一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第36回将棋ペンクラブ大賞贈呈式に行く(後編)

2024-11-13 20:03:56 | 将棋ペンクラブ
ここまでで約45分。開催時間は2時間だから、あまり時間は残されていない。いつも思うのだが、せめて開催を2時間半にしてもらえまいか。
ここのテーブルには、阿部氏、山本氏、中山氏と、社団戦のメンバーが集まっている。室内中央には洋食が出ているが、茂山氏はそこから適当にみつくろって持ってきた。みんなで突っついてくれということだ。茂山氏は気づかいの人である。
阿部氏あたりは、もうペンクラブの幹事になっちゃえばいいと思う。
そういう私は、幹事の経験があると思われているが、ない。あれは2009年春、湯川博士幹事に誘われて、会報の発送作業を手伝った。そのとき湯川氏に「大沢君は、幹事見習いな」と言われたが、そのあと音沙汰がなく、いまに至る。きっと、幹事は務まらないと判断されたのだろう。
ちなみにそのと、M幹事からブログを希望され、私は2009年4月に開設することになる。それが2024年のいままで続いているとは、なんという運命か。
中山氏は酒が強そうだ。将棋道場へは三軒茶屋に行くそうで、五~六段で指しているそうだ。これで社団戦で、7部で出ちゃいけないわな、と思う。
会場は、「内輪」が多い。すなわち一般将棋ファンの参加が少なく、女性はほぼ、壊滅状態だ。
若い男性がひとりで食事をしているが、私が声を掛けるのもなあ……。声を掛ける、という意味では、金子タカシ氏、松本博文氏らにもお祝いの言葉を掛けるべきなのだが、ふたりとは目礼しか交わしたことがないという、不思議な関係である。
あとは若島正氏にも挨拶をしたいのだが、怪しいおっさんに近づかれても迷惑だろうし、いろいろ考えすぎて、私はここのテーブルを離れることはできない。
本日指導対局の、中井広恵女流六段が壇上に上がった。
「受賞の皆様のお顔を拝見すると、昔から存じ上げる方が多く、うれしいです。
現代は、将棋の指し手だけをいえば、AIが正解手を示してくれます。だけど私たちが好手、悪手を指した理由、これが大事で、それを観戦記で示していただければありがたいです。
最近は昔の女流棋界のことばかり聞かれるのですが、私の将棋のことを聞かれるよう、頑張りたいと思います」
そのあと指導対局となる。3面指しだが、時間的には先着3名だ。と、木村晋介会長がそそくさと対局場に向かった。木村会長79歳、この熱意は素晴らしい。
その隣にはバトルロイヤル風間氏が似顔絵担当として鎮座している。だが、みんな一度は描いてもらっているので、お願いはしない。バトル氏は手持ち無沙汰なふうだ。
茂山氏に聞かれ、私がファンである女流棋士を述べる。
「いまは西山さん、磯谷(佑維)さん、松尾さん……」
「松尾ちゃうやろ!」
「おぉしまった、上川さんだった。私、前も上川さんに松尾さんって言っちゃて、『ワタシ、マツオじゃないですけど』って」
というバカバカしい会話をしていると、壇上に松本博文氏があがった。
「弦巻さんは尊敬すべき大先輩です。弦巻さんは、こんな素晴らしい将棋の世界を記録しておかないのは怠慢だという使命感で、将棋の世界を撮影してきました。そんな弦巻先生には、いろいろアドバイスを受けました。たまに褒めてもらうとうれしかったです」
これに呼応して、弦巻勝さんが壇上に立つ。弦巻氏は米長邦雄永世棋聖と飲んだことがあり、そのたびに松本氏の話が出たそうだ。
それに呼応して、また松本氏が壇上に戻る。
「桐谷広人先生のお宅にインタビューに行ったときは、若い女性のカメラマンを同行したんで、大変よろこばれました。
それで桐谷先生が、米長邦雄に逆らった人間は、みんな成功しているんだ、と。私しかり、大●善●しかり。しかるに君はなんだ。まだ頑張りが足りない、と、発破を掛けられました。
いま米長さんがいたら、『君、稼ぐねえ』と言うんじゃないでしょうか。米長さん、ありがとうございました」
私はちょっと、指導対局コーナーに行ってみる。3局とも下手が劣勢だ。中井女流六段もそこまで厳しくしないはずだが、下手が正着を指さないことにはどうしようもない。
その傍らで、直立で局面を眺めている精悍な男性がいる。「将棋世界」の連載「師弟」で有名な野澤亘伸カメラマンだ。まったく、あっちを見てもこっちを見ても有名人だらけだ。
茂山氏はいろいろ知っていて、西山朋佳女流三冠のお姉さんは、囲碁のプロ棋士だそうである。
あとは、女流棋士の年齢の話になる。上川香織女流二段の年齢とかが話題に上り、話の方向性が定まらない。
最後はお楽しみ、抽選会である。賞品はいつものように、色紙、扇子、棋書の類だ。入場の際にもらったプログラム表に、ナンバリングがしてある。それが抽選ナンバーだ。
が、今回はとくに抽選はなく、Kan氏の独断で、当選ナンバーを決める。今回は下1桁が当然ナンバーだ。私は1桁で「4」だが、なかなか呼ばれない。
そのうち呼ばれ、「14」のMISAKOさんとともに、陳列場に向かう。私は森内俊之九段「一陽来復s」の色紙をいただいた。ちなみにMISAKOさんは、中井女流六段の「磊磊落落」の扇子をゲットしたようだ。
木村会長が戻ってきた。指導対局は残念な結果だったようだ。プロに勝つのは大変だ。
実はここでも個性が現れていて、ただの将棋ファンは、色紙や扇子をもらう。強豪は棋書をもらう。名より実を取るわけだ。
ほぼ全員に渡ったが、それでもハケない。2週目のピックアップになり、私は堀彩乃女流初段の「万里一空」をいただいた。
これで将棋ペンクラブ大賞贈呈式も締めである。最後は、最終選考委員の森田正光氏が挨拶。
「来年も選考委員をゼヒやらせてください!」
森田氏はデビュー当時の藤井聡太四段が注目を集めるなか、彼を負かした佐々木勇気四段に興味を持ったという。いまの竜王戦七番勝負を見て、感慨もひとしおだろう。
最後は湯川博士氏の音頭で、三三七拍子で幕。来年もこの会は開催されるだろうが、今年よりはすっきりした気持ちで臨みたいものである。
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第36回将棋ペンクラブ大賞贈呈式に行く(中編)

2024-11-12 20:35:22 | 将棋ペンクラブ
今年の将棋ペンクラブ大賞は、

【観戦記部門】
大賞:若島正 優秀賞:後藤元気
【文芸部門】
大賞:弦巻勝 優秀賞:松本博文
【技術部門】
大賞:藤井猛 優秀賞:金子タカシ
【特別賞】
熊澤良尊

の各氏である。大賞の常連が並び、内輪の会のようだ。しかし選考は当然ながら、公平に行われている。
なお藤井九段はこの日、東京・渋谷で行われている第37期竜王戦第1局の大盤解説およびイベント出演のため、こちらは欠席となっていた。相手が「竜王戦」では、こちらに勝ち目はない。
「この前の詰みは見えませんでした」
と、幹事のM氏が話し掛けてきた。私はすぐにピンときた。先日アップした当ブログ記事の、社団戦の打ち上げでの「湯川博士―Aku戦」のことをいっている。Akuさんが湯川玉に勝負手で迫ったのだが、実は自玉に詰みがあった、というやつだ。「だけどAkuさんの▲7一金もすごい手でしたね」
近くにAkuさんがいたので、M氏はそちらのフォローも忘れなかった。
茂山氏が来た。わざわざ大阪からの来京で、お疲れ様である。
ミス荒川放水路のMISAKOさんも来た。
「来週10月12日は荒川放水路が通水100周年になるんですけど、知ってます?」
と、とっておきの情報を伝えた。
いまMISAKOさんは落語を趣味としているが、今後も両国亭で出る意思はあるようだ。
湯川氏も来た。やはり先日の落語会の話になる。
「大沢さんこの前、二次会来なかったじゃない」
「はあ、知り合いがいなかったもので……」
「私がいたじゃない」
「……」
それはそうなんだが、ほかに誰か知己が欲しかったのだ。ま、湯川氏との将棋談義はまたの機会ということで。
18時になり、開演。司会進行は我らがKan氏である。いま将棋ペンクラブは、Kan氏抜きには活動できない。
まずは、最終選考委員・西上心太氏の総評。
「最近はAIが全盛で、私たち素人でもリアルタイムで局面の形勢が分かる。だけどそれで分かった気になっていいのかな?という気がします。その対極にあるのが、日数を置いて書かれる観戦記です」
そして、各受賞者への講評となった。
「若島さんの作品は、(新聞)観戦記は翌日も読まれるものですが、後を引く面白さに仕上がっていました。
後藤さんの作品は、昔のエピソードを盛り込んで、読み応えのある作品になっていました。
弦巻さんの作品は、この世界で何十年と生きてきた実績が光っていました。
松本さんの作品は、一般誌連載だったので、そういう方が読んでも面白い内容になっていました。
藤井さんの作品は、魂の記録といいますか、AIのない時代に『藤井システム』を創ったのはすごかったです。
金子さんの作品は、タイトル通りロジカルに分類して、将棋の上達にふさわしい本だと思います。
熊澤さんの作品は、『近代将棋』などの表紙を飾った作品ですが、独学で一流の駒師になったのは奇跡です。
以上、苦しみながらも楽しかった選考でした。受賞者の皆様、おめでとうございます」
続いて、木村晋介会長による賞状授与である。この、木村会長のミニ選評も味わい深いのだが、会長は選考委員から外れたため、コメントはなかった。
続いて受賞者のスピーチである。これは会報にも掲載されているが、当然内容は異なる。
まずは若島氏。「いつもは詰将棋作家ですが、きょうは観戦記者ということで。観戦記者は、生で将棋が観戦できる面白さにあります。おカネを払ってでも見たい。ただし、原稿料がいただければ、それはそれでありがたい。今後も見る人の代表として、観戦記を書いていきたい」
続いて後藤氏。「自分の実力を過不足なく出せたかなと思います。若島先生の文章には、若さがあると思いました。それを見習って、勢いのある観戦記を書いていきたいと思います」
続いて弦巻氏。「将棋ペンクラブのおかげで、いい思い出ができました」
続いて松本氏。「たくさんのことを聞いて、その中から何を書くか、というところを工夫しました。プライベートなことまで聞いて、ギリギリのところまでを書きました。だけどちょっと突っ込みを欠いたところもありまして、インタビューを終えたあとに結婚を発表された棋士もいました……」
続いて、藤井九段の代理で出席したマイナビ出版編集者・島田氏。「藤井先生の細部へのこだわりがすごくて、文字を漢字にするか、ひらがなにするかなど、このくらいじゃないと藤井システムは創れないんだな、と思いました。とにかく文章がすごくて、技術部門と文芸部門の両方が対象でもいいんじゃないかと思いました」
続いて金子氏。「必至問題というのは、ある意味詰将棋よりも難しくて、詰将棋は答えを見れば分かりますが。必至問題は答えを見ても、なんでこれが正解なの?と思うところがあります。そこでこの本では、そこを分かりやすく説きました」
続いて熊澤氏からのメッセージ。代読は湯川氏が行った。「今回の本は2冊目ですが、およそ半世紀、私が駒にリスペクトして生きてきた痕跡であり、駒に興味のある方には、何かの参考になればとうれしく思います。昨今は本離れが進んでいますが、それに抗う将棋ペンクラブの活躍は重く、ますますの発展を祈ります」
熊澤氏の最後の一文が、私たち将棋ペンクラブ会員の立場を端的に物語っている。
さてこれで、いよいよ乾杯である。私たちはめいめいビールを注ぐ。この行為が私はあまり得意でないのだが、まあいい。
音頭はおなじみ、所司和晴七段である。所司七段もまた講評があるが、そこは乾杯なので、大賞受賞者のみのそれとなった。賢明な判断である。
「若島さんの作品は、将棋ではAIの最善手をもとに研究しますが、若島さんの得意なチェスの世界では、5~6番目の手を研究するそうで、なるほどなと思いました。
文芸部門は、今回は小説がなく、残念でした。弦巻さんの作品は、昭和の時代が懐かしく、楽しく読ませていただきました。ぜひ続編をお願いいたします。
藤井さんの作品は、これだけ分厚い本は、力作だと感じました。藤井システムといえば居玉が有名ですが、講座では玉を囲うなど配慮がされております。一生モノとして棋力向上の助けになると思いますし、文芸部門としても優秀と感じました」
ここでようやっと乾杯となった。私は、牛丼は食べたものの水は飲まなかったので、ビールの最初の一口は美味かった。
(つづく)
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第36回将棋ペンクラブ大賞贈呈式に行く(前編)

2024-11-11 00:21:18 | 将棋ペンクラブ
10月5日(土)は、第36回将棋ペンクラブ大賞贈呈式が行われた。場所は神保町の「出版クラブホール」。昨年は朝日新聞社の近くだったが、いろいろあって、場所が変わった。
また昨年は金曜日開催だったが、今年は土曜日。一般の人はそのほうが好都合だろうが、私はそうでもないのがつらい。まあ、何とか都合をつけることができた。
出席するにあたり、幹事のAkuさんに「右四間飛車」の書籍をプレゼントしようと考えた。以前の社団戦で彼女が、右四間飛車の勉強方法が分からない、と嘆いていたからだ。
私の求める本は決まっていて、藤森哲也五段の「藤森流なんでも右四間飛車」(マイナビ)である。相手が居飛車でも振り飛車でも右四間飛車、というコンセプトで、Akuさんにピッタリだ。
問題は、Akuさんがこの本をすでに持っているかもしれないということだ。Akuさんが対振り飛車戦で▲5九金、▲6八銀、▲7八金、▲7九玉の構えで指しているのを見たことがあるが、あれは本からの勉強でないと指せない。だけど、対振り飛車戦だったら▲7八玉型でなければならない。本を読んでいたら、そこはさすがに理解するのではないだろうか。
迷っていても仕方ないので、藤森五段の本をネットで注文しようとした。
ところがそれは送料がかかるうえ、到着までに日数がかかり、当日までに間に合わない。よって、書店で直接買うしかなくなってしまった。
行くのは東京駅丸の内口にある丸善である。ここは将棋の本が豊富に取り揃えてあり、たいていの本が手に入る。ここでダメなら駅反対側の八重洲ブックセンター、そこでダメなら神保町界隈に行こうと思った。
だいぶ早めに家を出て、丸善に向かう。将棋コーナーに着いて、本探しだ。ズラッと並ぶ棋書の中に、中川大輔八段「すぐ勝てる!右四間飛車」(マイナビ)を見つけた。さらに、大平武洋六段「これだけで勝てる右四間飛車のコツ」もあった。タイトル的には後者のほうに食指が動くが、私が求めるのは藤森五段の本だ。
そしてそれをやっと見つけた。その他にも右四間飛車の本があった。右四間飛車はけっこう人気があるようだ。
以上四択だが、よく考えたら複数を買ってもいいのだ。それで、藤森五段のと中川八段のを購入した。レジでは袋代が3円かかると言われたが、仕方ない。
まだ時間があるので、神田から歩いていく。きょうはあいにくの雨だが、私は雨男なので、外出時は覚悟している。途中、小諸そばがあったから入ろうとしたが、土曜日だから早仕舞いになっていた。
そのまま神保町に着いてしまった。開場は17:30、開演は18:00だ。まだ時間があるので、どこか喫茶店に入りたいが、これからコーヒーを飲むかもしれないのに、そんな無駄なことをしていいのか。
というか、腹も減ってきてしまった。だけどこれから何か胃袋に入れるのに、食べていいのか。だけどこの雨の中、もう時間も潰せないので、そのまま吉野家に入った。
並をありがたく食し、出版クラブに向かう。だがまだ時間がある。あまり早く入ると、「大沢、参加する気満々だな」と思われるので、周辺をぶらぶらする。やっていることが怪しすぎる。
開場時間になったので、入る。すると、受付を阿部氏、山本氏、中山氏が行っていた。Kan氏の手伝いに来て、そのまま入ってしまったものか。
「おカネ払いますか?」と阿部氏。むろんそうで、残念ながら、私は将棋ペンクラブの関係者ではない。
会場に入る。ここは2年前にも将棋ペンクラブ大賞贈呈式を、トークショーの形で行った。当時は会食のない地味なものだったが、コロナ禍を経て、よやく平常運転に戻ったわけだ。
Akuさんがいたので、さっそく棋書を渡す。
「これ、右四間飛車の本、プレゼント。これを全部記憶して……」
自分としてはしてやったり、だったのだが、Akuさんは「これ……」と浮かない顔だ。「持ってる」。
「あ、持ってんの? 2冊とも?」
「うん、藤森さんのも、中川さんのも」
あちゃー、恐れていたことが起こってしまった。だけど、本当にそれらの本を読んでいたら、あんな指し方はしないはずだ。それを質すと、
「中身が難しいから、コラムだけ読んだのよ。中川さんはあんな感じだし、藤森さんは穴熊に潜れって言うからら。ワタシ穴熊指さないし」
私はあんぐりである。私は中身を読んでないが、穴熊に潜れっていうのは、そういう作戦もあるってことだろう。
「じゃあ大平さんのは持ってる?」
「それは持ってない」
「……」
なんてことだ、私はAkuさんが持っている2冊を買ってしまったのか。
「いいよ買うよ、その本」
冗談ではない。ここで本を買い取ってもらったら、男としてのメンツが丸つぶれである。
まあいい、これは私が読んで勉強すればいいことである。ただAkuさん、棋書を買って読まないんじゃ、上達は望めない。
まあ、それもいいだろう。
関係者と参加者が続々と集まってきた。久しぶりに見るの人がいる。
「お久しぶりです」
「あ? ああ……」
「(ブロガーの)ひげめがねです」
「おおう、最近はブログの更新してんの?」
「いや最近は……やめました」
「……」
賢明である。1円にもならないブログを15年半も続けている私がバカなのだ。
湯川博士氏が来た。きょうは恵子さんは来ないようだ。
中井広恵女流六段も見えた。きょうは指導対局の役回りである。
その他、受賞者が続々と入場した。しかしその中に、ひとりだけ欠席者がいるのを私は知っていた。
(つづく)
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「将棋ペン倶楽部 第82号 2024年秋号」

2024-09-24 21:26:17 | 将棋ペンクラブ
「将棋ペン倶楽部 第82号 2024年秋号」が送られてきた。今号は「第36回将棋ペンクラブ大賞号」である。最終選考委員は前回と同じ、川北亮司氏(作家)、西上心太氏(文芸評論家)、所司和晴七段、森田正光氏(気象予報士)の4名。喧々諤々の選考経過がそのまま掲載されているが、この透明性はなかなか貴重である。
大賞と優秀賞の差は紙一重だとあらためて思う。
「受賞のことば」もよい。受賞者は最高に株価が上がっているわけで、そのよろこびが文面にあふれている。それを共有できるのは幸福なことである。今回は、技術部門大賞・藤井猛九段のそれが一風変わっていて秀逸。藤井九段の技術大賞は、文芸大賞でもよい、という選考委員の言葉があったが、確かに、と思わせる。
観戦記部門優秀賞・後藤元気氏のそれも面白い。というか、ためになる。観戦記、というか文章家を志す人は、必読の文章である。
「推薦作ひとこと集」も面白い。今号は12ページを割いているが、本文を読みたくなるひとことばかりだ。
後半はレポート・エッセイなど。美馬和夫氏の「将棋狂の詩」は、次女の将棋大会奮闘編の最終回。高校3年の最後の大会は衝撃の展開になる。結びも急展開で、年月を経たからこそ醸しだされる、ノスタルジックな余韻が残る。
新規のS氏、久々の投稿のW氏は、昔の観戦記に言及している。なかなかの労作である。
茂山氏は久々の投稿。「女流棋士鑑」と題し、女流棋界の歴史を記している。茂山氏は未完の連載があった気がするが、あれは完結したのだったか。
今回の記事は続編があるようで、次号が楽しみである。
バトルロイヤル風間氏は「オレたち将棋んゾンビ」の連載第34回。4コママンガの脇に、室岡克彦八段の「わずか5日間の最年長棋士でした」のイラストがある。これが気になったので調べてみたら、青野照市九段が今年の6月13日に現役引退。室岡八段は6月18日、竜王戦6組の昇級決定戦で敗れ、引退。それで、「5日間の最年長棋士」というわけだった。
ちなみに現在の現役最年長棋士は、64歳の福崎文吾九段である。

そして、第36回将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、以下の要領で行われる。

日時:10月5日(土)18:00~20:00(開場17:30)
場所:出版クラブホール
 東京都神田神保町1-32
 神保町駅(地下鉄半蔵門線、都営浅草線)A5出口徒歩2分
会費:9,000円
※中井広恵女流六段の指導対局、バトル氏の似顔絵コーナーあり。

会費が1,000円上がったが、昨今の物価高の影響下では仕方ない。
現在の私は、土日の休みが取りにくいのだが、現在は何とか行けそうである。行ってどうなるものでもないが、贈呈式は、年に一度の同窓会の趣もあるので、行ってみる。
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第36回将棋ペンクラブ大賞

2024-09-09 23:02:50 | 将棋ペンクラブ
きのうの当ブログのアクセスは、1656UU、3660PVだった。内容は大したことないのにこれだけアクセスが増えたのは、「日本将棋連盟100年」が各サイトでにぎわっていたからだろう。
期待して当ブログを読んだ方には、申し訳なかった。

   ◇

いまさらだが、第36回将棋ペンクラブ大賞をお知らせする。

【観戦記部門】
・大賞
若島正 第71期王座戦第3局 ▲藤井聡太七冠VS△永瀬拓矢九段(日本経済新聞)
・優秀賞
後藤元気 第81期名人戦第1局 ▲渡辺明名人VS△藤井聡太竜王(朝日新聞)

【文芸部門】
・大賞
弦巻勝 『将棋カメラマン:大山康晴から藤井聡太まで「名棋士の素顔」』(小学館)
・優秀賞
松本博文 『棋承転結 24の物語 棋士たちのいま』(朝日新聞出版)

【技術部門】
・大賞
藤井猛 『藤井猛全局集 竜王三連覇とA級の激闘』(マイナビ出版)
・優秀賞
金子タカシ 『ロジカルな必死200』(浅川書房)

【特別賞】
熊澤良尊  『駒と歩む』(名駒大鑑刊行会)
半世紀に渡る駒作りと駒の研究、『駒と歩む』の出版等に対して


観戦記部門の大賞は若島正氏。若島氏は詰将棋の大家だが、観戦記者としてもむかしから良作を発表している。
大賞局は、永瀬王座の研究量の深さ、藤井七冠の終盤力の凄さがよく表現されていた。
なお若島氏は、本戦トーナメントの▲村田顕弘六段VS△藤井七冠戦でも観戦記を担当していたが、藤井七冠渾身の勝負手「△6四銀」の「感激度合い」がちょっと薄かった。やはり、大賞局のほうが勝る。
優秀賞は後藤元気氏。後藤氏は古今東西の観戦記に精通しており、「将棋観戦記コレクション」の著書もある。
本局は、開幕局にふさわしい書き出し。歴代の名棋士も多数登場し、筆者の知識の深さを思わせる。ただそれゆえ、対局者の存在感がほんのわずか薄くなったのが残念だった。
また、序盤をじっくり描いた分、中盤が駆け足になったのが惜しまれた。
今回も入賞は2本ともタイトル戦になったが、予選の将棋でもキラリと光る観戦記もあるはずだ。選考委員は、フラットな視線で選考を進めてもらいたい。
文芸部門の大賞は弦巻勝氏。将棋カメラマン50年の弦巻氏が、50年分のエピソードを1冊にまとめている。これが面白くないわけがない。
優秀賞は松本博文氏。松本氏はLPSAの対局中継のレギュラー執筆者でもあり、LPSA女流棋士との親交が深い。本書にもLPSA女流棋士が多く登場するのがアレだが、だからこそ引き出せた話も多く、面白く読めた。
技術部門はどちらも未読だが、藤井猛九段、金子タカシ氏とも、出す棋書はどれも折り紙付きである。
藤井九段のそれは口述だかライターがいるのか分からないが、大盤解説での軽快な口調をそのまま文章にしたとすれば、こんなに面白い技術書はないと思う。
金子氏の本は、問題と解答をすべて暗記してしまうのがいいと思う。対局で似た局面が現れたとき、その局面に見覚えがあるのとないのとでは、エライ違いである。
熊澤良尊氏の本は、美術書というべき。棋士なら必携すべきである。だけど、買わないんだろうなあ。

恒例の贈呈式は、10月5日(土)、神保町の出版クラブホールで行われる。参加費はちょっと上がって9,000円。カネを払って、他人の受賞を祝う。まことにバカバカしいが、受賞者には、時の勢いがある。参加して、良運を頒けてもらおうか。
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