アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日のブログ「5月28日というアドラーにとっての特別な日に:朝ドラ「虎に翼」+某大国から翻訳・出版のオファー」には、今までにないくらいの方々が訪問され、NHK「虎に翼」で『問題児の心理』が映し出された影響力の大きさをまざまざと感じました。
1つ訂正があります。
『問題児の心理』の訳者について「日本人の高橋堆治氏がアメリカでアドラーの指導を受け」と書いていたのは、私の勘違いでした。
正しくは、「アドラーと文通し、指導を受けていた」です。
ところで、ヒューマン・ギルドに『問題児の心理』のコピーがあるのを発見しました。
ある方からいただいていたものでした。
「本書の初版は、1941年刀江書院から刊行されたが、本書はそれを改訂したものである」とのまえがきが添えられた1959年の本でした。
この本をドイツ語からの翻訳だと思っていた訳者が1934年10月、アドラーがニューヨークのロングアイランド医科大学の教授として、プラメリーパーク街のプラメリーホテルに住んでいるときに直接手紙で尋ねて確認したいきさつがあとがきに書いてあります。
1941年にこの本を翻訳出版した時期は、日米間に版権に対する取り決めがなかったので、自由に翻訳出版できたそうです。
ところが、1954年の段階では、グリーンバーグ出版社に翻訳権を譲るように交渉し、新たに訳し直したことも書かれています。
さらにこんなことも。
訳者は1932年の夏、ニューヨークで本書の原本を見つけ、「精神分析から見た子どもの教育の本か、まぁ買って置いとけ、と思って買い、日本に帰ってから暇に任せて、さほどの期待もなしに読み始めて行くと、それが大変な内容であることにびっくりした」と書いてあります。
読み終わった訳者は、こんなことも書いていました。
「自分の心の中で子どもを見る目に、人間性を掴む力に大転換が起こったことを感じないではいられなかった。訳者にとって、その児童観と人間観とに革命をもたらしてくれたほどのものであった。この感銘が、本書を訳す動機となったのである」
このようなことから、訳者は、アドラーの『子どもの教育』(”The Education of Children”)の本を『問題児の心理』として2回、刀江書院から出版し、さらに後年『子どもの劣等感』として誠信書房から出したことになります。
それだけではなく、『問題児の診断と治療』 (1973年、川島書店)を翻訳・出版していることからも訳者の高橋堆治氏のパッションとミッションを感じざるを得ません。
まさにアドラー愛に満ちた、孤軍奮闘に近かった高橋堆治氏の訳した『問題児の心理』が、アドラーの命日の5月28日にNHK連続テレビ小説「虎に翼」で取り上げられたことに強い運命的な因縁を感じます。
アドラー愛をもとに、パッションとミッションを受け継ぎ、今の時代に合った組織展開を図る、私たちアドレリアンを勇気づけてくれた物語でした。
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