○山種美術館 『日本美術院の画家たち-横山大観から平山郁夫まで-』(2010年11月13日~12月26日)
日本美術院は、明治31年(1898)、東京美術学校を排斥され辞職した岡倉天心と、彼に連座した美術家たちによって創設された在野の美術団体。以後、資金の欠乏、内紛、綱紀の乱れなどが原因で沈滞、茨城県五浦への移転の低迷期を経て、天心の一周忌にあたる大正3年(1914)、横山大観、下村観山らによって再興された。場所は谷中三崎坂南町52番地の現所在地である(Wikiおよび展覧会趣旨より)。
岡倉天心って、ほんとに面白い男だ。私は芸大美術館の『岡倉天心-芸術教育の歩み-』で、東京美術学校の校長就任~辞職まではじっくり学んだが、その後の日本美術院時代は、ワタリウム美術館の『岡倉天心展』を見たとはいえ、あまりよく分かっていなかった。今回、展示の冒頭に日本美術院の「院歌」や「三則」が紹介されており、これを見ると、岡倉天心ってどこまでも岡倉天心だなあ…と可笑しくなる。三則の第二「日本美術院ハ芸術ノ自由研究ヲ主トス、故ニ教師ナシ先輩アリ、教習ナシ研究アリ」はまだしも、院歌に云う、「谷中うぐいす初音之血に染む紅梅花 堂々男子は死んでもよい/奇骨侠骨開落栄枯は何のその 堂々男子は死んでもよい」だもの。熱い、熱すぎる。
さて、作品では小林古径の「清姫」連作に見入る。同じ伝説を扱った京博の『日高川草紙』を思い出したが、古径筆のほうがずっと可憐。前日にオペラ映画『道化師』や『カルメン』を見たばかりで、西洋の恋愛悲劇は「追う男→拒む女」が典型なのに、日本(東洋)は「追う女→逃げる男」だなあ、と考えたりした(吉備津の釜、牡丹燈籠とか)。
速水御舟の『翠苔緑芝』は目のさめるような面白い作品。全面金屏風に、ゴルフのグリーンのように緑色の島が点在し、右隻は枇杷の黄、躑躅の朱、黒猫の黒がアクセントになっている。左隻には紫陽花の青と純白のウサギの白。あまりにも装飾的。御舟は、後世、自分の名が忘れられてもこの作品は面白いと言ってもらえるだろう、と語っていたそうだ。江戸時代の琳派の作品に、ときどき、作者は分からないけど、無類に面白いものがあることを思い出す。
あまり意識したことのなかった画家だが、小茂田青樹の静謐な自然描写にも惹かれた。奥村土牛の『鳴門』や『城』は、完成品と画稿を見比べることができるのが一興。森田曠平の『ナイチンゲール』は、アンデルセン童話を絵巻仕立てにしたもので、古代中国風の挿絵がミスマッチ(で面白い)と思ったが、調べたら原作に「中国の王さま」とあることが分かって、興味深かった。会場では、けっこう若い観客を見たが、日本画の装飾性(大胆な省略やデフォルメを許すところ)って、受け入れやすいのではないかと思う。
※参考:日本美術院ホームページ
なかなか情報豊富。特に、古田亮氏の「日本美術院史外伝」と佐藤道信氏の「日本美術院外伝」は読み応えあり!
日本美術院は、明治31年(1898)、東京美術学校を排斥され辞職した岡倉天心と、彼に連座した美術家たちによって創設された在野の美術団体。以後、資金の欠乏、内紛、綱紀の乱れなどが原因で沈滞、茨城県五浦への移転の低迷期を経て、天心の一周忌にあたる大正3年(1914)、横山大観、下村観山らによって再興された。場所は谷中三崎坂南町52番地の現所在地である(Wikiおよび展覧会趣旨より)。
岡倉天心って、ほんとに面白い男だ。私は芸大美術館の『岡倉天心-芸術教育の歩み-』で、東京美術学校の校長就任~辞職まではじっくり学んだが、その後の日本美術院時代は、ワタリウム美術館の『岡倉天心展』を見たとはいえ、あまりよく分かっていなかった。今回、展示の冒頭に日本美術院の「院歌」や「三則」が紹介されており、これを見ると、岡倉天心ってどこまでも岡倉天心だなあ…と可笑しくなる。三則の第二「日本美術院ハ芸術ノ自由研究ヲ主トス、故ニ教師ナシ先輩アリ、教習ナシ研究アリ」はまだしも、院歌に云う、「谷中うぐいす初音之血に染む紅梅花 堂々男子は死んでもよい/奇骨侠骨開落栄枯は何のその 堂々男子は死んでもよい」だもの。熱い、熱すぎる。
さて、作品では小林古径の「清姫」連作に見入る。同じ伝説を扱った京博の『日高川草紙』を思い出したが、古径筆のほうがずっと可憐。前日にオペラ映画『道化師』や『カルメン』を見たばかりで、西洋の恋愛悲劇は「追う男→拒む女」が典型なのに、日本(東洋)は「追う女→逃げる男」だなあ、と考えたりした(吉備津の釜、牡丹燈籠とか)。
速水御舟の『翠苔緑芝』は目のさめるような面白い作品。全面金屏風に、ゴルフのグリーンのように緑色の島が点在し、右隻は枇杷の黄、躑躅の朱、黒猫の黒がアクセントになっている。左隻には紫陽花の青と純白のウサギの白。あまりにも装飾的。御舟は、後世、自分の名が忘れられてもこの作品は面白いと言ってもらえるだろう、と語っていたそうだ。江戸時代の琳派の作品に、ときどき、作者は分からないけど、無類に面白いものがあることを思い出す。
あまり意識したことのなかった画家だが、小茂田青樹の静謐な自然描写にも惹かれた。奥村土牛の『鳴門』や『城』は、完成品と画稿を見比べることができるのが一興。森田曠平の『ナイチンゲール』は、アンデルセン童話を絵巻仕立てにしたもので、古代中国風の挿絵がミスマッチ(で面白い)と思ったが、調べたら原作に「中国の王さま」とあることが分かって、興味深かった。会場では、けっこう若い観客を見たが、日本画の装飾性(大胆な省略やデフォルメを許すところ)って、受け入れやすいのではないかと思う。
※参考:日本美術院ホームページ
なかなか情報豊富。特に、古田亮氏の「日本美術院史外伝」と佐藤道信氏の「日本美術院外伝」は読み応えあり!