○目黒雅叙園 龍馬と対話する特別展『坂本龍馬×百段階段』(2010年11月27日~12月23日)
目黒雅叙園は、Wikiによれば、石川県出身の創業者・細川力蔵が、昭和6年(1931)に開業した料亭(満州事変の年だ)。国内最初の総合結婚式場でもあった。絢爛たる装飾を施された園内の様子は「昭和の竜宮城」とも呼ばれ、ケヤキの板材で作られた木造建築「百段階段」(実際は99段)とその階段沿いに作られた7つの宴会場は、映画『千と千尋の神隠し』の湯屋のモデルとして知られ、近年、さまざまなイベントの舞台にもなっている。
今回は、「高知県立坂本龍馬記念館の全面協力を得て、江戸の世界が花咲く百段階段に、龍馬の存在がエモーショナルに甦る」企画だという。展示にはそれほど期待しなかったが、東京都の登録有形文化財にも指定されている百段階段を一度見てみたい、と思って行ってみた。
近代建築の正面玄関で受け付けのあと、大きなエレベーターで百段階段の入口階に上がる。エレベーターの扉と壁面には螺鈿で唐獅子牡丹の装飾が施されている。Wikiによれば、韓国の漆芸家・全龍福によって制作もしくは修復されたものである由。エレベーターを降り、靴を脱ぐと、百段階段である。昇り窯を思わせる、なだらかな勾配の階段がどこまでも伸びている。天井には華やかな板絵が描かれているが、階段自体は思ったより簡素な空間である。
はじめは「十畝の間」。格天井に花鳥画を描いた荒木十畝(じっぽ)の名前にちなむ。同室の展示は、龍馬の家系・家族を写真パネルと龍馬の書簡(複製)で紹介。江戸博の『龍馬伝展』も長崎歴史文化博物館の『龍馬伝館』も見てきた自分には物足りないが、まあこんなものか、と思う。
内装の白眉は次の「漁樵の間」で、天井の花鳥画も壁の人物画も、全てが3D(立体)仕様。特に床柱に施された極彩色の彫刻が見事である。日本人の発想とは思えないなあ。
展示は「静水の間」が、長崎の料亭をイメージしたしつらえになっていて面白かった。さらに「清方の間」は、龍馬暗殺の夜をイメージし、暗殺現場に残されたという貼り交ぜ屏風の複製と、無人の長火鉢がじっと鎮座している。吹きすさぶ寒風、犬の遠吠え、一閃する刃、龍馬とかかわった人々の顔写真など、暗い背景に流れるイメージビデオも効果的。このほの暗さ、わびしさ、江戸の空間らしいなあ、と感心してしまうが、昭和6年の創建だから、実は全くの時代錯誤なのであるが。でも、こういう歴史的建造物を展示空間に利用すると、一般の博物館や美術館では出せない面白みが味わえると思う。
目黒雅叙園は、Wikiによれば、石川県出身の創業者・細川力蔵が、昭和6年(1931)に開業した料亭(満州事変の年だ)。国内最初の総合結婚式場でもあった。絢爛たる装飾を施された園内の様子は「昭和の竜宮城」とも呼ばれ、ケヤキの板材で作られた木造建築「百段階段」(実際は99段)とその階段沿いに作られた7つの宴会場は、映画『千と千尋の神隠し』の湯屋のモデルとして知られ、近年、さまざまなイベントの舞台にもなっている。
今回は、「高知県立坂本龍馬記念館の全面協力を得て、江戸の世界が花咲く百段階段に、龍馬の存在がエモーショナルに甦る」企画だという。展示にはそれほど期待しなかったが、東京都の登録有形文化財にも指定されている百段階段を一度見てみたい、と思って行ってみた。
近代建築の正面玄関で受け付けのあと、大きなエレベーターで百段階段の入口階に上がる。エレベーターの扉と壁面には螺鈿で唐獅子牡丹の装飾が施されている。Wikiによれば、韓国の漆芸家・全龍福によって制作もしくは修復されたものである由。エレベーターを降り、靴を脱ぐと、百段階段である。昇り窯を思わせる、なだらかな勾配の階段がどこまでも伸びている。天井には華やかな板絵が描かれているが、階段自体は思ったより簡素な空間である。
はじめは「十畝の間」。格天井に花鳥画を描いた荒木十畝(じっぽ)の名前にちなむ。同室の展示は、龍馬の家系・家族を写真パネルと龍馬の書簡(複製)で紹介。江戸博の『龍馬伝展』も長崎歴史文化博物館の『龍馬伝館』も見てきた自分には物足りないが、まあこんなものか、と思う。
内装の白眉は次の「漁樵の間」で、天井の花鳥画も壁の人物画も、全てが3D(立体)仕様。特に床柱に施された極彩色の彫刻が見事である。日本人の発想とは思えないなあ。
展示は「静水の間」が、長崎の料亭をイメージしたしつらえになっていて面白かった。さらに「清方の間」は、龍馬暗殺の夜をイメージし、暗殺現場に残されたという貼り交ぜ屏風の複製と、無人の長火鉢がじっと鎮座している。吹きすさぶ寒風、犬の遠吠え、一閃する刃、龍馬とかかわった人々の顔写真など、暗い背景に流れるイメージビデオも効果的。このほの暗さ、わびしさ、江戸の空間らしいなあ、と感心してしまうが、昭和6年の創建だから、実は全くの時代錯誤なのであるが。でも、こういう歴史的建造物を展示空間に利用すると、一般の博物館や美術館では出せない面白みが味わえると思う。