一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

将棋ペンクラブ関東交流会2011(後編)・楽しかった

2011-05-31 23:15:14 | 将棋ペンクラブ
大広間の後方では、マンガ家のバトルロイヤル風間氏が女性陣相手に似顔絵を描いている。将棋マンガで有名なバトル氏は、日本を代表する似顔絵作家でもある。対象者をパッと見ただけで瞬時に特徴を把握し、イラストにするウデは天下一品。バトル氏の名は、もっと全国に知られていい。
この日はとくに調子がよかったようで、筆ペンを駆使して描いた絵は対象者にそっくり。昨年末の「将棋寄席」では、船戸陽子女流二段相手にヘタをやったが、あのときの屈辱を晴らした形となった。
三浦弘行八段も見える。三浦八段も将棋ペンクラブ会員で、この日も直筆色紙を3枚持参してくれた。朴訥な印象があるが、一昨年の将棋ペンクラブ大賞でのスピーチは心温まるもので、会員からの評判もよかった。いつも陰から将棋ペンクラブを支えてくれる、愛すべき棋士である。
三浦八段は大広間の後方に座ったが、たちまち周りをファンが取り囲み、デジカメやケータイを構える。まるでタイトル奪取後の共同会見のようだ。
将棋女子は、プロ棋士を目の前にして、興奮を抑えきれないようだ。笑顔で三浦八段に話しかけている。三浦八段もとまどい気味だが、まんざらでもなさそうだ。やはり女性がいると、場が華やかになってよい。
右に、関西のS氏が来る。S氏は駒音掲示板の論客で、その鋭い切り込みにはファンも多い。昨年1月に大阪で行われた「LPSA1Dayトーナメント・Bin’s GATE CUP」に出向いたとき、S氏に声を掛けていただき、緊張がほぐれたことを憶えている。今年の関東交流会はほかにも関西からの出席者があり、とてもありがたいことであった。
S氏には女流棋士とのことでいろいろハッパを掛けられたが、私と女流棋士とは住む世界が違うし、なかなか進展はむずかしい。
今度は窪田義行六段が、先ほどの「会見席」に座らされている。やはり多くのデジカメやケータイが向けられている。将棋女子の楽しそうな顔。窪田六段はいつものむずかしい顔だが、弁舌も滑らかだ。
隣のトクタイ(特別対局室)では羽生善治名人・王座・棋聖と村山慈明五段の一戦が佳境を迎えている。私たちにはいっそうの沈黙が求められており、湯川博士統括幹事や湯川恵子さんが「シーッ」のゼスチャーを取る。しかし通夜振る舞いの席じゃあるまいし、これだけの人がいて静かにすることなど、とうてい無理な話だ。
勝又清和六段が見える。勝又六段も将棋ペンクラブ会員である。私は棋士にはあまり話しかけないのだが、勝又六段がすぐ左に座ったので、「将棋世界」連載「突き抜ける!現代将棋」執筆の苦労話などを聞く。と、すぐに別の人に呼ばれた。ここで勝又六段に好手が出る。
「すみません、いま大沢さんと話していたもので…」。
私の名前を呼んでくれたのが好手。一般将棋ファンがプロ棋士に名前を呼ばれるのは、うれしいもの。交流会の出席者には名札が付けられており、勝又六段がそれを見逃さなかったからだが、さすがにプロ棋士だと感心した。
私の向かいにTak氏が座る。Tak氏は某観戦記者の娘婿さん。年に1回この席で顔を合わせるが、いつも温厚で、とても好感が持てる方だ。
「大沢さん、今年は将棋の星が伸びなかったようで…」
と、ジャブをいただく。このフレーズは、ほかの人からも聞いた。みんな、ヒトの成績をよく憶えている。
Tak氏はすでに酒が入っていたが、さらに飲んでいるうち、次第に視線が定まらなくなってきた。相好が崩れ、饒舌になり、いつものTak氏ではない。Tak氏、酒が入ると人格が変わってしまうのだった。
並びの席にいた谷川治惠女流五段が、「あの大沢さん?」と声を上げる。顔を向けると、
「いつもブログ読んでます」
と私に言った。
女流棋士会元会長にこのブログを読んでいただいているとは、ありがたいことである。
だが私は女流棋士会の話はほとんど書かないし、書いても「山口恵梨子もグッショリグッショリ」とか「室谷由紀もグッショリグッショリグッショリ」とか、関係者が読んだらマユをひそめそうな記述ばかりで、申し訳なく思う。これは駒桜に入会しないとマズイだろうか。
けっきょく盛会の中、午後7時に懇親会は終了。Tak氏は大広間に大の字で寝転んでしまった。私は知らないフリをする。ともあれ今年は多くの将棋女子の参加があり、実に楽しい会だった。
二次会は、千駄ヶ谷駅から数分のところにある、中華料理店。参加人数は総勢40余名。田中寅彦九段の姿もあった。きょうはみんなにとことん付き合うハラらしい。店内奥の座敷をすべて借り切ったが、それでも席が足りなかった。
私の隣には例によってT氏が座る。彼は不思議と私の横に来る。対面には幹事のA氏。作家の顔も持つA氏とはいつも文章談議になり、とても勉強になる。ほどよく酒が入っているので、皆さん会話が滑らかだ。
ナナメ向かいに座ったKun氏がケータイを取りだす。羽生-村山の王位戦を観戦するためだ。一昔前では考えられなかったことで、まったく、便利な世の中になった。将棋は、村山五段が羽生玉を引きずり出し、詰めろをかけている。これは村山五段、勝勢か。
大阪のS氏が私の横に移動してくる。関西の人は話が上手なので、たちまち場がにぎやかになった。これが本当の交流会である。
いきなり大人数で押し掛けたので、店の人はてんてこまいだ。次回は予約の方法をもう少し考えたほうがいい。
王位戦は、羽生勝ちの情報が入り、みんな驚いた。直後に△4五角の名手が出たらしい。
Hak氏、Kun氏らが一足早く帰宅し、気が付くと周りに会員はいなくなり、私のテーブルにはS氏だけになった。ふたりだけだと、女流棋士の話にチカラが入ってしまう。S氏の「アドバイス」は熱いが、適当に相槌を打っておく。
と、湯川統括幹事が転がり込んできた。この店に入ったときからバタンキューだったが、ひと眠りして覚醒したようだ。
「キミにはもうひと皮剥けてもらいたいんだ」
湯川統括幹事が座った目で私に言う。「キミの文章は将棋に例えると県代表クラスなんだ。かなり強いほうの。しかしプロではない。ボクはキミに、プロになってもらいたいんだ」
これまた、いつものフレーズである。そこからひとしきり持論を述べると、湯川統括幹事は、
「とにかく次号も何か書いてくれ」
と言った。
何か原稿を書いてくれと言われてもなあ…。何でもいいから書け、と言われればいくらでも書ける。しかし「将棋ペン倶楽部」のステータスに堪えうる話は、相当構想を練らないと、無理だ。いや、参った。
というところで時刻は9時半になり、お開きとなった。楽しい時間にも終わりが来る。また来年までのお楽しみである。それまで皆さん、元気で。
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将棋ペンクラブ関東交流会2011(中編)・ホモ疑惑

2011-05-30 23:33:58 | 将棋ペンクラブ
先手・一公:1六歩、1九香、2九桂、3六歩、3七角、3八銀、3九玉、4七歩、4九金、5七歩、6八銀、7七桂、7八金、8六飛、8七歩、9六歩、9九香 持駒:歩4
後手・N五段:1一香、1四歩、2一桂、2二角、2三歩、3一王、3二金、3四歩、4二銀、5二金、5三歩、6二飛、6四銀、7三歩、8一桂、8三歩、9一香、9四歩 持駒:歩

ここで私の手番。私は当然のように▲8三飛成としたが、これがいま思えば次善手だった。
ここは▲7二歩が最善手と信じる。これで後手に指す手がないことを確かめられたい。勝負事は下駄を履くまで分からないが、将棋には絶対負けない形がある。こう指せば、先手は攻めの手に困らず、私の快勝で終わっていただろう。
実戦は▲8三飛成以下△8二歩▲8六竜となったが、やや局面が収まっている。この▲8六竜も緩手で、まだ▲8四竜と銀取りに当てるべきだった。
ここから先は、思い出すのも不愉快になる展開。こんなにいい将棋を、私の悪手連発とN氏の猛追で、大逆転負けとなったのだ。
私が投了すると、N氏が「どうもヒドイ将棋で…」と自嘲し、感想戦はなし。いやはや、この敗戦は痛かった。
呆然としつつ、船戸陽子女流二段の指導対局に目を転じる。現在は木村晋介将棋ペンクラブ会長が挑んでいる。しかし木村会長が頭を深く垂れ、盤面が見えない。もうちょっと顔を上げて、盤を広く見たらどうか。などと平会員の私が言ってはいけない。どの世界でも、会長の権威は絶大なのだ。
その傍らでは、女性同士の対局が行われている。ひとりは東京モンキーズ・Misakoさんだが、もう片方の超美人は誰だろう。タレントの梨沙帆と思いきや、よく見ると彼女ではない。将棋を見ると、ひねり飛車から攻勢を取って、立派な形になっている。いったい、彼女は何者なのか。
それにしても女性が多い。M幹事のブログによると、今回は多くの女性の参加が見込まれるとのことだったが、その記述に誤りはなく、現在は10名以上の女性が盤を挟んでいる。文章好きの集まりとはいえこれは椿事で、男ばかりの交流会を知る私には、目の前の光景が信じられない。「将棋女子」は、私の想像以上に増殖しているらしい。
まだ対局の時間はあるが、私と同程度の棋力の会員とは、あらかた指してしまったようだ。それを見かねて、某氏が練習将棋を申し込んできた。某氏には日頃からお世話になっており、もちろん快諾する。
その某氏は、将棋はあまり強くないようなことを言っていたが、いざ指してみたら、私の完敗だった。
ところが某氏は、私が手心を加えてくれたと取ったらしい。彼は感激の面持ち?で私の後ろに回ると、
「大沢さああーん!!」
と、抱きしめてきたのだった。
き…気持ちわりーナア、おい!!
そのまま交流対局は終了。この将棋は練習対局なので勝ち星は反映せず、結局私は、4勝4敗で終えた。
このあとは各人の成績発表と自己紹介である。ただ今年は参加人数が多かったため、自己紹介は割愛となった。
成績チェックの間、湯川博士統括幹事の小話。たとえ数分間でも、私たちを退屈させるようなことはしないのだ。
ただし声は小さい。隣の羽生善治名人・王座・棋聖と村山慈明五段の一戦は、中盤の難所だ。これから大広間はうるさくなるが、それをどこまで抑えられるのか。
私の前に座った方は、私のブログを愛読してくださっていた。コメントを書こうとしたこともあったが、気後れしてしまうという。しかしそんなにかしこまることはない。もっと気軽に書いてくれればいいのだ。
襖が開き、窪田義行六段が見える。窪田六段は将棋ペンクラブの古参会員であり、その個性的なキャラクターと芸術の香り漂う文章に、心酔するファンも多い。むろん私もそのひとりだ。
成績チェックが終わりいよいよ成績発表となったが、その前に本日の指導棋士が改めて紹介された。船戸女流二段は今年末の「将棋寄席」で、落語を披露してくれるそうだ。船戸女流二段の多芸多才は有名だが、その意欲はとどまるところを知らない。
成績トップは7戦全勝のN五段だった。私が8戦目に負けた相手だ。とすると、あれはけっこう重大な一戦だったのだ。返す返すも、惜しい将棋を落としたと思う。
私は4勝だったので、名前を呼ばれたのは後の方だった。早速賞品を選ぼうとすると、湯川統括幹事が私を捕まえて、
「彼は大沢さんといいまして、ペン倶楽部によく投稿してくれてます」
と、紹介してくれる。なんだか恥ずかしい。「それと、船戸陽子さんのファンです」。
とたんに、会場内に微苦笑が起こった。湯川統括幹事は私を紹介するとき、いつもこのフレーズを最後に付け加える。私はただただ、顔を赤くするしかなかった。
さて私がチョイスした賞品は、片上大輔五段(当時)の色紙。ただし落款が捺してなかったので、機会があったら頂戴したいと思う。
成績発表が終わると、テーブルを大広間に運び入れ、午後4時半、懇親会が始まった。参加者のほとんどがそのまま残り、その数は70名近くに上った。これは空前の数字である。ただ、肝心の船戸女流二段は、翌日に行われるLPSAイベントの準備があるとかで、ここで退席となった。私がいる意味が、半分なくなった。
乾杯のあと、私は部屋の隅でちびちびビールを飲む。ナナメ向かいに座った美人は磯部真季さんかと思いきや、落語家さんだった。いずれにしても美人なのだが、話しかける気力がない。
私が独りたそがれていたからか、先ほどの某氏が来てくれる。
「大沢さん、キャンプとか興味ある?」
「ないこともないですけど、まあ、ありますよ」
「今度いっしょに行かない?」
「ああ…いいですよ」
「じゃあ行こうよ」
「そうですね。あとは誰を呼ぶんですか?」
「うん? ボクとふたりだけだよ」
「ええっ? ふたりだけ!? それは…。ふたりで行って、何すんの」
「将棋を指すんだよ」
キャンプに行って、ふたりで将棋!? いやせっかくキャンプに行くのなら、もっと大人数でワイワイやるのがスジではないのか。某氏は結婚をしているはずだが、そっちのケがあるのだろうか。
ツーショットでのキャンプに臨む勇気は持ち合わせていないので、誠に申し訳ないが、某氏には丁重にお断りした。
(つづく)
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将棋ペンクラブ関東交流会2011(前編)・船戸陽子女流二段の美しさ

2011-05-29 02:05:55 | 将棋ペンクラブ
28日(土)は将棋ペンクラブ関東交流会が東京・将棋会館で催された。
予定では、自宅を午前9時半ごろに出て、将棋会館には開会時間の10時を少し過ぎたころにお邪魔するつもりだった。
ところが28日は朝から、6歳のめいと3歳のおいが遊びに来たので、すぐ家を出られなくなってしまった。余談だが、めいはプリティー、おいはイケメンで、どちらも芸能人の素質は十分。将来が楽しみなのである。
けっきょく9時50分ごろに自宅を出た。天気は朝から雨。そういえば今月7日(土)の将棋ペンクラブ大賞第一次選考会も雨だった。私が雨男なのは否定しないが、これだけ立て続けに悪天候が続くと、ペンクラブ幹事にも雨男がいると考えざるを得ない。
将棋会館に着いたのは10時33分。会場は4階の大広間だが、受付が例年と反対側だった。隣のトクタイ(特別対局室)で、王位戦白組プレーオフの羽生善治名人・王座・棋聖と村山慈明五段の一戦が行われていたからだ。私たちの声が対局室に聞こえないようにという応急措置である。
しかし、何でこんな事態になったのか。羽生名人が31日に名人戦第5局を控えていたためで、日程上この日にしか組み込めなかったらしい。本割で村山五段が羽生名人を仕留めていればこんな事態にはならなかったのだが、いまそれを言っても詮無い。私たちはせいぜい、おとなしく努めるだけである。
まずは交流対局。すでに20名前後がおり、雨にしては例年にない、出足のよさであった。
1局目は四段氏と。私の後手で、初手から▲3六歩△8四歩▲3五歩△8五歩と進む。中盤で私の金得になったが、四段氏の反撃もすごく、途中では逆転していたと思う。
終盤、四段氏が▲4五桂と△3三の角取りに打った手が敗着となった。私はすかさず△7七角成と金を取り、先手玉が即詰みになった。辛勝だったが、とりあえずは幸先のいい1勝を挙げた。
2局目、Kun氏が「こんにちは」と来る。手に手合いカードを持っている。なんと、Kun氏と手合いがついたのだった。今回は、LPSA芝浦サロン会員が何人か出席していて、Kun氏のほかにO氏、ミスター中飛車氏の顔があった。芝浦サロン会員でもあるHak幹事氏の営業の賜物でもあるが、参加者が増えるのは喜ばしいことである。
Kun氏のすぐ後ろに、本日の指導女流棋士である、船戸陽子女流二段(LPSA所属)の姿も見えたので、同時に挨拶。ワンピースからのぞく脚が、細く長い。目の覚めるような美しさとは、彼女のようなことをいう。前日のブログでは、松尾香織女流初段の美しさに云々と書いたが、やっぱり船戸女流二段の右に出る者はいないと、考えを改める。
なお女流棋士会からは谷川治惠女流五段、斎田晴子女流四段が出席してくださることになっていた。
Kun氏とは私の先手で、「横歩取り△3三桂」となった。Kun氏の得意は振り飛車だが、ときどき居飛車も指す。お互い飛車を左辺に振り、玉は右側に据える。さらに私は穴熊に組んだが、これがちっとも固くなかった。Kun氏に端を攻められ、こちらは防戦一方。Kun氏の△4四角に▲3六桂と飛車角両取りに打つ手を逃し、ここからはもうダメ。最後は惨敗した。最近Kun氏には勝った記憶がなく、若干負け下になっているのは反省の余地がある。
感想戦の最中、谷川女流五段と斎田女流四段が見えた。田中寅彦常務理事(九段)もいっしょである。
谷川女流五段は本年4月1日に五段昇段し、非常勤理事就任に花を添えた。女流棋士会会長の経験もあり、女流棋士の要的存在となっている。
斎田女流四段は前年に続いての指導対局登板。将棋ペンクラブの長年の会員でもあり、同会に最も理解を示している女流棋士といえる。
田中常務理事は、念願の理事返り咲き。生まれ変わった日本将棋連盟を応援してください、皆さんが将棋を後世に伝えてくださいと、熱っぽく語った。
さて船戸女流二段に指導対局を仰ぎたいところだが、あいにく3面が埋まっている。それよりここは女流棋士会棋士に指導を受けるのがスジであろう。谷川女流五段に手合わせ願いたいという会員がいたので、私は斎田女流四段との指導対局を所望した。
手合いは平手。角落ちはさすがに私に分があるだろうが、といって香落ちはこちらが指し慣れていない。結局、平手で教えてもらうことにした。
「そのバッジ、駒桜のものでしょうか?」
「いえ、これは女流棋士会のバッジです」
という軽い会話を経て、対局開始。斎田女流四段のゴキゲン中飛車に、私は6筋位取りの作戦を採った。前日松尾女流初段と指した将棋を下敷きにしたものだが、松尾女流初段のときと同様、6筋の位を奪還され、指しづらくなってしまった。
こうなっては、ジリ貧は免れない。最後は玉頭の厚み合戦に負け、たまらず私は駒を投じた。
斎田女流四段は、「まだ下手も指せるんじゃないですか…?」と慮ってくれたが、投了の局面から何手か指すと、たちまちこちらの玉が寄ってしまった。見た目以上に差が開いており、投了もやむを得なかった。
感想戦では、△4五歩▲同歩△同銀と1歩交換を許した手を真っ先に指摘された。ここで上手に1歩を手持ちにさせたため、上手の角道が通り、さらには△6四歩▲同歩に△6五歩と打たれる余地を与えてしまったからだ。戻って、△4四歩には▲3六銀と上がり△4五歩を拒否し、そのあとゆっくり駒組を進めれば、これからの将棋だったようだ。
いやしかし、さすがは斎田女流四段である。LPSA女流棋士との指導対局では出てこない序盤のアドバイスで、私は大いに勉強になった。
受付に行くと、傍らで田中九段が指導対局を行っていた。ファンを大事にする将棋連盟である。そのご厚意に頭が下がる思いだった。
昼の軽食を挟んで4局目は、「将棋世界」編集部のF氏と。角換わり系の将棋になりそうだったので、私は右玉に変化したのだが、すかさず端攻めをされ、またたく間に不利になった。
その後も互角に持ちこむ順があったのだが、私が戦意喪失しており、最善手を見つけられなかった。結果も私の早投げ。さすがに将棋世界編集部は強かった。
ここまで4局指して1勝3敗はよくない。トップ通過はむずかしくなってきた。
5局目は、長老格の三段氏と。対居飛車穴熊に、私は△6五歩と仕掛ける。▲同歩△7七角成▲同桂△6九角(7八の金取り)▲7九金△4七角成で、私の有利。そのまま押し切った。
室内にはいつの間にか人がいっぱいになっており、かつてない盛況ぶりだ。中でも女性の姿が、やけに目につく。
船戸女流二段を見やると、指導対局の真っ最中。船戸女流二段と私の初指導対局は、2007年のペンクラブ交流会だった。そのときの模様は「将棋ペン倶楽部」にも書いたが、それから現在まで、船戸女流二段にはちょうど50局、将棋を教えてもらった。当時はこんな数字になるとは夢にも思わなかったから、感慨深いものがある。「あこがれの女流棋士に将棋を教えていただける」。本当に私は幸せだと思う。
そして今回は51局目からの新たな1頁を、同じ将棋ペンクラブ交流会からスタートさせたいのだが、手合い係氏は、一般対局をどんどんつけてくる。
米長邦雄日本将棋連盟会長が挨拶に見えた。交流会に顔を出すヒマがないほど忙しいはずだが、これも公務と割り切っているのであろう。
6局目は、T四段と。角換わりのむずかしい将棋だったが、何とか勝ち。しかし私の寄せが強引で、T四段に最善を指されていたら、私が容易でなかった。
またも船戸女流二段に目が行く。相変わらず丁寧な指導ぶりだ。それほど短くないワンピースなのだが、正座をしているので、腿のあたりがわずかに見え、ついそちらに視線が行ってしまう。
7局目は三段氏と。横歩取り模様の出だしだったが、先手の三段氏がひねり飛車にスイッチしたので、私がそれを受ける展開になった。
先手・3九玉、4七歩、6六角、6七歩、7九飛。後手・2二角、5五桂の局面で、三段氏が▲8八角と引いたのが大落手。△4七桂不成まで、三段氏の投了となった。
後半盛り返し、4勝3敗。逆転の目がない将棋はあっさり投げ、勝ち将棋も素早く終え、まだ2時台ということもあって、最多勝の可能性が出てきた。
8局目はN五段と。「五段」は相当な強者である。難解な戦いになるだろうが、ここを勝てば最多勝当確と信じて、私は対局に臨んだ。
将棋は相居飛車になったが、五段氏の駒組に隙があり、私の大作戦勝ちになった。以下も無条件に飛車を成って、この将棋はもらったと思った。
ただ、当然と思えた飛車成りが次善手で、ここは決め手があったのだ。その局面の駒の配置を以下に記すので、今回ばかりは読者の皆さまも盤に並べて、お考えいただきたい。

先手・一公:1六歩、1九香、2九桂、3六歩、3七角、3八銀、3九玉、4七歩、4九金、5七歩、6八銀、7七桂、7八金、8六飛、8七歩、9六歩、9九香 持駒:歩4
後手・N五段:1一香、1四歩、2一桂、2二角、2三歩、3一王、3二金、3四歩、4二銀、5二金、5三歩、6二飛、6四銀、7三歩、8一桂、8三歩、9一香、9四歩 持駒:歩
(△6四銀まで)

(つづく)
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5月27日のLPSA芝浦サロン・松尾香織女流初段の美しさ

2011-05-28 02:08:16 | LPSA芝浦サロン
最近は仕事が午後4時で終わっているのだが、きのう27日(金)は、終業間際に配達の仕事が入った。ここに書くのもバカらしいのだが、得意先の社員がちょっとアレで、ウチはすっかり振り回されているのだ。
帰宅したのが、午後6時50分。品物を工場に運びいれたら、7時になっていた。
さて金曜日はLPSA芝浦サロンのある日である。芝浦サロンは月、水、金と営業しているから、何もこんな切羽詰まったときに行かなくてもいいのだが、27日の担当は松尾香織女流初段。きのうは、むしょうに松尾女流初段に会いたかった。将棋を教えてほしかった。それで、すぐさま田町へ向かった。
芝浦サロンに入ったのは午後7時40分。指導対局は7時半の回が最終だから、この遅刻は許容範囲である。旧金曜サロンの仲間はというと、Hon氏がいるのみ。もし彼がいなかったら、私は回れ右をして帰っていたかもしれない。
注目の松尾女流初段は白のワンピース。髪型は聖子ちゃんカットのようで、1980年代のアイドル歌手のようだった。
意外と知られていないが、私は松尾女流初段のファンである。今年2月に発表した女流棋士ファンランキングでも、堂々の6位につけている。人妻だけで括れば、中井広恵女流六段に次いでの2位なのだ。あれはいつの指導対局だったか、松尾女流初段が序盤で大悪手を指し、私がそれを咎め損ねたときがあった。そのとき松尾女流初段に、
「…大沢サン、私のこと好きでしょー」
と聞かれた。勝負の場で手心を加えるなんて、大沢さん、私に気があるのね? というわけだ。
事情が分からない私は、とまどいつつ、
「…好きですよ」
と答えたのだった。この気持ちに偽りはないが、あまり負けが混むと、親愛の情も薄れる。
対局前に軽い雑談。松尾女流初段は、私が来ないものだから、また旧金曜サロンの有志が駒込ジョナサンで研究会を開いていると思ったらしい。しかしジョナ研は先週開いたばかりで、さすがに2週連続は、ない。彼らの出席率が悪いのは、たんに芝浦サロンに魅力を感じていないからではなかろうか。
「いやいや、きょうは松尾先生だから来たんですよ。これがフナトヨーコだったら、来なかった」
これから指導対局があるので、私はそう言って松尾女流初段を喜ばせる。もう、芋焼酎勝負第3局は始まっているのだ。
「またー」
と松尾女流初段は苦笑するが、うれしそうだ。これでよい。
「女流王座戦、(次に)勝ったら何かプレゼントして」
と、さらに松尾女流初段。
そこで次の対局相手を聞くと、中村桃子女流1級だった。これは微妙な相手である。大いに迷ったのだが、松尾女流初段が中村女流1級に勝ったら、酒のつまみになるようなものをプレゼントすることにした。頑張ってほしい。
芋焼酎勝負第3局のあとも、雑談。松尾女流初段は先日、中井女流六段とともにアメリカへ将棋の普及に行っていたらしい。よほどリフレッシュできたのか、きのうは顔色もよく、肌もつやつやしていて、一段と綺麗だった。
放課後は、Hon氏と喫茶店へ。奇しくも先々週にW氏、Y氏と入った店だ。
なかなかユニークな奥さまをお持ちのHon氏は、侠気あふれる人物だ。今回も彼の話を聞いて、私なぞは彼の足もとにも及ばないと痛感した。
Hon氏とは帰りも同じ電車。私の降りる最寄駅で、Hon氏が
「私が40歳のときだったかなあ…」
と、ちょっと面白そうな話を始めたのだが、そこで私は下車してしまった。Hon氏と次に会ったときは、是非この続きを聞きたい。
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LPSA芝浦サロン・中倉宏美女流二段2

2011-05-27 00:24:07 | LPSA芝浦サロン
以下は中倉宏美女流二段との指導対局の一場面。私の圧倒的優勢だったが…。
上手・宏美女流二段:1一香、1三歩、2二飛、2三歩、5三銀、5七歩、6一金、6四歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二王、8三歩、8四馬、9八成香 持駒:香、歩3
下手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2六飛、3三馬、3五銀、3七桂、4五歩、5六銀、5九金、6七歩、6九金、7六歩、7八玉、8七歩、8九桂 持駒:金、桂、歩3
(▲3三同角成まで)

昨年12月10日(金)のLPSA芝浦サロンは、前半(午後2時~5時)が中倉彰子女流初段、後半(午後6時~9時)が中倉宏美女流二段の担当だった。
旧LPSA金曜サロンでは1日に2人の女流棋士が担当していたから、今回と同じスタイルだった。料金を比較すると、金曜サロンは1日3,000円だったが、芝浦サロンは3,500円。さらに芝浦サロンは、2人目の女流棋士と対局すると、おかわり料金1,000円が発生する。それだけの出費に見合うと思えば指導対局を仰ぐし、高いと思えば客足は遠のく。会員の反応は正直である。
今回とりあえず私は、追加の1,000円を払って宏美女流二段との指導対局に臨んだ。なお本日はこれが一般対局を含め6局目。いまでは考えられない局数である。
LPSA女流棋士の平手戦指導対局は、大別してふたつに分かれる。公式戦のごとく自分の得意形で指すタイプと、ふだん指さない将棋を試してみるタイプである。宏美女流二段は明らかに前者に属する。棋力が離れているアマとの平手戦でも、公式戦と変わらぬ戦法を採る。私との対局も本気モードだった。
この日の宏美女流二段は、ピンクの上衣に黒のショートパンツ、UGGを履いていた。昨今の宏美女流二段は、ちょっとソソられるコーディネートが多く、この日も会員からヤンヤヤンヤの喝采を浴びていた。
将棋は私の居飛車に、宏美女流二段の三間飛車。もし居飛車穴熊に組めば真部流△6四銀とくるだろう。しかし私は穴熊は指さない。
私は▲5七銀左から▲4六歩と急戦に出る。もし△4二飛なら▲4五歩だが、宏美女流二段は△2二飛。これも宏美システムのひとつである。
私は▲5五歩から▲4五歩と仕掛ける。さらに▲3五歩の突き捨てから▲5六銀と歩を入手し、次の▲3四歩を狙う。実戦もそれが実現して、大いに優勢になった。それが冒頭の局面である。
ここでは完全に温泉気分。以下△6二飛▲1一馬△9六歩▲8六香△9四馬▲8五金、と進んだ。△6二飛に▲1一馬と香得し、ますます快調。しかし最後の▲8五金が、ココセのようなイモ手だった。以前も宏美女流二段とこんな展開になり、やはりイモ金を打ったことがあるが、ちっとも学習していない。だいたい、こんな手を指して幸せになった人はいない。結局私が、バカなのだ。
ここから43手後、宏美女流二段の114手目△7六成香を見て、私は駒を投じた。投了図の駒の配置は下。

上手・宏美女流二段:1三歩、2三歩、5三銀、5五香、6一金、6四飛、7一王、7二銀、7三歩、7六成香、7七角、8一馬、8三歩 持駒:香、歩8
下手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2六飛、3五銀、3七桂、4五歩、5六歩、5七玉、5九金、6六歩、6七銀、6九金、8五桂、9三歩、9四桂、9五金 持駒:桂
(△7六成香まで)

冒頭の局面からひとつも動いていない右辺の駒、団子状になっている左辺の駒が見るも無残だ。まったく、ひどい終盤だった。
中倉姉妹に、ともに114手で往復ビンタを喰らってしまったが、ちょっと嬉しい私であった。

将棋ペンクラブ関東交流会まで、あと1日。
コメント (4)
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