一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4期白玲戦第1局

2024-08-31 23:32:01 | 女流棋戦
ヒューリック杯第4期白玲戦七番勝負(主催:ヒューリック株式会社、日本将棋連盟)が始まった。タイトル保持者は西山朋佳白玲。挑戦者は福間香奈女流五冠である。思えば第1期は、西山女流三冠と渡部愛女流三段の七番勝負だった。結果は西山女流三冠の4-0。まるで、「私の敵は渡部さんじゃない。来期こそ里見さんが出てきなさい!」とでも言わんばかりの、西山女流三冠の圧勝劇だった。
果たして第2期は里見女流五冠が挑戦し、フルセットで奪取。すると翌第3期は西山女流三冠がリターンマッチし、同じくフルセットで奪取した。まさに竜虎の戦いで、言っちゃあなんだが、タイトル戦の結果がほぼ分かっている男性棋戦より、はるかにエキサイティングだ。
さて開幕局は東京都港区にて。西山白玲は艶やかな着物で、これが極道の妻たちを思わせる雰囲気で素晴らしい。この姿にホレて、私は西山白玲をファンランキングの1位に推したといっても過言ではない。
対して福間女流五冠は、タイトル戦とは思えぬラフな格好。このたび福間女流五冠が妊娠したので、負担軽減のため、椅子席での対局その他もろもろ、挑戦者の要望に沿ったわけだった。
思えば西山白玲は、倉敷藤花戦の挑戦者決定戦でも、妊娠中の室谷由紀女流三段と戦うことになっている(対局は出産後)。西山白玲としてはいまいましい??かもしれないが、相手の環境に関係なく、全力を尽くすのは間違いない。
将棋は後手西山白玲の三間飛車。これを見た後、福間女流五冠は中飛車に振った。だが、玉は左玉。これが素人目にはよく分からず、なぜ右玉にしないのだろうと思う。ただ、福間女流五冠はこの指し手でもいい勝率だそうで、それなら素人が外野で喚いてもしょうがない。
福間女流五冠は5筋の位を取る。パッと見、中央位取り戦法に見える。現在では消えた戦法のひとつに数えられるが、むかしは中原誠十六世名人、居飛車を持った大山康晴十五世名人の得意戦法だった。
西山白玲、△4五歩から△5四歩。森安秀光九段が得意としていた中央位取り破りで、ちょっと懐かしい気持ちになった。
西山白玲、桂損ながら飛車を成り、アマ同士なら後手が勝つところ。ところが、西山白玲が銀取りに歩を成ったのが、当然のようで疑問手というから将棋は難しい。
以下、福間女流五冠が快調に攻め、これは挑戦者が勝ったかに思われた。ところが、福間女流五冠が竜取りに馬を引いた手が大悪手。西山女流五冠に絶妙の返し技があり、形勢が相当詰まった。さっき書いたばかりだが、本当に将棋は難しい。
ここで福間女流五冠が最善手を指していればまだまだだったが、取り方を誤ったため、西山白玲の豪腕が炸裂した。以下は西山白玲が即詰みに討ち取り、先勝となった。
西山白玲が「4局で終わらせて、出産に専念させてあげる」と思っているかどうかは知らない。また福間女流五冠は、「主人の指輪も含めて、3人で戦っていく」と思っているかどうかは分からない。いずれにしても、第2局以降が楽しみだ。
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社団戦第3日目結果

2024-08-30 22:24:12 | 社団戦
25日に行われた社団戦の結果が公表されたので、記しておこう。
我が将棋ペンクラブは7部白で出場。この前まで8戦して4勝4敗。16チーム中6位だった。
そして第3日目は、

将棋ペンクラブ 5-2 SHIFT
将棋ペンクラブ 3-4 大野教室2
将棋ペンクラブ 7-0 将棋の森森チーム
将棋ペンクラブ 4-3 ねこまど

チーム3勝1敗は見事。大野教室2に負けたのはアレだが、まあ仕方ない。
順位は6位で変わらず。1位は12勝0敗、2位と3位は10勝2敗なので、将棋ペンクラブの昇級はほぼなくなった。
9月29日の最終戦は、私も何とか参加できそうである。精一杯頑張りたい。
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第65期王位戦第5局・第2日目

2024-08-29 22:26:35 | 男性棋戦
伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦第5局(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)、第2日目である。藤井聡太王位の封じ手は、やはり5筋の歩を突く手だった。が、その数手後の藤井王位の金打ちに、渡辺明九段は銀を打った。そうか! 角を取るなら取れ、という手だ。
飛金交換ならアレだが、角金交換は互角に近いところもある。渡辺九段、最善を尽くして形勢はほぼ互角だ。
ただどうであろう、指し手を考えていて、楽しいのは先手ではないだろうか。少なくとも、どうやって後手陣を攻めようか、考え甲斐がある。対して後手は、どう対処しても互角がいいところ、のイメージがある。
藤井王位は銀を呼び込み、端に角を打つ。天野宗歩の名角を引くまでもなく、端の異筋の角打ちは名角のニオイがする。
しかしこの角は、8筋の歩打ちで止められてしまった。ただ、後手はこれで8筋が渋滞し、飛車が不自由になった。果たして藤井王位は、7筋に銀を打って飛車を狙う。
渡辺九段、5筋に銀を打って最後の勝負に出る。ここで藤井王位が角を打ったのが決め手となった。以下は必然の手順を辿るが、このとき藤井王位の端角が、守りに利いてきた。これがもうひとつの狙いだったか!
王手に対する桂合いが絶妙だった第3局を引くまでもなく、藤井王位にはひとつの手に複数の意味を持たせる手が実に多い。目いっぱい駒を働かせるのだ。
つまり、双方が100点の手を指しても、藤井王位は150点の手を混ぜてくるので、藤井王位が有利になる理屈だ。
渡辺九段は金を打って肉薄するが、藤井王位は合い駒請求の飛車打ち。金打ちに、藤井王位は「逃げながら」桂を補充した。これもひとつでふたつの意味も持つ手だ。
最後はその桂を急所に打ち、渡辺九段投了。第4局につづき、藤井王位の快勝となった。
感想戦では、渡辺九段が首を垂れるというか、傾げるシーンが見られた。これはこのシリーズ全体の特徴だったと思う。快勝した第2局はいいとして、第1局と第3局は渡辺九段が勝っていてもおかしくなかった。結局終わってみれば1勝4敗での敗退で、これは当事者としては相当堪える。まったく渡辺九段、藤井王位の出現で、棋士人生の設計がすっかり狂ってしまった。
さて、藤井王位は22歳1ヶ月にして、永世王位の有資格者となった。先に得た永世棋聖と合わせ、早くも「永世二冠」である。タイトルを2つ獲ったわけではない。「永世」を2つ獲得したのだ。まったく、異次元の強さだ。
なお同日、藤井王位の師匠である杉本昌隆八段が第66期王位戦予選を戦ったが、阿部隆九段に敗れた。同じ日に師匠と弟子が、最悪の星と最高の栄誉を手にした。それもよかろう。
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第65期王位戦第5局・第1日目

2024-08-28 00:27:23 | 男性棋戦
伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦第5局が、27日より兵庫県・有馬温泉で始まった(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)。私は国内旅行が好きだが、温泉はそこまで熱心につからないので、有馬温泉に入った記憶はない。また、兵庫県に行くには鉄道が常道だが、現在はスカイマークが安価で兵庫県に通じているので、それを利用するのも手である。
さて、王位戦はここまで藤井聡太王位3勝、渡辺明九段1勝。ここまで渡辺九段がスコア以上に健闘しながら、この局はカド番になっている。裏を返せば、藤井王位の勝負強さがまざまざと出ている。
第5局は藤井王位の先手で、初手に飛車先の歩を突いた。渡辺九段は角道を開け、角道を止める。せめて豊島将之九段なら振り飛車も期待できるが、渡辺九段が振るはずもなく、雁木に落ち着いた。
そこで渡辺九段が大長考に沈む。なぜここで……?? 第3局の藤井王位の3時間10分の大長考もそうだったが、強者の長考ポイントはまったく分からない。
結局渡辺九段は1時間31分の考慮で7筋の歩を突いた。これも藤井王位の3時間10分の手と同じく、平凡な手だった。まあ、それはそうであろう。序盤でそんな奇抜な手は出ない。
対して藤井王位は、銀を出る「勝負手」。この手に、わずか8分しか使わなかった。これは3筋に歩を打たれる反撃があるので、私たちレヴェルではとても8分で指せない。だが藤井王位は、どの変化も対処できると読んでいる。いずれにしても、短考の決断も、藤井流といえる。
銀交換になったあと、渡辺九段は相手の歩頭に銀を打った。実はこの地点の銀は、私も女流棋士との指導対局で、何度か指している。一時的には駒損になるが、最終的にはどの変化も互角以上に指せた。
本局もそうで、藤井王位は銀打ちで受けた。渡辺九段は銀を成る。これを藤井王位が銀で取り返すと、千日手の懸念が生じる。そこで藤井王位は玉で取り返したわけだが、三段玉(ときには四段玉も)を苦にしないのも藤井流である。
渡辺九段が6筋の歩を伸ばし、ここで藤井王位が封じた。候補手は▲5六歩か。以下△4四角▲5五銀△同金▲同歩△同角▲5六金△4四角▲4五金なら、角が死んでいる。
まあそうはならないだろうが、でもほかの変化なら、どれも藤井王位が有利になるのではなかろうか。形勢は互角だが、藤井王位が指しよくなったように思われる。
(つづく)
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羽生九段、トン死

2024-08-27 21:24:49 | 将棋雑記
25日は思わぬ形で詐欺に遭ったので、帰宅してからも放心状態だった。それでも録画したビデオを見なければ、HDDに空きができない。それで見たのは「NHK杯将棋トーナメント」である。この日は羽生善治九段VS近藤誠也七段戦だ。
羽生九段はタイトル99期の生けるレジェンドで、藤井聡太竜王・名人といえども、まだ羽生九段のカリスマ性には及ばない。現在無冠ではあるが、50代時の大山康晴十五世名人に匹敵する存在感といえる。
対する近藤七段はB級1組所属で、「B級1組七段」が最も脂が乗っている時期ともいえる。1回戦では齊藤裕也四段に必敗の将棋を拾ったのが記憶に新しい。
この日の昼は、ネットニュースに「羽生九段、NHK杯で……」と出ており、仕事中の私は、その先を見ないようにした。最近は将棋の結果がニュースで知らされることもあるので、油断もスキもない。NHK杯の視聴前に結果を知ることは、犯人が分かっているのに探偵小説を読むのにも似て、これほど味消しなものはない。
将棋は近藤七段の先手で、横歩取りになった。羽生九段は先手を持っても後手を持っても横歩取りが強い。
羽生九段、角を換わってから同じ位置に角を打つ。そして3筋に歩を垂らしたのが軽手だった。これを▲同飛でも▲同銀でも後手が十分になるので近藤七段は桂を跳ねたが、羽生九段はゆうゆうと金を作って指しやすくなった。
以下羽生九段は自然な指し回しで優位を拡大する。羽生九段は現在4連敗中で、もしこの将棋に敗れると、収録日がどこであろうと5連敗になってしまうのだが、それは杞憂に思われた。
指し手はさらに進み、羽生九段は飛車で王手をし、近藤七段の桂合いに、1八の馬を3六に引いた。取られそうな馬を引きつつ詰めろだから自然な手だが、この瞬間、形勢バーが「近藤99:1羽生」になったので、私は「エエーッ!?」と叫んでしまった。「99:1」は、相手玉に即詰みがあることを意味する。
果たして近藤七段は角打ちから詰ましに行く。そのうち羽生九段も詰みに気づいたようで、あらぬ方角を見た。
以下、127手まで近藤七段の勝ち。1回戦に続いての逆転勝利である。
対局後、羽生九段は鈴木環那女流三段の問いかけに、「終盤は勝ちになったと思っていたんですが……」と、声を絞り出した。当然ながら自玉の詰み筋をうっかりしていたわけだが、不可解なのはその局面である。

図から角を打って桂打ちは、プロなら一目であろう。そしてその局面で先手の持駒は金銀桂。盤上にも金銀が何枚かおり、いかにも詰みそうな形だ。1986年2月3日・4日に指された第35期王将戦第3局指し直し局の長手順の詰みならいざ知らず、この局面で羽生九段が自玉の危機に無警戒だったのが信じられないのだ。
たとえば大山十五世名人は、どんなに優勢な局面でも、つねに盤面をくるくる見ていた。だから、即詰みを見落としたことがあっても、トン死を食らったことはないと思う。そこが羽生九段との差なのかもしれないが、羽生九段も来月には54歳。瞬発力も衰えてきているのかもしれない。
いずれにしても羽生九段、この負けはちょっと衝撃的だった。
羽生九段は、このまま普通の棋士になってしまうのか。今後の羽生九段の戦いに注目したい。
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