昨年8月14日に枯死した我が家の桃の木だが、私は懲りずに、「4代目」を購入することを目論んでいた。ちなみに「3代目」を購入した25年前(もっと以前の可能性高し)は、とりあえず山梨駅に行き、そこから種苗業者を見つけるという計画のなさだった。
それでも無事桃の苗木を買えたのだが、それこそ若さのなせる業であって、歳を取って体も弱ってきた今、もうあんな無計画なことはできない。
私はネットを漁ってみる。今回も購入は山梨県である。すると、苗木専門店・前島園芸というホームページがあった。そのトップには美味そうな桃の写真が載っており、丁寧に価格表も掲げられていた。
苗木はどこで買っても同じだと思うが、値段が安いに越したことはない。私が買わんとする「白鳳」は1,650円だった。25年前は1,500円だったから、2023年の今、かなり良心的な値段設定である。
そして何より、これだけ手の込んだホームページを作成しているところで、すでにポイントが高い。このお店は信用できると思った。
現在11月。苗木の販売は12月からとのことで、ちょうどいい。ここは通信販売もやっていたが、できれば自分の手で持って帰りたい。それで、12月13日に電話をした。
最初に出たのは男性だが、途中で女性に変わった。話を要約すると、現地に来ての購入はもちろん可。私は最寄りのバス停を聞いたのだが、どうもハッキリしなかった。ただ、甲府駅や石和温泉駅からバスが通じているようだった。
ちなみに25年前、私がお世話になった種苗店は、廃業したとのことだった。できればまたこの店で買いたかったが、この情報で逆に、割り切ることができた。
そして前島園芸へ伺う日を、12月19日(火)と伝えた。
さて、当日である。この日は一日オフだから、いつ出発してもよい。ただ、陽が短いので、庭に苗木を植えることを考えると、早く家を出たい。
でも私はグズグズしてしまい、特急を利用することにした。25年前だったら鈍行利用一択、現在なら高速バスも視野に入れていいが、結果、いちばん散財する順を選んでしまった。このあたりも、私が歳を取った証左だ。
最寄り駅のみどりの窓口で、石和温泉までの自由席特急券を求める。すると、自由席は廃止されたという。
この閑散期になんで座席指定をしなくちゃならないんだと思うが、仕方ない。新宿10時30分発のかいじ15号を購入した。
10時20分、新宿で乗り換え。かいじはすでに入線していたが、指定券を持っている私は余裕である。7号車5Dに座り、かいじ15号は定刻に出発した。
ところで、私が都内発の在来線特急に乗るのはかなり珍しい。私が20代のころ北陸を旅行したときに、都内からL特急白山を利用した記憶があるくらいだ。ところがこの白山、自由席が1両しかなく、私は立って行くしかなかった。
しかも、いつまで経っても席が空かず、私はその日のうちに金沢に行くことも視野に入れていたのだが、あまりにも立ちん坊で疲れ、直江津の手前の高田で途中下車した。たしか4時間15分くらいかかったと思う。
それでそのあと、ポルノ映画館に入った気もするのだが、どうだったのだろう。
話を戻し、我がかいじは静かに走る。いつもは首都圏仕様の電車利用で、乗客がうじゃうじゃいる。しかもロングシートだから、景色を見る角度も違う。今回は周りに乗客もそれほどおらず、要するに快適な旅だ。
タイム1時間29分で、石和温泉に着いた。文化放送「親父熱愛(パッション)」の1コーナーに、元石和温泉観光協会のホサカマユミさんが出てくる。棒読みのセリフが面白いが、ともあれそんな石和温泉だからひとっ風呂浴びたいが、きょうはそんな時間はない。
すぐに駅前の観光案内所に飛び込み、私が乗るべきホームを聞いた。
次のバスは12時03分だったが、11分遅れた。バスは、火曜日とはいえ観光客もいたが、通学の男女の姿が目立った。私は電車通学だったが、あのころを思い出して、切なくなった。
バスは後れを取り戻せず、12時28分、私は県道沿いにある「夏目」で降りた。事前の調べでは、どうもこの停留所で降りるのがスマートらしかった。
ただしここからの方角が分からない。すぐ右に種苗店があったので、前島園芸を聞いてみる。すると、快く教えてくれた。
そこの細い道をしばらく行き、四つ角に出たら右にひたすら行く、とのことだった。
私がこの店に聞かなかったら、とりあえず県道沿いを行き、道に迷っていただろう。きょうはツキがあった。
言われたとおりの道を行く、四つ角を右に行き、もう間違えることはない。この、少ない情報で目的地に向かうさまは、初めて訪れるユースホステルを探すときのそれに似ている。そしてユースホステルといえば、思い出すのは南足柄市の美女・滝本夏子さんだが、それはまた別の話である。
右手に多くの幟が見えてきた。やっと着いたか! 夏目から徒歩20分で、これは想定通り。ここが前島園芸である。
受付の事務所に行くと、電話に出た人とは違う、年配の男性が応対してくれた。
要件を言うと、男性は「あそこにあるよ」と指をさした。そこはきょう引き取り分の苗木で、その中の1本に、私の苗字が貼られてあった。
これが、4代目とのファーストコンタクトだった。
(つづく)
それでも無事桃の苗木を買えたのだが、それこそ若さのなせる業であって、歳を取って体も弱ってきた今、もうあんな無計画なことはできない。
私はネットを漁ってみる。今回も購入は山梨県である。すると、苗木専門店・前島園芸というホームページがあった。そのトップには美味そうな桃の写真が載っており、丁寧に価格表も掲げられていた。
苗木はどこで買っても同じだと思うが、値段が安いに越したことはない。私が買わんとする「白鳳」は1,650円だった。25年前は1,500円だったから、2023年の今、かなり良心的な値段設定である。
そして何より、これだけ手の込んだホームページを作成しているところで、すでにポイントが高い。このお店は信用できると思った。
現在11月。苗木の販売は12月からとのことで、ちょうどいい。ここは通信販売もやっていたが、できれば自分の手で持って帰りたい。それで、12月13日に電話をした。
最初に出たのは男性だが、途中で女性に変わった。話を要約すると、現地に来ての購入はもちろん可。私は最寄りのバス停を聞いたのだが、どうもハッキリしなかった。ただ、甲府駅や石和温泉駅からバスが通じているようだった。
ちなみに25年前、私がお世話になった種苗店は、廃業したとのことだった。できればまたこの店で買いたかったが、この情報で逆に、割り切ることができた。
そして前島園芸へ伺う日を、12月19日(火)と伝えた。
さて、当日である。この日は一日オフだから、いつ出発してもよい。ただ、陽が短いので、庭に苗木を植えることを考えると、早く家を出たい。
でも私はグズグズしてしまい、特急を利用することにした。25年前だったら鈍行利用一択、現在なら高速バスも視野に入れていいが、結果、いちばん散財する順を選んでしまった。このあたりも、私が歳を取った証左だ。
最寄り駅のみどりの窓口で、石和温泉までの自由席特急券を求める。すると、自由席は廃止されたという。
この閑散期になんで座席指定をしなくちゃならないんだと思うが、仕方ない。新宿10時30分発のかいじ15号を購入した。
10時20分、新宿で乗り換え。かいじはすでに入線していたが、指定券を持っている私は余裕である。7号車5Dに座り、かいじ15号は定刻に出発した。
ところで、私が都内発の在来線特急に乗るのはかなり珍しい。私が20代のころ北陸を旅行したときに、都内からL特急白山を利用した記憶があるくらいだ。ところがこの白山、自由席が1両しかなく、私は立って行くしかなかった。
しかも、いつまで経っても席が空かず、私はその日のうちに金沢に行くことも視野に入れていたのだが、あまりにも立ちん坊で疲れ、直江津の手前の高田で途中下車した。たしか4時間15分くらいかかったと思う。
それでそのあと、ポルノ映画館に入った気もするのだが、どうだったのだろう。
話を戻し、我がかいじは静かに走る。いつもは首都圏仕様の電車利用で、乗客がうじゃうじゃいる。しかもロングシートだから、景色を見る角度も違う。今回は周りに乗客もそれほどおらず、要するに快適な旅だ。
タイム1時間29分で、石和温泉に着いた。文化放送「親父熱愛(パッション)」の1コーナーに、元石和温泉観光協会のホサカマユミさんが出てくる。棒読みのセリフが面白いが、ともあれそんな石和温泉だからひとっ風呂浴びたいが、きょうはそんな時間はない。
すぐに駅前の観光案内所に飛び込み、私が乗るべきホームを聞いた。
次のバスは12時03分だったが、11分遅れた。バスは、火曜日とはいえ観光客もいたが、通学の男女の姿が目立った。私は電車通学だったが、あのころを思い出して、切なくなった。
バスは後れを取り戻せず、12時28分、私は県道沿いにある「夏目」で降りた。事前の調べでは、どうもこの停留所で降りるのがスマートらしかった。
ただしここからの方角が分からない。すぐ右に種苗店があったので、前島園芸を聞いてみる。すると、快く教えてくれた。
そこの細い道をしばらく行き、四つ角に出たら右にひたすら行く、とのことだった。
私がこの店に聞かなかったら、とりあえず県道沿いを行き、道に迷っていただろう。きょうはツキがあった。
言われたとおりの道を行く、四つ角を右に行き、もう間違えることはない。この、少ない情報で目的地に向かうさまは、初めて訪れるユースホステルを探すときのそれに似ている。そしてユースホステルといえば、思い出すのは南足柄市の美女・滝本夏子さんだが、それはまた別の話である。
右手に多くの幟が見えてきた。やっと着いたか! 夏目から徒歩20分で、これは想定通り。ここが前島園芸である。
受付の事務所に行くと、電話に出た人とは違う、年配の男性が応対してくれた。
要件を言うと、男性は「あそこにあるよ」と指をさした。そこはきょう引き取り分の苗木で、その中の1本に、私の苗字が貼られてあった。
これが、4代目とのファーストコンタクトだった。
(つづく)