私は再び飫肥城址に向かう。その前に、近くのスーパーに寄り、「白熊」を買った。天文館本家のしろくまは食したことがないが、加世田に続いて2度目の簡易かき氷だ。
手早く白熊を食べ、大手門をくぐり飫肥城址に入る。石段を登り右手を行くと、小学校があった。城の敷地に学校、といえば長崎県福江島・福江城址の五島高等学校や、鳥取県鳥取城址の鳥取西高校を思い出してしまうが、いずれにしても城址に学校とはうらやましい。
しかし壁には、「子供たちを写真に撮らないでください」の注意書きがあった。「思い出は目に焼き付けてください」ともあった。
現代は全員がケータイを持っていて、その場にあるすべての存在が撮影可能である。それだけにプライバシーも侵されているが、この一文はその注意喚起を促したのだ。私も自戒したい。
引き返すと、掃除のおじちゃんがいた。
「いい写真は撮れましたか」
「はい」
「ああ、それはよかった」
本丸跡に上がると、飫肥杉がそびえる一面があった。ここは以前も訪れたはずだが、明快な記憶がない。前回はぼんやり回っていたのだろう。
広い敷地に数十本もの杉がそびえていて、木漏れ日が幻想的である。杉は一直線なのがよく、私も姿勢を正したくなる。
そのうち一組の家族連れがきて、興味深そうにあたりを散策しはじめた。私はこういう家庭をついに持てなかった。
私も20分ほどたたずみ、パワーをいただいたと実感したので、これで失礼する。
さっきの水路に戻り、先に進んでみる。すると、鯉が優雅に泳いでいた。
ここが日本人の良心で、これが外国だったら、すぐに盗まれているだろう。ウチの桃の実も、アジア系外国人が盗みを働いたから、オフクロが恐れおののいて枝をザンギリに伐採してしまった。外国人が日本に来てくれるのはいいけれど、犯罪だけは犯してほしくない。
近くに渋い佇まいの洋館があり、こちらも味わい深いが、これで飫肥の観光は終わりとする。
とはいえまだ、1ヶ所寄れる時間がある。青島に行ってみたいが、そこ行きのバスはすでに営業を終えている。となればJRを使うしかなく、次の日南線上りは16時31分である。
私は早足で急ぐが、駅までが意外に遠い。あまりにも着かないので途中で地元の人に聞いたら、すぐそこだよ、と教えてくれた。
飫肥駅舎は飫肥城を模しているのか、立派な外観だった。旧大社駅のミニマム版といえようか。
駅前にはさっきの高校生カメラスタッフがいた。いい画は撮れただろうか。
すでに列車は入線しており、飛び乗った。SUN QパスがあるのにJRを使うのはアレだが、日南線は存続すら危ぶまれる大赤字路線であり、これが寄付になると思えばなんでもない。
私は席に座る。向かいには男子高校生が大人しく座っており、そうなんだ……などと考えたらウトウトした。
気が付くと下車する人がいた。それが青島駅で、もう着いてしまった!
しかしドアが閉まり、私はオーバーランである。やむを得ず、次の子供の国で降りた。
下り列車はすぐに来ないが、バスは17時16分があった。
バスは定刻を7分遅れ、乗車した。青島バス停には約3分で着き、私にしては珍しく、被害を最小限に抑えることができた。
青島といえば青島全体と鬼の洗濯板、青島神社で有名である。私も何度も訪れたが、駅から近いのが魅力で、つい再訪してしまう。
青島への入口付近に、「宮交ボタニックガーデン青島」の看板が目に入った。ここは青島亜熱帯植物園のはずだが、リニューアルしたのだろうか。
弥生橋を渡り、青島に入る。青島神社はいつものように、威厳に満ちていた。
鳥居をくぐると、その先に、ハート型を模した柱が据えられいた。「天の御柱巡り」というらしいが、最近立ったものだろう。青島神社は縁結びの神様である。しかし御利益はあるのだろうか。
社務所には多くの御守りが売られていた。私が以前求めた「男御守」「女御守」もある。しかし頒価は1,000円で、300円も値上げしていた。42%upとはどう考えても不当で、これでは買う気も失せる。だが御朱印だけはお願いする。帳面を預けて、お参り後にもらうシステムである。
本殿を右に入った敷地で、絵馬のトンネルを往復する。私は奉納する気はないけれど、壮観である。
本殿でお賽銭を投じ、社務所で御朱印帳をいただく。ここは2頁に渡って記帳されるので、納め料も600円となる。よく分からないが、青島神社は商売っ気が旺盛なのだ。
帰り道、自販機に「Sparkling日向夏」のペットボトルがあったので、購入した。鵜戸神社で買わなかったやつである。遠い昔のことに思うが、あれは今日の午前の出来事なのだ。
150円に抵抗があったが、日向夏はシュワシュワして、美味かった。
もう帰るしかないようである。青島発18時10分のバスに乗った。
そして18時39分、田元神社前で降りた。ここ田元神社が目的ではなく、ここから空港まで歩いていくためである。SUN Qパスの利用は元は取れたと思うが、思いっきりトクをした感じでもなかった。
我がANA618便は、20時10分発だから余裕である。途中、以前入った中華料理屋があったが、再食したい感じでもなかったので、先を急ぐ。
日南線の線路を越えると、陽も暮れてきた。空港の看板も見えた。このまま夕食抜きで、空港に行くよりなさそうである。
今年も結果的には楽しい旅だったが、私の現在、将来を考えると、どこか空疎というか、虚しさも内包される旅だった。
(おわり)
手早く白熊を食べ、大手門をくぐり飫肥城址に入る。石段を登り右手を行くと、小学校があった。城の敷地に学校、といえば長崎県福江島・福江城址の五島高等学校や、鳥取県鳥取城址の鳥取西高校を思い出してしまうが、いずれにしても城址に学校とはうらやましい。
しかし壁には、「子供たちを写真に撮らないでください」の注意書きがあった。「思い出は目に焼き付けてください」ともあった。
現代は全員がケータイを持っていて、その場にあるすべての存在が撮影可能である。それだけにプライバシーも侵されているが、この一文はその注意喚起を促したのだ。私も自戒したい。
引き返すと、掃除のおじちゃんがいた。
「いい写真は撮れましたか」
「はい」
「ああ、それはよかった」
本丸跡に上がると、飫肥杉がそびえる一面があった。ここは以前も訪れたはずだが、明快な記憶がない。前回はぼんやり回っていたのだろう。
広い敷地に数十本もの杉がそびえていて、木漏れ日が幻想的である。杉は一直線なのがよく、私も姿勢を正したくなる。
そのうち一組の家族連れがきて、興味深そうにあたりを散策しはじめた。私はこういう家庭をついに持てなかった。
私も20分ほどたたずみ、パワーをいただいたと実感したので、これで失礼する。
さっきの水路に戻り、先に進んでみる。すると、鯉が優雅に泳いでいた。
ここが日本人の良心で、これが外国だったら、すぐに盗まれているだろう。ウチの桃の実も、アジア系外国人が盗みを働いたから、オフクロが恐れおののいて枝をザンギリに伐採してしまった。外国人が日本に来てくれるのはいいけれど、犯罪だけは犯してほしくない。
近くに渋い佇まいの洋館があり、こちらも味わい深いが、これで飫肥の観光は終わりとする。
とはいえまだ、1ヶ所寄れる時間がある。青島に行ってみたいが、そこ行きのバスはすでに営業を終えている。となればJRを使うしかなく、次の日南線上りは16時31分である。
私は早足で急ぐが、駅までが意外に遠い。あまりにも着かないので途中で地元の人に聞いたら、すぐそこだよ、と教えてくれた。
飫肥駅舎は飫肥城を模しているのか、立派な外観だった。旧大社駅のミニマム版といえようか。
駅前にはさっきの高校生カメラスタッフがいた。いい画は撮れただろうか。
すでに列車は入線しており、飛び乗った。SUN QパスがあるのにJRを使うのはアレだが、日南線は存続すら危ぶまれる大赤字路線であり、これが寄付になると思えばなんでもない。
私は席に座る。向かいには男子高校生が大人しく座っており、そうなんだ……などと考えたらウトウトした。
気が付くと下車する人がいた。それが青島駅で、もう着いてしまった!
しかしドアが閉まり、私はオーバーランである。やむを得ず、次の子供の国で降りた。
下り列車はすぐに来ないが、バスは17時16分があった。
バスは定刻を7分遅れ、乗車した。青島バス停には約3分で着き、私にしては珍しく、被害を最小限に抑えることができた。
青島といえば青島全体と鬼の洗濯板、青島神社で有名である。私も何度も訪れたが、駅から近いのが魅力で、つい再訪してしまう。
青島への入口付近に、「宮交ボタニックガーデン青島」の看板が目に入った。ここは青島亜熱帯植物園のはずだが、リニューアルしたのだろうか。
弥生橋を渡り、青島に入る。青島神社はいつものように、威厳に満ちていた。
鳥居をくぐると、その先に、ハート型を模した柱が据えられいた。「天の御柱巡り」というらしいが、最近立ったものだろう。青島神社は縁結びの神様である。しかし御利益はあるのだろうか。
社務所には多くの御守りが売られていた。私が以前求めた「男御守」「女御守」もある。しかし頒価は1,000円で、300円も値上げしていた。42%upとはどう考えても不当で、これでは買う気も失せる。だが御朱印だけはお願いする。帳面を預けて、お参り後にもらうシステムである。
本殿を右に入った敷地で、絵馬のトンネルを往復する。私は奉納する気はないけれど、壮観である。
本殿でお賽銭を投じ、社務所で御朱印帳をいただく。ここは2頁に渡って記帳されるので、納め料も600円となる。よく分からないが、青島神社は商売っ気が旺盛なのだ。
帰り道、自販機に「Sparkling日向夏」のペットボトルがあったので、購入した。鵜戸神社で買わなかったやつである。遠い昔のことに思うが、あれは今日の午前の出来事なのだ。
150円に抵抗があったが、日向夏はシュワシュワして、美味かった。
もう帰るしかないようである。青島発18時10分のバスに乗った。
そして18時39分、田元神社前で降りた。ここ田元神社が目的ではなく、ここから空港まで歩いていくためである。SUN Qパスの利用は元は取れたと思うが、思いっきりトクをした感じでもなかった。
我がANA618便は、20時10分発だから余裕である。途中、以前入った中華料理屋があったが、再食したい感じでもなかったので、先を急ぐ。
日南線の線路を越えると、陽も暮れてきた。空港の看板も見えた。このまま夕食抜きで、空港に行くよりなさそうである。
今年も結果的には楽しい旅だったが、私の現在、将来を考えると、どこか空疎というか、虚しさも内包される旅だった。
(おわり)