おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
買ったまま本棚に入れていた本を取り出して読みました。
『愛着障害―子ども時代を引きずる人々』(岡田尊司著、光文社文庫、860円+税)
読まないでいた理由は、ウィニコットが広めた愛着理論がアドラー心理学の目的論からすると、相反する原因論に位置していると見られたため。
読むモチベーションを高めたのは、大森哲至先生の 子育てのための発達心理学入門セミナー を受講したため。
読んでみると、「はじめに」でいきなりこんな文章が出てくるではありませんか。
「人間が幸福に生きていくうえで、もっとも大切なもの ― それは安定した愛着である。愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形造っている」
さらには、「安定した愛着スタイルをもつことができた人は、対人関係おいても、仕事においても、高い適応力を示す」と書いてあります。
本文に入ると、「愛着障害と愛着スタイル」(第1章)、「愛着障害が生まれる要因と背景」(第2章)、「愛着障害の特性と病理」(第3章)と続き、それに留まらず、「愛着スタイルを見分ける」(第4章)、「愛着スタイルと対人関係、仕事、愛情」(第5章)、「愛着障害の克服」(第6章)と展開し、ものすごい説得力で愛着障害の全体像を示してくれます。
それだけではありません。
愛着障害だったとみなされる政治家のバラク・オバマ、ビル・クリントンの現・元大統領から、作家の夏目漱石、太宰治、川端康成、ヘミングウェイなどの小説家、ルソー、エリクソン、スティーブ・ジョブズなどが続々登場し、愛着障害の実例が豊富で驚かされます。
小説家でもあるこの著者のまなざしは、問題を突きつけるだけではありません。
愛着障害を持ったがゆえの強みにも触れ、本の最後を次の言葉で結んでいます。
「愛着障害を克服した人は、特有のオーラや輝きを放っている。その輝きは、悲しみを愛する喜びに変えてきたゆえの輝きであり強さに思える。そこに至るまでは容易な道のりではないが、試みる価値の十分ある道のりなのである」
さて、アドラー心理学の立場からの私なりの見解。
アドラー心理学は、「人間の行動」に関して目的論なので、ライフスタイルの形成に関しては「影響因」として、遺伝や環境などの影響による原因論を認めています。
また、この本の最後で自己決定性によって「悲しみを愛する喜びに変えてきたゆえの輝きであり強さ」に転換できる可能性があるではありませんか。
愛着の理論は、アドラー心理学の弱みの発達心理学の知見を採り入れて補完する意味でも無視してはならないと思います。
大森哲至先生の 子育てのための発達心理学入門セミナー (8月20日(土)リバイバル開催)で学ばれると、そのへんのところが理解できます。
そもそも原因論だからと言って毛嫌いする必要がなかったと、早く読まなかったことを後悔しています。
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