第6図以下の指し手。▲2二歩△4二飛▲4六竜△4五歩▲同桂△4四金▲3三桂成△同歩▲4四銀△4五歩▲3五竜△3四歩▲同竜△2二飛▲2三歩△4二飛and△8四桂???(第7図)
上川香織女流二段は、「私が勝手に選ぶ女流棋士ランキング」の2位である。むかしはもっと低かったが、渡部愛女流三段のフェードアウトがあったりして、いつの間にか2位に浮上した。
かつてHon氏が「大沢さんって、ティーンが好きですよね」と言った。それは否定しないが、熟女系も嫌いでないことが分かる。
きょうの上川女流二段もちょっとくたびれた感じで、麗しい。
第6図で私は▲2二歩と打った。何も指す手がないのでこうやって手を渡し、上川女流二段に動いてもらおうの意図だ。
△4二飛には、構わず▲4六竜と寄った。これには△5六歩があるがよろこんで▲同歩と取り、竜馬交換ならこちらも望むところである。
上川女流二段は「そうか……」とつぶやき△4五歩。これにも堂々と▲同桂と取り、△4四金には▲3三桂成から▲4四銀と捌いた。
「あれ? 私駒損してる?」
まあそういうことになるが、まだ難しい。
以下数手進んで第7図になるが、実はこの直前の「△2二飛▲2三歩△4二飛」が記譜用紙から抜けていた。
これだと上手が1手多く指す計算になるのだが、それに代わる下手の1手がどうにも分からないのである。
△2二飛に▲2三歩と指した記憶はあるのだが、記譜用紙には華麗にスルーされている。
実はこの日、私は風邪の治りかけで、咳がまだ少し出ていた。コロナの抗原検査を受けて陰性だったから心配はないが、上川女流二段に不快な思いはさせたくない。とはいえ咳をすれば痰が絡んできそうで、私は腹に力を入れて咳を我慢していた。私はこのあたり、対局や記譜記入どころではなかったのである。
第7図以下の指し手。▲7五金△6三馬▲5五銀△同銀▲同角△5二飛▲1一角成△5四飛▲3五竜△5三馬▲4五竜△4四歩▲3五竜(第8図)
第7図では俗に▲4三金もあるか。だが重たくて、ほとんど考えなかった。
上川女流二段はこちらを見るが、私は指せない。いつもはチャッチャッチャッと指すのだが、本局は慎重に駒を進める。
私は▲7五金と打った。2月7日・8日に行われた第73期王将戦第4局で、藤井聡太王将が馬取りに▲7五金と打っているが、それを拝借した。
上川女流二段はうんざりした声を出したあと、△6三馬と引く。私は▲5五銀と捌き、この銀まで駒台に載っては、この将棋は負けられないと思った。
「大沢さんって、急戦がうまいわよねえ」
と上川女流二段が言う。私は返事をしたいが、前述の理由で、声が出せない。意味なく微笑むのみである。
そして△5二飛に▲1一角成。最初に記譜を再現したとき、ここで▲2二歩があったから、▲1一角成とできなかった。それでプレイバックし、第7図の前、「△2二飛▲2三歩△4二飛?」の3手?が抜けていることが判明したのである。
本譜に戻り、▲4五竜に上川女流二段は△4四歩としたが、ここは何はともあれ△2四飛とし、飛成を見せたほうがよかったと思う。
▲3五竜の第8図で、次の手が問題だった。
第8図以下の指し手。△6三桂▲6五金△4三馬▲5四金△同馬(途中図)
▲7七銀△7四歩▲4四馬△同馬▲同竜(第9図)
△6三桂が疑問だったと思う。私は幸便に▲6五金と寄り、これで飛車が死んでいる。
上川女流二段は△7七歩と指しかけて△4三馬と寄ったが、▲5四金で1手損になった。上手は劣勢のときに痛いミスだが、代わる手も難しかった。
途中図では▲4四馬△同馬▲同竜とするのが簡明だったが、気が付かなかった。
それより自玉の周りがスース―するので、憂いを解消すべく、▲7七銀と入れた。そこでまた上川女流二段が唸った。
上手は△7四歩くらいしかないが、そこで▲4四馬を発見した。
「大沢さんって、急戦がうまいわよね」
と、また上川女流二段が言った。
第9図以下の指し手。△7五歩▲同歩△7六歩▲8八銀△5五角▲同竜△同桂▲6四角△7三銀打▲5五角(投了図)
まで、124手で一公の勝ち。
右の将棋は2局目が終わり、今度は男性氏が勝った。急戦の将棋で、お互い早指しが止まらなかったようである。
本譜は▲6四角で桂得が約束され、これから長くなっても、負けはないと思った。
▲5五角で上川女流二段投了。以下は△6五金でも、▲7四桂△9二玉▲9三香△同玉▲8二角△9二玉▲7三角行成△同銀▲同角成(参考A図)まで、上手玉は受けなしとなる。
感想戦は短く行われ、第4図から5手後の△5五歩のとき、銀取りに構わず▲3四歩(参考B図)がよかったとされた。
残り15分になったので、私はこれで失礼する。だが右の男性氏は「次回に指し掛けでもいいので」と、3局目を始めた。
「第1部は3時ですから。次は間違わないように」
と、上川女流二段のありがたい注意を聞き、私は麹町サロンを後にした。