1979年度NHK「将棋講座」の講師は大内延介八段(当時)、アシスタントは、この年の1月に女流棋士になった中瀬奈津子女流1級(旧姓・当時)だった。当時は、同じ講師で1年間やるロングランだった。
この何回目かの講座で、初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩に、定跡の▲7八金ではなく、▲2四歩(第1図)とやる変化をやった。
▲2四歩以下は、△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩▲2三歩△8八歩成(第2図)となり、後のカラスが先になるのだ。初級者本だと、ふつうはこの辺りで終わる。
ところがこのあとの変化が意外に複雑で、大内八段は解説を続けた。すなわち第2図以下、▲8八同銀△3五角▲2八飛△5七角成▲2二歩成△同銀▲4五角(第3図)となる。この▲4五角が秘手で、実はここで形勢が入れ替わっているのだ。
ちなみに升田幸三実力制第四代名人の本では、▲4五角で▲9六角を説いている。
第3図以下は△6二飛に▲5二歩(第4図)が好手。典型的な焦点の歩で、5筋の歩が切れた手を逆用している。
第4図で△同飛以外の応手は、▲2二飛成と銀を取り、先手必勝。
よって後手は△同飛と取るよりないが、▲6三角成(第5図)で、先手優勢となる。
解説ではこのあと、△8二飛▲8一馬△同飛▲2二飛成まで進め、後手がボーッとしていたら▲6三桂まで詰み、までやった。
後手はどこがおかしかったのか。戻って第3図の一手前、当然のような△2二同銀が疑問手。ここは△2二同飛と取り、▲2三歩△1二飛▲2二角で後手があぶないようだが、「この筋を忘れちゃいませんか」と△2四歩(参考図)と押さえて後手優勢、が大内八段の解説だった。
よって5手目▲2四歩は、後手が正確に応接すれば先手がいけない、が結論となる。
それにしても変化の▲5二歩は鮮やかな手筋で、こんな手が実戦で現れるわけがないと思った。
ところが、である。26日に指された第82期C級2組順位戦6回戦・▲佐々木大地七段VS△近藤正和七段戦(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)で、これと同じ手筋が出現した。
下図は先手の佐々木七段が▲6三角成と馬を作ったところだが、ここで近藤七段が投了してしまったのである。
手数は27手。双方が真面目に指した将棋としては、最短ではないだろうか。しかも双方居玉、持駒が歩だけというオマケ付きである。
この投了図と第4図を見比べると、当然ながらかなり酷似している。こんなハマリ形をプロが食らうはずがないと思っていたから、この投了図はかなり衝撃的だった。
▲5二歩~▲6三角成は、見た目以上の破壊力だったのである。
この何回目かの講座で、初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩に、定跡の▲7八金ではなく、▲2四歩(第1図)とやる変化をやった。
▲2四歩以下は、△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩▲2三歩△8八歩成(第2図)となり、後のカラスが先になるのだ。初級者本だと、ふつうはこの辺りで終わる。
ところがこのあとの変化が意外に複雑で、大内八段は解説を続けた。すなわち第2図以下、▲8八同銀△3五角▲2八飛△5七角成▲2二歩成△同銀▲4五角(第3図)となる。この▲4五角が秘手で、実はここで形勢が入れ替わっているのだ。
ちなみに升田幸三実力制第四代名人の本では、▲4五角で▲9六角を説いている。
第3図以下は△6二飛に▲5二歩(第4図)が好手。典型的な焦点の歩で、5筋の歩が切れた手を逆用している。
第4図で△同飛以外の応手は、▲2二飛成と銀を取り、先手必勝。
よって後手は△同飛と取るよりないが、▲6三角成(第5図)で、先手優勢となる。
解説ではこのあと、△8二飛▲8一馬△同飛▲2二飛成まで進め、後手がボーッとしていたら▲6三桂まで詰み、までやった。
後手はどこがおかしかったのか。戻って第3図の一手前、当然のような△2二同銀が疑問手。ここは△2二同飛と取り、▲2三歩△1二飛▲2二角で後手があぶないようだが、「この筋を忘れちゃいませんか」と△2四歩(参考図)と押さえて後手優勢、が大内八段の解説だった。
よって5手目▲2四歩は、後手が正確に応接すれば先手がいけない、が結論となる。
それにしても変化の▲5二歩は鮮やかな手筋で、こんな手が実戦で現れるわけがないと思った。
ところが、である。26日に指された第82期C級2組順位戦6回戦・▲佐々木大地七段VS△近藤正和七段戦(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)で、これと同じ手筋が出現した。
下図は先手の佐々木七段が▲6三角成と馬を作ったところだが、ここで近藤七段が投了してしまったのである。
手数は27手。双方が真面目に指した将棋としては、最短ではないだろうか。しかも双方居玉、持駒が歩だけというオマケ付きである。
この投了図と第4図を見比べると、当然ながらかなり酷似している。こんなハマリ形をプロが食らうはずがないと思っていたから、この投了図はかなり衝撃的だった。
▲5二歩~▲6三角成は、見た目以上の破壊力だったのである。