一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

中野隆義さん、逝去

2017-05-31 12:00:12 | 愛棋家
昨夜、将棋ペンクラブ幹事・M氏のブログを見たら、「中野隆義さん逝去」のタイトルがあったのでびっくりした。
見ると、29日に旅先の鬼怒川温泉で、心疾患により亡くなったという。享年65。
あまりのことに、私は言葉も出なかった。だって、つい先日の将棋ペンクラブ関東交流会で、私は中野さんと将棋を指したばかりなのだ。
中野さんは相変わらず酔っぱらっているような、飄々とした感じで捉えどころがなかったが、もちろん将棋は強く、その時も私は早々に敗勢になったものだ。体調不良など微塵も感じさせず、いつもの中野さんだった。それだけに今回の報は衝撃だった。まったく、訳が分からない。ヒトの命は、こうも簡単に潰えてしまうものなのだろうか。
中野さんは1990年代後半から「近代将棋」の編集長を務められた。しかしその頃は近代将棋の売り上げも右肩下がりで、相当なご苦労があったようである。
2008年、近代将棋休刊。老舗雑誌の休刊により、ひとつの時代が終わった。
それから中野さんとは、将棋ペンクラブの関東交流会や大賞贈呈式で顔を合わせることとなった。
傍らにはいつも団鬼六氏がいて、氏のお伴のような雰囲気があった。また、二上達也将棋ペンクラブ名誉会長にも寄り添い、そっと手を貸していたイメージもある。
そんな中野さんには「将棋を指しても勝ちに行かない」という都市伝説があった。
すなわち勝勢になっても相手に勝ちを譲るというのである。実際私も必敗の将棋を何度か拾い、先日の将棋も私が逆転勝ちしていた。これを好意的に解釈すると、近代将棋の読者に勝ってはいけない、というポリシーがあったことになるが、そこはやはり都市伝説で、実際は終盤のポカが多かったということだろう。今回中野さんは、おのが人生でそれをやってしまった。
でも天国には、永井英明・近代将棋初代編集長、団鬼六氏、二上名誉会長、大山康晴十五世名人ほか昵懇の棋士が数十人もいて、あちらの方が楽しそうではある。
それにしたって中野さん、ちょっとおっちょこちょいだよ。逝き急ぎすぎる。もうちょっとこの世で生きていたって、何の不都合もなかったんじゃないですか?
まったく、中野さんが亡くなった実感がまるでない。今年のペンクラブ大賞贈呈式には、中野さんが「どうも」とフラリと帰ってきそうな気がするのだが、こう思っているのは私だけだろうか。嗚呼…!
飄々人生の達人に、合掌。

お通夜は6月1日(木)午後6時から、葬儀は2日(金)午前9時から、「千代田赤羽駅南口ホール」(東京都北区赤羽南2-9-78、JR赤羽駅南口より、線路沿いに徒歩8分)で執り行われるようです。私も中野さんの旅立ちを見送ってくるつもりです。
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5月12日の大野金曜教室(後編)

2017-05-31 00:05:43 | 新・大野教室
U君は先日の埼玉県中学生竜王戦で優勝したらしい。棋力は将棋会館道場で五段で、大野教室のホープの一人である。
私の先手で▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩。U君は矢倉党なのでウソ矢倉が多い。かつてこの展開になった時、私はふつうに矢倉に組んで負けたのだが、感想戦で、急戦で攻めたらどうするつもりか聞いたら、それはそれで仕方ない、みたいなことを言った。
それで本局は左美濃から右四間飛車に構えた。
佐藤氏、Fuj氏が来たようである。平日の夜といえども、来るべき人が来るのだ。
U君は金銀四枚を集結し、専守防衛の構え。私は積極的に攻撃態勢を敷き、悪くないと思った。
以下私に重大な手順前後があったのだがそれが通り、私がまだ優位を持続していると思った。
だがU君も駒損を承知で角金交換をしてくる。以前も書いたが、この取引は損得なしと思う。形勢も互角、いや気が付けば私のほうが悪くなっていた。
U君は△3七歩と、飛頭に一本叩く。

第1図以下の指し手。▲3七同飛△7七歩▲同桂△6七金▲6八歩△7八金▲同玉△7六銀(第2図)

先ほどの大野八一雄―Kaz戦は、中盤戦たけなわというところで水入り。せっかくの機会なので、Kaz氏とKさんが指すことになった。
局面。△3七歩に、飛車の横利きはなくなるが、▲同飛よりない。するとU君は△7七歩。これも手筋だが、私は▲同桂。1歩をもらって銀取りになるのだから、悪くないだろう。
△6七金。ここで▲同金△同歩成▲2二金を考えたが、わずかに詰まない。
そこで秒読みの中▲6八歩と受けたが、△7八金▲同玉△7六銀で、さっきより局面が悪くなってしまった。

第2図以下の指し手。▲2二金△同金▲同角成△同玉▲3三銀△同桂▲同歩成△同銀▲3一角△2一玉(投了図)
まで、U君の勝ち。

私は▲2二金から迫ったが、▲3一角に△2一玉と引かれて詰まず、ここで投げた。

感想戦は終盤のやり取りから入ったが、▲6八歩で▲6五桂と銀を取る手を指摘された。
そうだ、▲7七同桂が銀に当たっていたことをすっかり忘れていた。以下△6五同桂▲6七金△同歩成▲2二金。
今度は銀が1枚多いから話が全然違う。以下△2二同金▲同角成△同玉▲3三銀△同桂▲同歩成△同銀▲3一角△2一玉▲2二銀△同飛▲同角成△同玉▲3三飛成△同玉▲4五桂△4四玉▲5三銀△3五玉▲3六金△同玉▲3七飛△2五玉▲3五金(参考図)△2六玉▲3六金。何と、後手玉が詰んでしまった。

いやいやそれはないだろう、U君が何か悪手を指したんだろう? と突っつくと、U君が△6七金に代えて△6七銀を示した。煩雑は避けるが、これなら先手が同じ順で迫っても後手玉がわずかに詰まず、しかも後手は金を残したので、△7七金~△8七飛成の筋が生じて詰めろになっているのだ。
ほかの変化もつぶさに調べるが、いずれも私が負ける。よって私の唯一の勝ち筋は、先の「▲6五桂△同桂▲6七金△同歩成▲2二金」だったようだ。
何だか知らないが、U君との将棋は、私に勝ち筋があるのに私が見つけられない、というパターンが多い。まったくいまいましい。

続けてKさんと対局。先ほどのKaz―K戦は、Kaz氏がKさんの中飛車を封じて快勝したようだ。Kaz氏、勝利のためなら手段を選ばないのであった。
私の後手で対局開始。▲5六歩には△5四歩。中飛車に5筋の位を取られると居飛車不愉快、は私が先日出した結論である。
私は加藤流袖飛車を目指したが、気が変わって△6四銀と出た。

第1図以下の指し手。△7六歩▲同銀△7五歩▲6七銀△7二飛▲6八角△4二銀▲4六角△7四飛▲6五歩△同銀▲9一角成△9九角成▲8一馬△8九馬(第2図)

私は△7六歩▲同銀に△7五歩と押さえ、△7二飛と回る。Kさんは角を4六に転回した。
さすがの迎撃で、この順があるなら、どこかで▲4六歩を突かせるべきだった。
△7三桂が来る前に▲6五歩も機敏。私は△同銀と取るよりないが、以下お互い桂香を取り合って形勢はどうか。私は△3二玉型が気に食わないが、先手の飛車銀がやや釘付けになっているので、悪くないと思っていた。

第2図以下の指し手。▲5八銀△7六歩▲6三馬△6二歩▲7四馬△同銀▲7六飛(第3図)

Kさんの▲5八銀が渋い。ここで△6六桂▲6八飛△5八桂成▲同金左は先手の思うツボと見て、私は△7六歩と伸ばしたのだが、これがマズかった。
Kさんは▲6三馬から飛車を取り、▲7六飛(第3図)と飛びだす。先の△7六歩がまるっきりのお手伝いで、いっぺんに形勢を損ねてしまった。

この後Kさんは三段目に飛車を成り、▲6五歩△5三銀▲4五桂△4四銀▲5三桂打△同銀引▲同桂不成△同銀▲同竜と進行。以下しっかりと寄せられた。
Kさんは序盤から自信がない局面と言った。私も悪くないと思っていたのだが、感想戦を進めると、私が意外によくならない。それで大野八一雄七段に見てもらうと、そもそも第2図の局面が先手よし、とのことだった。
「お互い桂香を拾ってるんだから、玉が1路遠い分、先手がいいじゃない」
そうかそうか! これではいくらやっても後手がよくならないわけである。「大沢さんの△7五歩が悪かったんでしょ」
ここは△7二飛と回る一手だったらしい。
ちなみに第2図での大野七段の推奨手は、▲6八金!(参考図) 以下△7八馬なら▲同銀と取り、すべての駒が捌けて先手優勢とのことだった。

あ~ダメだダメだ、と私が嘆いて感想戦終了。今夜は4局指して全敗だった。

軽食は、大野七段、W氏、Fuj氏、Kaz氏、私の5人で日高屋に行った。
私は公私ともに冴えず、どうにも景気がよくない。1週間仕事をしたあとの将棋は楽しいが、怠惰な生活で教室に来ても、何の充実感もないことを痛感した。
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5月12日の大野金曜教室(前編)

2017-05-30 00:30:32 | 新・大野教室
12日(金)は、「大野金曜教室」に行った。
教室は午後6時から10時まで。川口駅に着いた時点で6時は過ぎていたが、駅構内で立ち食いそばを食べた。今ではこれがひとつのスタイルになっている。
教室に6時半ごろ入ると、何人かいた。うちひとりは研修会員のKさんで、今日も真摯に盤に向かっていた。
「おお大沢さん、いいところに来た。あとでホームページを見てもらえば分かるけど、熊倉さんの指導対局を7月に入れましたよ。申し込むんでしょ?」
と大野八一雄七段。
「熊倉さん? 熊倉さんって誰ですか。熊倉紫野さんは4月30日で消滅しましたよ。ミヤソウなんて人と指す意味がありません」
「まあそう言わないで」
まったく、あの結婚の報はショッキングだった。女流棋士の結婚はめでたいことだが、いつも虚を衝かれるので、女流棋士ファンはそのたびに狼狽する。
申し込みはとりあえず保留して、大野七段に角落ちで教えていただく。
私の作戦は▲2五飛戦法だ。これ、初見の上手にはけっこう通用するのだが、大野七段にはすっかり手の内を見透かされていて、最近はうまくいっていない。
右のKさんは飛車落ちの手合い。どう見ても角の手合いに思うのだが、研修会での対棋士だと、飛車や飛車香落ちになる。プロが本気を出すとそういうことになるわけだ。
さらにその右の見慣れぬ青年には、大野七段が二枚落ちの定跡を教えていた。
「自由に指していいんですけど、とにかく▲4五の位だけは取るように」。
Kさんは飛車を切ってしまったが、馬と銀で食いついて、意外に勝負になっている。研修会員といえどもプロの卵で、さすがに手の作り方がうまい。
そこにKaz氏が来た。多忙のKaz氏が平日に来るとは珍しいが、仕事は大丈夫なのだろうか。彼は私の左で対局を始めた。
私は▲3五歩と伸ばす。△3四歩と突かせないためだが、その後▲7五歩と伸ばしたのは疑問で、やや作戦が分裂した。大野七段が△7四歩と反発して第1図。

第1図以下の指し手。▲8六飛△8五歩▲7六飛△7五歩▲同飛△7四歩▲7六飛△3五銀(第2図)

▲8六飛で△8五歩と謝らせて▲7六飛。ここで△7二飛なら▲7四歩△同金▲4四角△同歩▲6三銀で下手必勝と考えていたが、もちろんそうはならず△7五歩。
以下▲同飛に△7四歩と収めてから△3五銀とされ、焦った私は悪手を指す。

第2図以下の指し手。▲7五歩△7二飛▲7四歩△同金▲5六飛△6五金(投了図)
まで、大野七段の勝ち。

私は▲7五歩と合わせた。△同歩なら▲同飛で銀取りと飛車成のどちらかが実現する。
大野七段は△7二飛と寄り、▲7四歩△同金となったところで誤算に気付いた。
すなわち、ここで▲3六歩と打ち△4四銀なら▲同角~▲6三銀で良いが、▲3六歩の瞬間に△7五歩と打たれて下手いけない。
それで▲5六飛と避難したのだが、△6五金とされてシビれた。▲5四飛は△5三歩だし、▲1六飛も△1四歩で未来がない。よってここで投了した。
感想戦。やはり私の▲7五歩が動きすぎで、▲4六歩~▲4五歩からじっくり指せばよかったとのこと。
最近の大野七段との指導対局は、終盤までいかず投げるケースが多い。昔はもう少し抵抗できていたのだが、根気がなくなってきたのだろうか。

2局目は、さっきの青年と指す。私の二枚落ちである。
「△5五歩止めとかやめてよね」
とW氏が笑う。それは承知の上である。
対局開始。私はふつうに上手定跡を進める。青年の手つきはたどたどしいが、銀多伝に組み、今定跡を教わったとは思えぬ正確さで進めてきた。
私は右金を駆使し何とか嫌味をつけるが、だいぶ無理をしている。
青年は▲9九に飛車を回り、迎撃の態勢。私は△9七歩成。ここで青年に悪手が出た。
▲9七同角がそれで、ここはふつうに▲9七同香でよかった。
私はありがたく角を取ったが…。

第1図以下の指し手。△7七歩▲7九金△6六角▲6八香△7五角▲6四歩△同銀▲同香△同角▲6五歩△7五角▲6四銀
以下、青年氏の勝ち。

私は△7七歩と打ったのだが、つまらなかった。
ここは何はともあれ△3五桂(参考図)だった。これに▲3六銀なら△5六角。▲3五同銀なら△同銀。▲5六銀なら△2七角▲3九玉△3六角成で、いずれも上手が十分だった。

本譜は角を取り返されたのが痛い。以下▲5六銀の力強い援軍も出て、青年の快勝となった。
青年の勝利を讃えて、投了図を載せておこう。

Kさんは大野七段に勝ったようだ。あの局面から勝ち切ったのはすごい。Kさん、次からは角の手合いで指すのがよい。
ここで一休み。W氏が言うには、青年氏は、ネットでの対局経験はあるという。最近はそのパターンが多いようで、手つきでの強弱を判断できなくなっている。私が数年前に「将棋ペン倶楽部」に予言したものが、現実になってしまった。
大野―Kaz戦はKaz氏が珍しく飛車を振っていた。今は膠着状態で、千日手模様になっている。腰の重い者同士が指すと、往々にしてこういう展開になるのだ。
Kaz氏は▲1八香から穴熊に潜ったが、これは本意ではあるまい。
佐藤氏が見えた。佐藤氏に教えてもらう手もあるが、私はU君と指すことにした。
(つづく)
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今朝見た夢(2017.05.27)

2017-05-29 01:12:59 | 
27日朝に見た夢を記しておく。
私は列車に乗っていた。車窓は海で、場所は東京都内の湾岸地域らしく、列車は高架を走っていた。
列車がどこかに着いて、みんなが降りた。列車の椅子は鉄パイプの簡易的なもので、取り外しが可能になっていた。それを駅員が外していた。
駅から地上に降りるには四角い柱に巻き付くようにしてスロープがあり、そこを下る。ただし壁や柵の類はなく、外が丸見え。そこから落ちたら一巻の終わりだ。
場面が変わり、また私は同じ列車に乗っていて、今度はそれが最終列車だった。最終列車なのに外は明るく、終点に着いて私たちは下車した。
今度も地上に降りるためスロープ状の道を下るが、今度は道幅が50センチほどしかなく、やっぱり壁や柵はなかった。しかもその道が道側に傾斜しているので、そろそろと下りなければ転落してしまう。
しかし私の後ろでは、列車の座席を持った駅員が、先を急げと私をせかす。
私は落ちそうになって、私は左の足元から突き出ている金属の棒に掴まろうとしたが、幸いそうすることなく、地上に降りることができた。ほかの乗客も、無事地上に下りられたようである。
というところで、何となく目が覚めた。

なんでこんな夢を見たか。全体的に何かにせかされている感じや、スロープの道幅が50センチしかないのは、私が現在崖っぷちの状態だからだろう。
またスロープを下りる構造は、鹿児島県吹上浜・砂の祭典会場にある展望台のそれに何となく似ていたが、それが夢になって現れたと思う。
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第6回シモキタ名人戦(後編)

2017-05-28 00:51:01 | 将棋イベント
まだトークは続いているが、私の対局が迫ってきたので、そちらに向かう。
Shin氏は櫛田陽一七段に何とか勝ったようだ。
指導対局を終えた熊倉紫野女流初段が休憩で引き揚げる。次も「3」に戻ってくるかどうか分からないが、別の棋士になったらなったで仕方ない。
所定の席に座ると、休憩を終えた熊倉女流初段が私の真正面に座った。ドンピシャ読み通りで、私は感激する。
「(先生も駒落ちより)平手を指したいですよね?」
と私は生意気を言い、平手でお願いする。右にはTag氏が座り、飛車落ち。左氏も何かを落としてもらっていた。
一斉に対局開始。私のところは▲7六歩△8四歩。ここがひとつの分岐点だが、私は▲6八銀とし、矢倉を目指した。熊倉女流初段はかつて振り飛車党だったが現在は居飛車党で、師匠譲りの矢倉を得意としている。ちなみに私たち2人の対戦成績は平手で1勝1敗。いずれも矢倉戦だった。
本局も相矢倉となったが、熊倉女流初段は急戦ではなく、ふつうに金矢倉を築城した。私はスズメ刺しの体勢を取りたいが、その前に△7五歩こられた。私はこう来られるのがいちばんイヤだ。
▲同歩△同角に私は気合で▲6五歩だが、右銀が4八なので、▲6五歩を支えるには左銀が▲6六に上がるよりなく、いささかおもしろくなかった。
△6二飛には、▲6五の地点を強化するため▲7七桂。今度は端が薄くなって、微妙に作戦負けに陥った気がした。
熊倉女流初段は△6四歩。

第1図以下の指し手。▲6四同歩△同銀▲6五歩△7三銀▲2九飛△7四銀▲7九玉△9四歩▲4六角△9二飛▲2五桂△2四銀▲8八玉△9五歩▲5七銀(第2図)

熊倉女流初段は相変わらずのかわいらしさ。といっても見とれていると指し手に影響するので、盤に集中する。
私は▲6四同歩と取り、数手後の△9四歩まで。ここで▲7五歩と指したかったが、△同銀▲同銀△同角が4八銀に当たる。この時▲2八飛型なら▲6四銀で角を殺すことができたのだが…。
それで▲4六角と出る。熊倉女流初段は△9二飛と回ったが、飛車を端に追いやって、悪くないと思った。
が、熊倉女流初段は端歩を伸ばす。さすがにイヤなところを狙ってきて、これでは▲4六角がお手伝いになってしまった。
もっとも私は、▲8八玉で受け切れると読んだのだが…。

第2図以下の指し手。△9六歩▲同歩△9七歩▲同香△同角成(投了図)
まで、62手で熊倉女流初段の勝ち。

熊倉女流初段は△9六歩。▲同歩には歩の連打かと思ったが、熊倉女流初段は△9七歩とひとつ控えて打った。
私は▲9七同香と取る。ここで△同角成と来ても、▲同玉△9六飛▲8八玉に△9九飛成は、▲2九飛の横利きで受かる。熊倉先生、どう指すのだろうと思った。
…あれッ? 今の手順中、△9九飛成のところで、1マス控えて△9八飛成がある!(参考図)

以下▲7九玉△9九竜▲6八玉△2九竜は下手敗勢である。
私が混乱している間に、△9七同角成が飛んできた。ダメだこれ!
「負けました!」
「えっ!?」
驚いたのは右のTag氏で、こちらを覗き込む。「いい勝負だったじゃないですか」
「いかん見落とした、うっかりした!」
私の嘆きに呼応して、熊倉女流初段が言う。
「(…△9八飛成▲7九玉)△9九竜に▲8九角と受ける一手ですが、△9八香成でそちらがつらいですね」
ああ、▲6八玉では▲8九角もあったか。でも熊倉女流初段ご指摘のとおり、△9八香成で下手望みがない。
「どこかで▲7五歩と打たれるかと思いました」
と熊倉女流初段。
「そう打ちたかったんですけど、△同銀▲同銀△同角で4八銀に当たってくるのが誤算でして…」
「こちらも▲2五桂からの爆弾を抱えているので、ヒヤヒヤでした」
熊倉女流初段は下手を慮り、控え目な感想である。
「いや、失礼しました」
と感想戦は終了。スマホを見ると、対局開始から18分しか経っていない。私にとっては30分でも長すぎたようだ。ともあれ夢の時間は終わった。
席を立って、他の指導対局も見てみる。Shin氏が来て、「今日は帰ります」と言った。
今は私がShin氏と指したくなっていたが、Shin氏は冷静な判断をしたわけだ。
佐藤紳哉七段の指導対局を見る。相手は小学生低学年の少年だ。傍らでは青い目の外国人夫婦も観戦していて、さすがにボードゲームのイベントと思わせる。



局面は上手敗勢で、佐藤七段も観念したようだ。
「いい? いい? 見ててよ。…負けました」
とシャッポならぬカツラを脱いだ。少年は呆気にとられたふうだったが、外国人夫婦は「オ~ウ!」と驚く。
何だかB級コントを見た気分だ。
午後5時30分からは閉会式および表彰式があるが、同時にお楽しみ抽選会がある、との放送があった。
しかし今夜はテレビで「モヤモヤさまぁ~ず2」の10周年スペシャル番組があり、歴代アシスタントの大江麻理子アナ、狩野恵里アナ、福田典子アナが勢ぞろいする。こちらも観たいのだが、どうしようか…。
…あれッ!? 室谷先生!?
室谷由紀女流二段そっくりの人がいる!! …いやあれホンモノだぞ!?
でもたしか今日は、歌舞伎座で将棋イベントに出ていたはず。それを終えてこちらに来たということか?
まさか2週連続で当代一の美人女流棋士を拝謁できるとは思わなかった。室谷女流二段、飯野愛女流1級と談笑しているが、相変わらずの美しさだ。背も高いし品はあるし、さっきの筒井菜月さんと相当いい勝負だと思うのだが、どうなんだろう。
室谷女流二段は会場を出て行った。現在あずま通りでは、各名人戦が大詰めだろう。その後の閉会式に顔を出すのかもしれない。
ここは私もついていき、室谷女流二段を撮影するのが筋とは思う。が、ストーカーの気もある。
それで、今回はこれで失礼することにした。天童の粘着質も私なら、この不可解な行動もまた私なのだ。
今回私が楽しんだのは、このしもきたスクエアだったけれど、十分楽しめた。参加棋士とスタッフの皆様に御礼を申し上げます。

   ◇

この翌日、熊倉紫野女流初段は何と入籍を発表した。名字も変わり、「熊倉紫野」は前日4月30日をもって消滅した。よって、私は熊倉紫野最終日の対局者だったことになる。
女流棋士の結婚はめでたいことだけれども、ああしかし、この寂寥感は何なのだろう。
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