一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

叡王戦はどうなった

2020-10-31 00:23:29 | 男性棋戦
29日は待望の叡王戦説明会があった。第5期七番勝負が9月21日に終わったものの次期予選が始まらず、私たち将棋ファンはヤキモキした。10月20日の就位式において主催のドワンゴから「主催解除」の言葉があり、私たちはこの29日の説明会を、首を長くして待っていたのである。
結果を書けば、第6期より株式会社不二家が主催することになった。将棋連盟が共催し、レオス・キャピタルワークス株式会社、株式会社SBI証券が特別協賛するとのこと。
契約金は減少されたようで、序列は第3位から第6位に落ちた。すなわち、

竜王・名人・王位・王座・棋王・叡王・王将・棋聖

の順番となる。システムはこれまでと同じ段位別予選、16名による本戦トーナメント。持ち時間も予選1時間、本戦3時間と変わらぬが、タイトル戦七番勝負は五番勝負に短縮され、持ち時間は1時間・3時間・5時間の変動制から4時間に一本化された。
タイトル戦の持ち時間1時間は一日2局で、序列3位にしてはあまりに重みがないと感じていた。第6期以後もチェスクロック使用とはいえ、持ち時間が4時間に戻ったのはうれしい。やはりタイトル戦は、ある程度の時間を取り、対局者が精魂込めて考えた手を盤上に表現してもらいたいのだ。なお五番勝負は7月下旬から行われる。

事前の噂では、時々叡王戦を中継していた関係から、ABEMAが引き継ぐのではと見られていた。それが洋菓子メーカーの不二家とは、大いに意表を衝かれた形である。これは将棋連盟の営業の成果なのか、それとも不二家が自発的に名乗りを挙げたのか。恐らく両方だと思うが、とにかく異色のスポンサー誕生となった。
不二家では対局中にお菓子の差し入れも考えているとのことで、厳しい戦いの中にも癒しのひと時が提供されるようである。
それにしても、ドワンゴは何だったのだろう。
いままで将棋の公式戦といえば新聞社がスポンサーというのが相場で、そこにIT関連企業の雄が参入したから、新しい時代の到来を思わせた。
だがドワンゴは、叡王戦が創設されてから5年、タイトル戦に昇格してからたった3年で、それを手放してしまった。もっと長期的展望で叡王戦を育むとフンでいたから、私は大いに失望した。一説には社長が交代し、将棋への理解がなかったから解除の運びになったとも云われているが、どれだけワンマンな体質なのかと思う。
私もこれまで、ニコ生で叡王戦中継を見ようとはした。だが、いつも入場者多数で入れなかった。いくらかを課金すれば見られたが、私はおカネを払ってまで将棋を見ない。よって、ABEMAでの中継しか見なかった。もし私と同じパターンの将棋ファンがいたとしたら、ドワンゴにとって不幸なことだった。
不二家も棋戦を主催するなら「不二家杯」の一般棋戦でもよかったものを、よく「叡王」の名称を引き継いだと思う。
似た例ではこの前、白玲戦の創設に伴い、清麗戦の主催がヒューリックから大成建設に移った。しかしこれは棋戦の発展に伴う主催者の変更だったから、清麗戦の名称が残ったのはまあ分かる。だが今回の名称継続は、不二家にとって、ほとんどメリットはないのだ。
私はヘンなところで、不二家の太っ腹を見たのである。
五番勝負が7月~9月にズレたのもよい。いままでは名人戦と丸被りで、今年は両方の七番勝負に出ていた豊島将之竜王がかわいそうだった。
思えば第3期叡王戦が、金井恒太六段と高見泰地六段、すなわち順位戦C級1組とC級2組の七番勝負。第4期は永瀬拓矢七段が挑戦し、高見叡王涙の敗退、となった。そして第5期は史上初の「第9局」と、ドワンゴはドワンゴなりに、話題は提供してくれたと思う。ドワンゴ様、ありがとうございました。
新生叡王戦は、きょう31日から予選が始まる。いままでと変わらぬ熱い戦いを期待したい。
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3年振りの咲緒里(4)

2020-10-30 00:13:39 | LPSA麹町サロンin DIS

第8図以下の指し手。▲5八銀△4八竜▲5九角△3九竜▲7五角(第9図)

私は▲5八歩と打ちたかったが、△4八竜▲5九銀△4九竜のとき、歩が邪魔して▲5八角と打てない。それで▲5八銀と打ち、△4八竜にも▲5九角と先手を取れるようにした。
本譜もそう進行したが、△3九竜に予定の▲7五角を出ようとしたとき、△8八金があることに気付いた。以下▲3九角は△7八金打まで詰み。だが勢いで、▲7五角と出るよりなかった。
戻って第8図では、ふつうに▲5七金と竜を取るべきだったか。△同歩成▲7八玉(参考図)△6八金▲8八玉△6七ととなるが、まだ上手に金が2枚あり、攻めが繋がりそうだ。
島井女流二段が竜を差し出してくるので、逆に、取ることはまったく考えなかった。


第9図以下の指し手。△8八金▲7九桂△7八歩▲同金△同金▲同玉△5九竜▲6九金(第10図)

第9図で島井女流二段が竜を引いてくれればだいぶラクになるが、島井女流二段は△8八金。やはりそうきた。私は読み筋とばかり▲7九桂と埋めたが、△7八歩でシビれた。
▲7八同金よりないが、△同金▲同玉△5九竜で角損である。なんでこんなところに角銀をベタベタ打っちゃったかなと思う。
もう残り時間も少ないし投げ時だが、まだ金桂交換の駒損で済んでいる。そこで▲6九金と受けた。

第10図以下の指し手。△6八金▲同金△8八金▲同玉△6八竜▲7八金△5八竜▲6八金打△5九竜▲5二と△5七銀(投了図)
まで、112手で島井女流二段の勝ち。

Tod氏は終局を諦め、中途で指し掛けにした。次に麹町サロンに来たとき、その局面から指し継ぐようだ。向かいの常連氏の状況が分からぬが、彼は第2部も指せるからいい。
局面。時間がないのは島井女流二段も同じで、△6八金から強引に攻めてきた。もっとも第10図では竜の逃げ場がなくなっており、上手も忙しかったようだ。
しかし駒損してからの攻めなので、私も粘れる。
▲6八金打△5九竜に社団戦なら▲5八歩だが、それは△4七銀から△5八銀成~△5七歩成がある。それで▲5二とと指し、△5七銀まで投了した。

感想戦では、第4図からの▲9七角を真っ先に悔やんだ。島井女流二段も同意してくれ、以下上手も7筋から攻め込むが、下手も4筋から攻め、悪くない展開だった。
本譜でも第7図▲5七金打の局面は下手も指せていると思うが、その感想戦をやる時間はなかった。時刻は4時58分になり、これでお開きである。
「でも大沢さんが元気そうでよかった……」
島井女流二段がポツリともらす。
いや、だからそうでもないんだが……。
私はTod氏と帰ることにする。島井女流二段がエレベーターの前まで見送りに来てくれた。なんだかクラブのようだ。島井女流二段は相変わらずニコニコと愛想がよく、適度に営業も交えて、すこぶる印象がよかった。また機会があればお願いしたい。
帰りは、Tod氏が私との将棋を望んだ。ただ、指すといってもその場所がない。以前新橋の解説会でKaz氏といっしょになったとき、Kaz氏が私と将棋を指したがり、近くの囲碁将棋サロンに行って指したことがあったが、麹町に将棋クラブはないだろう。
Tod氏はファミレスあたりで指したかったようだが、私は「プレバト」を見たかったので、そのまま帰ることにした。
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3年振りの咲緒里(3)

2020-10-29 01:02:05 | LPSA麹町サロンin DIS
初手からの指し手。▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△8二玉▲9六歩(第1図)

2局目は、1局目の▲2六桂を▲1六歩に代え、分岐の指し直しも考えたが、せっかくなので初手からお願いする。2局目の初手は▲2六歩としたが、島井咲緒里女流二段が△8四歩と応じるはずもなく、△3四歩。以下1局目同様、島井女流二段の四間飛車になった。島井女流二段は振り飛車党だが、考えてみたら四間飛車以外見たことがない気がする。

第1図以下の指し手。△9二香▲2五歩△3三角▲6八銀△9一玉▲5七銀左△7二金▲3六歩△4三銀▲4六銀△3二飛▲1六歩(第2図)

じゃあ今度は……という感じで△9二香。やはり島井女流二段はこう指さなければいけない。
私は玉頭位取りあたりでじっくり指したいのだが、残り1時間足らずでは終局しない可能性がある。それで▲5七銀左とした。
島井女流二段は「急戦か……」とつぶやき、△7二金。対島井戦では初見だが、これも島井システムなのだろう。

第2図以下の指し手。△4二金▲5七銀上△5四歩▲6八金直△8二銀▲3七銀△1四歩▲2六銀△7一金▲3五歩△7四歩(第3図)

▲1六歩の様子見に島井女流二段は△4二金と立った。棒銀やナナメ棒銀に対する秘手だが、島井女流二段は意外に手堅い。
ここで▲3八飛もあるのだろうが、よく分からない。後手は△4五歩の切り札があるので、居飛車側も慎重になる。私は▲5七銀上~▲6八金直と待ったが、一手の価値があったかどうか。
島井女流二段が△8二銀と締まると、午後4時13分、Tod氏が投了した。
私は▲3七銀~▲2六銀と立て直す。▲3五歩のとき△4五歩が銀当たりにならないよう工夫したものだが、2手損がどうでるか。
島井女流二段は△7一金と引き、△7四歩。島井穴熊には必須の手で、のちの△7二飛~△7五歩を見ている。

第3図以下の指し手。▲4六歩△5三金▲3八飛△3五歩▲同銀△7五歩▲3四歩△5一角(第4図)

Tod氏のところは2局目が始まったが、時間内に終わらないのは必定である。そのあとはどうするのだろう。
私は▲4六歩。2010年2月号「NHK将棋講座」の別冊付録「中井広恵のなるほど棒銀戦法」では、中井女流六段が「棒銀は▲3五歩と突く前に▲4六歩」と説いており、それに従った。
△7五歩は△5三金からの構想で、▲7五同歩なら△7二飛だろう。穴熊+袖飛車も島井女流二段の好きな攻勢スタイルだ。
私はとりあえず▲3四歩だが、飛車先を重くしたかもしれない。ここは▲3四銀からの銀交換もあったが、島井女流二段にカナ駒を持たせたくなかった。
が、△5一角に次の手はしくじった。

第4図以下の指し手。▲9七角△6四金▲7五歩△7二飛▲6六銀△8四角▲3三歩成△同桂▲3四歩△2五桂▲3三歩成△5二銀(第5図)

私は▲9七角と覗いた。△7六歩とは取り込めないからのちにゆうゆうと▲7五角と出ようと考えたが、島井女流二段は当然△6四金と進出してくる。これでも▲7五歩と取れるが、△7二飛▲6六銀△8四角で、下手は7五歩を守れなくなってしまった。こんなことなら▲9七角ではふつうに▲7五歩と取り、角は居角で使うべきだった。
私は右に目を転じて▲3三歩成だが、どのくらい効いているのだろう。

第5図以下の指し手。▲4四銀△7五金▲7七銀△7六金▲同銀△同飛▲7七歩△5六飛▲5七金打(第6図)

第5図で上手番なら△7五金からの大捌きだ。でも防ぐ手がないので、▲4四銀と出た。若干パッとしないが、歩切れを解消し飛車筋を通し、一手の価値はあると思った。
△7五金に▲同銀は△同角以下存分に捌かれる。私は▲7七銀と引いたが、島井女流二段は△7六金と追撃する。ここで▲8八銀も考えたが、さすがに危険だろう。▲7六同銀は仕方ないところで、△同飛に▲7七歩。1歩を補充した▲4四銀の顔が立った。
△5六飛には▲5七金と打ち、意外に下手が指せている気がした。

第6図以下の指し手。△5五歩▲4二と△3七歩▲2八飛△6一銀▲2五飛△3八歩成▲5三銀成(第7図)

ここで△5五歩と飛車を押し売りにきたのが島井流の一手。自玉が穴熊だからできる手でもある。▲5六金は△同歩で、次に△5七銀があり、下手はもちそうにない。
そこで▲4二とと寄ったが、この活用も大きい。△3七歩で飛車先を押さえられるが、▲2八飛と寄った手が桂取りである。
島井女流二段も手を探したが、△6一銀と辛抱した。私は▲2五飛の桂得から▲5三銀成と捌く。ただここは、▲5三角成だったかもしれない。

第7図以下の指し手。△4八と▲同金△5九銀▲5八金右△6八銀成▲同玉△6九金▲同玉△5七角成▲同金△同飛成▲6八金△5六歩(第8図)

ここで上手の攻め方が難しいと思ったが、△4八とが先手を続けるうまい手だった。
それでも▲6八同玉までとなって今度こそ一息つくと思いきや、島井女流二段は△6九金。
以下△5七同飛車成までずいぶん攻めこまれたが、実はこの折衝で下手が角銀:金金の交換でやや得となっている。私は▲9七角のあたりから形勢を悲観していたが、そうでもなかったようだ。
ここで▲5八金は、△7八金▲同玉△5八竜▲6八金となろうか。これでも玉が二段目に上がりよいと思ったが、私はひとつ隣の6八に打った。これなら△4八竜の一手?で、▲5九銀△4九竜▲5八角△3九竜▲7五角で竜を追い払えると思った。
島井女流二段は竜を持ったものの、△5六歩。またも竜を押し売りにきた。
次の手が明暗を分けたようだ。

(つづく)
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3年振りの咲緒里(2)

2020-10-28 00:15:22 | LPSA麹町サロンin DIS

第4図以下の指し手。▲2六桂△3六歩▲同歩△6五桂▲5六銀直△7五歩▲6五銀△同歩▲7五歩(第5図)

私は島井咲緒里女流二段に△3四銀と引き揚げさせないため、▲2六桂と打った。果たして島井女流二段も「やっぱり……」とつぶやく。△3六歩▲同歩と味をつけ、△6五桂。
これに▲4八銀なら△5六歩で、▲4九桂と打てない下手が悪くなる。よって▲5六銀直と立ったが、そこで△7五歩が鋭かった。私も振り飛車は好きだが、この△7五歩のような手が指せない。つまり私の振り飛車はニセモノなのだ。
これを▲7五同歩は△7七歩で下手陣はもたない。そこで▲6五銀から▲7五歩としたが、駒損になったうえ、まだ敵の△4五銀がのさばっている。何より▲2六桂が半分邪魔駒と化しているのがひどい。▲2六桂はマズかったと、この辺りで気付いた。

第5図以下の指し手。△3八歩▲4八桂△3九歩成▲3七桂△4九と▲4五桂△同歩▲5六桂△6六桂▲同銀△同歩▲6四歩△7三金(第6図)

△3八歩が小粋な手で、シビれた。これを▲同飛は△2七銀打で、この攻めは振りほどけない。よって▲4八桂と据えた。これも気が利かないが、一応△3六銀出を抑えている。
△3九歩成には▲3七桂。先崎学九段著「駒落ちのはなし」の四枚落ちの項に、▲9一歩成に△7三桂と跳ぶ変化が出てくるが、あれと近いニュアンスだ。
△4九とには▲4五桂が角取りの先手。やむない△同歩で駒の損得がなくなり、▲5六桂と逃げてやや持ち直したと思った。が、△6六桂が痛打で、まだ下手が悪い。
▲6六同銀△同歩に▲同角は、△6五銀と先着されて負ける。そこで▲6四歩△7三金を利かし、次の手は。

第6図以下の指し手。▲6五桂△5五角▲7三桂成△同玉▲7四金△8二玉▲6三歩成△7七歩▲同角△8五桂(第7図)

第6図で逆に△6五銀と打たれては負けなので私は▲6五桂と打ったが、ここは直接▲7四桂だったかもしれない。打つ直前に気づいたが、遅かった。
本譜は△5五角が気持ちのいい飛び出しである。直接的は▲2八飛取りだが、受けては6四―7三の地点を守り、△6七銀の打ち込みや△6七歩成も見ている。
▲7三桂成には当然△同玉。対して▲7四金は▲7四銀と迷ったが、相手の指し手を限定はできる▲7四金とした。
△8二玉に▲6三歩成は迫っているようだが、攻め駒が1枚足りない。
ここで上手に手番が回り、手段がいっぱいあるが、島井女流二段は△7七歩を選択した。これに▲8九玉ならこちらも手駒が増えるが指し切れず▲7七同角。だが△8五桂が厳しく、ここで負けを覚悟した。

第7図以下の指し手。▲6四桂△7七桂成▲同玉△6七歩成▲同玉△8五角▲7六桂△7四角(投了図)
まで、84手で島井女流二段の勝ち。

私は▲7二とと銀を取りたいが、△同飛で▲7四金が質駒になり、面白くない。そこで5六の逃げ道を作りつつ、敵角の利きを遮るべく、▲6四桂と跳んだ。
しかし島井女流二段の△7七桂成~△6七歩成の両王手が厳しい。▲同玉△8五角に、力なく▲7六桂と打つ。そこで△7四角と指されて愕然。全然見えなかった。これは投了である。

とりあえず感想戦に入る。私の後悔は第4図からの▲2六桂で、こんなところに打つ手はなかった。島井女流二段もこの手は見えていたが、銀を取り切るのに手間がかかりそうなので、指せると思ったという。ここは▲1六歩と角出を消しておくくらいで、一局。桂は別の箇所に使うべきだった。
私も指導対局は数多く受けているのに、いまだにこんな筋の悪い手を指す。もう、全然成長していないのである。
ほかの2人には悪いが、もう少し感想戦を続ける。考えてみたら、女性と話をするのは久し振りなのだ。
第5図からの△3八歩に▲同飛は△2七銀打▲3九飛に△1五角が島井女流二段の予定。なるほどこれで上手必勝だ。こうなるとホントに▲2六桂が愚手だったと分かる。
また第6図からの▲7四桂は、△9二玉だと▲9五歩が妖しいが、△7四同金で上手指せる、の結論になった。このあたり、私は自信がなかったのだが、島井女流二段は難しいと思っていたらしい。
さらに第7図からの▲6四桂は、▲7三銀(参考A図)を恐れていたという。これに△同銀は▲同と△同角▲同金△同玉▲6四角で、下手はだいぶ望みが出る。といって▲7三銀に△9二玉は、▲7二とが詰めろ。ところがそこで△7七桂成▲同玉△6七歩成▲同玉△8五角▲7六桂△6六銀▲6八玉△7七銀成(参考B図)で詰むことが分かった。


そうそう、詰み筋は見えなかったが、下手玉が危険そうだったので、▲5六の桂を跳ねた意味もあるのだ。
なんだかどの変化も上手勝ちで、上手快勝の図を補完するような感想戦になっている。それにしても島井女流二段はいろいろな変化を考えていると思った。ここがプロとアマの違いであろう。
さらに最後の最後、△8五角の王手には、空いた5六の地点に▲5六玉(参考C図)と考えていたという。

ああ、△8五角には合駒しか考えていなかった……。島井女流二段はそこで△5四銀を考えていたというが、それは下手も▲6七桂とか、もう少し粘れそうな気がする。
「だから最後まで難しいと考えていたんですよ」
▲5六玉は後でも指せると思っていた。△7四角が見えていなかったから、しょうがない。時間は午後4時ちょうど。まだ時間は残っており、私は失意の再戦である。
(つづく)
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3年振りの咲緒里(1)

2020-10-27 00:09:36 | LPSA麹町サロンin DIS
13日に、Tod氏からメールが来た。15日のLPSA麹町サロンのお誘いだった。15日は第1部、第2部とも島井咲緒里女流二段の担当だが、第1部に空きがあったのだ。
誘われたってカネを出すのは私だから選択権は私にあるが、せっかくの機会なので、14日に申し込んだ。
14日当日は履歴書を2通投函し、四ッ谷駅に着いた。少し迷ったが駅前の小諸そばで二枚もりを手繰り、腹いっぱいの状態で麹町サロンへ向かった。
新宿通りはでっかいビルがバンバン建ち、いまもあっちこっちで工事中である。私が20年以上前に通勤していたときは、もう少し低層のビル群だった。
麹町サロンDISには、午後2時51分に入った。ふだんは部屋の隅で対局するが、このコロナ禍なので密集を避け、囲碁と同じフロアでの対局である。
今日は私を含めて3名で、すでに先客が来ていた。LPSAのイベントでよく見る人だ。ほどなくしてTod氏も来た。私を誘ったのだから、当然彼も指導対局を受けなければならない。
そして島井女流二段が現れた。島井女流二段は今年の2月に大野教室で指導対局があったが、私は北海道を旅行していたので、受けられなかった。それより前だと昨年のシモキタ名人戦でお会いしたが、さらにその前となるといつになるだろう。指導対局も相当久しぶりだ。
その間島井女流二段はシングルになり、私はハゲ散らかし、転落の人生である。
それにしても島井女流二段、エレガントで美しい。島井女流二段は「かわいい」というイメージがあったが、歳とともに気品も兼ね備えているようだ。横山先生、逃がした魚は大きかったんじゃないのか?
私とTod氏は4,500円を払ったが、先客氏は9,000円である。すなわち2部を通しての参加だ。私には出せない額だが、たとえば女性アイドルを4時間間近で鑑賞できるならば、9,000円は安い。要は、カネの価値は人それぞれということだ。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「どうも。元気じゃないですよ。……アタマもハゲちゃったし、いろいろあって……」
そんなやりとりを、Tod氏がニヤニヤしながら聞いている。「あ、この前は色紙をありがとうございました」
「色紙?」
「ほら、月がどうのこうのいうやつの。寄付金5口の特典のやつ」
「ああ……」
どうもピンと来ていないふうだ。LPSAサポーター特典の色紙は、ひょっとしたらだが、あらかじめストックしておいて、郵送の際にはスタッフ氏が任意で選んでいるのかもしれない。
「女流順位戦の表ができましたね」
「そうなんですか?」
「……まだリーグ表を見てないんですか?」
「……いえ、一般に公表されたんだなと思って」
「ああ、そういうこと……。先生、久しぶりのリーグ戦ですもんね」
「……」
どうも私は一言多くていけない。島井女流二段は里見沙紀女流初段と同じリーグで、その際は関西に対局に行くという。リーグ戦に東西の区分けはないので、これから東西交流が盛んになるだろう。
Tod氏は、以前芝浦サロンで指した棋友が大成建設の人だった、と屈託なく語る。これもタイムリーな話題だろう。
私たちは駒を並べ、定刻の3時には少し早いが、対局開始となった。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲5八金右△5二金左▲9六歩(第1図)

私の居飛車明示に島井女流二段は角道を止めて四間飛車に振った。現代は角道止めずの振り飛車が定着しているが、島井女流二段はオーソドックスを好む。意外といえば意外である。
なお将棋盤は島井女流二段を中心にして四方に置かれている。今日の会員は3人なので真後ろの将棋盤は使わない。正面はTod氏で、私は島井女流二段の右横顔を見る形になる。
いつもはS旦那氏がレギュラーだが、このコロナ禍で自粛中。コロナは私たちの生活を根底から変えた。でもLPSAもリモート対局を行うなどして、いろいろ対処している。
お互い玉を移動してTod戦を見ると、Tod氏が四間飛車に振っていた。こちらも平手戦である。駒はTod氏持参の名駒。あまり知られていないが、Tod氏は棋士もひれ伏す名家の出である。だけど私は恐縮しない。将棋の前では、出自は関係ないのである。
▲9六歩に次の手は意外だった。

第1図以下の指し手。△9四歩▲6八銀△8二玉▲5七銀左△7二銀▲5五歩(第2図)

「大沢さん、あとで私と将棋を指しましょうよ」
とTod氏が言う。まだ序盤だし、サロンなのでこのくらいの会話はいい。だけど、このあとどこで将棋を指すというのか。
島井女流二段は△9四歩と突き返す。これは珍しい手で、島井女流二段得意の穴熊なら、不急の手。ということは、本局は美濃囲いだろうか。
島井女流二段が向こうを向き、「新しいのを……」とつぶやいた。Tod氏、駒はおろしたてのようだ。
私はある作戦を狙っているが、とりあえず▲6八銀。ここで島井女流二段が熟考したが、△8二玉と寄った。△7二銀との比較か、あるいはのちの穴熊も再考していたのかもしれない。
△7二銀に▲5五歩。「おっ」と驚かれた。マイブームの5筋位取りである。

第2図以下の指し手。△4三銀▲5六銀△6四歩▲5七銀△7四歩▲6六歩△7三桂▲7七桂△6三金▲6五歩△同歩▲同桂△同桂▲同銀△6四歩▲5六銀引(第3図)

私の位置からは島井女流二段の側面を見ているが、島井女流二段、スリムだ。考えてみれば島井女流二段も今年大台に乗ったわけだが、その体型を保つどころか、ますますプロポーションがよくなっているのがすごい。エロスさえ感じる。
あちら側では囲碁のインストラクターが5面打ちをしている。客はリタイア組が多いみたいで、私はおのが立場を恥じる。
私の5筋位取りに、島井女流二段は△4三銀~△7四歩と応じた。私の▲6六歩には△7三桂と跳び、すぐには6筋の歩を換えさせない。ならば私も▲7七桂と増強である。そして桂交換となった。

第3図以下の指し手。△5四歩▲同歩△同銀▲5五歩△4五銀▲6七銀△3五歩▲2五歩△3三角(第4図)

島井女流二段の指し手は早い。麹町サロンは2時間で、時間内ならおかわりも利くが、私は1局指せれば十分である。だがこのペースは、2局目も可能な勢いだ。
△5四歩の反発は当然であろう。▲同歩△同銀▲5五歩に、島井女流二段は△4五銀。これも当然で、1歩交換に満足し△4三銀と引く手なぞ、島井咲緒里の辞書にはない。△4五銀と出なければ島井咲緒里ではないのだ。
これを▲同銀は△同歩で下手が損。よって▲6七銀と引いた。ここで△6五桂▲4八銀△5六歩なら▲4九桂と耐えて上手が忙しい。
よって島井女流二段は△3五歩と、銀の可動域を作る。
私は▲2五歩△3三角を決めたが、次の手が敗着となった。

(つづく)
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