Hon氏とFuj氏が席を替わって、Kun氏とHon氏で対局開始。Hon氏の先手で、▲7六歩△3四歩▲6六歩に△3三角。早くも趣向が出た。数手後、相四間飛車になった。
私の向かいに座ったFuj氏は、私の目をまっすぐ見て将棋の話をする。それはいいのだが、私は隣の将棋が気になってしょうがない。
結果、Fuj氏の話に相槌を打ち、将棋を観戦するという、おかしな態勢になった。
Hon氏の得意は▲6七金型から穴熊に潜り、▲3八金・▲3九銀の簡易な囲いで済ませる変態的なものだが、きょうは美濃に組んでふつうの指し方をしている。
しかし相振り飛車ならKun氏の土俵だ。指し手もゆうゆうとしている。Hon氏、▲7五銀から6筋、8筋の歩を突き捨て、▲6四飛~▲8四飛~▲8五飛と捌く。先に銀を損して、▲5五角(と銀を取る)△同角▲同飛。しかし直後の△6四角が厳しかった。飛車が逃げれば△1九角成の香取りが厳しい。
実戦もそのように進み、Hon氏も反撃するが、▲4五飛と飛び出したのが一手バッタリ。△4四香と打ち返され、いくばくもなくHon氏の投了となった。
感想戦ではKun氏の「相フリ講座」のようになった。相フリは独特の将棋観が要求されるが、Kun氏の講義は論理的で分かりやすい。相手の左銀の位置によって囲いも変える、というくだりは思わず唸った。私は相振り飛車が得意ではないので、参考になった。
時刻は午後10時を回り、ここでHon氏が退席。
今度はFuj氏がKun氏に挑むことになった。私たちはつまみを頼む。時間的に、これが最後のオーダーだ。
Fuj氏の先手で、▲7六歩△3四歩に、▲6六歩。Fuj氏はジョナ研デビュー当時は、振り飛車と横歩取りを指さなかったので、これを見れば矢倉への誘導と思える。しかしKun氏は振り飛車党である。どうするかと見ていると、4手目△3三角に▲7八飛と振った。最近Fuj氏は振り飛車も勉強しているようで、当初からの作戦だった。Fuj氏といいHon氏といい、この研究熱心さには頭が下がる。
対してKun氏も向かい飛車に振り、またも相振り飛車となった。
しかしまたもやKun氏の土俵である。Fuj氏、浮き飛車から▲6六角と上がったが、何でもない手に見えたこの手が疑問手だった。すかさず△4五歩と開戦した手が機敏。やむない▲3三角成△同桂に、△8八角を防いで▲6六角と打つようではFuj氏、おもしろくなかった。
Kun氏、△7八角。△8七角成と、のちの△4五角成を見た好手。これでKun氏がよくなったようだ。
Fuj氏は大苦戦だが、△4五桂の金取りに、▲5五角と覗いた手が、一発逆転を秘めたFuj氏らしい手だった。
いまは後手飛車の横利きがあるが、桂が入れば▲7四桂の狙いが生じている。Kun氏は金を取り寄せに出るが、Fuj氏も決め手を与えない。遅まきながら端を破って、反撃を試みる。しかし△7一玉が当然ながら好手で、後手玉が広い。
ウエイトレスさんが食器を回収したり、灰皿を取り替えたりするが、私たちのピリピリムードに、困惑しているふうだ。
Kun氏は網を徐々に絞り、Fuj氏、絶体絶命。しかし▲3五銀~▲4四金~▲4三歩と手順を尽くして、▲4六玉がいい粘り。一手を争う名勝負となった。
ヒトの将棋ながら、この局面を以下に記そう。
先手・Fuj:1七歩、2五歩、3五銀、3六歩、3八銀、4三歩、4四金、4六玉、5六歩、6五歩、8二成桂、8四飛、8七歩、9九香 持駒:桂、香、歩3
後手・Kun:1四香、1五歩、1九竜、2六歩、3一玉、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、7四香、8一桂、9四歩 持駒:角2、金2、銀、桂、歩3
以下の指し手。△6六角▲7二成桂△5七角打▲4五玉△3五角成▲同歩△4四角▲4二銀△2一玉▲2四香△2二桂▲4四玉△5二金▲8一飛成△5一歩▲2二香成△同玉▲3三銀成 まで、Fuj氏の勝ち。
△6六角にFuj氏は▲7二成桂と銀を補充する。とうとうこの手が回った。
Kun氏は△5七角打から△4四角と金を取ったが、▲4二銀~▲2四香の利かしから▲8一飛成が厳しい。仕方のない△5一歩に、▲2二香成以下Fuj氏の勝ちとなった。
激闘の幕切れに私たちは放心したが、すぐ感想戦に入る。まず、△4四角では△3三桂で、先手玉に即詰みがあることが判明した。▲3三同金は△4四金。▲3四玉は△2三銀で、まだ金銀3枚があるから詰み。また▲5四玉も△5三歩で、どう応じても詰みとなる。
「そうかあー!!」とKun氏が天を仰ぐ。
序盤に戻り、中盤にかけて、いろいろ変化を突っつく。
さらに進んでKun氏が悔やんだのは、終盤で△7四飛と回ったあたりだ。▲7四桂を防ぐべく、どこかで△7四金と打つところ、とKun氏は主張した。
Kun氏は大野教室の生徒だが、もし大野先生だったらどう指すか、を考えながら指すと、いい手が浮かぶことがあるという。
△7四金はいかにも大野八一雄七段が指しそうな手だが、実戦的には打ちにくい。ましてや捌きのKun氏には似合わない手に見える。
しかしKun氏は、「いえ、ここは打たないと」と、何度も7四の地点に金を打ちつけた。
ともあれ、ファミレスで見るにはもったいない熱局で、観戦した側から言えば、ありがたいことだと思う。おふたりに感謝、であった。
時刻は11時半を過ぎていた。Kun氏の退席時間がだんだん遅くなっているが、ギリギリ大丈夫のようだ。
伝票の数字は「10,547円」になっていた。
きょうも濃密な時間だった。私たちは心地よい疲れを感じて、駒込ジョナサンを後にした。
私の向かいに座ったFuj氏は、私の目をまっすぐ見て将棋の話をする。それはいいのだが、私は隣の将棋が気になってしょうがない。
結果、Fuj氏の話に相槌を打ち、将棋を観戦するという、おかしな態勢になった。
Hon氏の得意は▲6七金型から穴熊に潜り、▲3八金・▲3九銀の簡易な囲いで済ませる変態的なものだが、きょうは美濃に組んでふつうの指し方をしている。
しかし相振り飛車ならKun氏の土俵だ。指し手もゆうゆうとしている。Hon氏、▲7五銀から6筋、8筋の歩を突き捨て、▲6四飛~▲8四飛~▲8五飛と捌く。先に銀を損して、▲5五角(と銀を取る)△同角▲同飛。しかし直後の△6四角が厳しかった。飛車が逃げれば△1九角成の香取りが厳しい。
実戦もそのように進み、Hon氏も反撃するが、▲4五飛と飛び出したのが一手バッタリ。△4四香と打ち返され、いくばくもなくHon氏の投了となった。
感想戦ではKun氏の「相フリ講座」のようになった。相フリは独特の将棋観が要求されるが、Kun氏の講義は論理的で分かりやすい。相手の左銀の位置によって囲いも変える、というくだりは思わず唸った。私は相振り飛車が得意ではないので、参考になった。
時刻は午後10時を回り、ここでHon氏が退席。
今度はFuj氏がKun氏に挑むことになった。私たちはつまみを頼む。時間的に、これが最後のオーダーだ。
Fuj氏の先手で、▲7六歩△3四歩に、▲6六歩。Fuj氏はジョナ研デビュー当時は、振り飛車と横歩取りを指さなかったので、これを見れば矢倉への誘導と思える。しかしKun氏は振り飛車党である。どうするかと見ていると、4手目△3三角に▲7八飛と振った。最近Fuj氏は振り飛車も勉強しているようで、当初からの作戦だった。Fuj氏といいHon氏といい、この研究熱心さには頭が下がる。
対してKun氏も向かい飛車に振り、またも相振り飛車となった。
しかしまたもやKun氏の土俵である。Fuj氏、浮き飛車から▲6六角と上がったが、何でもない手に見えたこの手が疑問手だった。すかさず△4五歩と開戦した手が機敏。やむない▲3三角成△同桂に、△8八角を防いで▲6六角と打つようではFuj氏、おもしろくなかった。
Kun氏、△7八角。△8七角成と、のちの△4五角成を見た好手。これでKun氏がよくなったようだ。
Fuj氏は大苦戦だが、△4五桂の金取りに、▲5五角と覗いた手が、一発逆転を秘めたFuj氏らしい手だった。
いまは後手飛車の横利きがあるが、桂が入れば▲7四桂の狙いが生じている。Kun氏は金を取り寄せに出るが、Fuj氏も決め手を与えない。遅まきながら端を破って、反撃を試みる。しかし△7一玉が当然ながら好手で、後手玉が広い。
ウエイトレスさんが食器を回収したり、灰皿を取り替えたりするが、私たちのピリピリムードに、困惑しているふうだ。
Kun氏は網を徐々に絞り、Fuj氏、絶体絶命。しかし▲3五銀~▲4四金~▲4三歩と手順を尽くして、▲4六玉がいい粘り。一手を争う名勝負となった。
ヒトの将棋ながら、この局面を以下に記そう。
先手・Fuj:1七歩、2五歩、3五銀、3六歩、3八銀、4三歩、4四金、4六玉、5六歩、6五歩、8二成桂、8四飛、8七歩、9九香 持駒:桂、香、歩3
後手・Kun:1四香、1五歩、1九竜、2六歩、3一玉、6一金、6三歩、7二銀、7三歩、7四香、8一桂、9四歩 持駒:角2、金2、銀、桂、歩3
以下の指し手。△6六角▲7二成桂△5七角打▲4五玉△3五角成▲同歩△4四角▲4二銀△2一玉▲2四香△2二桂▲4四玉△5二金▲8一飛成△5一歩▲2二香成△同玉▲3三銀成 まで、Fuj氏の勝ち。
△6六角にFuj氏は▲7二成桂と銀を補充する。とうとうこの手が回った。
Kun氏は△5七角打から△4四角と金を取ったが、▲4二銀~▲2四香の利かしから▲8一飛成が厳しい。仕方のない△5一歩に、▲2二香成以下Fuj氏の勝ちとなった。
激闘の幕切れに私たちは放心したが、すぐ感想戦に入る。まず、△4四角では△3三桂で、先手玉に即詰みがあることが判明した。▲3三同金は△4四金。▲3四玉は△2三銀で、まだ金銀3枚があるから詰み。また▲5四玉も△5三歩で、どう応じても詰みとなる。
「そうかあー!!」とKun氏が天を仰ぐ。
序盤に戻り、中盤にかけて、いろいろ変化を突っつく。
さらに進んでKun氏が悔やんだのは、終盤で△7四飛と回ったあたりだ。▲7四桂を防ぐべく、どこかで△7四金と打つところ、とKun氏は主張した。
Kun氏は大野教室の生徒だが、もし大野先生だったらどう指すか、を考えながら指すと、いい手が浮かぶことがあるという。
△7四金はいかにも大野八一雄七段が指しそうな手だが、実戦的には打ちにくい。ましてや捌きのKun氏には似合わない手に見える。
しかしKun氏は、「いえ、ここは打たないと」と、何度も7四の地点に金を打ちつけた。
ともあれ、ファミレスで見るにはもったいない熱局で、観戦した側から言えば、ありがたいことだと思う。おふたりに感謝、であった。
時刻は11時半を過ぎていた。Kun氏の退席時間がだんだん遅くなっているが、ギリギリ大丈夫のようだ。
伝票の数字は「10,547円」になっていた。
きょうも濃密な時間だった。私たちは心地よい疲れを感じて、駒込ジョナサンを後にした。