一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

女流棋士スーパーサロン金曜日・渡辺弥生女流2級①+植山悦行七段との会話

2010-10-09 19:01:58 | 女流棋士スーパーサロン
きのう8日(金)は、初めてLPSA芝浦サロンに足を運んだ。その感想を何と言えばいいのか。
まあその前に、女流棋士スーパーサロンである。きのうも私はスーパーサロンに赴いた。予約したのは6日(水)。電話を切ったあと、行く日にちを言ってなかったような気がして、再度かけ直した。この時、8日の担当が渡辺弥生(みお)女流2級であることを知った。藤田綾女流初段に教えていただきたかったので拍子抜けしたが、渡辺女流2級も藤田女流初段に劣らぬキャラである。
渡辺女流2級はデビュー時、東大卒の女流棋士としてニュースになったが、東大に2回入学していることは意外に知られていない。
渡辺女流2級は、ある学部を卒業したあと、また違う学部の試験を受け、再び合格したのだ(ただし2度目は中退)。大学というものは1回入学して卒業すれば十分だと思うが、再びセンター試験を受けるとは、どういう心境なのだろう。
また大学生活を4年間も続けていればふつうはバカになるものだが(思い込みで失礼)、1回目入学時の学力を維持したまま合格したのがスゴイ。もうこのエピソードだけで、渡辺女流2級が並の女流棋士でないことが分かる。
きのうは10時の予約を取ったので、それに合わせて行く。対局場所は「東京・将棋会館」2階将棋道場の一隅だが、あまり早く行っても道場が開いてないので、定刻ギリギリに行くのがベストだ。
10時ちょうどに将棋会館に着くと、玄関前の喫煙コーナーで、植山悦行七段が紫煙をくゆらせていた。1日にタバコが大幅値上げされたが、植山七段には関係なかったようだ。
「あっ、植山先生、どーも」
「うん」
「きょうは対局ですか?」
もう10時を過ぎているが、一応問うてみる。
「きょうは解説」
「ああそうですか。すみません、私対局があるので失礼します」
なんだか妙な会話をして、2階へ行く。
受付を待っていると、再び植山七段がいらした。
「あ、先生。きょうはどの解説なんですか」
「銀河戦。10時半待ち合わせなんだけどさあ」
待ち合わせの30分も前に将棋会館にスタンバイするとは、感心してしまう。「きょう(の対局)は○○○○君と○○○○君。それに勝った方と○○○○(の解説をやる)」
「ああ、そうですか。ところで先生は…あれ? 予選で負けちゃたんでしたか」
「そうだよ。清水市代に負けちゃったやつ」
「あ? ああ、あれまだ(その期の将棋を)やってたんでしたっけ」
人には触れられたくない過去がある。植山七段は銀河戦で清水女流王将に負けたことが相当なショックだったらしい。植山七段の言う「対清水戦の敗戦」は第18期銀河戦。現在は第19期の本戦トーナメントがすでに開幕しており、植山七段は予選で飯島栄治六段に屈していた。つまり植山七段は、直近の同棋戦の敗戦と、1期前の敗戦がごっちゃになっていたのだ。
何しろ植山七段は、甲斐智美女王・女流王位、矢内理絵子女流四段にも公式戦で敗れた過去がある。植山七段が旧金曜サロン会員の有段者に大駒落ちで指しても「六分程度の力」でほとんど負けなかったのに、なぜか女流棋士には勝てないのだ。これは平手で指すからいけない。植山七段が角を落とせば、植山七段が勝つだろう。
イヤなことを思い出させてしまった…と私は植山七段に心の中でお詫びをしつつ、渡辺女流2級の待つ対局場へ向かったのだった。
10時からの指導対局は満員の4人。渡辺女流2級は落ち着いた雰囲気だがそれもそのはず、今年○歳になったイイ女である。もっとも彼女がLPSAに移籍すれば、若手の部類に入る。
指導対局開始。☗2六歩☖3四歩☗7六歩に、渡辺女流2級☖5四歩。これでゴキゲン中飛車が確定。相変わらずプロ棋界では猛威をふるっている。後手番での主力戦法になった。
将棋は☗5五歩☖同飛☗同銀☖同角、という例の定跡に進む。ここで下手の応手は☗2七飛打、☗1八飛打、☗1八飛などがある。NHK杯では森内俊之九段が☗1八飛と寄って、鈴木大介八段に快勝した。その鮮やかな勝利を観ているから私もそう指したかったのだが、いかにもNHK杯を観ました、と白状しているような気がして、私は☗2七飛打を選んだ。
しかし本譜は☖5六歩の垂らしから☖2八角成~☗2四同飛☖2五歩~☖5七歩成~☖2八飛と先着され、不利になったと思った。
ここで中盤の一局面を載せる。

☗6八香と埋めたところ。ここで上手の指した☖7六銀が大悪手。よろこんで☗同馬と取り、☖同桂☗7四桂☖9二王☗3二竜で、私の勝ちだった。
ところがところがところが、本譜は☗8八馬とひるむ。以下☖5六歩☗5八金引☖5七銀☗同金☖同歩成☗同角☖1九竜☗4六角☖2九竜☗1三角成☖5一香☗5八歩☖2二金打☗同竜☖同銀☗4六馬☖4九飛(投了図)まで、72手で渡辺女流2級の勝ちとなった。

上の手順で、☗4六角が一手パスの疑問手。☖2九竜で手順に☖2五歩にヒモをつけさせて、損だった。最終2手目の☗4六馬が竜取りにならなかったのも、この罪である。
また☖5一香に☗5八歩も、のちに☖同香成☗同金☖6九銀(角)を狙われて損だった。このあたりは、完全に戦意を喪失していた。
感想戦では、
「ずうっと苦しいと思ってました。馬を引かれる手を軽視していて…」
と、渡辺女流2級が私を慮ってくれた。私も☗7六同馬に気づいていなかったから、ずーっと苦しいと思っていた。まあ終局時は私の銀損だったから、結果的には順当な負けであった。
渡辺女流2級はスーパーサロンのレギュラーではないから、再び教えていただく機会はないが、再戦できればうれしい。
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長い1日Ⅱ(前編)・女流棋士スーパーサロン金曜日・上田初美女流二段⑥

2010-10-02 12:37:19 | 女流棋士スーパーサロン
9月30日の女流王位戦予選、山田久美女流三段対船戸陽子女流二段の美女対決は、船戸女流二段の勝ち。これで予選決勝は船戸女流二段-早水千紗女流二段の対戦となった。そしてこれは、大の早水ファンであるT氏と、船戸ファンの私との対戦でもある。この対局は絶対に勝つ!

きのう10月1日は女流棋士スーパーサロンに赴き、上田初美女流二段に教えを乞うた。
この予約を入れたのは9月29日(水)午後。その夜、インターネットを見たら、「笑っていいとも!」金曜レギュラーの久本雅美が番組を卒業、とのニュースがあった。何と17年半もレギュラーだったという。私はとくに久本雅美のファンではないが、最後の出演なら、記念に観ておきたいところ。しかし私は予約のキャンセルはしない主義なので、番組の録画予約をしておいた。
ところがその翌日の30日、仕事中にガムを噛んでいたら、左上の奥歯の部分が「ザリッ」といった。ここは金冠がかぶせてあるが、歯茎の状態が悪く、昨年数ヶ月かけて治療をしている。完治はしたと思うが、いまも痛みは残っている。そして今回のこの妙な音。金冠の隙間に詰めていたセメントがとれてしまったのもしれない。
再治療するなら早いほうがいい。しかし金曜日はスーパーサロンの予約を入れてしまった。
また、私は耳鳴り持ちなので2週間に一度耳鼻科に通っているが、そろそろクスリも切れてきた。ちょうど金曜日は都合がいいが、前述のようにスーパーサロンがある。
まだある。パソコンに入っているセキュリティソフトが一部不具合を起こしており、それをメーカーに質したいのだが、これも金曜日に行ってしまいたい。しかし金曜日はスーパーサロンがある。
まだまだある。私は最近、DVD-RAMで録った番組の中で、保存用にするものをDVD-Rにダビングし直しているのだが、これが頗る面倒くさく、こんなことも平日中にやってしまいたい。しかし金曜日はスーパーサロンがある。
そうやって考えていると、仕事がなければないで、金曜日1日でも、ずいぶんこなしたい雑用があるのだ。スーパーサロンを予約したのはやや早まった感もあるが、まあそこはそれ、1日のスーパーサロンを楽しみにした。
指導対局は午前10時半から。10時のコマも空いていたが、30分早く起きる体力がない。
所定の時間に入ると、先客が4人いた。席につくと、ほかの4人は熟考中で、上田女流二段と私はゆっくり駒を並べることができた。
上田女流二段は前日の女流王将戦挑戦者決定戦で、里見香奈女流名人・倉敷藤花に敗れて、連続挑戦はならなかった。もし挑戦を決めていたなら祝福のひとつでもかけるところだが、敗退してしまっては、「残念でした」とも言えない。
ヘタに上田女流初段を怒らせて?、本気で指されたらたまらない。とにかく下手は、文字どおり下手下手に出るのがよい。
上田女流二段との対戦成績は1勝4敗。初戦の終盤で私が、上田女流二段が「オオーッ!!」と叫ぶ鬼手を指して快勝して以後、4番棒に負けている。今回負けたら、藤田麻衣子女流1級、船戸陽子女流二段以来の5連敗になってしまう。本局は絶対に負けられないところであった。
☗2六歩☖3四歩☗7六歩☖4四歩☗4八銀☖4二飛。私の居飛車明示に上田女流二段は四間飛車。最近は居飛車への芸域も拡げている上田女流二段だが、やはり振り飛車が主戦法であろう。
私は☗5七銀左~☗4六歩と急戦を目指す。木村義徳九段の名著「弱いのが強いのに勝つ法」では、持久戦より急戦で決着をつけるべし、と書かれてあった気がする。指導時間制限(1時間半)もあるし、早期決着を目指すのがよい。
☗4五歩の仕掛けを警戒して、上田女流二段☖5四銀。同じ金曜日担当の藤田綾女流初段も、この手が好みだ。
ここで私が☗3八飛と寄った手が、やや疑問だった。すかさず☖4五歩と上手から戦いを挑まれ、☗3三角成☖同桂☗4五歩(☗8八角と打つべきだったか)☖同飛☗2八飛☖2五飛☗2六歩(屈辱の一手)☖4五飛☗2二角☖6四角☗3七桂☖4三飛☗2七飛(☖4七歩の防ぎ)☖3五歩で、いっぺんに不利になった。
☗3八飛では、☗3五歩☖同歩と突き捨ててから☗3八飛が、リズムがよかった。本譜は一手先に開戦され、防戦一方である。以下は順当に負かされた。78手。
感想戦では上田女流二段に
「☗4六歩と突く前に☗6八金上として、こちらにもう一手指させたほうがよかったのではないでしょうか」
と言われた。玉の上部を厚くし、上手に☖6四歩と指させれば、のちの☖6四角がないだけでもトクだ。しかし私も
「☗6八金と上がると、のちの☖8四桂が気になりまして…。あと何かのときにバッサリ切られる手も嫌味で…」
と譲らない。
「切る……?」
「☖2四角がいたときとか」
「ああ…」
私の主張はこれだけ。当然ながら、上田女流二段は強かった。今後も上田女流二段に指導を乞えば、いずれ香落ちを所望することになってしまう。平手でもせめて2手違いくらいにはなるよう、私ももっと勉強しなければならぬ。
(つづく)
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長い1日①・女流棋士スーパーサロン金曜日・藤田綾女流初段③

2010-09-18 14:22:29 | 女流棋士スーパーサロン
17日(金)は朝からスケジュールが詰まっていた。といっても仕事関連は一切なく、すべて将棋がらみである。以下にその予定を書いてみる。
まず午前10時から東京・将棋会館で、女流棋士スーパーサロンの藤田綾女流初段に指導対局を受ける。そのあとは会館道場で午後1時すぎまで対局。
JR千駄ヶ谷駅構内の立ち食いそば屋でかけそばを食し、駒込・金曜サロンへ向かう。いつもはやや遅れて入るのだが、今回は2時に入って、この日担当の藤森奈津子女流四段と船戸陽子女流二段に、早々に指導対局を受けたい。
6時ごろに退席し、取って返して四ツ谷へ向かい、7時開演の将棋ペンクラブ贈呈式に参加する。9時からの二次会も参加予定だ。なかなかハードである。

17日(金)は、午前2時すぎまでブログを書き、3時すぎに就寝。朝は8時30分ごろに起床し、スーツに着替えて将棋会館に向かった。
10時ちょっと前に将棋会館に入る。1階の売店カウンターに、16日発売の「NHK将棋講座」が置かれている。最新号の表紙は、10月からアシスタントになる山口恵梨子女流初段ではなく、棋譜読み上げの藤田女流初段である。
私はこれからその藤田女流初段に指導対局を受けるのだ。まさにタイムリーである。
とりあえず購入して2階へ向かう。前週は大山康晴賞授賞式があり、指導対局場が変更された。2階の道場で指導対局を受けるのは久しぶりになる。
受付を済ますと、奥の対局スペースに藤田女流初段がニコニコしながらちょこんと座っていた。ふんんわりした白い服を着ている。かわいい。この、思わず「かわいい」と思わせる女流棋士がLPSAにはいないのだ。
まだほかに対局者がいなかったので、私はカバンから「NHK将棋講座」を取り出し、図々しくもサインを所望した。念のためマジックは用意していた。藤田女流初段も快諾してくれ、「……も書きますか?」と聞かれたが、よく聞き取れなかった。藤田女流初段は
「悠然 女流初段 藤田 綾」
と書いてくれた。ありがたい。ちなみに表紙の撮影には、小1時間かかったそうである。雑誌づくりもたいへんである。
5月の将棋ペンクラブ関東交流会で安食総子女流初段にも「将棋講座」の表紙にサインをいただいたが、またお宝が増えた。
ここから、本来の目的の指導対局である。駒袋から駒を出すが、まだ誰も来ていないので、お互い大橋流で、一手一手時間をかけて並べる。藤田女流初段が王を置いたら私は玉、藤田女流初段が左金を置いたら私も左金、藤田女流初段右金、私右金…と、藤田女流初段が私の着手と呼吸を合わせてくれているかのようだ。モノスゴイ緊張だが、知己ではないので、さすがにもう軽口を言う余裕はない。
対局開始。なにしろテレビのレギュラーを持っている女流棋士だ。有名人と指していると思うと、さらにさらに緊張してしまう。
戦型は藤田女流初段の立石流四間飛車。藤田女流初段は振り飛車党だが、立石流は7月のマイナビ女子オープン一斉予選の渡部愛アマ戦でも起用しており、最近の「マイブーム」なのかもしれない。
やがて2人目の対局者が訪れる。藤田女流がキャスター付きの椅子をスーッと移動させると、スカートが見えた。ピンク系だ。ああピンク、素晴らしい。さすがに自然な着こなしである。コーディネートに無理がない。
藤田スマイルを拝見し、将棋誌の表紙にサインをいただき、ピンクのスカートも拝めた。指導対局の将棋はまだまだこれからだが、私は十分満足した。
とはいえ、将棋も頑張らなければならない。局面――。私は相手の誘いに乗らず、飛車先の歩は☗2六で止め、☗6六歩と角交換も拒否した。
藤田女流初段の棋風は軽快だと思う。藤田女流初段の飛車が横に動いたので、私はそれを目標に動く。私が☗4四歩と飛車の横利きを止め、藤田女流初段が☖8二王と寄った局面の符号を以下に記す。

上手・藤田女流初段:1一香、1四歩、2二角、2三歩、3二金、3三桂、4二銀、4五歩、5三歩、6一金、6三歩、7一銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、8四飛、9一香、9四歩 持駒:歩
下手・一公:1七歩、1九香、2六歩、2八飛、2九桂、3六歩、4四歩、4七金、5五銀、5六歩、6五歩、6七銀、6九金、7六歩、7八玉、7九角、8七歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:なし

ここから☗3五歩☖1三角☗3四歩☖7九角成☗同金☖7二銀☗3七桂☖4六歩☗同金☖5七角と進んだ。
☗3五歩は、指す前から感触がわるいと感じていた。☗3四歩~☗3三歩成と桂得を確定しても、☖3三同銀で次に☖4四銀の活用を見せられるとおもしろくないからだ。しかしほかに指し手が思い浮かばなかった。
本譜は遊び気味の☖2二角と☗7九角が交換になり、下手は大損をした。局後の検討では、藤田女流初段は☗3五歩で☗6四歩がイヤだったそうだ。かりに☖同歩なら☗6六銀上と出て、次の☗7五銀を狙いにする。
☖5七角にも☗6六角と合わされると思ったそうだが、私は☗6八金と軟弱な手を指し、☖3九角成とされては下手敗勢となった。
最後は☗3六飛(打)に☖3三歩と冷静にフタをされ、戦意喪失で投了した。
ついでだから投了図も記しておこう。

上手・藤田女流初段:1一香、1四歩、1九飛、2三歩、3二金、3三歩、4二銀、5三歩、5九角、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8四歩、9一香、9四歩 持駒:歩
下手・一公:1七歩、1八香、2五桂、2六歩、3六飛、4四歩、4五角、4六金、5五銀、5六歩、6五歩、6七銀、6八金、7六歩、7八玉、8七歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:桂、歩

☖3三歩に☗5八金は☖1八飛成があり、☗5九金と角を取れないのは不愉快なので、投了したというわけ。藤田女流初段も、この辺が投げ時ですね、というふうだったが、LPSAの女流棋士なら私の諦めのよさに、「エーッ!」と驚いたことだろう。
もっともいま冷静な目で見ると、変化の☖1八飛成には☗3八歩と凌ぎ、☖3四香☗同角☖同歩☗5九金なら、もう少し粘れたかもしれない。しかしまあ、私の敗勢は変わらないだろう。
とりあえず指導対局はオワリ。まだ10時50分である。しかし長い1日はここからだった。
(つづく)
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女流棋士スーパーサロン金曜日・上田初美女流二段⑤

2010-09-12 00:34:41 | 女流棋士スーパーサロン
昨年春から仕事が少なくなり、金曜日が休みになってから、女流棋士スーパーサロンにしばらく通った。オヤジが仕事をしているのに、若い自分が家でゴロゴロしているのは気がひけたのと、LPSA以外の美人女流棋士にも一局教えていただきたかったからである。その金曜日は上田初美女流二段と藤田綾女流初段が交代で務めており、マンネリ感もなく、好都合だった。
しかし…。冒頭で述べたとおり、最初は6週間連続で通ったが、そこでプッツリと止めてしまった。このころから私は毎日ブログを書き始め、金曜日の午前中が、執筆にうってつけの時間だったからである。前日(木曜日)の深夜に一心不乱に書くときもあり、それから金曜の朝に早起きして将棋会館に向かうのが辛くなった、ということもある。
日本将棋連盟の支部会員になると指導料(あとの将棋道場も含む)が500円割引になるので、昨年7月の上旬に支部個人会員になったが、スーパーサロンの割引は1回行使しただけだったと思う。結果的に、支部個人会員(将棋世界会員)会費のモトは取れなかった。
それから秋口にかけて仕事量も回復し、お陰さまでスーパーサロンに行く時間はなくなったのだが、いざそうなってみると、平日の朝から女流棋士に将棋を教わっていた環境が、とても贅沢だったことに気がついた。ワークシェアリングは二度とあってはいけないのだが、また仕事がヒマになり、金曜日が休みになったら、女流棋士会スーパーサロンに通ってみようと思った。
そんな折、また仕事が少なくなって、金曜日が休みになってしまった。私はやむを得ず、スーパーサロンに出向くことにした。それが今月の10日、上田初美女流二段の回である。
ラフな格好で将棋会館に着くと、掲示板に「大山康晴賞授賞式」と案内がある。スーパーサロンは地下1階、となっていた。前は会館道場がある2階で行われていたが、1年間通わないうちに、システムが変わったのだろうか。
受付をするときに聞いたら、「大山賞授賞式」が行われる関係で、道場は午後3時まで休み。それに伴い、スーパーサロンも、地下に追いやられてしまったというわけだった。
チッ、久々の将棋会館での対局だったのに、なんて間がわるいんだ。しかし泉下の大山先生に文句は言えない。
スーパーサロンは10時の回と10時半の回と最大7名だが、10時の客は私も含めふたりだけだった(そのあと、もうひとり来た)。もし上田女流二段と1対1の対局だったら、イヤな汗が出るところだった。中倉宏美女流二段や島井咲緒里女流初段とのサシでの指導対局は胸がときめくが、女流棋士会の女流棋士とのそれは、ちょっと様相が変わるのである。
上田女流二段との成績は1勝3敗だが、懲りずに平手で教えていただく。上田女流二段のゴキゲン中飛車。私は☗3七銀~☗4六銀の超急戦で臨んだが、☗4六銀をうっかり後回しにしたために、すかさず☖5六歩と突かれ、早くも構想が破綻した。
それでも私が不利になったわけではなく、なんとかがんばる。
では、こちらも十分だったのではないか、という局面を記してみよう。女流棋士会および上田女流二段には許可を取っていないが、かまうもんか。

上手・上田女流二段:1一香、1四歩、2一桂、2四歩、3三銀、3六歩、4二角、4五歩、5一飛、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8四歩、9一香、9四歩 持駒:銀、歩4
下手・一公:1六歩、1九香、2八飛、2九桂、4七金、4九金、5五歩、6五歩、6六銀、7八玉、7九角、8七歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:金、歩

4五の地点で金銀交換になった局面で、下手の手番。ここで私は☗4三金と打ったが、重かった。対局中は、次に☗3四歩があり、☖同銀は角がタダだから下手必勝、と考えていた。しかし☖3一角と引かれ、☗4三金がスカタン気味になり、アオくなった。そのあと☗3六金と歩を払ったが、これでは変調である。以下は上田女流二段に手早くまとめられ、94手までで負かされた。
私が感想戦で
「☗4三金では(すべてを含みに残して)☗5六金と上がる一手でした」
と言うと、
「それは☖3七歩成がありますけど」
と上田女流二段。しかし私も
「でもそれ(☖3七歩成☗同桂☖3六歩)は桂が手順に4五へ跳んで、こちらも指せませんか」
と譲らない。
「ううん…」
「じゃあ☗4三金を決めずに、単に☗3六金はどうだったでしょう」
「そうですね、本譜の進行なら、打たないほうがトクでしたね」
私が☗5六金説を譲らないので、けっきょく上田女流二段が折れた形となった。
このあと上田女流二段には、☗4六銀が遅かったので、☖5六歩が突けて上手が指しやすくなった、☖4三金に☗8八角は好手だった、との講評をいただけた。
女流棋士会の女流棋士に指導を受けていていつも思うのは、実に皆さん、最新定跡を勉強しているということだ。やはりアマチュアに指導をする以上、定跡最前線はアタマに入れていて然るべきだろう。
米長邦雄日本将棋連盟会長指揮の下、女流棋士は着実に棋力を向上させているようである。
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女流棋士スーパーサロン金曜日・上田初美女流二段④

2009-06-28 00:19:49 | 女流棋士スーパーサロン
26日(金)の女流棋士スーパーサロンは、前週に引き続き上田初美女流二段の担当だった。今回は前日の午後に予約をしたが、10時のコマが空いているというので、入れてもらう。今回でスーパーサロンの参加は6回目になるが、10時のコマはいつも空きがある。私の自宅から将棋会館までは45分で着くが、地方から向かう人は、30分でも遅いほうがいいから、10時30分からのコマが先に埋まってしまうのだろう。
毎週1回将棋会館へ向かう。なんだか自分が棋士になった気分だ。
きょうの上田女流二段の装いも夏らしく涼しげだ。しかし詳細を書くと某団体からの突き上げが厳しいので、ここでは省く。
道場内にあるテレビは、きょうは将棋盤が映っていない。
「きょうはトクタイ(特別対局室)で将棋はないのかなあ」
と上田女流二段が言う。このテレビカメラは、特別対局室に設置されているということか。
戦型は上田女流二段の四間飛車に、私の▲8八玉型左美濃。珍しく居飛車穴熊を志向したが、▲2五歩を決めてないのに△3三角と上がられたので、急戦で来られるのを警戒して、▲7八銀と締めた。
ほかの対局者のひとりは、楽しそうに会話をしながら指している。私にはできない芸当である。
局面は上田女流二段の中央からの動きをうまく逆用して、金桂交換になったところでは指しやすさを感じた。しかし上田女流二段の反撃も厳しく、以下の局面を迎えた。このブログではお馴染みの、駒の配置のみを記す。

上手(平手)上田初美女流二段:1三歩、2三歩、3四歩、3九角、5二飛、5五歩、6一金、7二銀、7三桂、7四金、8二王、8四歩、9一香、9五歩 持駒:銀、桂、歩2
下手 一公:1一馬、1六歩、1九香、2五歩、2八飛、3六歩、4五歩、6五歩、6六金、7六歩、7七桂、7八金、8六歩、8七銀、8八玉、9七歩、9九香 持駒:銀、桂、香、歩2

△6六歩▲同金に△3九角、までの局面。
ここは当初、▲6七銀としっかり固める予定だった。△2八角成なら▲7五歩と突いて、これは玉頭の厚みが大差で、下手勝ち。
しかし上田女流二段がほかの将棋を見ているときに考え直してみると、貴重な銀を自陣に埋めるのが惜しくなってきた。ここは▲7五歩と金取りに突いても上手は△2八角成と飛車を取るだろうから、それなら銀を使わないだけ得だと考えたのだ。
そこで本譜は単に▲7五歩と突いたのだが、あっさり△6六角成と金を取られて、アテが外れた。さすがにプロは甘くない。
せっかくなので、終局までの手順も書いてしまおう。
(△3九角以下の指し手)▲7五歩△6六角成▲7四歩△7六歩▲7三歩成△同銀▲6七金打△7七歩成▲同金直△6七馬▲同金△7五桂▲6六金△8七桂成▲同玉△5七銀 まで、102手で上田女流二段の勝ち。
手順中、△7七歩成を▲同金直と取ったのも疑問手。当然▲同金寄と取るべきだった。疑問手連発に呆れて、戦意を喪失。最後は△5七銀と金取りに打たれたところで投了した。
上田女流二段は、
「もう少し粘れませんか?」
と気を遣ってくれたけれど、これはもう大差である。しかし最初から最後まで手も足も出なかったわけではないのが、逆にもどかしい。己の中途半端な棋力が情けない。
対局時間は、30分あまりだっただろうか。これで上田女流二段とは、4戦して3連敗になってしまった。ここはさらっと読み流されると困るので、もう一度書く。4戦して3連敗である。ちなみにこの対戦成績に、時間切れの引き分けはない。4局とも、時間内に決着がついたものである。
ところできょうはLPSA金曜サロンで、W氏と金曜リーグの大一番がある。この日は第5回リーグ戦の最終週。成績には関係のない消化試合だが、この日をふたりの決戦日として、わざと対局を消化せずにいたのだ。
スーパーサロンのあとも引き続き連盟の道場で将棋を指し続け、1時45分ごろ、新たな一般客と手合がついたので、これが終局したら駒込に向かおうと思った。
と、道場後方に設置された簡易対局場に、熊倉紫野女流初段が現れた。高校と思しき制服を着ている、おさげ髪の女の子もいる。熊倉女流初段を講師にした、レディースセミナーだろうか。日本将棋連盟および女流棋士会では、いろいろな教室をやっているので、どれがどれだかまったく分からない。
しかしそのふたりは、将棋盤を挟んで座った。私の対局位置から熊倉女流初段のお顔が正面に見え、制服の女の子はこちらに背中を向けている格好だ。どうもセミナーにしてはヘンである。しかも先ほどまで将棋を指していた棋客数人が、2列に並んだ椅子に座り、その将棋が始まるのを待っている。…あれっ? これはLADIES HOLLY CUPのリーグ戦ではないか!?
やがて駒が並べられ、振り駒をすると、ふたりが席を入れ替わった。先後で座る位置が決まっているのだろうか。制服の女の子が、今度はこちらにお顔を見せる形になった。
…あああっ!? か、彼女は!! や、や、や、や、山口恵梨子ちゃんではないか!!
突然現れた女流棋士会屈指の美少女を目にして、私は心臓の鼓動が速くなるのを感じた。
(つづく)
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