見もの・読みもの日記

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トスカ、椿姫、カヴァレリア・ルスティカーナ/プラシド・ドミンゴ in films(写真美術館)

2010-12-26 01:51:08 | 見たもの(Webサイト・TV)
写真美術館 『プラシド・ドミンゴ in films オペラ映画フェスティバル2010』(2010年12月4日~12月26日)

■トスカ(ジャンフランコ・デ・ポジオ監督、1976年)

 朝、上映に間に合う時間に起きることができたので、当日券を求めて飛び出していった。見てよかった。なんと、歌劇「トスカ」の舞台に設定されている3つの歴史的建造物、第1幕:サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、第2幕:ファルネーゼ宮殿、第3幕:サンタンジェロ城が、そのまま撮影に使われている。出演者たちには申し訳ないが、この映像美は、本作の最大の魅力である。私は、20年くらい前のイタリア旅行で、この3箇所を全て見てまわった。教会や宮殿の内装(壁画)の美しさにびっくりした覚えがあるが、もし、ローマに行く前にこの映画を見ていたら、この祭壇にアンジェロッティが隠れたのか、とか、この床にトスカが跪いて…とか、いちいち感無量だったろうと思う。

 物語は1800年、ナポレオン軍がオーストリア軍(ハプスブルク家)に決定的な勝利を収めた日を背景にしている。日本なら寛政年間、若冲の亡くなった年だ。そう思うと、当時の建築や障壁画を使って映画を撮るって、そんなに無理ではなさそうな気がする。

 映像美と並んで、私を魅了したのが、スカルピアを演じるシェリル・ミルンズ(バリトン)。表情の乏しさが、かえって権力欲そのものみたいな冷血さを感じさせて、ぞくぞく来る。「トスカ」は、テノールやソプラノを聴くオペラじゃないんだなあ。スカルピアがいいと締る。

■椿姫(フランコ・ゼッフィレッリ監督、1982年)

 2008年の『オペラ映画フェスティバル』でも見たが、何度でも見たくなる作品である。これだけは前売券を買っておいてよかった。開場前に当日券は売り切れてしまった。豪華絢爛な衣装、調度品。第3幕の夜会に登場する、ボリショイ・バレエのプリンシパル、ワシーリエフと、プリマのマクシーモワのダンスが圧巻なのに、それを上回る緊張感に満ちた歌唱をドミンゴとテレサ・ストラータスが繰り広げる。奇跡の名作だと思う。クライマックスでは、今回も会場のあちこちからすすり泣きが聞こえた。

■カヴァレリア・ルスティカーナ(フランコ・ゼッフィレッリ監督、1982年)

 「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、歌劇自体もしばらく聴いていなかったので、さてどんな話だったっけな?と手探りするような気持ちで見ていた。物語は単純だが、シチリア島の、土臭い農村風景が美しい。行ってみたくなる。ヒツジや驢馬も多数出演。イエス像やマリア像が細い坂道を練り歩き、山上の教会へ運び込まれる復活祭の行列、特徴的な民族衣装に着飾った女性たち。画像検索で調べてみたら、アルバニア系の住民が多い、ピアナ・デル・アルバネシ(アルバネーゼ)という町を舞台に選んでいるようだ。

 それにしても本日(クリスマス)の〆めが、このヴェリズモ・オペラか、とプログラムの皮肉さにちょっと苦笑してしまった。でも、主人公の無分別、浅はかさと同居する優しさには、「トスカ」「椿姫」みたいな崇高な愛の物語とは別の意味で泣ける。

T&K TElEFILM(ティアンドケイ・テレフィルム)-オペラ映画
各作品について詳しい。
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