一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

服部六段、年度最高勝率新記録なるか

2025-01-21 23:40:37 | 将棋雑記
きのうの記事で、服部慎一郎六段の今年度成績が凄まじい、と書いた。19日の朝日杯将棋オープン戦で藤井聡太竜王・名人に勝ち、「33勝4敗.892」。この時期に9割近い勝率は驚異だ。
そしてこうなると、年度最高勝率の新記録が期待できる。
このブログではおなじみだが、これまでの記録は、1967年度に中原誠五段(当時)が作った「47勝8敗.855」だ。
これを上回るには、あと何勝すればいいか。というか、あと何回負けられるか、だ。一覧にするとこうなる。

33勝(以上)5敗.868
36勝(以上)6敗.857
42勝(以上)7敗.857
48勝(以上)8敗.857

要するに、6勝1敗ペースなら、中原五段の記録を上回る。
そして今年度中に対局できるであろう棋戦は以下の通り。

第96期棋聖戦二次予選決勝 石川優太五段
第83期B級2組順位戦 中川大輔八段、藤井猛九段、高崎一生七段
第38期竜王戦ランキング戦3組1回戦 梶浦宏孝七段
第75期王将戦一次予選2回戦 浦野真彦八段or柵木幹太四段
第51期棋王戦予選2回戦 牧野光則六段
第18回朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメント準決勝
第73期王座戦二次予選2回戦
第33期銀河戦Dブロック6回戦

王座戦は指せると思うが、第56期新人王戦は、間に合わないと思う。
ほかに第75回NHK杯予選があるが、服部六段は2024年の成績が40勝8敗.833なので、総合成績優秀者として、予選免除になる可能性が高い。
以上、それでも10局近くは保証されている。むろん勝てば同じ棋戦で、もう一局くらい指せるはずだ。
3月末までの数字の一例は、9勝3敗で乗り切れば42勝7敗となり、新記録達成となる。
いまの服部六段の調子なら、十分達成可能な数字である。
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「法廷のドラゴン」を見る

2025-01-19 23:50:37 | 将棋雑記
きのうの文化放送の「親父熱愛」に、私の投稿が読まれた。それはうれしいのだが、長文を避けるため、エピソードをひとつ省いてしまった。
しかしいざ読まれてみると、そのエピソードがあればもっと話に厚みが出たはずで、もったいないことをしたと思った。
読まれたら読まれたで後悔する。つくづく私は損な性格だと思う。

   ◇

17日(金)から、テレビ東京で「法廷のドラゴン」が始まった。事前の告知を見ると、奨励会を退会した女性が弁護士になり、さまざまな依頼を解決していくストーリーだった。2時間ドラマや連続ドラマの1話で将棋がテーマになることはあるが、連続ドラマすべてに将棋が絡むのは珍しい。
主演は上白石萌音。上白石萌歌との区別がいまだにつかないのだが、まあいい。
冒頭のシーンは、旧東京・将棋会館からだった。主人公の天童竜美(上白石萌音)が、奨励会三段リーグで駒木兎羽(白石麻衣)と対峙している。両者とも袴姿でタイトル戦のようだが、こういうところで疑問を持ってはいけないのだろう。
私のような将棋ファンは、ドラマで描かれる将棋の世界の違和感についケチをつけたがる。だけどどの世界を描いても、違和感は生じるのだ。だから、純粋に演出を楽しむのがよい。それに、この衣裳にも意味があったようだ。
この将棋に竜美は負け、竜美は奨励会を退会する。勝った兎羽がどうなったかは分からない。
そこから3年半が過ぎ、竜美はある弁護士事務所に入る。ここがまた分からないのだが、奨励会も三段までいけば、ほぼプロである。女流棋界に移籍すれば、タイトル獲得は確実。そこから福間香奈女流五冠や西山朋佳女流三冠のように、四段を目指してもよい。いや、医師になった伊奈川愛菓女流二段のように、女流棋士をやりながら弁護士を目指してもよかったのだ。
それをしなかったということは、このドラマの世界には、女流棋界はない、と見ていいだろう。
話を戻し、そこで竜美は、物置部屋だった和室を掃除し、自分の部屋にしてしまう。
そして依頼が舞い込む。これを竜美が担当するのだが、ひとつの案件を一局の将棋になぞらえるのが竜美流。これは、前クールにテレビ朝日で放送していた「バントマン」と同じ構造だ。
また、竜美がセリフの中に将棋用語を散りばめるのも微笑ましい。これは私たちもよくやるが、実に便利なのである。
そして裁判が進み、決戦の日、竜美は袴姿で裁判に臨む。これが竜美の勝負服というわけだ。
そして最後、竜美は被告人の発言を咎め、勝利に導く。これは古畑任三郎「しゃべりすぎた男」の、小清水潔(明石家さんま)のときと同じ構図だ。
脚本は「相棒」の戸田山雅司。今後もレギュラーで執筆してくれそうで、楽しみである。
将棋指導は、中村桃子女流二段、伊藤明日香女流初段。中村女流二段が将棋の世界とオサラバしていないことが分かり、少しほっとした。だけどそれなら、引退しなければよかったのに、といまさらながらに思う。
将棋監修はアユム氏。今後もストーリーにマッチした記譜作りを期待したい。
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谷川十七世名人、1400勝達成

2025-01-17 00:48:20 | 将棋雑記
きょう1月17日は、阪神淡路大震災30年。30年前のあの朝は号外が出た。それには「南近畿大地震」の見出しがあった。
あれから30年とは、時の経つのは早い。私も歳を取るわけだ。

   ◇

15日に行われた第83期順位戦B級2組8回戦で、谷川浩司十七世名人が郷田真隆九段に勝ち、公式戦通算1400勝を達成した。大山康晴十五世名人、羽生善治九段に次いで3人目の快挙だ。
2019年8月17日に谷川十七世名人が通算1324勝を達成し、加藤一二三九段に並んだとき、当ブログでは同年8月25日に、「谷川九段は、通算勝利数を2位にできるか」という記事を書いている。ちょっと、再録してみよう。


この17日に谷川浩司九段が公式戦通算1324勝を達成し、3位の加藤一二三九段に並んだ。
3位とは若干中途半端だが、新聞ではしっかり記事になっていた。11日の日本シリーズで藤井聡太七段が和服を着たことが新聞記事になったのも驚いたが、将棋もメジャーになったものだ。
ではここで、通算勝利10傑を記しておこう。

1位 羽生善治九段 1439勝594敗2持 0.7078
2位 大山康晴十五世名人 1433勝781敗2持 0.6472
3位 加藤一二三九段 1324勝1180敗1持 0.5288
3位 谷川浩司九段 1324勝852敗3持 0.6084
5位 中原誠十六世名人 1308勝782敗3持 0.6258
6位 内藤國雄九段 1132勝1000敗 0.5310
7位 米長邦雄永世棋聖 1103勝800敗1持 0.5796
8位 有吉道夫九段 1088勝1002敗 0.5206
9位 佐藤康光九段 1035勝631敗 0.6212
10位 桐山清澄九段 993勝939敗 0.5139
(2019年8月24日現在)

谷川九段は1977年2月の初対局から、42年6ヶ月での達成。年平均31勝だが、2010年度から負け越し数が多くなる。

2009年度 21勝16敗
2010年度 11勝18敗
2011年度 10勝17敗
2012年度 11勝15敗
2013年度 14勝22敗
2014年度 12勝20敗
2015年度 11勝17敗
2016年度 12勝18敗
2017年度 17勝14敗
2018年度 28勝19敗
2019年度 9勝11敗

谷川九段は2009年4月から2011年3月まで日本将棋連盟棋士会会長。同年5月から2012年12月まで専務理事。同年12月、米長邦雄会長(永世棋聖)の逝去に伴い、会長就任。以降、2017年1月まで務めた。
この間は成績が低迷し大きく負け越したが、会長辞任のあとは、激務から解放されたのがよかったのか、2017年度は8年振りの勝ち越しを決めた。そして2018年度は28勝を挙げ、2003年度・38勝以来の勝ち星となった。
大山十五世名人のように、多忙をエネルギーに変える人もいるが、このケースは稀。谷川九段のような棋士には、対局に専念させてあげなければいけないと思う。
では、谷川九段が通算勝利2位の1433勝を達成することはできるか。残り109勝だが、年度15勝すれば、あと7年半で抜ける計算だ。
これは谷川九段が還暦以後も健康に留意すれば、達成できる。
問題は、谷川九段が突発的な不調に陥って、順位戦をB級2組に降級してしまった場合だ。
何しろ、永世名人がB級2組で指したケースはない。谷川九段も、そこまで落ちて指したくはないだろう。
谷川九段の将棋は格調が高く、熱狂的なファンも多い。それだけに、自己の進退にも厳しくあると思われる。
いずれにしても私は、今後の戦いに注目している。


上の記事では、通算勝利1433勝に達するには、年度15勝をキープすれば、7年半で達成可能、と推察している。
しかしその間、順位戦でB級2組に降級しから現役を引退してしまうのではないか、とも書いている。
実際谷川十七世名人は2019年度、B級2組に降級してしまう。でも幸いなことに、谷川十七世名人は、現役を続けた。
ではここで、2019年度からの成績を書いておこう。

2019年度 18勝26敗
2020年度 13勝16敗
2021年度 15勝16敗
2022年度 15勝16敗
2023年度 15勝15敗
2024年度 9勝15敗

勝ち越しの年こそないものの、2019年度から2023年度まで、5年間で76勝。年平均15.2勝で、まさに私の読み通りの勝数である。
そしてここまでくれば、あとは健康に留意すれば、34勝(単独2位)は可能だろう。それがいつになるかだが、現在の年15勝ペースはやや鈍るとして、2027年7月ごろだろうか。
あぁ、2年半後のことなんか、考えたくもない。
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藤井竜王・名人の存在を知ってほしかった5人の棋士

2025-01-04 23:53:11 | 将棋雑記
藤井聡太竜王・名人の出現は衝撃的で、デビュー29連勝、22歳5ヶ月でタイトル26期、7年連続勝率8割など、数え上げたらキリがない。
それまでは21歳で名人を獲った谷川浩司十七世名人が真の天才だと思ったし、25歳で七冠王になった羽生善治九段は、それ以上の天才に思われた。
ところが藤井竜王・名人は、その羽生九段の上を軽く行った。私が存命中に、藤井竜王・名人という大天才を知ることができたのは、幸せなことだと思っている。
そんな藤井竜王・名人を、いま天国にいる棋士にも知ってほしかったと思うのだ。
むろん、天国で藤井竜王・名人の活躍を見ているかもしれないが、その見解を私たちは聞くことができない。
そこで今回は、その見解を聞きたかった5人の棋士を挙げてみる。

①米長邦雄永世棋聖
まず思うのは、米長永世棋聖である。米長永世棋聖の才能は当然ながらトップクラスだが、本人は、自分が一番、と思っていたのではなかろうか。実際、対谷川戦は31勝33敗とほぼ互角だったし、対羽生戦も10勝16敗と、まあまあ善戦している。
そんな米長永世棋聖が藤井竜王・名人の活躍を見たらなんと言ったか。賞賛のなかに諧謔を加味して、私が考えもつかない表現で、藤井竜王・名人を称えたのではなかろうか。

②河口俊彦八段
河口八段は、私が敬愛する評論家のひとりである。もし存命なら、「対局日誌」を通じて、藤井竜王・名人を評してほしかったところ。
そのほか、観戦記から藤井評を知る方法もあった。それらを編集して単行本にすれば、「大山康晴の晩節」「羽生と渡辺」に並ぶ、いい藤井本ができたと思う。

③真部一男九段
真部九段も河口八段と同じ意味で、研究者目線から、藤井竜王・名人の将棋を見てもらいたかった。
真部九段はおのが将棋に自虐性があったので、よけい藤井評が際立ったと思われる。

④大山康晴十五世名人
大山十五世名人も、生きている時代が重なれば、なにがしかの藤井評を求められただろう。
そのとき大山十五世名人なら何と言うだろう。大山十五世名人は、棋力に加え人柄も見るから、藤井竜王・名人への評価は高かったと思われるが、あまりにも藤井竜王・名人が強いので、皮肉のひとつも言いそうなのが面白い。

⑤芹沢博文九段
芹沢九段は谷川将棋に心酔していたが、羽生九段の若手時代の将棋は、そこまで評価していなかった。
藤井竜王・名人はどうか。デビューからの圧倒的勝ちっぷりを見れば、その棋才を認めないわけにはいかないだろう。それをどう評しただろうか。
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2025年将棋界展望

2025-01-03 23:01:17 | 将棋雑記
2025年将棋界の展望を記してみる。
今年の将棋界も、藤井聡太竜王・名人を中心に回るのは間違いない。注目は再度の八冠なるかどうかで、王将と棋王を防衛後、叡王の挑戦者になり奪取する必要がある。
タイトル戦のリターンマッチは時の王者には必須で、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、羽生善治九段は何度もやってのけた。
現叡王の伊藤匠叡王は、叡王を奪取後10勝7敗で、可もなく不可もない成績。藤井竜王・名人が挑戦すれば、かなりの確率で奪取が見込める。
そして八冠王に返り咲けば、タイトル29期。谷川浩司十七世名人のタイトル27期を、22歳で抜くことになる。
そして今年、最終的に6タイトルを得れば、渡辺明九段のタイトル31期を、23歳で抜くことになる。
あらためて、すごい棋士が現れたものだ。
ただ、これをスンナリ許すようではいけないと思う。ほかの棋士も打倒藤井を目指さないと、別の意味で将棋界が衰退する。永瀬拓矢九段、佐々木勇気八段のように、すべてを犠牲にして藤井将棋の対策を立てるべきである。
女流棋界に目を転じると、今年も福間香奈女流五冠、西山朋佳女流三冠の戦いが主になるが、今年は中七海女流三段が割って入る。中女流三段は元奨励会三段で、両タイトル保持者に次ぐ、正真正銘の実力者だ。
中女流三段は12月19日のデビュー戦・女流名人戦予選1回戦で、川又咲紀女流初段に勝った。次の2回戦は加藤桃子女流四段で、これは恰好の試金石となる。
女流棋界も福間女流五冠と西山女流三冠にタイトルを牛耳られてはいけないが、それを阻むのが元奨励会三段の中女流三段というのもアレである。やはり、ほかの女流棋士が頑張らねばならない。
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