時刻は午後9時前後だったと思うが、私はようやく植山悦行七段に指導対局を受ける。横にはいつの間にかWatanabe氏がいて、指導対局を受けていた。これできょうは生徒8人。毎回このくらいいれば、そこそこいける。
植山七段は駒を落とそうとしないが、私は角を引いてもらう。
相居飛車になった。植山七段は早めに△8五歩を決め、△6五歩▲同歩△同金から△7五歩▲同歩△同金。
ここで▲7六歩では△7四金で下手面白くないので、私は▲9七角と反発する。以下△7四金▲7六銀△9五歩▲同歩△7五歩▲同銀△9六歩▲7四銀△9七歩成▲同香と進んだが、これは角と金歩2の交換で、下手も指せると思った。
数手後私は▲9四歩と伸ばしたが、つまらなかった。ここはヘンな手だが▲7七金上とし、△9八歩を防いでおくべきだった。本譜はやはり△9八歩とされた。私はいちばんイヤな手を指されたと思ったが、植山七段は
「ああ、角落ちはイヤだ」
とボヤく。「この人(私のこと)、上手を上手と思ってないんですよ」
隣のWatanabe氏に語りかけているようだ。
「角金交換を怖がらないんだもんねえ。上手に『やってきなさい』という感じ。こういうところは、大沢さんとFujさん似てますよねえ」
たぶん私は、ホメられているのだろう。
数手進んで、私の▲2五飛浮きがヘンな手。次▲6五飛からの成りこみを見せたものだが、△5五歩▲同歩に△8八ととされ、己の見落としに気付いた。
すなわち▲8八同金は、△3四角の飛車金(6七にいる)両取りでゲームセットである。
このと金を働かせたのは大きく、△8七と~△8六とと、数手前に打った打たずもがなの香まで取られたのは痛かった。
そもそも、▲2五飛が冴えなかった。こういうミエミエの手は、たいてい反撃手段があるものである。せっかくの好局を、つまらぬことをした。
以下坂道を転がるように形勢が悪くなり、こちらはいつ投了するかという状況。
以下の指し手。△7六歩▲5一飛△3六馬▲5二金△7七歩成▲6一飛成△6八と▲同金△2二玉▲4二金△6七歩▲3一飛成△1三玉▲6七金△7五桂▲2五歩(第2図)
植山七段は「ここで(6一に香を)打ったらどうなるの?」とつぶやく。
実際そう指されたら、私は投了していただろう。
が、そこまでいじめることもないだろう、と植山七段は△7六歩。この気持ち、実は私もよく分かるのである。私にも、そこまで指すこともないかな、と穏やかな手を選ぶことがあるからだ。
ちなみに大野八一雄七段なら、ノータイムで△6一香と打っただろう。
しかし本譜、△7七歩成に▲6一飛成と突っこむと、植山七段の顔色が変わった。
「あ…そうかあ。6二に成ると思ってたんだが…。…イヤまた温泉に入っちゃったよ」
植山七段はとりあえず金を取り(6七の金を取るほうがよかった)、△2二玉の早逃げ。
ここで私が間違えた。5筋に飛車を利かせるべく▲4二金と金を取ったのがそれで、ここは▲3一飛成と銀を取るべきだった。以下△1三玉に▲2五歩で、本譜より一手早い。
△7五桂と打たれたあと、遅ればせながら▲2五歩だが、さてこの局面、どちらが勝っているのか。全部読み切ったらアマ四段。
(11月2日につづく)
植山七段は駒を落とそうとしないが、私は角を引いてもらう。
相居飛車になった。植山七段は早めに△8五歩を決め、△6五歩▲同歩△同金から△7五歩▲同歩△同金。
ここで▲7六歩では△7四金で下手面白くないので、私は▲9七角と反発する。以下△7四金▲7六銀△9五歩▲同歩△7五歩▲同銀△9六歩▲7四銀△9七歩成▲同香と進んだが、これは角と金歩2の交換で、下手も指せると思った。
数手後私は▲9四歩と伸ばしたが、つまらなかった。ここはヘンな手だが▲7七金上とし、△9八歩を防いでおくべきだった。本譜はやはり△9八歩とされた。私はいちばんイヤな手を指されたと思ったが、植山七段は
「ああ、角落ちはイヤだ」
とボヤく。「この人(私のこと)、上手を上手と思ってないんですよ」
隣のWatanabe氏に語りかけているようだ。
「角金交換を怖がらないんだもんねえ。上手に『やってきなさい』という感じ。こういうところは、大沢さんとFujさん似てますよねえ」
たぶん私は、ホメられているのだろう。
数手進んで、私の▲2五飛浮きがヘンな手。次▲6五飛からの成りこみを見せたものだが、△5五歩▲同歩に△8八ととされ、己の見落としに気付いた。
すなわち▲8八同金は、△3四角の飛車金(6七にいる)両取りでゲームセットである。
このと金を働かせたのは大きく、△8七と~△8六とと、数手前に打った打たずもがなの香まで取られたのは痛かった。
そもそも、▲2五飛が冴えなかった。こういうミエミエの手は、たいてい反撃手段があるものである。せっかくの好局を、つまらぬことをした。
以下坂道を転がるように形勢が悪くなり、こちらはいつ投了するかという状況。
以下の指し手。△7六歩▲5一飛△3六馬▲5二金△7七歩成▲6一飛成△6八と▲同金△2二玉▲4二金△6七歩▲3一飛成△1三玉▲6七金△7五桂▲2五歩(第2図)
植山七段は「ここで(6一に香を)打ったらどうなるの?」とつぶやく。
実際そう指されたら、私は投了していただろう。
が、そこまでいじめることもないだろう、と植山七段は△7六歩。この気持ち、実は私もよく分かるのである。私にも、そこまで指すこともないかな、と穏やかな手を選ぶことがあるからだ。
ちなみに大野八一雄七段なら、ノータイムで△6一香と打っただろう。
しかし本譜、△7七歩成に▲6一飛成と突っこむと、植山七段の顔色が変わった。
「あ…そうかあ。6二に成ると思ってたんだが…。…イヤまた温泉に入っちゃったよ」
植山七段はとりあえず金を取り(6七の金を取るほうがよかった)、△2二玉の早逃げ。
ここで私が間違えた。5筋に飛車を利かせるべく▲4二金と金を取ったのがそれで、ここは▲3一飛成と銀を取るべきだった。以下△1三玉に▲2五歩で、本譜より一手早い。
△7五桂と打たれたあと、遅ればせながら▲2五歩だが、さてこの局面、どちらが勝っているのか。全部読み切ったらアマ四段。
(11月2日につづく)