ここまでで約45分。開催時間は2時間だから、あまり時間は残されていない。いつも思うのだが、せめて開催を2時間半にしてもらえまいか。
ここのテーブルには、阿部氏、山本氏、中山氏と、社団戦のメンバーが集まっている。室内中央には洋食が出ているが、茂山氏はそこから適当にみつくろって持ってきた。みんなで突っついてくれということだ。茂山氏は気づかいの人である。
阿部氏あたりは、もうペンクラブの幹事になっちゃえばいいと思う。
そういう私は、幹事の経験があると思われているが、ない。あれは2009年春、湯川博士幹事に誘われて、会報の発送作業を手伝った。そのとき湯川氏に「大沢君は、幹事見習いな」と言われたが、そのあと音沙汰がなく、いまに至る。きっと、幹事は務まらないと判断されたのだろう。
ちなみにそのと、M幹事からブログを希望され、私は2009年4月に開設することになる。それが2024年のいままで続いているとは、なんという運命か。
中山氏は酒が強そうだ。将棋道場へは三軒茶屋に行くそうで、五~六段で指しているそうだ。これで社団戦で、7部で出ちゃいけないわな、と思う。
会場は、「内輪」が多い。すなわち一般将棋ファンの参加が少なく、女性はほぼ、壊滅状態だ。
若い男性がひとりで食事をしているが、私が声を掛けるのもなあ……。声を掛ける、という意味では、金子タカシ氏、松本博文氏らにもお祝いの言葉を掛けるべきなのだが、ふたりとは目礼しか交わしたことがないという、不思議な関係である。
あとは若島正氏にも挨拶をしたいのだが、怪しいおっさんに近づかれても迷惑だろうし、いろいろ考えすぎて、私はここのテーブルを離れることはできない。
本日指導対局の、中井広恵女流六段が壇上に上がった。
「受賞の皆様のお顔を拝見すると、昔から存じ上げる方が多く、うれしいです。
現代は、将棋の指し手だけをいえば、AIが正解手を示してくれます。だけど私たちが好手、悪手を指した理由、これが大事で、それを観戦記で示していただければありがたいです。
最近は昔の女流棋界のことばかり聞かれるのですが、私の将棋のことを聞かれるよう、頑張りたいと思います」
そのあと指導対局となる。3面指しだが、時間的には先着3名だ。と、木村晋介会長がそそくさと対局場に向かった。木村会長79歳、この熱意は素晴らしい。
その隣にはバトルロイヤル風間氏が似顔絵担当として鎮座している。だが、みんな一度は描いてもらっているので、お願いはしない。バトル氏は手持ち無沙汰なふうだ。
茂山氏に聞かれ、私がファンである女流棋士を述べる。
「いまは西山さん、磯谷(佑維)さん、松尾さん……」
「松尾ちゃうやろ!」
「おぉしまった、上川さんだった。私、前も上川さんに松尾さんって言っちゃて、『ワタシ、マツオじゃないですけど』って」
というバカバカしい会話をしていると、壇上に松本博文氏があがった。
「弦巻さんは尊敬すべき大先輩です。弦巻さんは、こんな素晴らしい将棋の世界を記録しておかないのは怠慢だという使命感で、将棋の世界を撮影してきました。そんな弦巻先生には、いろいろアドバイスを受けました。たまに褒めてもらうとうれしかったです」
これに呼応して、弦巻勝さんが壇上に立つ。弦巻氏は米長邦雄永世棋聖と飲んだことがあり、そのたびに松本氏の話が出たそうだ。
それに呼応して、また松本氏が壇上に戻る。
「桐谷広人先生のお宅にインタビューに行ったときは、若い女性のカメラマンを同行したんで、大変よろこばれました。
それで桐谷先生が、米長邦雄に逆らった人間は、みんな成功しているんだ、と。私しかり、大●善●しかり。しかるに君はなんだ。まだ頑張りが足りない、と、発破を掛けられました。
いま米長さんがいたら、『君、稼ぐねえ』と言うんじゃないでしょうか。米長さん、ありがとうございました」
私はちょっと、指導対局コーナーに行ってみる。3局とも下手が劣勢だ。中井女流六段もそこまで厳しくしないはずだが、下手が正着を指さないことにはどうしようもない。
その傍らで、直立で局面を眺めている精悍な男性がいる。「将棋世界」の連載「師弟」で有名な野澤亘伸カメラマンだ。まったく、あっちを見てもこっちを見ても有名人だらけだ。
茂山氏はいろいろ知っていて、西山朋佳女流三冠のお姉さんは、囲碁のプロ棋士だそうである。
あとは、女流棋士の年齢の話になる。上川香織女流二段の年齢とかが話題に上り、話の方向性が定まらない。
最後はお楽しみ、抽選会である。賞品はいつものように、色紙、扇子、棋書の類だ。入場の際にもらったプログラム表に、ナンバリングがしてある。それが抽選ナンバーだ。
が、今回はとくに抽選はなく、Kan氏の独断で、当選ナンバーを決める。今回は下1桁が当然ナンバーだ。私は1桁で「4」だが、なかなか呼ばれない。
そのうち呼ばれ、「14」のMISAKOさんとともに、陳列場に向かう。私は森内俊之九段「一陽来復s」の色紙をいただいた。ちなみにMISAKOさんは、中井女流六段の「磊磊落落」の扇子をゲットしたようだ。
木村会長が戻ってきた。指導対局は残念な結果だったようだ。プロに勝つのは大変だ。
実はここでも個性が現れていて、ただの将棋ファンは、色紙や扇子をもらう。強豪は棋書をもらう。名より実を取るわけだ。
ほぼ全員に渡ったが、それでもハケない。2週目のピックアップになり、私は堀彩乃女流初段の「万里一空」をいただいた。
これで将棋ペンクラブ大賞贈呈式も締めである。最後は、最終選考委員の森田正光氏が挨拶。
「来年も選考委員をゼヒやらせてください!」
森田氏はデビュー当時の藤井聡太四段が注目を集めるなか、彼を負かした佐々木勇気四段に興味を持ったという。いまの竜王戦七番勝負を見て、感慨もひとしおだろう。
最後は湯川博士氏の音頭で、三三七拍子で幕。来年もこの会は開催されるだろうが、今年よりはすっきりした気持ちで臨みたいものである。
ここのテーブルには、阿部氏、山本氏、中山氏と、社団戦のメンバーが集まっている。室内中央には洋食が出ているが、茂山氏はそこから適当にみつくろって持ってきた。みんなで突っついてくれということだ。茂山氏は気づかいの人である。
阿部氏あたりは、もうペンクラブの幹事になっちゃえばいいと思う。
そういう私は、幹事の経験があると思われているが、ない。あれは2009年春、湯川博士幹事に誘われて、会報の発送作業を手伝った。そのとき湯川氏に「大沢君は、幹事見習いな」と言われたが、そのあと音沙汰がなく、いまに至る。きっと、幹事は務まらないと判断されたのだろう。
ちなみにそのと、M幹事からブログを希望され、私は2009年4月に開設することになる。それが2024年のいままで続いているとは、なんという運命か。
中山氏は酒が強そうだ。将棋道場へは三軒茶屋に行くそうで、五~六段で指しているそうだ。これで社団戦で、7部で出ちゃいけないわな、と思う。
会場は、「内輪」が多い。すなわち一般将棋ファンの参加が少なく、女性はほぼ、壊滅状態だ。
若い男性がひとりで食事をしているが、私が声を掛けるのもなあ……。声を掛ける、という意味では、金子タカシ氏、松本博文氏らにもお祝いの言葉を掛けるべきなのだが、ふたりとは目礼しか交わしたことがないという、不思議な関係である。
あとは若島正氏にも挨拶をしたいのだが、怪しいおっさんに近づかれても迷惑だろうし、いろいろ考えすぎて、私はここのテーブルを離れることはできない。
本日指導対局の、中井広恵女流六段が壇上に上がった。
「受賞の皆様のお顔を拝見すると、昔から存じ上げる方が多く、うれしいです。
現代は、将棋の指し手だけをいえば、AIが正解手を示してくれます。だけど私たちが好手、悪手を指した理由、これが大事で、それを観戦記で示していただければありがたいです。
最近は昔の女流棋界のことばかり聞かれるのですが、私の将棋のことを聞かれるよう、頑張りたいと思います」
そのあと指導対局となる。3面指しだが、時間的には先着3名だ。と、木村晋介会長がそそくさと対局場に向かった。木村会長79歳、この熱意は素晴らしい。
その隣にはバトルロイヤル風間氏が似顔絵担当として鎮座している。だが、みんな一度は描いてもらっているので、お願いはしない。バトル氏は手持ち無沙汰なふうだ。
茂山氏に聞かれ、私がファンである女流棋士を述べる。
「いまは西山さん、磯谷(佑維)さん、松尾さん……」
「松尾ちゃうやろ!」
「おぉしまった、上川さんだった。私、前も上川さんに松尾さんって言っちゃて、『ワタシ、マツオじゃないですけど』って」
というバカバカしい会話をしていると、壇上に松本博文氏があがった。
「弦巻さんは尊敬すべき大先輩です。弦巻さんは、こんな素晴らしい将棋の世界を記録しておかないのは怠慢だという使命感で、将棋の世界を撮影してきました。そんな弦巻先生には、いろいろアドバイスを受けました。たまに褒めてもらうとうれしかったです」
これに呼応して、弦巻勝さんが壇上に立つ。弦巻氏は米長邦雄永世棋聖と飲んだことがあり、そのたびに松本氏の話が出たそうだ。
それに呼応して、また松本氏が壇上に戻る。
「桐谷広人先生のお宅にインタビューに行ったときは、若い女性のカメラマンを同行したんで、大変よろこばれました。
それで桐谷先生が、米長邦雄に逆らった人間は、みんな成功しているんだ、と。私しかり、大●善●しかり。しかるに君はなんだ。まだ頑張りが足りない、と、発破を掛けられました。
いま米長さんがいたら、『君、稼ぐねえ』と言うんじゃないでしょうか。米長さん、ありがとうございました」
私はちょっと、指導対局コーナーに行ってみる。3局とも下手が劣勢だ。中井女流六段もそこまで厳しくしないはずだが、下手が正着を指さないことにはどうしようもない。
その傍らで、直立で局面を眺めている精悍な男性がいる。「将棋世界」の連載「師弟」で有名な野澤亘伸カメラマンだ。まったく、あっちを見てもこっちを見ても有名人だらけだ。
茂山氏はいろいろ知っていて、西山朋佳女流三冠のお姉さんは、囲碁のプロ棋士だそうである。
あとは、女流棋士の年齢の話になる。上川香織女流二段の年齢とかが話題に上り、話の方向性が定まらない。
最後はお楽しみ、抽選会である。賞品はいつものように、色紙、扇子、棋書の類だ。入場の際にもらったプログラム表に、ナンバリングがしてある。それが抽選ナンバーだ。
が、今回はとくに抽選はなく、Kan氏の独断で、当選ナンバーを決める。今回は下1桁が当然ナンバーだ。私は1桁で「4」だが、なかなか呼ばれない。
そのうち呼ばれ、「14」のMISAKOさんとともに、陳列場に向かう。私は森内俊之九段「一陽来復s」の色紙をいただいた。ちなみにMISAKOさんは、中井女流六段の「磊磊落落」の扇子をゲットしたようだ。
木村会長が戻ってきた。指導対局は残念な結果だったようだ。プロに勝つのは大変だ。
実はここでも個性が現れていて、ただの将棋ファンは、色紙や扇子をもらう。強豪は棋書をもらう。名より実を取るわけだ。
ほぼ全員に渡ったが、それでもハケない。2週目のピックアップになり、私は堀彩乃女流初段の「万里一空」をいただいた。
これで将棋ペンクラブ大賞贈呈式も締めである。最後は、最終選考委員の森田正光氏が挨拶。
「来年も選考委員をゼヒやらせてください!」
森田氏はデビュー当時の藤井聡太四段が注目を集めるなか、彼を負かした佐々木勇気四段に興味を持ったという。いまの竜王戦七番勝負を見て、感慨もひとしおだろう。
最後は湯川博士氏の音頭で、三三七拍子で幕。来年もこの会は開催されるだろうが、今年よりはすっきりした気持ちで臨みたいものである。