しどろもどろだった。
10時すぎに店を出る。お代はA氏がすでに支払ってくれていて、私が払おうとすると、
「きょうは店が忙しくて、マスターがあまり料理を出せなかったから、安くしてくれました。大沢さんにおもてなしが出来なかったので、きょうのお代は結構です」
と言って、頑としておカネを受け取らなかった。A氏はこういう男っぽいところがある。奥さんが惚れるのも分かる気がする。ごちそうさまでした。
帰り道で、A氏の奥さんが、「小諸そば」で蕎麦を食べたいという。小諸そばは立ち食いそばのチェーン店で、私もサラリーマン時代にはよくお邪魔した。もうひとつ重宝した立ち食いそばの店が「ゆで太郎」で、これは会社の近くにもあったことから、2日に1回は利用していた。味は小諸そばに劣るが、ゆで太郎は麵の量が多く、小諸そばの「もりそば大盛り」よりも、ゆで太郎の「もりそば」のほうが、量があった。
今回はしかし、小諸そばはもう店じまいしていた。仕方がないから、まだ開いていた「富士そば」へ入る。
富士そばと言えば、以前フジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」のコーナーの中に、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で富士そばがネタになり、演者が優勝したことがある。
しかし私は、その富士そばへ入ったことが一度もない。小諸そばやゆで太郎と比べると、もりそばの値段が高かったからだが、富士そばの味を知るにはいい機会である。
私はもりそば260円に、大盛り100円の食券を買う。上野店のもりそばは270円だった気がする。それよりも大盛り100円はちょっと高いと思う。小諸そばもゆで太郎も、大盛り料金は50円前後である。
ともかく、初めての「富士そば」である。緊張して食す。そばは挽きぐるみ、そばつゆは甘めだが、及第点だった。そば湯が熱いのもよかった。
私は東京の飲み屋に不案内なので、私を飲みに誘うときは難儀だと思うが、またA氏夫妻やH氏と飲める日を楽しみにしている。
待ち合わせの午後6時30分を1分すぎて、待ち合わせ場所の神田駅前に到着。別に飛行機や特急電車に乗るわけではないから、私は平気で遅刻する。A氏の奥さんの姿はなく、ほかに同クラブ幹事のH氏がいた。
神田駅へ降りるのは久しぶりである。サラリーマン時代は、毎週神田駅で降りていたから、地理的には詳しい。現在も得意先の本社が神田にあるのだが、ここ数ヶ月はすっかりご無沙汰していた。ちょっと見ないうちに東口もずいぶん変わっている。いつだったか新宿にぶらぶら出かけたときも、微妙に建物が変わっていてとまどったものだが、かように東京は変貌が激しい。
A氏に案内され、お好み焼きの店に入る。奥さまが先乗りでカウンターに座っていた。A氏は店主と顔なじみらしい。このメンバーで、昨年7月31日に立川で飲んだが、そこで入った店も、A氏とマスターが昵懇の仲だった。立川はA氏の縄張りだろうが、神田まで知己がいるとは…。A氏は顔が広い。
奥さんが、
「サンバ…」
と言う。「そこに新装開店の店があって、さっきサンバの人が踊ってたのよ」
サンバといえば対句になるのがチアリーダーである。サンバ派かチア派か。これはナカクラアキコとナカクラヒロミのどちらがタイプか、と同義の設問といってよい。
もちろん私はサンバ派である。スルド(大太鼓)のドン、ドン、ドン、という音を聞くだけで、もう、血が騒いでしまう。なぜ血が騒ぐのか。それは心臓の鼓動に似ているからだという説が有力である。
羽をつけているダンサー(「パシスタ」という)が身に付けている、お尻の露出度が高い水着のようなものを、「タンガ」という。下着のTバックは、その形状よりも、タンガのTからきている、という説がある。
…というようなことを話すと、私がサンバオタクに思われるので、このことは話さなかった。私にはただでさえ、「将棋オタク」「鉄道マニア」「アイドルオタク」「カメラ小僧」「AV女優好き」の怪しいレッテルがいくつも貼られているのだ。さらに昔は、エロ雑誌にしこしこエロイラストを投稿していた過去もあり、これ以上私のイメージが崩れるのはマズイと思った。
とりあえず、生ビールで乾杯。私はイケル口ではないが、このビールは泡がクリーミーで、美味だった。
さてこのメンバーなら、当然将棋の話である。植山悦行手合い係が金曜サロンを辞めることになって残念という話、加藤一二三九段のキャラクターの話、日本将棋連盟は何を考えてんだ、という話…。そんなことを、私たちは屈託なく話した。
私たちはとくにメニューを見るわけでもなく、カウンターすぐ向こうで調理しているマスターから、思い出したようにおつまみが出てくる。
10時近くになって、この店の関係者らしき人が2人、客として入ってくる。この人らとも、A氏は顔なじみだ。本当にA氏は顔が広い。
このお客さん、私の隣の区に住んでいたようで、私が出身中学を言ったら、ご存じだった。私の中学はガラが悪く、不良も数えきれないくらいいたが、不思議と私は「最悪クラス」には入らなかった。いま思うに、小学校の担任の先生が、中学校の学年主任に「大沢はイジメられっ子だから、クラス替えの際には気をつけて」と一筆書いてくれたのかもしれない。
もっとも、その「最悪クラス」には私が好きだった女子がいつもいて、結局3年間、そのコとはいっしょのクラスにはなれなかった。一度だけ、そのコが所用で私に話に来たことがあった。私はアガッてしまって、しどろもどろだった。
10時すぎに店を出る。お代はA氏がすでに支払ってくれていて、私が払おうとすると、
「きょうは店が忙しくて、マスターがあまり料理を出せなかったから、安くしてくれました。大沢さんにおもてなしが出来なかったので、きょうのお代は結構です」
と言って、頑としておカネを受け取らなかった。A氏はこういう男っぽいところがある。奥さんが惚れるのも分かる気がする。ごちそうさまでした。
帰り道で、A氏の奥さんが、「小諸そば」で蕎麦を食べたいという。小諸そばは立ち食いそばのチェーン店で、私もサラリーマン時代にはよくお邪魔した。もうひとつ重宝した立ち食いそばの店が「ゆで太郎」で、これは会社の近くにもあったことから、2日に1回は利用していた。味は小諸そばに劣るが、ゆで太郎は麵の量が多く、小諸そばの「もりそば大盛り」よりも、ゆで太郎の「もりそば」のほうが、量があった。
今回はしかし、小諸そばはもう店じまいしていた。仕方がないから、まだ開いていた「富士そば」へ入る。
富士そばと言えば、以前フジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」のコーナーの中に、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で富士そばがネタになり、演者が優勝したことがある。
しかし私は、その富士そばへ入ったことが一度もない。小諸そばやゆで太郎と比べると、もりそばの値段が高かったからだが、富士そばの味を知るにはいい機会である。
私はもりそば260円に、大盛り100円の食券を買う。上野店のもりそばは270円だった気がする。それよりも大盛り100円はちょっと高いと思う。小諸そばもゆで太郎も、大盛り料金は50円前後である。
ともかく、初めての「富士そば」である。緊張して食す。そばは挽きぐるみ、そばつゆは甘めだが、及第点だった。そば湯が熱いのもよかった。
私は東京の飲み屋に不案内なので、私を飲みに誘うときは難儀だと思うが、またA氏夫妻やH氏と飲める日を楽しみにしている。