一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

西山女流三冠の棋士編入試験第3局

2024-11-10 00:07:09 | 女流棋士
きのう8日は、西山朋佳女流三冠の棋士編入試験第3局が行われた。ここまで西山女流三冠の1勝1敗。3戦目の相手は上野裕寿(ひろとし)四段。2023年10月デビュー。
その上野四段は棋士2年目にして、新人王戦と加古川青流戦で優勝している。今回西山女流三冠が受験するにあたり、最強の相手がこの上野四段であった。
将棋は西山女流三冠の後手で、四間飛車。西山女流三冠には先手でも後手でも三間飛車のイメージがあったから、これは意外だった。
西山女流三冠はさらに、美濃囲いを放棄し△6二銀と上がる、独特の戦型を採った。
この大事な一戦に、よく指しなれない手を選ぶと思う。先日の「将棋フォーカス」で藤井猛九段が語っていたが、西山女流三冠には、贔屓の振り飛車党棋士がいないという。振り飛車の定跡を知らない、という別方向からの情報もあり、要するに西山女流三冠の振り飛車は、西山オリジナルなのだ。本局の独特の囲いもふまえ、大山康晴十五世名人のテイストによく似ていると思った。
西山女流三冠は、6筋の位を取り、十分。△2二飛を利かされたのがアレだが、西山女流三冠は、福間香奈女流五冠との戦いでも、よく向かい飛車を指すから、問題ないのだろう。
上野四段は飛車角交換をし、▲4四角と飛車取りに飛び出す。西山女流三冠は飛車を端に寄って耐える。しかしここは、香を見捨てて△6二飛もあったようだ。
西山女流三冠、銀を桂と刺し違え、△6六桂と両金取りに打った。一見でかしたようだが、先に損をしているので、得はしていない。むしろ先手の駒を捌かせているので、植山悦行七段や大野八一雄七段はマユをひそめると思う。私は両七段の教室によくお邪魔したが、その教えは応用が利き、とても勉強になったものだ。
西山女流三冠、△7八桂成とこちらの金を取った。△5八桂成なら成桂が残るが、桂を渡しても、玉を薄くするほうを採ったわけだ。だがこの判断も甘かったようだ。
西山女流三冠は継続手として角頭を攻めたが、ABEMA解説の郷田真隆九段と佐藤和俊七段は△9六歩を推奨する。
むろん西山女流三冠も考慮に入れたが、遅いと判断したのだろう。ただ、▲9五歩△同歩と突き捨てた側からすると、その歩を伸ばされるのは不愉快なものなのだ。
たとえば大山十五世名人は、その局面の最善手よりも相手の嫌がる手を指した。大山十五世名人なら、間違いなく△9六歩を指したであろう。
上野四段は▲2二とと飛車を殺し、これで専門的には勝負あった。以下は西山女流三冠の懸命の攻めを上野四段が甘し、快勝となった。
西山女流三冠は残念だったが、「四間飛車も試して、充実していました」と前向きな感想を残した。
それで思ったのだが、西山女流三冠は、そこまで編入試験に「入れ込んでいない」ような気がした。
しかし現実的に、西山女流三冠はあとがなくなった。第4局の相手は宮嶋健太四段。さて、どうなるか。
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「中七海」

2024-10-07 23:42:45 | 女流棋士
9月に年齢制限で奨励会を退会した中七海(なか・ななみ)さんが、女流棋士・女流三段として再出発することが分かった。七海さんは元奨励会三段で、このままアマに戻るのはもったいないと思っていたから、七海さんの英断には拍手を送った。
実は先月29日の社団戦のとき、Kan氏から気になる話を聞いていた。七海さんは京都大学の大学院在籍で、このたび気象に関する賞をもらったという。
元奨励会から女流棋士になるルートはよくあるが、七海さんの場合は気象の世界のホープで、とても女流棋士をやる時間はない。よって今後はそちらの研究に専念するのではないか、というものだった。
ところがきのうの将棋ペンクラブ大賞贈呈式で、Kan氏がみなに謝りたいことがある、と言ったので注目した。
なんと、京都大学大学院の中七海さんと、将棋の中七海さんは別人だったというのだ。
「なかななみって、字も同じ中七海なんですか」
「そう」
「はああ……」
苗字も名前も珍しいが、その2つが組み合わさって同姓同名とは、奇跡的な偶然があったものだ。ひょっとしたら、姓名判断ではこの相性がいいのかもしれない。
将棋の七海さんは兵庫県出身で、あちらの七海さんと同じ関西である。Kan氏が同一人物と勘違いしたのも無理はなかった。
それはともかく、元奨励会三段の福間香奈女流五冠と西山朋佳女流三冠が8大タイトルを分け合っている現在、元奨励会三段の新加入は、願ってもないことである。
七海さんは奨励会在籍時も、女流棋戦に出ないことで有名だった。私などは、女流棋戦でタイトルを獲ればけっこうな収入になると思ったが、七海さんは極端な無口で、目立つことを嫌う、という噂も聞いたことがある。それが不出場の理由だったかどうかは分からぬが、いずれにしても気骨がある女性であることは確かだ。
「なかななみ」と、ついフルネームで呼びたくなる氏名もいい。11月からは頑張って、8大オタイトルの牙城に大きな穴を開けてもらいたい。頑張れ!
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西山女流三冠、棋士編入試験に挑む!!

2024-09-04 10:55:03 | 女流棋士
西山朋佳女流三冠が7月4日の公式戦(男性棋戦)に勝ち、直近の戦績を13勝7敗(.650)とした。これで「10勝以上かつ勝率.650以上」の条件を満たし、棋士編入試験の権利を獲得した。
西山女流三冠はそれを行使し、編入試験第1局は、この10日に行われることになった。
いままで棋士編入試験を受けた人は、女流棋士、元奨励会三段、アマチュアといろいろいる。個人的には、四段になるのは奨励会三段リーグを抜けた人のみ、の考えがあるのだが、西山女流三冠においては同リーグで14勝4敗の実績があるので、心情的に四段にさせてあげたい。
というかそもそも、女流棋士はもうプロなので、編入試験の権利を得た時点で、フリークラス編入でもいいと思うのだが、さすがにそれは甘すぎるか。
さて西山女流三冠の試験官は次のとおり。

高橋佑二郎四段 9月10日
山川泰熙(たいき)四段 10月2日
上野裕寿四段
宮嶋健太四段
柵木(ませぎ)幹太四段

この5名と西山女流三冠の、奨励会時代の戦績は面倒くさいので調べない。とりあえず、5名の四段デビュー後の戦績を記してみよう。

高橋四段 5勝4敗(.556)
山川四段 5勝5敗(.500)
上野四段 19勝7敗(.731)
宮嶋四段 11勝9敗(.550)
柵木四段 19勝15敗(.559)

第54期新人王・上野四段の19勝7敗はさすがだが、ほかの4名は、5割を少し出る程度。これなら西山女流三冠が3勝2敗を取る可能性は十分ある。
問題は、試験官側の心理状態だ。三段リーグで14勝を挙げた西山女流三冠に、全力を振り絞って勝ちを取りにくるだろうか。こちらもそこそこ真剣に指しますから、西山さん、うまい手を指して勝ってください、の心境ではないだろうか。
が、それでも福間香奈女流五冠は敗れちゃったからなあ。
ま、西山女流三冠は、悔いのない戦いをするしかない。
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中村桃子女流二段、引退

2024-07-10 23:31:50 | 女流棋士
いまさらながら、中村桃子女流二段の引退である。中村女流二段がそれを表明したのは今月1日。まったくの寝耳に水で、私は「はあ!?」と叫んで、呆然としてしまった。
中村女流二段は、残っている棋戦を全部消化しての引退、とのことだったので引退はまだ先と思いきや、8日の白玲戦・女流順位戦D級が最後の対局になった。引退表明から引退まで1週間は、近来稀に見る短さだった。
それにしても、どんなわけがあったのだろう。本人が「一身上の都合」と言っているので推察するしかないが、確かにおかしな点はあった。レギュラーで出演しているNHK杯将棋トーナメントの聞き手に、最近出演しなくなったことだ。だがこのときは、代打の藤田綾女流二段、貞升南女流二段がレギュラーを宣言していなかったから、中村女流二段はすぐに帰ってくると思っていた。
しかし現役を引退してしまうと、復帰も怪しい。
中村女流二段のご主人は将棋アマ強豪、実兄は亮介六段で、いわば将棋一家である。だから中村女流二段が将棋を続けることに何の障害もない。となると、当人に将棋愛がなくなったか、あるいは体調の問題か。だけど体調なら、休場すればよい。以前も書いたが休場は棋士の特権で、大いに活用すればよい。
だが、休場では済まないくらいの事態だったとしたら、問題である。
ただまあ、本人が口をつぐんでいる以上、外野がこれ以上騒いでも詮無い。もし可能だったら、またNHK杯に戻ってきてください。
さて、私は棋士や女流棋士を写真に収める趣味はない。ないが、2017年に天童の桜まつりに行ったときは、中村女流二段を写真に収めさせていただいた。当ブログでももちろんアップしているが、昨今は肖像権の問題もあり、その後は1枚のアップもないはずである。
私は人妻女流棋士のファンにはならないのだが、中村女流二段は結婚してもピュアピュア感が残っていて、ファンのひとりだった。今回は惜別の思いを込めて、何枚かを再掲する。中村先生改めて、お疲れ様でした。











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船戸女流三段、引退

2024-07-05 23:17:38 | 女流棋士
船戸陽子女流三段現役引退の報を知ったのは4月26日、Wikipediaでだった。そのとき私は「将棋クイズ50問」を制作していて、あっちこっちの将棋サイトで、正解の確認をしていた。そのさなかに見つけたのだった。
私はLPSAのサイトに飛んだがもちろん真実で、どうも4月24日に表明されたようだった。
当ブログの古参読者ならご存じだが、私は船戸女流三段の大ファンだった。否、ファンという範疇を越えて、危険な領域に入っていた。
当時私はLPSA金曜サロンや芝浦サロンに入りびたり、船戸女流三段主催の木曜ワインサロンにも通っていたから、船戸女流三段との接点は多かった。私は船戸女流三段に会うたびに惹かれていった。
だがそんな矢先の2011年8月、船戸女流三段は島井咲緒里女流二段とともに、結婚を報告する。これを私は沖縄旅行中に知ったが晴天の霹靂で、大変なショックだった。
付き合っている人がいるなら私に一言言ってくれればいいのに、そんなそぶりはまったく見せなかった。考えてみればそりゃそうで、そんなプライベートを他人に言う意味がない。
だけど私はショックで、端的には食欲が失せた。1日に摂取する食事は昼の牛乳1杯のみで、そんな生活を1ヶ月続けていたら、10kgも痩せてしまった。通院していた耳鼻科の先生が心配して、ビタミン剤を注射してくれたものである。
ある日は植山悦行七段、大野八一雄七段、安西勝一七段と同じテーブルで、私は2時間ぶっ続けで、愚痴をこぼし続けた。将棋の先生を前にして、何を私はやっているのかといまでは思うが、当時はそこまで配慮が回らなかった。
そのとき安西七段から「失恋が癒えるのは、その人を好きだった期間の2倍かかるよ」と言われた。独身の安ちゃんにしては含蓄のある言葉で、ああそうかもしれない、と妙に感心したのを覚えている。
当時はブログにも泣き言を書いていたが、石橋幸緒女流四段(当時)から、「あまり書くと彼女に迷惑だから……」というようなことを言われ、私は我に返った。
あぁ私は頭がおかしくなっていた。これじゃあ船戸女流三段が困惑するばかりである。私はブログに船戸女流三段に関する記述を止め、今後は接点を持たないようにした。
おりしもLPSA芝浦サロンは麹町サロンへと移転し、私もいろいろあって、LPSA自体から距離を置くようになってしまった。
以後現在まで、船戸女流三段をお見かけしたことはあっても、私語を交わしたことは一度もない。指導対局を受けることもないと思ったが、数年前、Tod氏の計らいから、それが実現した。そのときの将棋は覚えていないが、たぶん私が負けたはずだ。
今回船戸女流三段が現役引退を決めたことについては、第三者である私に口を挟む余地はまったくない。ただただ、お疲れ様でしたと言うだけである。
船戸女流三段は8日の白玲戦・女流順位戦が最後の対局になる。悔いのない将棋を指していただければと思う。
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